息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
※元々は、8話と9話で1つの章として掲載してましたが、一万字って長いじゃん…?
日付:12月20日土曜日
富士山の裾野にある樹海に作られた一本の林道。
堂島遼太郎が運転していた車と鳴上雅也が運転していた車から、特捜隊一行が降りてくる。
鳴上友樹は真剣な表情で、空を見上げた。
「流石にここまでの年月を重ねれば、こんなものも構築できるのか」
「雪子、解りそう?」
里中千枝の問いに、天城雪子はアマテラスと顔を見合わせた。
「結界というのは間違いないわ。……この広いエリアに、魔法陣が展開されている」
「魔法陣?」
鳴上悠の問いに、雪子は頷く。
「魔法陣は本来、悪魔や神を呼び出した時に自分を守るための結界とするもの。それを応用して、ペルソナ及びペルソナ使いから守るための結界を張っている」
「なるほど」
鳴上がそっと手をかざすと、透明な壁に当たる。
「この中に、陽介と南原が……囚われているんだな」
「で、俺はどうしたらいいんだ?」
堂島が悠の隣で同じように手をかざしたが、悠より明らかに先まで手が伸びている。
「今のところ、俺はここは問題なく通れるようだが」
『結界の要の一つを破壊して弱める。後はなんとかなるんじゃないかしら』
首をかしげ、アマテラスは肩を竦めた。
「どこにあるかは、カンゼオンとカムイでなんとか探してもらうしかないけれど」
アマテラスがカンゼオンとカムイへとチラリと視線を向けると、二人は難しい顔をしながらじっと虚空を睨んでいる。
「んー、スッゴい解りづらい! でも、多分一番近そうなのはあっちに二、三百メートルってところじゃない?」
りせは指しながら肩を落とした。
「ごめんね、まるで、すりガラスから景色を見てるみたいで、しっかり分からないの」
コンコン、とノックするように壁を叩くりせの肩を軽く叩くと、堂島は笑みを浮かべる。
「大丈夫。俺はとにかくあっちに行けばいいんだな? 取り敢えず様子だけでも見てくるさ」
堂島が道を歩くと、障害もなく先へと進んだ。
堂島はりせが指し示した方向にある藪を分け入りやがて姿が見えなくなる。
「遼太郎さん大丈夫かなぁ……」
自称特別捜査隊から一歩離れた所で様子を見守っていた雅也は呟く。
「今は信じるしかないだろう」
友樹は自分の息子を眺めつつ、ため息をついた。
◇◇◇
スサノオが花村陽介の体を使ってダクトからの排出口から這い出るように外へ出た時、空はすでに明るくなっていた。
無理をして建物から脱出したからか、ひどい頭痛と目眩でゆらりと体がバランスを崩しかける。
「よくあそこから出られたね?」
その言葉にスサノオが振り返ると、赤い髪の青年が白衣のまま研究所の正面玄関の階段に座っていた。
『……てめえは……誰だ?』
「僕の名は瀬文。覚えておいてくれると嬉しいな、花村陽介君。いや、スサノオ、かな?」
瀬文は笑顔で答え、スサノオは、瀬文を睨みつける。
『どうして、こんな、ことを……!』
「僕はね、君達『人間』が大好きなんだよ」
『どういう』
「ようやっとできた、『成功例』だからね?」
瀬文はくすくす笑った。
「分かんないかな?」
首を傾げるスサノオの様子を見て取った瀬文はその目を閉じる。
「他の世界、他の星で色んなモノを作ってきたんだ。その中で、ようやっと君達は僕と一番近しいモノになりうる存在になったんだよ」
『瀬文、って言ったな。てめえの言い草はまるで、自分が神か何かと勘違いしてるようにしかきこえねえんだけど?』
スサノオは、半ば呆れ顔で瀬文を眺めた。
「いやいや、僕はただの観測者で、研究者。でも……君たちがもし、僕らと同じ高みにまで『深化』できるというならば、見てみたいというのが心情じゃないか」
『観測者で、研究者って、……どういう?』
スサノオの問いに、瀬文がゆっくりと目を開ける。
その瞳は普通の人間のそれではなく、漆黒の球体と化していた。
それと同時に瀬文の周りを黒い気が取り巻き、スサノオはその魔力の圧の息苦しさから逃れようと数歩後ずさる。
「もうすぐ魔女の眷属が暴走する。それを止められれば君達の勝ち。止められなければ、人類はそこまでだった、って諦めるさ。また作ればいいんだから」
瀬文は肩を大仰に竦めてみせた。
「せいぜいがんばってよ」
『やっと本性を見せたな』
スサノオはその瞳を金色に輝かせる。
「そこまでだ、瀬文」
