息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:12月18日木曜日
堂島家では、三人の男性が食卓を囲んでいた。
「ごっそさんでした」
「ごちそうさま」
花村陽介と堂島遼太郎が箸を置く。
エプロン姿の鳴上は慣れた様子で温かいお茶を淹れる。
この数日で何度も繰り返した動作をなぞるようにリビングのテーブルに運んできた。
「どうぞ」
「あ、サンキュ」
二人の前にあった茶碗は鳴上の手によりあっという間に片付けられた。
堂島と花村は互いに顔を見合わせる。
「手伝うよ」
「いいよ。このぐらいすぐ終わる」
鳴上はカチャカチャとこれも慣れた手つきで食器を洗い始めた。
静かな部屋に食器が触れる音と水音が響く。
壁掛け時計が夜の八時を知らせた。
花村は頭を掻くと、はあ、とため息をつく。
「結局、あの……神羅さん? が言ってたこと以外はまだ分かってないんですよね」
「そうだな」
堂島は目の前の茶を啜った。
「熊田君も久慈川さんもがんばってくれたようだが、未だ彼が置いていった絵が何処なのかすら解っていない」
「ですね……」
『俺らにも、限界があるしなぁ、こればっかはしゃーねえな?』
ふわふわ浮かびながら、スサノオが肩を竦める。
「ああ、解ってるさ」
花村はスサノオに語りかけ、ふう、とまた息をついた。
「その、……スサノオ、だったか? 聞きたいことがあるんだが」
堂島の言葉に、スサノオは堂島の隣に正座で着地する。
『何だ?』
「君たちは、どうやってこの世界に出てきたんだ?」
堂島の問いに、スサノオは首を捻った。
『そうだなぁ、イザナギとロクテンマオウ、ヤマトタケルはアザトースの魔女、って奴が引っ張りだしたんだけど。ほかの奴らは、一時的にその指輪で出てきてる。俺は……』
堂島の視線を感じつつ、スサノオは腕組みしつつ考えていたが、やがて大仰に肩を竦める。『出てこれそうだったからやってみたら出れた、としか。わりぃ、分かんねーわ』
「わからない?」
堂島はスサノオから花村へと視線を移した。
「花村君は、どうなんだ?」
「いやあ、誕生日の朝に起きたらコイツが出てた、って感じで……」
花村は首を捻る。
「あの時、何があったのかさっぱり。……悠」
花村の呼びかけに、鳴上が水仕事を終えリビングのテーブルにつく。
「何だ?」
「あの、俺の誕生日の時。何か変わったこと、あったか?」
鳴上が思い出そうと眉根を寄せると、鳴上からふわり、とイザナギが抜けだした。
「悪いが、俺も寝てたからな……」
しばらく考えた後、鳴上は苦笑いを浮かべる。
「だよなぁ」
『主』
イザナギが鳴上を呼んだ。
『外に『異形の者』がいる』
「えっ」
鳴上はがたん、と席を立つ。
「どういう意味だ?」
「スサノオ」
花村が言うと、スサノオはすっと天井を抜けた。
イザナギは、三人を守るように立っている。
『陽介、神羅の仲間みたいな奴がいる』
スサノオの警告と共に、花村の脳裏に玄関前の映像が映る。
それは、スサノオを見上げるエコバッグを下げた男の画像だった。
男は十二月の夜だというのにコートも着ず、ドレスシャツを第二ボタンまで開け、黒い革のズボンをサスペンダーで釣っている。
余計な肉もついておらず、立ち居振る舞いからそうとう腕が立ちそうな、そんな気配をまとっていた。
「アイツ、スサノオを認識してるな」
花村の呟きに、鳴上がため息をつく。
「スサノオ、ちょっとそいつに話しかけろ」
「えっ、そんなことしたら」
鳴上とイザナギが花村へと振り返った。
「そいつが俺達に対して敵意を持っていたとしたら、とっくの昔に襲われてる。そうじゃなくて、正面から堂々と来てるなら、何か話したいことがあるんだろ?」
花村は目を閉じつつ鳴上に答える。
「大丈夫。危ないなら、すぐにスサノオを呼び戻すさ」
◇◇◇
『そこのおにーさん?』
そう言いながら、翡翠色の光に包まれた少年が空から舞い降りた。
栗色の少し長い髪に、金色の瞳。カラーには千鳥模様が施され、学生服にも銀糸のステッチが入った珍しいタイプの学生服を身にまとっている。
