息をするように主人公と花村くんがお付き合いしています。
※P4だけじゃなくP3成分も入ってきてます。
なおこの小説を書いたときはまだP5発売されておりません。こわい
※Pixiv二掲載していたものをハーメルンに投稿するのにあたり、一部改稿しています。
※クトゥルフ神話成分がしみしみですよろしくお願いいたします。
※ちょっと痛そうな表現ありますが、タグはこれで大丈夫なはず!だめだったら言って…
※ボーイズラブタグが有効になりました。編集するのはそろそろやめようと思うので、OKな人はぜひ引き続きどうぞ。
日付:12月20日土曜日
数分の後、自称特別捜査隊と堂島遼太郎は見覚えがある建物を発見して近くに降り立った。
「近くに来ましたが、霧があの建物から出ている感じ、ですね……?」
白鐘直斗が眼鏡のズレを直しつつ呟くと、全員は一つ頭を縦に振る。
『この嫌な感じ。……まるで、イザナミを倒しに行くときの感覚じゃねーか』
ロクテンマオウはサーチを続けるカンゼオンとカムイを見やった。『そこんとこ、どうなってんだ?』
「この地下に、凄い力を持った奴が居るクマよ!」
クマが厳しそうな顔で言ったが、元がジュネスのマスコットができるくらいのカラフルで丸い出で立ちなのであまり緊迫感は伝わってこない。
「この感覚……嫌だ」
久慈川りせが震えながら呟く。
「全てを無に帰す力、全てを飲み込み、漆黒に染めるモノ。……アメノサギリより、イザナギよりもっと大きな力が生まれようとしてる。早くしないと、手遅れになっちゃう!」
「南原か……」
鳴上悠は口に出し、一つ深呼吸をした。「行くぞ、皆。もう時間がない」
「みんなは早く行って! ナビはあたしとクマでなんとかするから!」
りせの声に、皆は一斉に研究所へ走りだした。
一番後ろを走るりせは、目を細めて右手を見る。
中指に嵌っているリングが、少し細くなっていた。
(やっぱり……。時間が、もうないんだ……)
目頭が熱くなるのをこらえるりせの左肩に優しく手が置かれる。
りせが左上を見ると、カンゼオンがふわりと微笑んでいた。
◇◇◇
「井本クン、何してるの?」
瀬文は赤い髪を弄りながら作戦司令室に入ってきた。
井本は各モニターで状況を見ている井本に声をかける。
「俺は今忙しいんだ。瀬文、邪魔をするな」
井本はモニターから目を離さずに答えた。
「忙しい、ねえ?」
瀬文は井本越しにモニターを眺めると、自称特別捜査隊と堂島の姿を正面玄関のセキュリティカメラが映した瞬間砂嵐に切り替わる。それと同時にセキュリティシステムがハッキング警告を表示し、次々にモニターが砂嵐となった後、全てのセキュリティのランプが消灯した。「何にも映ってないみたいだけど?」
その時、作戦司令室の扉が開き、浜中が走りこんでくる。
「おい、全てのシステムがコントロール不能になってるぞ! なんとかしろ、このままじゃ研究が進められん!」
怒り心頭のまま叫ぶ浜中を眺め、瀬文はため息をつく。
「君達ペルソナも出せない人間は、どうしてこう無能ばっかりなんだろうね」
「なんだと! もう一度言ってみろ!」
浜中が瀬文の胸ぐらを掴んだ。「研究を進めろ、って言ったのはお前だろ! それをなんだ! 貴様は得体のしれない男を地下に監禁して、やっと手に入れたサンプルには逃げられて!」
「離してよ、浜中クン。なんだっけ、『幾月とは違う』んでしょ?」
瀬文が興味なさそうに息を吐く。「それとも何? そんなことまでボクにやらせるの?」
「……浜中さん、すぐその手を離した方がいい。死にたくなければ」
井本が傍らに置いておいたポータブルプレイヤーを手に取り、座っていた椅子をくる、と反転させて浜中と瀬文へと振り返った。
「どういう意味だ井本!」
浜中が叫ぶ。井本は、黙ってポータブルプレイヤーを起動させた。
ゆらり、と翡翠色の光に包まれた男と、瀬文が対峙している。
瀬文は肩を大仰に竦めてみせた。
男はその瞳を金色に輝かせる。
その時、瀬文の後ろで私設警備担当の男が、大型の拳銃を構えた。
男が何かを叫ぶ。瀬文は面倒くさそうに一瞥し、指を弾くと私設警備担当の男の頭がパン、とはじけ飛んだ。
男が瀬文を睨みながら何かを叫んでいる姿を見ながら、瀬文は座っていた階段からゆっくりと立つ。
「ああ、取ってあったんだー。それ」
瀬文は愉しそうに呟いた。「ボクかっこよく映ってるみたいでよかったー」
浜中は、瀬文からゆっくりと震えながら手を離す。
「これは何だ?」
浜中が、震える声で呟く。「瀬文、お前は、本当に、何者だ?」
「この研究所の副長だよ?」
瀬文はニイ、と嗤った。「知ってるでしょ? 研究セクション長の浜中クンと、警備隊長の井本クン」
