ペルソナアフターパラレル   作:erupon

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※ペルソナ4原作後、大学生設定の二次創作です。
 息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。

※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
 なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい


※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。

※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。


039.星の輝きと地上の天使3

 日付:12月17日水曜日

 

 

「なるほど、君達がペルソナ使いか」

 感慨深げに頷きながら呟く神羅の言葉に、皆は顔を見合わせた。

「そうか、君達なのか」

 深夜三時少し前、白鐘探偵事務所の応接室には、神羅と、鳴上、花村、巽、直斗の四人が揃っていた。

 夜遅くにも関わらず薬師寺は五人に丁寧に注いだ紅茶を振るまい、別室で控えている。

「どういう意味だ?」

 鳴上が、首を傾げながら尋ねる。

「主より、君達のことは聞いていたからね」

 ティーカップを手に取り、神羅はニヤリと笑った。

「今から私がする話は、君達にとっても有益な情報となるはずだ」

「じゃ、その話を聞こうじゃないか」

 花村がはあ、とため息と共に言えば神羅はペルソナ使いたちを見渡す。

「堂島菜々子は、生きている」

「何故それが解るのですか?」

 直斗の問いに、神羅は直斗へ視線を向けた。

「簡単だ。俺達の元にいるからな」

 神羅はうまそうに紅茶を啜る。直斗はため息をついた。

「大変申し訳ありませんが、今の僕らには貴方を信用できる材料がありません。何か、証拠を示してはいただけませんか?」

「それは些か難しい相談だな」

 神羅は肩を竦める。

「それには、あの少女が目を覚まさなければならないから」

「今ここに連れてくる、ということでも構わないのですが?」

「それじゃ交渉にもならんだろう?」

 直斗の提案を、神羅はにべもなく突っぱねた。

「『鏡』を作れるのは現状主様と我が愚弟だけなのだ」

「待て、直斗。このままじゃ水掛け論になってしまう。とりあえず、この人の話を全て聞かないと」

 鳴上が直斗を制する。神羅は鳴上を見、ニヤリと笑った。

「話ができそうな奴がいて良かった」

 神羅は鳴上をじっと見る。

「俺は、交渉に来たんだ。何も、あの少女を帰さないとは一言も言っていない」

「神羅さん、貴方の望みは何だ?」

 鳴上も、神羅の目をじっと見て尋ねる。

「少女の代わりに捕まった愚弟を、助けだして欲しい」

「愚弟?」

 花村が眉を顰めた。

「名は、南原。鳴上、貴様は知っておろう?」

「なんだって?」

 鳴上が目を丸くする。

「南原って、あ、あの……?」

 鳴上の問いに、神羅は渋い顔で頷いた。

「アイツはそんなに弱く」

「元々戦闘は苦手なんだ」

 神羅は肩を竦める。

「自分よりも、他人を優先してしまう。心の弱さゆえ、だ」

「馬鹿なこと言うな!」

 鳴上が声を荒らげてソファから立ち上がる。

「生物には生存本能というものが存在する。それは、人とて同じことだろう?」

 神羅は鳴上を睨んだ。

「自分が死ぬかもしれない、という局面において自分と人とを比べれば、命の重さは解かろうものなのだが」

「そんなことはない。現に、今菜々子は生きているんだろう? 南原は優しいんだ。だから、……優しい心を弱い、だなんて言うな!」

 鳴上の剣幕に、神羅はクス、と笑う。

「……何がおかしい?」

「若いな、と思ってな」

 神羅は紅茶をグイ、と飲み干す。

「今日の午後一時、改めて話をしよう。……八十稲羽の、天城屋旅館。愚弟が泊まっていた部屋で待つ」

「待て!」

 鳴上が叫んだ。神羅は優雅に礼をすると、その場から掻き消える。

「クソッ」

「落ち着け、悠」

 花村が紅茶に口をつけながらチラ、と鳴上を見上げた。

「今はどうにもならない。アイツの言うことにはちと賛同しかねるが、それでも菜々子ちゃんが生きている、と言った。先にそのカードを切ってきたということは、向こうも余裕がねえんだ」