某は、この少年を知っている。かつてこの世界を救った者の一人で主が観ていたペルソナ……疾風を纏う彼の名は確か『スサノオ』、だったか。
目の前に音もなく降りたスサノオへと体を向ける。
『こんな夜更けに、この家に何かご用事で?』
ニヤリと笑い、少年は恭しく頭を下げた。
「この家にある、あるものを借りに伺ったまで」
俺の返事に、少年はニタリと笑う。
『ふうん? 何かを借りに、ねえ。……そういや、おにーさん。名前は?』
目の前の少年からチラチラと透けて見える殺気に、俺は苦笑いを浮かべた。
「俺の名は、宮本。お前は、スサノオだな?」
少年は、その端正な顔を歪める。
『俺の名を、知ってる? ……ということは、お前、三年前の戦いを観ていた一人だな?』
少年は殺気を隠そうともせず、俺を金色の瞳で睨んだ。
「南原は我らが末弟だ。神羅兄が何を言ったかは知らないが」
某は神羅兄の様子を思い浮かべる。
「……多分情報が足りていないだろう。それも含めて、ここの家人と話をさせて欲しい」
俺の言葉に、少年は腕組みをして目を閉じる。
『それは……堂島菜々子に関係のあることかい?』
少年の問いに、俺は頷いた。
「そうだ。菜々子殿に頼まれたことがあってな」
俺の答えに、少年はなるほど、と呟く。
『分かった。我が主がおにーさんと会う、って言っている。もうすぐ玄関の鍵が開けられるから待ってな』
少年が翡翠色の光の粒子に溶けるように消えたとき、玄関先の明かりが灯った。
ガチャガチャ、と鍵が開ける音がし、引き戸がガラリと開けられる。
そこに居たのは、先ほどの少年よりも大人びた青年だった。
栗色の髪色は先程の少年と同じ。だが、ナッツブラウン色の瞳は、真っ直ぐ俺を見ている。 間違いない。先ほどのペルソナの主、花村陽介なのだろう。
「……花村、です。ご案内します」
玄関に俺を出迎えた彼は、警戒心が見える表情で告げる。
少し固い口調なのは、俺にまとわりつく血の気配を察知したからか。
とすれば、先ほどのペルソナといい、かなり腕が立つということなのだろう。
「かたじけない。……しばし時間をもらう」
某の言葉に、花村と名乗った青年は軽く会釈をした。
◇◇◇
花村と共に来た男を見て、鳴上は息を呑んだ。
全く違う男なのに、その強大な力は南原より強く、そして同じものとして感じる。
「宮本さん、と言われたということは、……南原と同じ、アザトースの魔女の……?」
鳴上の問いに、宮本は薄く笑みを浮かべ頷いた。
宮本はリビングを見回し、ソファのに座っていた堂島の前で正座になり、床に頭を擦り付ける勢いで頭を下げる。
「えっ」
急に頭を下げられ、堂島が混乱したように視線を彷徨わせた。
「な、何を」
「我が名は宮本。貴方が菜々子殿の父上殿とお見受けしましたが、違いますか?」
堂島はその様子に一瞬呆気に取られ、そしてああ、と呟く。
「俺が、菜々子の父の堂島遼太郎、です」
堂島の答えに、宮本はホッと息を吐いた。
「菜々子殿を助けるためとはいえ、我らが場所に導いてしまい大変申し訳なかった。末弟南原に代わり謝罪申す」
堂島は、頭を上げずに滔々と口上を述べる宮本を見下ろし、頭をガシガシと掻く。
「あの、宮本さん、頭を上げて下さい」
堂島はソファから立つと宮本の肩に手を置いた。宮本はほっと息を吐き、やっと顔を上げる。
「菜々子は、今どうしていますか?」
堂島の問いに、宮本は笑みを浮かべた。
「菜々子殿は、今は某の工房に居ります」
宮本は堂島を見上げる。
「菜々子殿をあの場所で守るための衣と杖を作るべく、準備を進めています。……勿論、無事です。傷一つ付けておりません」
「あの、菜々子とせめて、……話はできないか?」
堂島の問いに、宮本は持参したエコバッグから箱に入ったろうそくを取り出した。
「それは……?」
堂島の問いに、宮本は笑みを作る。
「ろうそくだ」
見たままのことを言われ、堂島は言葉に詰まった。
「あ、ああ」
「これを使って、我らの場所とこことで会話をする」
宮本は複雑な魔法円が書かれた皿を荷物から取り出し、ろうそくを立てる。
