息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:12月17日水曜日
『ここだろう』
イザナギが、枯れかかった木に触れつつ皆に振り返る。
鳴上悠と花村陽介、天城雪子と里中千枝は硬い表情で頷いた。
『そうだな。綺麗に片付けてるつもりなんだろうけど、でかい弾使ってりゃ痕跡は残るっての』
スサノオがニヤリと笑う。
八十神山の中腹、キャンプ場へ向かう道の途中。
植林された痩せた杉の木々は葉を茶色に変色させ、地面には他よりも多くの落ち葉が積もっていた。
「スサノオ、痕跡は追えるか?」
花村の問いに、スサノオは翡翠色の光を周囲へ撒く。
『魔力の残滓があっちこっちに見えるな。そんなに遠くねえ』
『……ここでは何かを作る呪文と、トラエストに近い術式が使われているわ』
赤いカーディガンに身を包んだアマテラスが、雪子を見て頷く。
『たぶん、菜々子ちゃんはこの術式でどこかに戻されたのね』
「じゃあ、その呪文を使えば菜々子ちゃんのところへ……」
『無理ね』
アマテラスは首を振った。
『事前に目印を用意する必要があるみたい。その目印が分からない限り、辿れないわ』
「……そう」
雪子は小さく俯く。
『準備なしでここまでやるなんて、相当な魔力か技術よ』
アマテラスは足元の枯れ枝を避けるように浮かぶ。
『足りない魔力は、この木々から補ったのかしら?』
『だから、枯れている』
イザナギが静かに言う。
頭上の言葉を聞きながら、鳴上は足元の枝を踏み折りながら前に進んだ。
「……ここで何が起きたかを調べるのは、骨が折れそうだな」
『陽介、何かあるぞ!』
スサノオが茂みの奥で手を振る。
「今行く」
花村が駆け寄る。
『これ、重要そうじゃね?』
そこに落ちていたのは、ピンク色のガーゼ布と、ファー付きのピンストライプ生地。
ガーゼには「どうじまななこ」と書かれていた。
「……菜々子のハンカチだ」
鳴上はそれを受け取り、言葉を失う。
「その布、コートのフードだと思うわ」
雪子が頷く。
「南原さんが着ていたもの。館内で見かけた」
「じゃあ、やっぱりここが現場か」
花村が息を吐く。
「大丈夫だ。俺たちは、やれることをやるだけだ」
花村はわざと大きい声を出した。
ついでに隣りにいる鳴上の背を軽く叩く。
「な、相棒?」
「……ああ」
鳴上は深く息を吐いた。
◇◇◇
『千枝、相当な戦闘があったみたいだよ!』
スズカゴンゲンが手にしていたのは、変形した30mmチェーンガンの砲弾だった。
『AH-64用、M230だね。アパッチが三、四機は来てる』
「……可愛く言っても物騒すぎるから!」
『LAV-25も五台以上。消されてるけど、タイヤ痕で分かるよ』
その言葉に、皆が息を呑んだ。
「それ、でけー砲台ついてる機動車じゃん。……戦争じゃねーんだぞ」
花村が呟く。鳴上は静かに頷いた。
『そうだねえ?』
スズカゴンゲンは楽しくてたまらない、といった笑顔を見せた。
『そういうのと一度やりあってみたかったんだよ! いやあ、楽しみ!』
「ち、ちょ」
千枝は他のメンバーからの視線を感じ、顔を赤くする。
「私が思ってるんじゃ、ないんだからね──っ」
「おー、知ってる知ってる」
「さすがだな、里中」
「千枝、ちょ、超武闘派……っ! ぷくく」
花村は鳴上と顔を見合わせ、雪子は吹き出し笑い出した。
「こ、こらー! もー! 雪子も笑わないー!」
里中の声が辺りの山にこだまする。
◇◇◇
一方、稲羽署では直斗と巽が集まった情報の整理をしていた。
『ねえ、直斗ー!』
スピーカーから聞こえる久慈川りせの大音量の声に、白鐘直斗は一瞬だけ眉をひそめ、すぐに表情を整えた。
その声は、稲羽署の小会議室に響き渡る。
「はい。ちゃんと聞こえています。どうしましたか?」
『さっぱり場所が掴めないんですけど!』
苛立ちを隠そうともしない声に、直斗は小さく息を吐いた。
「何か、特定に必要な要素はありますか? 出来る範囲で手配します」
しばらくの沈黙の後、通話の向こうで慌ただしい物音がした。
『クマが代わるクマ!』
クマの声に、直斗はスマートフォンをテーブルに置き、ハンズフリーに切り替える。
「クマ君、状況を教えてください」