井本は表情を変えずにただ瀬文と浜中を眺めている。
「しかし、お前は俺達には危害を加えないといっただろ……!」
浜中の必死な問いに、瀬文はまたため息をついた。
「味方だもんね、危害は加えないとは言ったよ」
瀬文は目を閉じる。「でも、『ボクが君達に向けて害をなそうとしなくても、たまたまそこに君達がいるだけで死んでしまう』ってことはあるんだよね」
瀬文が浜中の前にある椅子を指さすと、椅子がボン、と破裂した。
「ヒッ」
浜中がその場に尻もちをつく。破片が刺さり左腕から血が流れているが、気づかず震えていた。
「気をつけなよ? いつどこで何が起こるか分からないから」
浜中は瀬文の言葉にぽかんと呆けた顔を見せる。
瀬文はそんな浜中を邪魔、と呟きながら蹴ってどかし、椅子の一つに座って井本と向き合った。
「で、井本クンは心の準備はできてんの?」
瀬文はニヤニヤしながら井本の目を見る。
井本は愛用する濃い色のサングラスを掛け、様子を見ることは出来なかった。
「……何をだ?」
井本は表情を変えずに聞き返す。
瀬文は満面の笑みを浮かべた。
「この星の終わりに立ち会う覚悟、だよ」
楽しみだなぁ、とうっとりしながら瀬文は呟いた。
◇◇◇
「あの、鳴上さん達ですね」
研究所のセキュリティシステムをヤマトタケルが沈黙させたのがつい先程。
研究所の前に居た警備員が頭を下げたのを見て、鳴上も釣られて頭を下げていた。
「は、はい」
「井本隊長は居られませんが、こちらで出来る限りの資料を用意させていただきました」
彼が差し出した見取り図には、地上三階分の見取り図が掲載されている。
「待ってくれ、地下にはどうやって行くんだ」
花村の問いに、警備員は済まなそうに頭を下げた。
「エレベーターが幾つかあります。その内のどれかがつながるはずですが……申し訳ありません、俺では開示レベルが足りなくて……」
「いえ、これがあれば、見当もつくでしょうし」
直斗がフォローを入れた次の瞬間、建物の中で爆発音と、銃声が聞こえた。
「中では何が起こってんだ!」
巽の問いに、警備員は言いづらそうに目を伏せる。
「白い霧が立ち込めていて、中はよく見えなくて、その影から現れた化け物と現在俺達が交戦中です」
巽はチッ、と舌打ちをした。
「化け物は我々が対応します。皆さんは、このIDカードを持って行って下さい」
警備員が差し出したカードには数字8桁がサインペンで書かれていて、ローマ字で『IMOTO』とプリントされている。
「これは、井本さんの、IDカードですか」
直斗はIDカードを受け取り、背負った小さめのボディバッグにしまい込んだ。
「みなさんは、ここを脱出しないのですか?」
直斗の問いに、警備員は苦笑いを浮かべる。
「隊長は、十分ほど前に我々にこの建物を放棄、各自脱出撤退を指示されました。が、それでは隊長を残していくことになる。隊長はまだ、中に残っているんです。やることがあるから、と」
「やること?」
鳴上はくびをかしげた。
「みなさんの邪魔をさせないように、なるべく長く瀬文副所長を引き止める、と言っていました」
「なるほど。……分かりました」
鳴上は一つ息を吐く。
「直斗、ヤマトタケルにここのすべてのシステムを調べさせて地下へのルートを割り出せ。りせとクマは直斗と連携しながらルートの調査と、建物の状況のモニタリング。天城と里中、完二は一階のルートの確保、陽介はもう一度ダクトのルートを調べてりせと連携しろ。俺は堂島さんを守りながら天城達と一緒に行く」
「俺も一緒に行く」
花村は鳴上をじっと見る。
「ここまで来て、後方支援なんていうなよ?」
「……解った。直斗とクマはすまん、りせを守ってやってくれ」
「はい。承知しました」
「任せるクマ!」
鳴上が諦めたように言うと、直斗とクマは笑って頷いた。
「じゃ、行くぞ」
鳴上の号令に、巽完二と里中千枝、天城雪子が目くばせをして走りだす。
他の者もそれに続き、最後にりせが笑みを浮かべながら手を振りつつ通過した。
警備員は、それを敬礼で見送る。
「……ご武運を」
警備員は呟き、研究所の中に戻っていった。
◇◇◇
「お前らまとめてあたしが相手だぁ!」
「先輩、俺のも残しといてくださいよぉ!」
「燃え散れ!」
千枝と巽がゾンビと化した研究者達を蹴散らしながら道を開く。スズカゴンゲンが警備員を襲っていたムーンビーストを蹴り飛ばし、アマテラスが炎で焼きつくす。
「お前ら派手にスキル使ってっけど平気か??」
花村の問いに、天城雪子は笑みと共に頷いた。
「あのね、花村君。実はソウルフード、うちの温泉まんじゅうとほぼ同じものだったの」
「え?」