パチン、と指を鳴らすとボッ、とろうそくに火が灯った。
宮本が何かの音を発すると、ろうそくの炎が風もないのに揺らめく。
『……おじさん?』
ろうそくの炎から、菜々子の声が聞こえた。
『今、何処に居るの?』
鳴上と花村は互いを見合わせ、堂島はホッとしたような、泣きそうな笑みを浮かべる。
「菜々子、聞こえるか?」
堂島がろうそくに向かって話しかけた。
『あ! お父さん!』
菜々子の声のトーンが上がる。
『お父さん! 今何処にいるの?』
「今家にいるんだ。宮本さんという人が来ていてね」
優しい口調で語りかけると、菜々子がグス、と鼻を啜る。
『お父さん、早く帰りたい……。でも、今帰ったら菜々子死んじゃうから、って……』
菜々子の声の端々が揺れた。
『宮本のおじさんに『魔女犬の杖が欲しい』ってお願いしたらね、参考になりそうなものはないかって聞かれて、菜々子の家にあるよ、って教えてあげたの……』
「菜々子、……体は大丈夫か?」
堂島の問いに対し、菜々子は少しの間泣いていた。
『うん。大丈夫。……宮本のおじさんもご飯作ってくれるし。魔法の杖つくってくれるって言うし……』
菜々子の声が、徐々に小さくなる。
「菜々子殿。……某に作って欲しいのはらぶりーんのローブとまじょけんの杖、でござったな?」
宮本がろうそくに話しかける。
『……うん』
菜々子が、小さく頷いた。
「借り受けたら持って帰る。今しばらく待っていておくれ」
『うん、分かった!』
菜々子が言うと菜々子が笑ったかのように炎はまた揺らめく。
「申し訳ないが、今しばらく時間をくだされ」
宮本の願いに菜々子はうん、と答えると、ろうそくの揺らぎが止まった。
宮本ははあ、と息をつくとろうそくを消す。
「……これで、許していただけるだろうか?」
宮本は、堂島に再び頭を下げた。
「俺に出来る限りのことは尽くさせて頂く。菜々子殿には傷ひとつ付けぬし、事故も未然に防ぐようにする」
宮本は更に、畳に頭をめり込ませそうなほどに頭を下げる。
「……だから、申し訳ないが今しばらく時間を頂きたい」
額を床につける勢いで頭を下げる宮本に、堂島はまた眉を顰める。
「や、だから顔を上げて下さい」
宮本が顔を上げると、堂島はため息をついた。
「ウチの娘を助けるためだったこと、信じます」
堂島は、先程とは違って少し、安堵の表情を浮かべている。
「菜々子とも先程話をさせてくれた。そちらの誠意は受け取りましたよ」
「それなら、良かった」
宮本は、ホッとしたように息を吐く。
「兄者が何をお話したのかも分からないまま伺った故、……些か心配でござったもので」
「兄者……神羅さん、か?」
鳴上の問いに、宮本は苦笑いとともに頷いた。
「兄者は尊敬するに値する人物なのだが、いつも中途半端なことしか言わないんだ」
宮本は渋い顔をする。
「中途半端?」
花村が眉を顰める。
「言ってないことが有るっていうのか?」
「まず、我が末弟が菜々子殿の代わりに賊に捕まった、という話は知っている?」
宮本の問いに、皆は頷く。
「じゃあ、捕まっている場所がどこかの製薬会社の研究施設ではないか、ということは?」
「それは、聞いた」
堂島が宮本に答えた。
「では、十二月二十二日に世界が滅ぶかもしれない、ということは?」
一瞬、誰も言葉を発せなかった。
冗談として受け取るには、宮本の声音はあまりに真剣だった。
『……はぁ?』
スサノオが宮本を眉を顰め見下ろす。
『何だそりゃ?』
『確か、二十二日までに助け出せ、とは言われた気がする……?』
イザナギが眉を顰めた。
『だが、世界が滅ぶ、なんて聞いてない』
「そうか、……」
宮本は肩を落とす。
「兄者、一番大事なことをまた言わなかったのか」
宮本は周囲を済まなそうに見回した。
「どういうことだ?」
堂島の問いに、宮本は口を開く。
「我らは、主様であるアザトースの魔女の眷族だ。眷族になるときに、我らの半身は外なる神の幼子に入れ替わる。……だが、その力は余りに強すぎて、我ら人の魂に馴染むまで大体百年ほどかかるのだ」