『テレビの中と状況は似てるクマ。南原って人と強く結びついた物があれば、もう少し絞れると思うクマ。でも富士山周辺は気配が多すぎてぇ……』
「……なるほど」
直斗は腕を組み、考え込む。
「現場で調査している先輩方に確認します。引き続き、お願いします」
『了解クマ!』
通信が切れ、会議室に静寂が戻る。
「……芳しくない、か」
巽完二が腕を組み、天井を見上げた。
「仕方ねえよな。相手が人間とは限らねえんだろ?」
「はい」
直斗が頷いた、その時だった。
『あ、これ……』
パソコンの画面から、ヤマトタケルの声がする。
『おっかしいな。この捜査記録』
「どうしました?」
『この時間帯、この辺りを通過するヘリの飛行計画が一件だけ出てる。でも、捜査記録には反映されてないみたい。わざとかな?』
直斗と巽、そして堂島遼太郎が画面を覗き込む。
「ヘリ……?」
堂島は眉根を寄せ、腕を組んだ。
「そういや、音はしてたな。姿は見てねえが……」
『ヘリが出てる時間と、誘拐が起きた時間がほぼ一致してるんだよ』
「警察の記録に載らないヘリ、か……」
堂島は低く唸る。
「COでもあったのか、ってレベルだ。……いや、そんな馬鹿な話があるか」
刑事としての直感が、強く警鐘を鳴らしていた。
その時、直斗が静かに目を閉じる。
「……先輩方から、連絡が入りました」
全員の視線が直斗に集まる。
「八十神山中腹で、大規模な戦闘の痕跡を確認したそうです。木々が広範囲に枯死しており、弾痕と重機動車の轍が残っていたと」
「……山で、戦闘だと?」
堂島が低く問い返す。
「はい。そして……」
直斗は一拍置いた。
「堂島菜々子ちゃんのハンカチと、ダッフルコートのフード部分と思われる布切れが発見されたそうです」
その言葉に、堂島は即座に立ち上がろうとして、完二に腕を掴まれた。
「待ってください、堂島さん。今行っても……」
「……分かってる」
堂島は、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
ハンカチ。
毎朝、忘れていないか確認していた小さな布切れ。
生きている。
そう思った瞬間、胸の奥が強く締めつけられる。
「……そいつは、菜々子を守った奴の物でもある、ってことだな」
「可能性は高いです」
直斗は頷いた。
「少なくとも、現場で菜々子ちゃんが消えたのは事実です」
堂島は、深く息を吐いた。
「……警察の仕事としても、個人的にも、放っておける話じゃねえな」
拳を握り、視線を上げる。
「引き続き、情報を洗え。表に出せるもんと出せねえもんを分けろ」
「了解しました」
「完二」
「はい」
「何か動きがあったら、すぐ俺に回せ」
「任せてください」
堂島は背もたれに深く身を預け、目を閉じた。
刑事としてではない。
父として。
焦燥だけが、静かに胸の内で燻っていた。
◇◇◇
不意にヤマトタケルがモニターから手を抜いて、ロクテンマオウと目配せをした。
『主』
ロクテンマオウが稲羽警察署の表口の方を見る。
『何か、居る』
「何か居るだと?」
堂島が眉根を寄せる。
「何にも、分からないが?」
「ロクテンマオウが言うなら、何か邪魔な奴がいるんだろ」
巽は呟き席を立つ。
「じゃ、行ってくるか。直斗、堂島さんを頼んだぞ」
巽の言葉に直斗は目を細めた。
「気をつけて。こちらは、任せて下さい。……まあ、ロクテンマオウと完二君なら大丈夫でしょう」
「すぐ戻る」
巽はクス、と笑うとロクテンマオウを先行させる。
ロクテンマオウは表口に張り付いているようにいる『それ』を認識した。
『逃さねえぞ?』
低く呟くと、ロクテンマオウは雷を『それ』へとムチのように差し伸ばす。
逃げようと表口から離れた小さなスライム状の『それ』は、ロクテンマオウの雷のムチに囚われバタバタとその場で暴れた。
「ロクテンマオウ、そいつは何だ?」
追い付いてきた巽は首を傾げながらロクテンマオウを見上げる。
「こんなの、見たことねえぞ?」
ロクテンマオウは肩を大仰に竦めた。
『ペルソナじゃない。だが、どうも俺達のことを監視しているようだ。式神? 使い魔? みたいな?』
巽は目を細め、暴れる『それ』を見る。
