息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
※元々は、8話と9話で1つの章として掲載してましたが、一万字って長いじゃん…?
なので、続きのシーンが急に始まってますが仕様です。
日付:12月20日土曜日
「先輩、壁が弱まったよ!」
りせの叫びにハッとして悠は上空での花村の戦いからりせへと向く。
「ッスけど、このままじゃ、俺達やっぱり入れねーぞ?」
巽完二がぐっと見えない壁を押した。
先ほどと違い、少しやわらかくなった壁に手が押し返される。
「この程度なら、なんとかなるんじゃないかな」
雅也の言葉に、巽が雅也を見た。
「でも、どうやって?」
「兄貴と二人で、この壁に負荷をかける。その間に皆は穴を開けて中に入るんだ」
雅也は友樹を見やる。
「できるだろ、俺達なら」
「ま、そうだな」
友樹は咳払いと共に悠へ歩み寄ると、ぽんと肩を叩いた。
「悠、ちゃんと花村君と南原君、そして堂島君を連れて戻ってくるんだぞ」
「うん、父さん」
悠は一つ頷くと、自称特別捜査隊へと振り返る。
メンバーは一様に頷いた。
「じゃ、行くぞ」
雅也と友樹は自分の胸を右手で抑えると、低く呟く。
『ペルソナ!』
次の瞬間、二人の背後が青白く光り、それぞれ一対の純白の羽根を持つ天使型のペルソナが顕現した。服装の色は違えど、そのペルソナは悠にとっては見知っている存在である。
「メタトロンと……サンダルフォン……!」
「……知っていたか」
友樹はその顔に笑みを浮かべた。「時間がない、始めるぞ」
「了解だ、兄貴」
雅也と友樹は同時に手を壁に向かって伸ばす。
「うおおおおおおっ!」
メタトロンとサンダルフォンも同時に手を伸ばすと、その魔力により壁が大きくゆらぎ、ピキ、とヒビが入った。
「千枝、完二君!」
雪子の叫びに、二人はせえの、という掛け声と共にヒビへ向けてロクテンマオウとスズカゴンゲンの技を炸裂させた。
『イノセントタック!』
『ゴッドハンドぉぉぉ!』
その力に壁が大きな破裂音と共に破壊される。それと同時に自称特別捜査隊のメンバーが壁の中に入り込んだ。
悠は一度振り返る。友樹と雅也は笑った。
「早く行け。時間がない」
悠は一つ頷き、他の仲間と共に走りだす。
それを見届け、二人はペルソナを解いた。そのままその場で膝をつく。
「兄貴、……俺達もう歳だな」
「知ってた」
彼らは地面に座り直すとはは、と笑った。
◇◇◇
鳴上は花村と闘うビヤーキーを睨むと、その手に青い光を放つカードを顕現させ握りつぶした。
「ヨシツネ! アイツを止めろ!」
「ヤマトタケル!」
得物が槍から薄緑という銘の太刀に変わったイザナギがチャージをかけると太刀に淡く白い光が宿る。それを追い抜きヤマトタケルがビヤーキーに空間殺法を仕掛けた。
『チッ』
ビヤーキーが数本の切り傷から黒い血を流しながら舌打ちをする。
『くそっ、やっぱり全部は当たらない……!』
ヤマトタケルがレイピアを更に構える目の前にビヤーキーが迫った。
『舐めた真似を!』
「舐めてんのはどっちだ!」
『っ!』
ビヤーキーの動きが一瞬止まる。その背後に花村が現れ、金属の棒をその背に突き刺した。
金属の棒は紫色の光を発し、ビヤーキーが言葉にならない叫びを上げる。
『我が太刀筋、味わうがいい』
冷たく金色の光を宿したイザナギが瞬間に八条の光と共に太刀を振るった。
『ぐう、う……!』
ビヤーキーが唸り声と共にべしゃりと地面に激突し、そのまま黒い霧となって霧散する。
地面にカラン、と金属の棒が転がった。
「ざまぁ、みろ」
花村は言うと、そのままグラリとバランスを崩す。
イザナギは目を閉じた花村を受け止め、鳴上の前にそっとおろした。
「陽介」