はあ、と宮本はため息をついた。「末弟はまだ眷族になってまだ七十年ほどしか経っていない。今のままでは、末弟の中に在る外なる神の幼子が、暴走してしまう」
「その、暴走すると、どうなるんだ?」
花村が恐る恐る尋ねる。
「地球が消えるだろうな」
その言葉に、誰かが息を呑む音がした。
「……いや、その言い方は間違いだな」
宮本は少し考え、頷く。
「太陽系が、消滅する。……だな」
「被害が甚大どころじゃなかった……」
花村がポツリと呟いた。
「あと、末弟を救いだしたら、このペンダントをかけてやって欲しい」
宮本は、荷物からブルークリスタルがはめ込まれたペンダントを取り出す。
「そうすれば、当面の危機からは回避できるはずだ」
宮本がテーブルに置いたペンダントを見たイザナギとスサノオは目を見張る。
『そんな物がこの世に存在するとは……!』
『この前の魔導書より危険物じゃねえか。驚いたな。これは一体どこから?』
スサノオの問いに、宮本は苦笑いを零した。
「末弟が作ったものだ」
「南原が、これを?」
鳴上は、宮本へ視線を向ける。
「ああ。奴は我らと違って戦うことには不向きだが、マジックアイテムを作り出すことには長けている」
宮本は目を細めた。
「人には向き不向きがある。南原は、こちらのほうに長けているだけ。『鏡』も、我ら眷属の中では南原にか作り出すことができないのだ」
「かがみ?」
鳴上が首を傾げる。
「ああ。……我らの住処とこことをつなぐ、門だな」
「門」
「それができれば、菜々子殿に負担なくここへ戻すことができる。……弟を助けてほしい理由の一つだ」
宮本は済まなそうに頭を下げる。
「某も工房を持っているが、せいぜい作れるのはこの前渡した指輪ぐらいまで。……君たちの何かの役に立てばいいのだが」
三人はただ、顔を見合わせて黙っていた。
それぞれ、もたらされた情報を整理している、そんな顔だった。
宮本はそれを見ながら、ソフトモヒカンスタイルの頭をさらりと撫でた。
「さて、某が出来る話はこれで全てだ。……らぶりーんの衣とまじょけんの杖を、貸しては貰えないだろうか?」
宮本の問いに、鳴上は思い出したように周囲を見やる。
「余りに衝撃的な話が多くて忘れていた。……叔父さん、菜々子の部屋にありますか?」
鳴上の問いに、堂島は曖昧な笑みと共に頷いた。
「古くなっても大事にしてたからな。……多分押入れの箱の中に入ってるはずだ」
「取ってきます」
鳴上がぱたぱた、と小走りに部屋を後にする。
やがて持ってきたのは、『魔女探偵ラブリーンなりきりセット』と魔女犬ステッキのレプリカだった。
それを宮本はそっと受け取る。
「これが、らぶりーんの衣装か……随分ピンク色が多い衣装なのだな」
宮本の言葉に、花村は苦笑いを浮かべた。
「まあ、女の子向けアニメのキャラクターですからね」
「あにめ? ……。うむ、分かった。同じような格好のローブと杖を作ろう」
宮本は真剣に見ながら頷く。
「あと、参考になるかもしれないので、これを」
鳴上が宮本に一冊の本を手渡した。表紙には、『魔女探偵ラブリーン』と書かれている。
「これは?」
鳴上へ宮本は視線を移す。
「アニメを元に小説にしたものです。まあ、子供向け小説なの読むと寛容さと根気が少し鍛えれるような気がしますが」
微笑む鳴上に宮本は笑みを返し衣装ともどもエコバッグにしまいこんだ。
「ありがとう。菜々子殿は某に任せてくれ。あの場にいる限りは他の者がどうしようとも某が守る。弟のことは、申し訳ないが頼んだぞ」
「はい」
鳴上が右手を差し出すと、宮本も右手を出し握手をする。
「じゃ、これで失礼する」
宮本は座布団から立ち、頭を下げた。「何かあったら言ってくれ。ペルソナを介せば、俺でなんとかなるようなら助けられるかもしれない」
「分かりました」
堂島も宮本に頭を下げる。
「菜々子を、よろしくお願いします」
宮本は頷くと、音を紡いだ。
次の瞬間白い光の粒子が宮本を包み、姿を消す。
しばらく三人は何も言わず、しん、と静まり返った部屋に、時計が十時を知らせた。