「そうっスよ、先輩落ち着いてください」

 巽も肩をすくめる。

「今は菜々子ちゃんが生きている、そして南原って奴が代わりに捕まっている、それだけでも結構でかい情報っスよ?」

「あ、ああ。……すまない」

「今日の午後、天城屋旅館ですか。……天城先輩にも声を掛けておいたほうがいいでしょうね。あと、堂島さんにも」

 直斗の言葉に、鳴上は肩を落とした。

「ああ。そうだな。……叔父さん、何て言うかな」

 

 ◇◇◇

 

 少女が目を覚ました時、誰かのベッドで寝ていた。

「ああ、目を覚ましたんだね」

 サイドを刈り込みくせのある髪を軽く流したソフトモヒカンスタイルの男が、少女を見てにっこりと微笑む。

「あ、の」

 少女は一生懸命声をかけようとした。

「まだ目覚めたばかりなのだから少し大人しくしているといい。何か、飲むかい?」

 少し強面にもとれる男は、優しげな笑みを浮かべながら戸棚からココアの袋とマグカップを取り出した。

 慣れた手つきでマグカップにココアと熱湯を少し入れ、ぐるぐると練り始める。

「ここは、どこ?」

 少女の問いに答えず、男は少し温めた牛乳と砂糖をひとさじココアに注いで溶かす。

「よし、出来た。南原が作るより美味しくないかもしれないが、良かったら飲んでくれ」

「あ、……ありがとう」

 少女は体を起こすと男からマグカップを受け取った。

「あの、おじさんは、誰?」

「ああ、自己紹介がまだだったね。某の名は宮本。君は、……堂島、菜々子殿かな?」

 微笑みながら宮本が問いかけると、菜々子は頷く。

「凄い、菜々子の名前、どうして分かったの?」

「おじさんは、魔法使いなんだよ。だから、君が思うことはだいたい分かるんだ」

 宮本が言うと、菜々子は目を輝かせた。

「実のところ、背負っていた皮のカバンに名前があったからね」

 菜々子は少しがっかりしたような顔をした。宮本はその様子に苦笑いする。

「おじさん、魔法って、……ラブリーンみたいなこと出来るの?」

「『らぶりーん』はあまり知らないのだが、それが魔法を使う、というなら同じようなことはできるかもしれないね」

 宮本は笑みを浮かべたまま答える。菜々子はココアを口にし、にっこり微笑む。

「おじさん、ココア美味しいよ!」

 宮本はホっと胸をなでおろした。

「そうか、それなら良かった。まだホットミルクもココアも残っているから、飲みたかったら言ってくれ」

「うん」

 菜々子は頷くとココアを飲み干す。菜々子がはは、と笑うと、宮本は頷き菜々子からマグカップを受け取った。

「もう少し元気になったら、この中を案内しよう。触ったら危ないものもたくさんあるからね」

「うん」

 宮本は先ほどと同じ手順でホットココアを作っていく。

 出来たホットココアを菜々子に渡した時、ドアがノックされた。

「鍵はかけていないが」

 宮本が言えば、ドアを開けて入ってきたのは神羅だった。

「神羅兄。これからまた『あちら』へ行くのだろう?」

 宮本の問いに、神羅は頷く。

「宮本、例のアレはできているか?」

 神羅の問いに、宮本は戸棚から箱を出し、神羅へ渡す。

「『指輪』を五つ。……ただ、これはまがい物だ。効果も一週間保つかどうか」

「充分だ」

 宮本は満足気に頷き箱を受け取った。

「彼らには、何があっても南原を助けだしてもらわねばならん」

「神羅兄、頼んだよ? さっきみたいに物別れになったら困るから」

 宮本がため息混じりに言えば、神羅は肩を竦める。

「あれは悪かったと思っている。素直に謝ってくるさ」

 宮本は踵を返した。

「また、連絡する。その時、その子をロウソクの前で準備させてくれ」

「解った」

 神羅が部屋の扉を閉めると、宮本はため息をつく。

「おじさん、今の人と喧嘩してるの?」

 菜々子は、小首を傾げながら尋ねた。

「いや、喧嘩はしていないよ。あの人は、我らの中では一番の兄だからね。……ただ、少し人をからかう悪い癖があるんだ」

「そっか。……喧嘩しちゃ、だめだからね?」

 菜々子の言葉に、宮本はまた苦笑いを浮かべる。

「うん、解った。約束するよ」

 

 ◇◇◇

 