「大丈夫だよ、鳴上君」
雪子は言うと、アマテラスに目配せする。
『メシアライザー』
アマテラスの翼から放たれた光が花村を包み、しばらくすると彼の服の破れまで修復した。
しばらくして、花村はゆっくりと目を開ける。
「陽介、陽介……!」
鳴上が花村をぎゅ、と抱きしめ名を呼ぶ。
「い、て……、悠、ちょっと、離れて、くれよ」
困ったような顔で花村が言うと、鳴上は気づいてそっと花村を離した。
『まるで嫌な夢でも見ていたかのようだぜ』
ふわ、と上からスサノオが降りてくる。
『起きたな。……体の調子はどうだ?』
「どうにも、魔力が足りないな……」
「はい、これ」
千枝がよこしたのは、ソウルフードだった。
「これ、どうしたんだ?」
「昨日、戦いの勘を取り戻すのにダンジョンに潜ってたの。ソウルフードはまだいくつもあるから大丈夫だよ。……スキルが使えるみたいだから、もしかしたら効くかもしれないなって」
千枝の言葉に花村がパクリとソウルフードを食べると、三年ぶりのなんとも懐かしい味に思わず笑みを浮かべる。そして、体の内側から霊力がが充填されるような、懐かしい感覚を味わった。
「大丈夫みたいだ。なんとか行けそうな気がする。里中、ありがとな」
「うん、それなら良かった」
千枝は笑みを浮かべる。
「なんせ、ここから働いてもらわないとまずそうだからさ」
苦笑いと共に千枝が指さした方向を見ると、何かのモーター音が近づいてくる。
『千枝! 戦車だよ??? ぶっ壊していい???』
ワクワクした顔でスズカゴンゲンが千枝と同じ方向を指さしていた。
「おーおー、『我は汝、汝は我』だなおい」
花村の言葉に、千枝はポカリと花村の頭を軽く叩くと顔を赤くしてプイと横を向く。
「ん、もう。そういうとこ、昔から変わんないね!」
「ま、な」
花村は立つと衣服の埃をパンパン、とはたいた。
「そうだ、堂島さんは?」
「俺なら、ここだ」
堂島が銃のマガジンに実弾をセットしながら声を上げる。
「もうこんなドンパチ、しねえってわざわざ八十稲羽に引っ込んだのに。……こいつに感謝する日が来るなんてな」
「叔父さん……」
鳴上の呟きを無視するように、堂島は実弾をセットし終わった拳銃にセーフティロックを掛け腰につけたホルスターにしまった。
少し硝煙の臭いがする手で鳴上の肩を叩くと、ふっ、と笑う。
「昔話は帰ってからだ。南原君を助けだすんだろ?」
「はい」
鳴上はふう、と一つ息を吐いた。
「りせ、状況は?」
「大きい車が三台、道を走ってくる。それと、森の中を歩いてくる人が右と左三人ずつ。……それと?」
りせは首を傾げる。
「どうした?」
「なにこれ? 見たことない奴が三匹ずつ。形は違うけれど、なんかさっき花村先輩が戦ってた奴と似たような感じがする」
「りせ、そいつと、森のなかを歩いてる人との位置関係は?」
鳴上の問いに、りせは眉を顰めた。
「見たことない奴は、どうやら森を歩いてる人たちに近づいてるみたい」
「時間がねえな」
りせの答えに、花村は建物の前で会った男……瀬文を思い描いてと歯噛みをする。
「里中と天城とクマは戦車と当たってくれ。直斗と完二は道の左方面、陽介は右方面の『人間じゃない何か』を最優先に倒してくれ。俺は陽介と一緒に行く。あと、人間なら話ができるだろうから、説得できるかどうか話してみてくれないか」
「了解」
「クマはユキチャンとチエチャンと一緒クマね!」
クマはニコニコしながら雪子と千枝の手を取る。
「堂島さんは、りせを守って後ろから来てください。りせは今見たとおり、状況を把握する時に無防備になるので……」
「解った」
「陽介、悪いがもう少しだけ頑張ってくれ」
鳴上の言葉に、花村は一つ頷く。
「こんなの、昔によくあったじゃねーか。今更だぜ、相棒」
