息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:12月19日金曜日
東京都の中心地の一つである丸の内。
林立するビル群の中に、桐条ホールディングス第二総務部は存在している。
自席で部下が作成した資料に目を通していた鳴上友樹は、胸ポケットに収めたスマートフォンの振動に気づき、手に取った。
「もしもし」
『兄さん、今ちょっといい?』
この番号から電話をかけてくる人間は、世界に一人しかいない。
友樹は椅子を回し、窓の方を向くと小さく息を吐いた。
「何の用だ、雅也。」
『北島は貸さんぞ、って顔してるのが目に浮かぶなあ。』
「用件を言え。なければ切る。」
『はまなか、きよつぐ。……聞き覚えない?』
その名を聞いた瞬間、友樹は背を椅子に預け直した。
「……どこで、その名前を?」
『俺が今追ってる案件で出てきた。元エルゴ研、幾月修司と同じセクション。違う?』
友樹は無言で天井を見上げる。
「それで?」
『居場所、知りたくない? 急ぎでさ。出来れば兄貴も借りたい。』
受話器の向こうから、一定のエンジン音が聞こえてくる。移動中らしい。
「何があった。」
『八十稲羽で、ちょっときな臭いことが続いてる。で、どうやら悠たちも動いてるみたいでね。』
「……悠が?」
『警察の受理記録を漁ったら、堂島菜々子ちゃん誘拐。時期を同じくして、不自然なフライトプラン提出。提出元はとある会社。』
「どこの会社だ。」
『そこから先は交換条件。情報出すからさ、兄貴。一緒に八十稲羽、行こう?』
「おい。」
声を荒げかけた友樹に、雅也の声が低くなる。
『公安からの正式な協力要請だ。桐条にも随分貸しは作ってきたつもりだけど、仇で返す?』
友樹は長く息を吐いた。
「……分かった。ただし北島は別件で出張中だ。物理的に貸せん。」
『残念。じゃ兄貴だけでいい。十分後、地下の車止めで。』
通話が切れる。
友樹はスマートフォンを机に置き、しばし動かなかった。
「どうされましたか?」
青柳が声をかける。
「公安から要請だ。少し留守にする。北島とは連絡を取れ。」
「畏まりました。」
友樹は鞄を手に取り、最後にスマートフォンを胸ポケットへ戻した。
「後は頼む。」
◇◇◇
「つまり、ガス爆発は陽動だった可能性が高い、ということだな。」
堂島遼太郎が頭を掻く。
堂島家のリビングには、白鐘直斗、巽完二、久慈川りせ、鳴上悠が集まっていた。
「花村先輩を誘い出し、拉致するのが本命だった可能性が高いです。」
直斗は湯呑みを置く。
「ただ、不可解な点もあります。」
「不可解?」
「僕たちは警察署を見張っている存在を追っていました。調査行動のタイミングは読めなかったはずです。それにも関わらず、犯人はガス爆発を起こし、逃亡し、その隙を突いて花村先輩を……。」
直斗は一呼吸置いた。
「偶然を利用したにしては、あまりに手際が良すぎる。」
「私も確認したけど。」
りせが腕を組む。
「爆発が起きるまで、カンゼオンは変な気配を感じてなかった。あの感知能力で、だよ?」
堂島は顎に手をやる。
「……となると、花村君を襲った存在は、こちらに来させたい理由があった、か。」
その時、着信音が鳴る。
悠がスマートフォンを見て眉を顰めた。
「もしもし……雅也さん?」
短い通話の後、悠は顔を上げる。
「父さんと一緒に、今から来るそうです。」
「友樹さんもか?」
堂島が言い終える前に、玄関の呼び鈴が鳴った。
悠は玄関へ向かう。
しばらくして悠は、一人の男を連れてきた。
「よっ、やってる?」
ひどく軽薄な口調で周りを見回したのは、銀灰色の髪を後ろで結んだ男。
「鳴上、雅也。……俺の父の、弟。」
悠が完二とりせに言うと、雅也は微笑んで言った。
「よろしくな」
「雅也さん、父さんは?」
悠の問いに、雅也は肩を竦める。
「すまんな。兄さんは、別のところだ」
◇◇◇
「今日から数日、世話になる」