その言葉に、スサノオはハッとして声の方向へ視線を動かした。
正面玄関を出た所で、大型の拳銃を構える若い男が居る。
その銃口は確かに瀬文へと向けられていた。
「今の話、全て聞かせてもらった。もちろん警備隊長もこの話をすべて聞いている。今の発言は、俺達への裏切りととっても問題はないな?」
『よせ、すぐに逃げろ!』
スサノオが叫ぶ。
「うるさいなあ、今喋ってるんだけど。邪魔しないでよ」
瀬文が何かを呟き指を弾くと、若い男の頭が風船のようにはじけ飛んだ。
呆然とするスサノオの前で赤い飛沫が発散し、数滴の血がスサノオの頬を汚す。
『どうしてだ。……どうして殺した!』
「ペルソナも出せない人間はただの失敗例。そこらの草木や虫けらと同じだよ。……君達だって、周りを飛んでうるさい蚊やハエは殺すだろう?」
瀬文は鷹揚に言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「僕自身はこれ以上は手は出さないよ。せいぜい頑張って。……邪魔はするけどね?」
瀬文を取り巻く黒い魔力が形を結び、見覚えがある馬の頭を持つ異形が現れる。
『何だ?』
瀬文の傍らに寄り添うように立つ異形……ビヤーキーが瀬文を見下ろした。
「結界内に人間が侵入した。そいつは結界を破壊しようとしているようだ」
その言葉に、スサノオは目を見開く。
「そいつを殺せ。首を掻き切って持ってこい」
『了解した』
瀬文がビヤーキーと軽くキスを交わすと、ビヤーキーが漆黒の霧に覆われた。
「じゃ、ね。せいぜい僕を楽しませてよ」
瀬文はいうと、踵を返すと建物の中に入っていく。
ビヤーキーが飛び去り瀬文が去った後、スサノオは目を閉じた。
(切替えだ。早く起きろ! 『陽介』!)
花村の周りにごう、と翡翠色を帯びた風が巻く。
ゆっくりと彼が目を開けば、栗色の瞳に戻っていた。
「体が、重い!」
ぼそ、花村は呟く。
(粗方聞いてたな?)
脳内で響く声に花村は無言で頷いた。
「多分、堂島さんがヤバイ。どのあたりにいるか解るか?」
(あの人は例のペンダントを持ってるだろ。あれを追えば……!)
スサノオは花村の周りに風を纏わせながら力を増していく。
「分かってる。アイツはもう行ったんだろ、早くしねえと手遅れになる」
花村はふわり、と体を浮かせるとまっすぐに翔んだ。
◇◇◇
ガサガサ、と藪を払いながら進むこと数十メートル。
堂島は深く息を吐いた。
「認めたくはねえが、俺も鈍ったか?」
声に出し苦笑いすると、状況を思い返す。
どういう仕掛けになっているかは分からないが、悠たちはおろか、義理の兄さんたちも見えない壁によって先に進めないらしい。
通れるのは自分だけ。
しかも結界とやらをつくるものを破壊しなければならない。
「三年前も、悠は俺に全てを告白してくれたのに、俺が信じてやれなかった。俺も、まだ信じがたいが菜々子のため、友人のために命をかけてるんだ、俺がやらなければ」
自分に言い聞かせるように呟いた瞬間、彼の何かが危険を知らせる。
それと同時に堂島は隣の藪へと体を強引に突っ込んだ。
あちこちに切り傷を作りつつ首を回しそれまでいた場所を見れば、何かの力で藪が全て薙ぎ払われている。
『どうした、人間』
耳障りな高い声が聞こえた。
『邪魔な藪は取り払ってやったぞ。結界を破壊するのだろう?』
堂島は眉をひそめながら、持ち出してきたP230JPの銃口を下に向けつつセーフティーを外す。
(もう撃つことはない、と思っていたんだが)
P230JPは、稲羽署では彼だけが支給を許可されている自動拳銃である。
それは、彼がかつて警視庁刑事部の機動捜査隊に所属していた名残でもあった。
『出てこない、というなら、こちらから行っても構わんのだが?』
声の主は、ざ、と一歩、また一歩とゆっくりと歩行音と共に近づいてくる。
(こいつの有効射程距離は五十メートル。……装弾数は八。予備パックは持ってきているが……)
銃弾の再装填が済むまで待ってくれる訳もないだろう。
『さて、どこにいるかな?』
笑いを含んだ声でゆっくりと、しかし一歩ずつ自分へ近づいてくるのは解る。
堂島は腹をくくり、深く息を吐いた。
『ガルダイン』
頭上から声が聞こえ、堂島は弾かれたように上を見た。
竜巻、というにはあまりに強すぎる疾風に思わず目を閉じる。
『存外に早かったな?』
声の主は、楽しげに笑った。
「リターンマッチだ。分かってんだろうな?」
怒りを殺した声は、堂島には聞き覚えがある。
(花村君か!)