「だな」
鳴上と花村は互いを見て笑った。
「じゃ、行くぞ」
鳴上の号令と共に皆が散開していくのを見ながら、堂島は目を細める。
「凄いな、一端のチームじゃないか」
「ええ」
堂島の呟きに、りせはニコ、と笑う。
「皆、お互いを信じてるからここまで出来るんですよ」
「そうか」
堂島とりせは、砂利が敷かれた道を歩き始めた。
◇◇◇
『どうしたの? ロクテンマオウ』
『なんでも、ねえよ』
ロクテンマオウは言いつつ、前方で銃が発砲された音を聞く。『こっちには、弾が飛んできてねえな?』
『うん。明らかに向こうだね。人じゃない何かに襲われて、発砲って感じかな?』
ヤマトタケルはチラリ、とロクテンマオウを見た。『ごめん、先に行く。ロクテンマオウは人間のほう頼むね』
『ああ。行って来い。ま、すぐ追いつけるようこっちもやるから』
ヤマトタケルは直斗を抱えているのにもかかわらずそのスピードをぐっと上げる。
やがて先方でギャアギャアという声と共に戦闘が始まったのを感知した。ロクテンマオウは完二を地面に下ろす。
「ロクテンマオウ、ここでだんまりはなしだぜ」
巽が戦闘が始まっている方へ歩きながら呟いた。
『分かっている。……主、『瀬文』とか言う奴の姿を見たろう?』
「ああ。スサノオから情報共有された姿だろ。見たぜ」
ロクテンマオウはやがて前方に男が一人うずくまっているのを見つける。巽は急いで彼の元に駆け寄った。
「おい、大丈夫か?!」
「ば、ばけものがっ」
巽は銃を抱え、ガタガタ震える男をなんとか立たせると、他の者が居ると思われる場所へと案内させる。一人は肩を負傷していて、もう一人は足を一部食いちぎられ悶絶していた。
「なんとか三人とも生きてたのが救いって奴か」
男たち三人を一箇所にまとめると、巽は未だに破裂音や獣が発するような叫び声が聞こえる方を見る。
『主、行くか』
「もちろんだ。早く決着を付けねえとな」
巽は男達を見下ろした。
「お前ら、絶対ここから動くんじゃねえぞ」
男達は黙って頷く。
『主、あいつら、……』
ロクテンマオウは眉を顰めた。
『この世界の生物じゃねえぞ』
「ま、大方そんなことだろうとは思ってたさ」
巽は音がする場所へと歩いて行く。
「……ロクテンマオウ」
『何だ、主よ』
「この戦いが終わったら、会いたいやつがいる。付き合えよ」
ロクテンマオウが一つため息をついた時、巽は藪の影からその姿をハッキリと視認した。
灰色がかった白い体躯は突起もなく油で光り、大きく膨らんだり小さく縮んだりしている。
目と思しきものが見つからず、鼻のように尖った場所から短い触手が蠢いていた。
『これは……?』
「ヒキガエルの親玉?」
ロクテンマオウと巽は同じように首を傾げる。
『ベツノヤツガキタ!』
筒のような何かを持っていたそれは、巽の方を見て叫んだ。
「ま、敵ってことだな。ロクテンマオウ、出し惜しみなしだぜ!」
巽はニィと笑うとグッと拳を握る。
『ジオダイン』
次の瞬間、雷撃が空気を引き裂き押し通る音が轟き、異形の者に直撃した。
『ギャ……!』
異形の者は強烈なその雷撃で声を上げる間もなく消し飛ぶ。
「あ、やりすぎたか」
巽が呟くと、茂みの奥からヤマトタケルと直斗が顔を出した。
「完二君、すみません、手間取ってしまって」
「いいってことよ、このくらい」
済まなそうに肩をすくめる直斗の頭を巽は軽く撫でてやる。
「こんなの一人で三つも相手にできねーよ」
「そ、そういや、……今のこれ、何だったんでしょう?」
直斗が顔を赤くしながらヤマトタケルへと振り返った。
『ムーンビースト、ってイザナギが言ってる』
ヤマトタケルの言葉に、ふうん、と二人は答える。
「よく、分かりませんね」
「例の馬頭の化け物と同類ってことだろ?」
