魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~   作:Sady

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いやぁひっさしぶりの投稿です。
失踪したと思いました? 残念!←
まぁ12月だけあって忙しかったけど一段落ついたのでまた執筆作業に戻った訳です。

今回は番外編で、まぁ読まなくても一応大丈夫です。
読んだ方が本編での理解は深まると思うけど。


これからは週一で投稿ペースをキープしたいと思ってます。





番外 読心少女の過去と現在

 

私ことコメット・シーフは、所謂一般人とは少し違う存在です。

 

それは何故かと言うと、私は人の心が読めるから――

人の心が分かるのではない、文字通り読めるのだ。

 

4年前の14歳の時に街を歩いていた時にそれは聞こえてきた。

最初は、念話かと思った。

私の魔導師適性なんてあってないような程度で、念話くらいなら使えるだろうってものだった。 まぁ、デバイスもなくて教えてくれる人もいなかったから結局使った事はないけど。

 

だから突然頭に響いてきた声を聞いて驚いたけど、これが念話なんだ!って初めて経験した出来事に少しだけうかれちゃった。今思い出したら恥ずかしいんだけどね。

で、次に思った事はこれは誰の声なのかってこと。

念話が聞こえてきたってことはそれはつまり誰かが念話を発したという事であって、それなら当然周りには誰かがいるはずなのである。

 

そう思って周りを見回しても今いる所は人通りの少ない所で、特に誰もいなくてその声もすぐに聞こえなくなってたから不思議に思ったけど、残念だったけど気のせいだということにして、そのまま気を取り直して目的のお買い物を楽しむことにした。

 

しかし、それから人通りの多い所に出るとまた声が聞こえてきた。

ノイズの掛かったラジオのように途切れ途切れに聞こえてきて私の魔法の適性が低いのが原因だと思ってたけど、段々その声は鮮明になってきて聞こえてくる声の数も増えてきた。

 

老若男女問わず聞こえてきて、そのどれもが私に向けて話しかけているものではなかった。

 

だから気付いた――これはここにいる人達の心の声だって。

 

 

当時14歳だった私は人の声が聞こえるなんて便利で凄いじゃん!って興奮してその声を聞いた。人の心を覗き見るなんて、まるで人の家に土足で上がり込むような背徳感もこれまた私の好奇心を奮い立たせる一因だった。

 

色んな声が混じってざわざわしてたけど耳を澄ませるように集中すればその一つ一つを聞きとれた。

 

今日の献立を考えてる主婦や、良くわかんないけど上司の愚痴っぽいのを心の内で呟いてる会社員。

すれ違った人が美人だとかおっぱいが大きかったとか昼間から頭が真っピンクな男の人。

真面目そうな顔して、めんどくさいめんどくさい連呼している警備で街を巡回している管理局員とかなんか思わず笑ってしまった。

 

 

――でも、それを面白がっていられるのも最初の十数分くらいだった。

止められないのだ。寧ろどんどん強くなっていって最初はちょっと離れたくらいの人の声しか聞こえなかったのに、今はもう視界に入る範囲にいたら聞こえてくる。

最初はひそひそ話が聞こえてくる程度の音量だったものが、いつしか頭に直接ガンガン響いてくるうるさい声たちに、耳を塞いでも何をしても聞こえてくる声に耐えられず私は走り出していた。これ以上聞いていたら気が狂いそうだったから。

 

誰か人のいない所まで――

誰もいなかったら聞こえてくる事なんてない。その一心で全力で走った。

 

 

疲れて座りこんだ時、気付いたら私は森の中にいて、声はもうほとんど聞こえなくなっていた。

遠くで誰かが話してる程度の声は聞こえてきたけど気にならない程度で、ようやく落ち着く事が出来た。

 

 

「どうしよう・・・」

 

 

膝を抱えて座りながら私はこれからどうするかを考えた。

今はいい。でも、私の家は住宅街にある。ここからそんなに離れてないとはいえ、家に帰る為にはまた街を通る必要がある。

それに家に帰ったら問題が解決するという訳でもない。少なくとも私が確認した範囲では視界に入る程度の距離、半径数十m以内に誰かがいれば声は聞こえてくるのだ。

お父さんやお母さんは勿論、隣に住んでる人や果ては外にいる人の声だって聞こえてくる。

 

 

 

 