「じゃ、コイツを作り替えれば、コイツを出した奴は捕まえられそうか?」
巽の言葉に、ロクテンマオウは口角を上げた。
『いい発想だ。……ま、そうすることで俺達を監視した奴がどうなるかは知らないが?』
ロクテンマオウの答えに、巽はニヤッと笑う。
「じゃ、任せた」
巽の言葉に、バタバタ暴れていた『それ』はさらに逃れようとする。
『暴れんなよ。……ちょっとキツイだけで痛くねえからさ?』
ロクテンマオウは『それ』を自分の中に取り込むと、ククク、と笑った。
◇◇◇
日付:12月18日木曜日
「ねえ、宮本のおじさん」
堂島菜々子がトーストに手を伸ばしつつ宮本を見た。
彼女には清潔な生成りのローブが着せられており、宮本は上二つボタンを外したドレスシャツにGパン、といったラフな格好をしている。
「何かな? 菜々子殿」
宮本はコーンスープが入ったスープボウルを菜々子の前に置いてやりつつ、首を傾げた。
「今日は、この中を案内してくれる、って言ってたよね?」
菜々子ははちみつバターをバターナイフで掬いトーストに塗っていく。
「ああ。……菜々子殿のための、杖も見繕いたいからね」
宮本は自分の椅子に腰掛けると、マグカップに入ったコーヒーに口をつけた。
「杖?」
「ああ。魔法使いならだれでも持ってる杖だよ?」
宮本は笑みを浮かべる。
「じゃあ菜々子、魔法使いになれるの?」
「少なくとも、ここではね」
菜々子が目をキラキラさせながら宮本を見た。
「魔法が使えないと、逆に危ないんだ」
「あぶ、ない……?」
「本当に危ない時はおじさんが守ってあげるけど、いつもおじさんと一緒、というわけにもいかないだろう?」
宮本は肩を竦める。
「もしかしたら一人で本でも読みに行きたいときもあるかもしれない。……そんなときに、魔法を使うんだ」
菜々子は少し不安そうな顔になりながらトーストを齧る。
「菜々子にも、できるかな?」
「『らぶりーん』殿ができるのであれば、菜々子殿にも出来るさ。おじさんが保証する」
宮本の言葉に、菜々子は笑みを浮かべて頷いた。
「うん!」
「それに、必要な魔法は全て杖に覚えてもらうから、菜々子殿が何かするわけじゃない」
菜々子はトーストを食べ終わるとコーンスープに口をつける。
「因みに菜々子殿は、どんな杖が欲しい?」
宮本は菜々子に笑いかけた。菜々子は宮本の方に体を乗り出す。
「菜々子ね、魔女犬のステッキがいい!」
「……まじょけん?」
「ラブリーンの相棒なんだよ!」
菜々子の剣幕に、宮本は苦笑いを零した。
「……考慮しよう」
◇◇◇
「……っ!」
南原が目を覚ましたのは、打ちっぱなしの冷たいコンクリートの部屋だった。
天井からはLEDライトが照らし、天井の隅に丸いスピーカーが備え付けられている。「痛」
南原は、自分の右肩に手をやった。ジャラ、と音がし、自分の両手足に金属製の金輪がつけられ、そこからコンクリートの壁に鎖が伸びているのを認識する。
「これは、……」
『気に入ってくれたかね?』
スピーカーから声が聞こえ、南原は眉根を寄せた。
「誰だ?」
南原はスピーカーを睨みつける。
『まず、その鎖を外そうと思わないことだね。君の力では破壊することは不可能だ』
スピーカーからクスクスと笑い声がした。
『タングステンカーバイド純度百の単結晶体に魔法強化をかけている』
南原は、その言葉に眉をひそめる。
「そんな技術、今の地球に存在しない」
『ああ。勿論だ』
スピーカーから笑い声が漏れた。
『だが、君ならば出来るだろう? ……南原君』
その言葉に、南原は両手を握った。
「君は一体、何者だ!」
『私は……』
彼が発した『音』に、南原は呆然とし、その場に膝をつく。
「ば、バカな……。貴方は、何故?」
『君は、餌であり、兵器である。あまり心地よくなくて申し訳ないが、残りの日々をせいぜい楽しんでくれたまえよ』
プツ、と音声が途絶える。南原はしばらくその場にうずくまっていた。
無機質な床を眺めつつ、南原は小さく呟く。
「……主様。僕は、どうすれば……」
その声は、答えを返されることなく、冷たい壁に吸い込まれていった。
4話です。現状行方不明扱いの人たちの消息もだせたんで事件動いていきます。
それではまた次回お会いしましょう。