『残念だったな、貴様の力では我を倒すことはかなわぬぞ』
「やってみなきゃわかんねえだろ? 馬野郎」
花村は言うと、その瞳に怒りを浮かべた。
『なら、少し遊んでやるか。あれは直ぐにでも殺れるからな』
ヒヒ、とそれは笑うと、翼をはためかせ空へ浮上する。
「後で後悔するなよ?」
花村は口角をあげた。
堂島は藪から這い出した。
もう一度見上げると、頭上では馬の頭を持つ異形の生物が花村と空中で対峙していた。
堂島はそのまま薙ぎ払われた藪を走る。
が、その先にあるものを見て立ちすくんだ。
脳が、理解を拒否する。
周りの風景が歪み急速に見える範囲が狭まる。
眼の前の全ての画像が記号となり滑っていく。
聞こえる音が全てノイズとなって意識を削る。
チリ。指先に明らかに熱を感じた。
「熱っ」
その瞬間、何事もなかったかのように思考が回るようになる。
気づけば風景も元通りだ。
熱を感じた手をみれば、そこには指輪がはまっている。
息が浅い。一度胸を叩き、強制的に息を深く吸い込む。
「それより、こいつはなんだ?」
木に、何かが打ち付けられていた。
頭から足先まで何かの模様が書かれた布で覆った人型のもの。
頭は銀色に光る金属の棒で打ち抜かれ、体はだらりとぶら下がっていた。
金属の棒は木の反対側へ突き抜ける長さで、人型のものからは低く何かの音が漏れていた。
堂島がそれに近づくと、人型のものから漏れる音をハッキリと聞き取る。
『クルシイ……ハヤク……コロシテ……』
頭に金属の棒が刺さっているのにもかかわらず、それは呪詛のように、祈りのように呟く。
「く、そ!」
堂島は震える手でその人型に銃を構え、心臓を撃ち抜いた。
心臓から赤い血液と青い謎の液体がどろりと垂れた。
それと同時に人型のものが急速に細くしぼむ。
カラン、とやけに軽い音と共に棒が抜けた。
「なんだ、……なんだって言うんだ、これは!」
震える手で堂島は金属の棒を手にとった。
「ぐぅあっ!」
避け続けていた花村が上空を取られ、叩き落とされる。
「く、っそ……!」
「花村君!」
堂島は花村に駆け寄り助け起こすと、突っ込んでくる異形に銃弾を数発打ち込んだ。
『が、ああ!』
異形が被弾した箇所をかばい、そのまま地面へ落ちる。『貴様、小賢しいものを持っているな』
「危ないから、早く逃げ……」
慌てたように言う花村を制し、堂島は金属の棒を押し付けた。
「俺は大丈夫だ。それより、何かに使えるかもしれん。君が持っていてくれ」
「はい」
異形が再び翼を広げるのを見て、花村もまた金属の棒を手にふわ、と体を浮かせる。
「堂島さんは早く、どこかに隠れていて下さい」
「解った」
堂島が花村から離れるのと同時に、花村は異形へトップスピードで突っ込んでいった。
8話です。
あとがきはpixivにはない機能なので、ここでしかしない話をしたりしなかったり。
文章を読むとわかりますが、堂島さんがSANチェックに失敗()しています。
指輪があってよかったね。
原作をプレイするに、どう見ても「現実主義のリアリスト思考」が透けてる人が魔術の痕跡を色濃くあびたらそらそうなる。仕方ないね。
それではまた次回お会いしましょう。