鳴上友樹は、天城屋旅館のロビーで雪子に微笑んだ。
「こちらこそ……。」
天城雪子は、友樹に軽く会釈を返す。
いつもの通りの所作。しかし、その視線はどうしても、友樹から外せなかった。
あの事件から自分たちを導いたリーダーの、父。
纏う雰囲気は桐条の名を背負うに相応しい、圧倒的なオーラを感じる。
それは、自分たちが背中を、命を預けたリーダーとも通じるものだ。
だが。
それとは別の、消せない気配。
自分たちだからこそ、分かる同じ匂い。
この人、まさか。
「息子が世話になった。ありがとう。」
不意に言われ、雪子はまた、小さく頭を下げる。
「あっ、いえ……。こちらこそ、お世話になりっぱなしで。」
「少し早いけれど、部屋へ案内してくれ。君から少し、話を聞きたい。」
友樹は微笑みながら、雪子へ告げる。
有無を言わさぬその口調に、黙って会釈をする。
「お部屋の準備はできております。こちらへどうぞ。」
これもまた、長年続けてきた所作。雪子は動揺は微塵も見せず、館内を移動し始めた。
部屋についた後、友樹と雪子は広い座敷で向かい合って座る。
「お茶をお淹れしますね。」
雪子は、各部屋に備え付けているポットとお茶セットを使い二人分の煎茶を入れる。
友樹は何も言わずに眺めていて、ただ茶器を扱う音だけが静かに響く。
「どうぞ。粗茶ではありますが。」
ことり。
「有田焼、かな。」
「は、い?」
「釜木窯。最近若者向けに色々な商品を開発している、新進気鋭の窯元のものだね。」
友樹の視線は、急須と茶碗に向けられていた。
「いい選択だ。」
「ありがとうございます。」
雪子は頭を下げた。
最近客室向けの茶器をリニューアルしたばかりだった。
茶器のチョイスは、雪子がしたものだ。
急に言われて、目を瞬かせる。
「さて、……ここからが本題だ。」
友樹は静かに切り出した。
「十二月十六日。ヘリの音はしていたかな?」
「……していました。複数、だったと思います。」
雪子は頭の中で言うことを整理した。
「高世界航空。ユグドラシルグループ傘下だ。」
「え?」
友樹から出てきた言葉に戸惑い、思わず声が漏れる。
「それは、どういう?」
「彼らは今も、人為的ペルソナ発現の研究を続けている。」
「……は?」
湯呑みを握る雪子の手が、わずかに震えた。
人為的ペルソナ発現。
そんな事ができるのか?友人たちから聞いた、自分の時の状況を思い起こす。
テレビの世界で、あの大きい城を形作って、その中で王子様から連れ出してほしいと泣きわめく自分。自分で勝手に鳥かごを作って、その中から出られなかった自分。
ちくり、と心に何かが刺さる。
それを、人の手で?
「そんな……ことが?」
やっとのことで言葉を返した瞬間。
『雪子!』
『ユキチャーン!大丈夫クマ?』
壁を抜け、スズカゴンゲンとカムイが現れる。ふたりとも心配そうに雪子を見、そして友樹へあからさまに敵意を向けていた。
「あっ、待っ、」
慌てて立ちかけた雪子を制し、友樹はスズカゴンゲンとカムイへ視線を向ける。
「安心していい。敵ではない。」
『敵じゃないって、じゃあ、何なの?』
スズカゴンゲンは雪子の後ろに回りつつ、明らかに不審げな目線を投げつけていた。
雪子はその様子を見、ある確信を得る。
友樹は苦笑した。
「……さて、あと一つだけ聞こうか。」
湯呑みを置き、友樹は静かに言った。
「花村君を攫った存在は……人間じゃなかったんだね?」
「!」
雪子とスズカゴンゲン、カムイは顔を見合わせた。
◇◇◇
同じ頃。
「なるほどな。」
堂島家で話を聞き終え、雅也が頷く。
「ビヤーキー……ハスターに連なる銀河の駿馬。そんな恐ろしいやつが動いてるのか」
だるいなあ、と呟きながら少しだけ、思考を整理する。
「知ってるの?」
悠の問いに、雅也は一つ頷いた。
「まあ、色々とな。」
「色々、」
「俺が追っかけていたのはユグドラシル製薬という。いわゆる医療系ユニコーン企業と言われてるやつ。その内部に、浜中清次。もう一人、正体不明の魔術師がいる。」