 久々に集まった特別捜査隊のメンバーと堂島は、愛家をほぼ貸切状態にして昼食をとっていた。

「菜々子が生きている、とその男は言ったんだな?」

 ラーメンの具をつつきながら堂島遼太郎は鳴上に確認する。

 鳴上は、肉丼を頬張りながら、頷いた。

「南原、っていう奴を助けろって言ってもね」

 久慈川りせが四川麻婆豆腐丼にレンゲを入れながら首を傾げる。

「どこに居るかも、相手がどんな奴らかも解らないし?」 

「私達は、そうなんだけれど」

 雪子がラーメンのスープを掬ったレンゲをりせに向けた。

「花村君の話を聞いた限りだと、神羅さんは南原さんが捕まっている場所もそこがどんなところかも知ってるような、そんな気がするの」

「どこにでも現れられそうな人が、それでも私達に救助を依頼するってことは、あの人達じゃ手が出せない場所に捕まってるんだろうね。封印されてるみたいな?」

 里中千枝が肉丼大盛りを前に首を傾げる。

「封印、ってのはあながち間違いじゃないかもしれねえぞ?」

 花村は眉を顰めた。

「相手は魔法使いなんだから」

「その、魔法使いってのがなんともイメージできないんだが」

 堂島はガシガシ頭を掻く。

「どういう連中なんだ?」

「確かに、イメージするのが難しいかもしれませんね」

 鳴上は、肉丼を食べる手を止めた。

「魔法使いというのは」

 愛家の引き戸がガラガラ、と開けられる。

「いらっしゃい」

 愛家の店主が声をかける。

 入口に目線をやった鳴上、花村、巽、直斗は目を見張った。

 店に入ってきたのは、神羅だったからだ。

「……なんだ、全員揃っているんだな。じゃ、ここでもいいか」

 神羅は空いているカウンターの椅子に腰掛ける。

「親父殿、オススメになっている肉丼をくれ」

「はいよー」

 愛家の店主が注文をメモし肉丼を作り始めた。

「おい」

 鳴上が口を開く前に、堂島が後ろを振り返り神羅に声をかける。

「堂島菜々子、なら先程目を覚ました。……今は故あってここに戻すことが出来ない」

 神羅は堂島へ視線を向けた。

「我らがいる場所は、この地球上のどこでもないのだ。普通の人間であるなら、来ることもままならない」

 神羅は手を組む。

「だが、堂島菜々子は愚弟の『消失』の魔法に耐えて我らの場所へ転送された。……まるで、かつてどこか異世界へ行ったことがあるように、な」

 特別捜査隊のメンバーは一様に顔を見合わせる。

 彼が言っているのは三年前に起きた、生田目が菜々子をテレビに落としたことなのだろう。

「ああ。調書には、『テレビに落とされた』と記されていたが……」

 堂島は神羅をじっと見た。

「なるほど、すでに異世界へ行ったことがあるというなら、『消失』の呪文にも耐えうる魔力を持っている可能性はあるな」

 神羅は堂島へと目線を向ける。

「だが、今彼女は呪文によって体力を消耗している。事実、我らの場所に来てからしばらく眠っていた。それならば、体力が戻ってからこちらへ帰還させるほうがいだろう」

 神羅の冷静な言葉に、堂島ははあ、と息を吐いた。

「菜々子は、今は無事なんだな?」

「無論」

 神羅の前に、肉丼が置かれる。

「お待ちどーさん」

 神羅は割り箸を割った。

「堂島菜々子の身の安全と引き換えに、君達には我が愚弟を救って欲しい」

「でも、貴方ほどの力を持っていれば助けられるんじゃないの?」

 千枝が首を傾げる。

「途中に、魔法使いを退ける結界が張られている。我々では近づくことは出来ないが、魔法使いでなければ結界を破ることはできるだろう?」

「じゃあ、結界とやらを破って、南原を助け出せばいいんだな?」

 鳴上の問いに、神羅は頷いた。

「場所は?」

「この建物だと思われる」

 写真と見まごうほどの精緻な絵を神羅は隣に座るりせに渡す。

 りせは神羅を見やった。

「ねえ、ここ、どこ?」

「富士山の麓に有る、どこかの研究施設だ」

 神羅は言いつつ、肉丼をかきこみ、丼を置くとすでに中身は空になっていた。