それからどれくらい座りこんでたか分からないけど、気付けば陽も落ちて夕方になっていた。

いつまでもこうしてる訳にはない。

 

 

「・・・帰ろう」

 

 

運の良い事に帰りは夕方時だからか元々そういう道なのか人通りが少なくて、思ってた以上にすんなりと家に帰れた。

帰ったらお母さんが遅かったねって声をかけてくれて、それが本当に心配してくれてるって今の私には分かって、うれしかったけど他にも誰ともつかない声が色々ごちゃごちゃと聞こえてきて私は返事することもせずに自分の部屋に引き籠もった。

 

 

そんな中で満足に寝れるはずもなく、皆が寝静まった夜中に半ば気を失うようにして私はようやく寝る事が出来た。

 

 

 

 

 

次に目覚めた時、依然誰かの声は聞こえていた。

眼が覚めた時には聞こえなくなっていて、昨日は悪い夢だったのだと思いたかったが、頭に響く雑音が私を現実へと引き戻す。

お母さんに体調が悪いから学校を休みと告げて返事も聞かずにまた部屋に引き籠もる。外に出たら今以上に声が聞こえてくるから。

実際、時折くる大きい声など頭を殴りつけられるような感覚だ。今まで感じた事のない衝撃は私の精神の安定を乱していく。

 

 

それから私は数日間自室に引き籠もり、ずっとベッドの上でうずくまる様にして耳を塞いでいた。 喜びも、悲しみも、怒りも――様々な感情が私に流れ込んでくる。

その絶えず聞こえてくる人の声で自分を保てる訳もなく、心がガリガリと摩耗していくのが自分でも感じれるくらいに、私は弱っていた。

でも、衰弱した私と反比例するかのように力はドンドン強くなって、余計に私の心は磨り減っていった。

そんな部屋から全然出てこない私を家族が心配して部屋にきても、心を圧迫する多大なストレスを少しでも発散するように大声で怒鳴って追い返していた。

 

部屋に籠って5日くらい経ったのか、反抗期と称してそっとしておくのも限界がきたのか両親が鍵を壊してまで部屋の中に入ってきた。

そしてベッドの上で震える私――すっかり真っ白になった髪を見て、異常を感じ取った両親はすぐに病院へ連絡して、私は搬送された。

 

 

検査を受けて髪から色が抜けたのはストレスが原因と判明して更なる詳しい検査を受ける為に私は管理局先端技術医療センターに運ばれ、この心の声が聞こえるのは常時発動型のレアスキルのせいだと判明した。

 

この頃には、無理矢理あらゆる感情を叩き込まれ続けた私はもう抜け殻のようで両親の心配の声も、医者のレアスキルに対する説明も、どこからか聞こえてくる実験体、研究など、そんな言葉も気にならなくなっていた。

 

 

その日は隔離に近い形で衰弱した私は入院することになりその翌日、私は良く分からない地下室に連れて行かれた。

 

その誰もいない部屋で何をしていいかも分からず、ただ時間が過ぎるのを漫然と待っていたら一人の男性が入ってきた。

 

 

「これが昨日見つかった読心スキル持ちか、まるで人形だな」

 

 

いきなり来て失礼な発言だなと思ったが、思えばこんな所に放置されても表情もなくただ

何をするでもなく座っている私をそう評するのも最もだな、と改めた。

それにこの男の発言に対して失礼と思えた事に、まだ私は壊れてはいないと自覚しながら、『声』があまり聞こえてこない事に気付く。

これ程近くにいるのにまるでノイズが走っているかのようで、断片的な単語しか拾えない。

 

 

「ふう、いん・・・・?」

 

 

その単語の中で気になるものが聞こえ、気付けば声に出していた。

 

 

「なに? わざわざ読心対策にじいさんが組み立てた妨害魔法を掛けている上で尚聞かれてるというのか?」

 

 

私が呟いた言葉で心を読まれたのを察したのか、少し驚いたような顔をしている男性が目に入る。

どうやらこのノイズの原因は読心防止の妨害魔法のせいらしい。

 

 

「はははっ、思った以上の代物だな。これは俺が出てきた甲斐があったというもんだ」

 

 

心を読まれたというのに嫌な顔一つせず、寧ろ機嫌が良くなったと言ってもいい男の態度に私は訳が分からなかった。

でも、一つだけ分かった事がある。

それはこの人が――この力をどうにかしてくれる。という事を

 