『陽介、ボーッとしてる場合じゃねーぞ』
スサノオがぽこ、と軽く花村の頭を叩く。
「な、何すんだよっ!」
花村がスサノオを軽く睨む。
『ちょっと外出てくる』
スサノオはイザナギに手招きし、二人で壁を抜けた。
それを見送り、花村ははあ、と溜息をつく。
「アイツ、……何するつもりだ?」
「それより、陽介」
鳴上は腕組みをしながら俯いた。
「ペルソナ二人があれだけ驚く、ということは、……このペンダントはかなり危険、ということだよな」
「そう、だな」
花村は視線をテーブルの上に置かれたペンダントに向けた。
「どうして連中は、こう無造作に危険物を持ってくるんだろうな」
「そりゃ、彼らにとっては『危険物じゃない』から、だろう」
堂島は言い、無造作にペンダントを手に取る。
「俺には普通のガラスが嵌ったペンダントにしか見えないがなぁ」
「堂島さん」
「叔父さん」
花村と鳴上は同時に堂島に声をかけていた。
「あ、うん?」
堂島が二人を見る。
「結構、怖いもの知らずなところ、ありますよね……?」
花村が尋ねると、堂島は曖昧な顔つきで首を捻った。
「そうか?」
堂島は手に持ったペンダントを眺める。
「コレはとりあえず俺が持っておく。大事な物証になるかもしれん。大事に扱おう」
「は、はあ……」
鳴上と花村は互いの顔を見やり、苦笑いを浮かべた。
◇◇◇
『スサノオ、どうしたんだ?』
イザナギは、スサノオの肩を掴んで止まらせた。
『何か、主達に言えないことが……』
『聞きたいのは、俺だ』
スサノオはくるりとイザナギへと振り返る。
『……俺に?』
イザナギは怪訝そうな顔でイザナギを見た。
『イザナギ、お前が外へ出た時。……何が起こっていた?』
スサノオの金色の瞳が、イザナギの金色の瞳を射るように見つめる。
イザナギは腕組みをして目を閉じた。
『俺は、誰かに心の扉を開けられ起こされた。そして、主達が危険な状況に陥っていることが分かった。だから、力を、貸すために主に呼びかけたんだ』
イザナギの言葉に、スサノオは眉を顰める。
『心の、扉。……陽介の、心の扉を開けた奴は、多分例の魔女じゃねえ』
スサノオは苛立ち、ぎゅ、と両手に拳を握った。
『もっと闇の色が濃い、何かの力。強引に陽介の心の扉をこじ開けた奴がいる!』
イザナギは、スサノオをそっと抱きしめる。
『大丈夫だ、スサノオ。少なくとも、お前は一人じゃない。俺や、ロクテンマオウ、ヤマトタケルがいる』
優しく話しかけるイザナギに抱かれたまま、スサノオは胸に顔を埋めた。
『解ってる。だけど、あのペンダントを見た時、何かを思い出せそうな気がした。それが、……何かを思い出すのが、怖い』
イザナギの腕の中で、少しスサノオが震えながら呟く。
『陽介は基本ヘタレだし、俺がいつも笑っててやらないとだめな奴だから』
『それも、お前の一部だろ?』
イザナギはスサノオを苦笑しながら頭を撫でた。
『何があっても、主を守る。それが俺達、心の鎧であるペルソナの役目。主が花村を護るなら、俺もスサノオを護ろう』
スサノオははあ、とため息を零す。
『イザナギ、お前カッコつけすぎだろ。鳴上こそ、三年前のあの事件を想起させる今の状況に心を痛めているはずだぜ? そんなよゆーあんのかよ?』
イザナギも、はあ、とため息をついた。
『正直なところ、余りないな』
『ったく、だったら、無理しねえで自分の役割を全うしろよな』
スサノオはイザナギの腕からスルリと抜け出る。
『悪かったな、つまんねー話して』
『いいさ。……スサノオはもう少し自分に素直になれ』
イザナギは微笑んだ。
スサノオはふん、と鼻を鳴らしあらぬ方向を見る。
『十分素直だぜ?』
『そうだったな』
イザナギとスサノオは互いを見て、笑った。
『余り時間をかけると主達が心配する。そろそろ戻ろう』
『そうだな』
二人はまた堂島家へと向かって夜の闇を飛んだ。
その背中を、名も知らぬ不安が追いかけていた。
5話です。工房を持ってる常識人現る。
どうやっても分割できなくて、ちょっと長いですごめんね。
それではまた次回お会いしましょう。