「はっやーい……」

 りせは隣で目を丸くして神羅を見ている。

「それと、君達にはこれを渡しておく」

 神羅は何処からか箱を取り出しカウンターに置いた。

 箱を開けると、指輪が5本収められている。

「この指輪、先輩たちがやってるのと同じ物?」

 りせの問いに、神羅は肩を竦める。

「すまんな、我らにはそこまでの力はない。一週間で力が消えるまがい物だ。それでも今回の件では役に立つはずだ」

「俺達が外せなくなっている指輪の簡易版、みたいなものか」

 花村が箱に寄って指輪をしげしげと眺めた。

「そう思ってもらえばいい。……後、重大なことが一つある」

 神羅の言葉に、全員の視線が神羅へと向けられる。神羅は苦り切った顔になった。

「本当に申し訳ないのだが、期限は二十二日まで、だ」

「何故ですか?」

 直斗の問いに、神羅は直斗へ視線を向ける。

「その指輪の能力が最大限に発揮できる期間だ。それより遅くなると、指輪の効力が怪しくなる」

 神羅は席を立った。

「何かあったら、逐次知らせる。そちらからも、何かあったら知らせて欲しい」

「連絡手段はどうするんです?」

「君達の能力、ペルソナで話ができると思う」

 神羅の言葉に、直斗は頷く。

「分かりました。『逐次』お知らせしますね」

 直斗の言葉に、神羅は頭を下げた。

「本来は我らがどうにかしなければならないところ、君達に背負わせてしまってすまない。愚弟を、どうか救ってやってくれ」

 

 ◇◇◇

 

 神羅が去ってしばらく、全員言葉を発することはなかった。

「なーんか、断りづらい感じ?」

 りせはやや憤慨しながら指輪を手に取る。

「悠先輩は勿論受けるんですよね?」

「ああ。俺の友達だ。それに、菜々子の命も掛かってる」

 鳴上は深く息を吐いた。少し気持ちも上向いたのか、顔色もだいぶ良くなっている。

「ま、やるっきゃないね!」

 千枝がグッと拳を握る。雪子も同じく拳を握った。

「うちのお客様だからね!」

「えっ、そこ?!」

 千枝が突っ込むと、雪子はプフ、と吹き出す。

「雪子ぉ、最近笑いのツボ緩くない?」

「クマも当然やるクマ! 菜々ちゃんとセンセイの友達のためなら頑張るクマ!」

 特別捜査隊のメンバーが盛り上がる様を見ていた堂島は、咳払いをした。

 堂島に、皆の視線が集まる。

「俺も行くからな?」

「えっ」

「当たり前だ! そもそも俺の娘が誘拐されかかったのを助けられてるんだぞ? その恩人を見捨てられるか!」

 堂島はしかし、色々と飲み込めていないことがありすぎて、表情にも困惑が浮かんでいる。

「……それに、警察手帳があったほうが、お前らも動きやすいだろう?」

 堂島は苦笑いと共に特別捜査隊のメンバーを見回す。

「指輪は五本ある。堂島さんの分も、ある」

 花村は肩を竦める。

「諦めるしかなさそうだ」

 鳴上も苦笑いを零し、前を向いた。

「完二と直斗は叔父さんについて、菜々子が誘拐された時の状況についてもう一度情報整理をしてくれ。りせ、クマはこの絵の場所の特定を頼む」

「悠と花村君、里中さんと天城さんはどうするんだ?」

 堂島の問いに、鳴上は口角を上げる。

「俺達は、恐らく南原が交戦しただろう現場で調査してきます」

 堂島が、リングを皆と同じ右手の中指に嵌めた時、見たことがない風景があった。

 特別捜査隊のメンバーと共に、高校の制服を着たメンバーが『見えた』のだ。

「なんかあったらペルソナ同士で念話できるから逐次報告な?」

 花村の言葉に、皆が頷く。

「堂島さんは、申し訳ないんですが直斗か完二から情報をもらって下さい」

「あ、ああ、分かった」

 堂島は、心ここにあらず、といった様子でこの異様な風景を眺めていた。

 




3話も助走話 のはずなのになんでこんなにやること多いんや
(おもに自分のせい)

それではまた次回お会いしましょう。
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