魔術師、という言葉に、完二、りせ、直斗が眉根を寄せる。
雅也は持ってきたブリーフケースを引き寄せ、中からいくつか資料を出した。
あちこち黒塗りはされているが、何かの調査報告書であることは明白だった。
そして、紙の上の方、書類種別には『厳秘』『プリントアウト禁止』という文字で書類の格を主張している。
「そいつが……。」
紙を射抜く勢いで睨みつつ、悠が呟く。
「ああ。花村君を攫った存在を使った可能性が高い。」
雅也の言葉を聞きつつ堂島は腕を組んだ。
「ふむ、……随分物騒な紙持ってきやがって。知らんぞ俺は。」
はあ、とこぼしたため息は、雅也に無視された。
「追っている途中に壁があった、と言ったな。ペルソナがあると通れない壁だ。あいつら、研究成果をさっそく活かしてるんだな。……やっかいな。」
雅也は息をつく。
「だが、ペルソナを持たない人間なら?」
その視線を堂島に向けた。
「タクシーが普通に通っていったんなら、ワンチャン?」
「……俺が行こう。」
堂島は微笑んだ。
「今度は、俺を信じてくれ。」
雅也はうん、と頷く。
「本当はもう一人いるはずだったんだけど、あてが外れてさ。危険な任務になるけど……遼太郎さんなら大丈夫さ。多分。」
雅也は軽口を叩きながら、持ってきた端末を操作する。
ポータブルプロジェクターで投影されたのは、新羅が持ってきた絵そのままの外観を持つ建物だった。
「こいつの場所は分かってる。地図は転送するから、後で見て。」
「分かった。」
「今日はゆっくりして、全員体力をなるべく温存、あるいは回復させること。明日は本当、何が起こるかわからないからね。」
雅也は言いつつ、自分の甥の横に座る。
「雅也、さん……」
「凹んでる暇はないぞ。許せない気持ちは明日、相手にぶっこんでやれ。」
雅也は悠の背中を叩いた。
◇◇◇
天城屋の露天風呂。二人の男が肩を並べて露天風呂に浸かっている。
今まで過酷な場所に身を置いていたともとれる、体に残る傷あと。そして、その無骨さに似つかわしくない、一枚の羽のあざ。場所は違えど、その意匠は二人とも同一のものだ。
夜空を見上げ、雅也が言う。
「兄貴、明日七時集合だってさ。」
「分かった。」
友樹は短く答えると、湯の暖かさにただ、深呼吸をする。湯気には温泉特有のにおいが混じっていて心地よい。
「ここの朝飯、喰いたかったなあ。晩飯美味かったし。」
口を尖らせる雅也。
「遊びに来てるわけじゃないんだぞ。」
たしなめつつ、友樹は竹垣の向こうに気配を察知する。
「……そこにいるんだろう?」
姿を現したイザナギを、友樹は目を細めて見上げた。
『正体を明かせ。』
抑揚のない声でイザナギは二人を見下ろす。雅也は肩を竦めた。
「父親はエルゴ研にいた。あの人は事故で死んだ。その時、黄昏の羽根が体に入った。」
友樹が続ける。
「……俺たちはペルソナ使いだ。」
イザナギは沈黙し、やがて頷いた。
『今は伝えない。』
「それでいい。」
湯に浸かる二人が身動ぎすると、水面に波が立つ。
「明日はお前たちが鍵になる。」
イザナギはそんな二人を一瞥し、姿を消した。
◇◇◇
日付:12月20日土曜日
目が覚める。
白い天井。点滴。
花村陽介は周囲を見渡し舌打ちすると、針を抜いた。
『……ムカつく。』
体を起こして風を操り、ダクトを見上げる。
ふわりとその体を持ち上げ、ダクトのカバーを外してその中に潜り込んだ。
『待ってろよ、相棒。』
その頃、瀬文はタロットを閉じ、微笑んだ。
「本当に期待を裏切らない。」
塔の正位置。
「今日は、たっぷり遊ぼうね。」
7話です。
あとがきはpixivにはない機能なので、ここでしかしない話をしたりしなかったり。
ちなみに今回は、息子の窮地に父と叔父がでてくるぞ気をつけろの回です。
書いた当時(12年前ぐらい)は「おもれー家族だな」という感じでしたが、今考えるとグッジョブだな私と思います(自画自賛)
それではまた次回お会いしましょう。