花村は思わず真顔になり、雪子ははは、と笑う。
「あの時気づいていれば、もうちょっと皆を助けられたのにね。……今頃、って感じで本当申し訳ないのだけれど」
「いや、天城は悪くねーし?」
花村もまたゾンビを疾風で切り裂きながら笑い返した。
「しかしソウルフード、ね。……よくできてんな、イザナミのあのシステム」
「そうね。私もそう思う」
雪子はゾンビを焼き払う。
「今日はね、うちのおまんじゅうのストックを黙って持って来ちゃった」
花村は、はは、と乾いた笑いを漏らした。
「そりゃまた、……黙って持ってきて良かったのか?」
「有事ですもの、このくらい。後で私が謝れば済む話だし」
「天城がそれでよければいいけどよ」
花村は千枝が飛ばしたゾンビをガルーラで吹き飛ばしながら肩を竦める。
『みんなー! やっと地下に続くエレベーター特定できたよ!』
りせの声に、花村と雪子は右手を右耳に添えた。
『どのエレベーターだ?!』
鳴上の問いに、皆の頭の中に地図が転送される。
それは、一階の一番奥にある、貨物用エレベーターであった。
「ここ、さっき通り過ぎたじゃねえか!」
花村が突っ込みを入れる。
「戻らねえと……」
「過ぎてないよ!」
りせの声が聞こえ、花村は振り返った。
「でも、俺達もう一度一番奥に行って……」
「ううん、この霧に惑わされちゃダメだよ。まだ、行ってないエリアがあるの。そこまでルート見えたから、もう大丈夫」
りせは力強く頷き、傍らにいるカンゼオンに目配せする。
カンゼオンが祝詞と共に手を差し伸べると、床に光るラインが現れた。それは通路の途中で壁へと折れている。
「おいりせ、あれって壁じゃねーか?」
「隠し通路、ってやつ。魔術的に壁と認識させられてるだけだよ」
巽の問いに、りせは強い口調で主張した。
「りせが言うなら、それが正解だろう。このラインに沿って最短ルートを通ろう」
眼鏡のズレを直しながら、鳴上は前を向く。
「りせ、負担をかけるが引き続きナビを頼むぞ」
「もちろん任せて! 悠先輩!」
「じゃあ」
花村は呟きつつ、りせが解析したルートへと体を翻した。
(陽介! 下だ!)
次の瞬間、花村の頭の中でスサノオが叫ぶ。
「は?!」
花村が反射的に床を見た瞬間、その異変は起きた。
床を突き破って、触手のようなものが数本現れる。
「何あれ?!」
巽と千枝が棒立ちになる。
その隙に触手は素早く堂島と花村の足に絡みついた。
「うぉっ!」
二人はズルズルと足を取られたまま引きずられる。
「陽介! 叔父さん!」
我に返った鳴上が伸ばされた花村の手を取った。
(主、このままじゃ共に引きずられる!)
イザナギの悲鳴じみた声が頭に反射する。
「イザナギは叔父さんを頼む!」
ぎり、と音がでそうな勢いで歯を食いしばり、イザナギは堂島を守る蒼の壁を展開し、堂島と共に触手が穿った穴へ潜っていく。
「悠、手を離せ!」
花村が触手に引きずられながら叫ぶも、鳴上は花村を守るよう抱きしめた。
「放すか、この手を!」
「悠、お前がやばいだろ!」
花村が鳴上を道連れにするように穴に落ちる。
「……っ、先輩!」
「鳴上君!」
呆然とその様子を見ていた直斗と雪子が我に返り、叫んで穴に駆け寄る。
スサノオは一つ舌打ちをすると、緑の壁を花村と鳴上に展開した。
花村と鳴上に緑色の結界が張られたのを確認するように穴を覗き込み、スサノオは肩を竦める。
『やれやれ、俺は陽介のところへ行くから皆は後からりせのルートで追ってきてくれ』
『ボクも行ったほうが良くない?』
心配そうにヤマトタケルがスサノオの裾を掴んだ。
スサノオは苦笑いと共にヤマトタケルの手を離す。
『そりゃ来てくれたほうがいいけどよ。ロクテンマオウと一緒に皆を守ってやってくれよ』
『スサノオ、いいの?』
『いいってことよ。鳴上がやらかしてくれた以上、俺はあいつらを守ってやらねーとな』
スサノオは言い、触手が開けた穴へとダイブした。
『スサノオ、イザナギ……無事で居てね』
ロクテンマオウはヤマトタケルの頭を撫でながら、スサノオを見送る。
「じゃ、行きますか。俺らも早く追いつかねーと、な!」
巽が大きな声で言い、頭を掻きながらカンゼオンが指示したルートへ向いた。
他のメンバーはその声につられ、巽の後を追う。
アマテラスは穴を覗き見て、雪子の元へと飛んでいった。
10話です。
あとがきはpixivにはない機能なので、ここでしかしない話をしたりしなかったり。
瀬文が他の人達から畏怖の眼で見られる回。
早く気付けや。
そして文章書き最大の試練「パーティー分断」がやってきました。
どうしてこんなことしたの昔の自分よ。
それではまた次回お会いしましょう。