二人は互いを見合わせ、少し笑った。
「保護した人たちの元へ行きましょう。色々聞かなければならないことが有りますから」
「ああ、そうだな」
二人はペルソナ達がかき分ける藪を歩いて男達の元へと歩いて行った。
◇◇◇
「粗方終わったみたいです。来ていい、って先輩が言ってます」
りせの言葉に半信半疑で歩いてきた堂島は、その状況を見て目を見張った。
八輪の装甲車は一台が大破、二台が氷漬けになっていて、中に乗っていたであろう男達が戦意を喪失してその場に佇んでいる。道の左右から三人ずつ男達を伴って鳴上と花村、巽と直斗が歩いてきていた。
「クマ、派手にやったなぁ……! あと、これ壊れてるの里中だろ」
花村の言葉に千枝がぶんむくれになる。スズカゴンゲンは千枝の上でもっとやりたかった、とやはり不満気な顔をしていた。
「クマもがんばったクマ!」
クマが胸を張る。一方、鳴上とイザナギは少し浮かない顔をしていた。
「どうした、悠?」
堂島が声を掛けると、鳴上は堂島へと視線を向ける。
「霧が、出てきましたね」
その言葉に、堂島は周りを見回した。
「そう、いえば……」
太陽の光がうっすらと隠れ、周りも少し空気が冷気と共に白くなりかけている。
「クマ、堂島さんにメガネ作れないか?」
鳴上の言葉に、雪子は懐に閉まっていたメガネを掛けた。
「あっ、……。確かに」
他の自称特別捜査隊メンバーもメガネをかけ、動揺で声を漏らす。
「これじゃ、……三年前のあの時と同じだ」
巽の呟きに、クマはゴソゴソと何かを探していたがやがてほい、と黒いフレームのシンプルなスクエアタイプのメガネを取り出した。
「センセイのメガネのスペアを作ったついでに多く作っておいたクマよ! 役に立つとは思わんかったけどー」
堂島はクマからメガネを受け取り、かけると驚きで息を漏らす。
「これは……、霧が見えなくなるのか」
「普通の霧ではなく、三年前の八十稲羽に出ていたような霧に有効なものなんです」
堂島は、鳴上の説明にはあ、と呟いた。
「つまり、今は異常な状況だ、っていうんだな」
「はい」
鳴上は男性達を見る。
「あと、この人達から大体の話を聞くことが出来ました。また、彼らの上司とも交信することが出来ました。……上司の方は、俺達に協力する、と言ってきています」
「信じられるのか?」
堂島の問いに、鳴上は苦笑いした。
「上司の方……井本さん、と名乗っていましたが、特に言っていることに齟齬はなさそうでした。それに、この人達も井本さんは信頼に足る人物だ、と言っていましたので」
「なるほど、な。……じゃ、そうなんだろう」
堂島は肩をすくめる。
「すまんな、職業柄、そういうことはしっかり裏を取る癖があってなあ」
「いえ、堂島さんが仰ったことが普通なんだと思います」
鳴上は道の先を睨んだ。
「早く行きましょう。彼らはここで待機、と井本さんが指示をされていました。そして、陽介の話が本当だとするなら、南原を救うために少し急がなければならない」
一同は鳴上を見て頷き、それぞれのペルソナに抱えられる。堂島はロクテンマオウが抱え込んだ。彼らはふわりと浮かぶと、車より少しスピードを早めて道の先にあるであろう研究所へと飛んだ。
9話です。
あとがきはpixivにはない機能なので、ここでしかしない話をしたりしなかったり。
この章、pixivでは「第7話後編」にあたります。
花村一人ではスピードと火力で叶わなかった強化型ビヤーキーを、もう一人のスピードスター「ヤマトタケル」と最大火力の鳴上のスキルで仕留めたりしています。
たぶん、強い方のボスシャドウと同じイメージなんでしょう。おそらく。
そろそろ驚かなくなってきたな堂島さん。ようこそこちら側へ。
それではまた次回お会いしましょう。