男の人は私の目の前まで来て、私の胸の中心――リンカーコアというものがあるという付近――に手を添える。

 

 

「『封印』」

 

 

カチ、私の中で何かの電源を切ったような、そんな音が聞こえた気がした。

その音と同時に、雑音が消え――ここ数日間ただの一度も訪れなかったなにも聞こえない静寂な空間が広がった。

 

その事実に私は眼の奥がじわっと熱くなって、気付けば涙を流していた。

 

 

 

 

 

ひとしきり泣いた後、落ち着くのを黙って待っていてくれた男の人から、これからの話を聞いた。

 

私のレアスキルとやらを封印したが、それは一時的なものであり永続的な物ではないと。

この人の持つレアスキルも私と同じように稀少技能の名の通りホントに稀有なもので、わざわざ一般人である私の為に、およそ一ヶ月――封印の切れると予想される大体の期間らしい――毎に封印を掛け直すのは出来ないと。

ではどうすればいいのか、と聞くとそれを待っていたと言わんばかりに私のこの後の人生を左右される選択を突きつけられた。

 

一つは、一応の形として一般人の生活に戻り外部協力者としてこの読心スキルを使いこの人達の仕事を手伝い、かつ多大なお金を払って封印を継続して掛け直して生きていく事。

 

もう一つは、今までの生活を離れこの人の所属するという部隊に入り仕事をこなしていく事。そしてこちらの選択をした場合はお給料も沢山貰えて、今掛っている封印より更に一段上の封印を施してくれるらしい。

 

 

一つ目の選択肢を選べば私は一応今までの生活に戻れるが、封印が切れると言う一ヶ月毎に仕事を手伝い更にお金を払わなければならない。ミッドの法律では一応14歳の私も働けるが、未だ学生である私に大した事が出来る訳もなく、おそらく私ではお金を払えず、両親を頼る事になるだろう。

 

もう一つを選べば、今まで通りの生活は出来なくなり所謂闇の世界とやらに浸かる事になるが、お給料もいっぱい貰えて封印もしっかりしてもらえてこの力に振り回されることはなくなる。

 

 

――こんなの、どちらを選ぶなんか決まっている。選択肢などあってないようなものだ。

 

 

私は迷わず、後者――この人達の仲間になる方を選んだ。

それを聞いた男の人は予定通りの結果になったとばかりの顔で手を差し出してこう言った。

 

 

 

 

 

「ようこそ、我らが誇る管理局幻の部隊――次元管理特務部隊へ」

 

 

 

 

私はその手を取る時心に誓った。

これからはこの人の為に生きよう、と――

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

そして現在、私は今までの4年間の成果から部隊の中で上位に位置する地位を築いていた。と言っても能力の性質上私はアーク様の私兵のように扱われているせいもあるのだが。

因みに4年前アーク様に様付けで呼ぶと嫌そうな顔をして、様は止めろと言われたので実際名前を呼ぶ時はアークさんと言うが心の中では様付けにしている。

 

私はアーク様のものだし、私のこれからの人生全てを彼に捧げるだろう。

何故なら私が生きるにはアーク様の能力が必要不可欠であるからだ。

それに私自身救って貰った恩がある。あの地獄から助けてくれたことを報いるにはそれこそこれからの人生を懸けることに値する。

 

 

そして肝心の能力の方は昔より多少はマシになった。という程度だ。

相も変わらずオンオフは出来ないが強弱は多少利くようになった。有効範囲も半径10m位にまで抑え込めるようになり拾う声も随分絞れるようになった。――それでも、日常生活を送れる程にはなっていないのだが。

 

 

日々の生活はというと、割かし暇な生活をしているだろう。私が一人で出来る事でこの部隊において役立つものはほとんどないのだから。まぁレアスキルを抜けば私などそこらへんにいる女の子なので仕方ないといえば仕方ないけど。

この部隊の隊舎、と言っていいのか分からないがミッドの地下に広がる空間の生活区画にあたる場所に一室が用意されそこに住んでいる。アーク様のように地上で普通に住んでる人もいるにはいるが、それはごく少数でこの特務部隊に所属する大体はその生活区画に住んでいる。

生活区画の他にも執務室や模擬戦を行える部屋といった部隊に必要な設備や多少の娯楽のある区画も存在する。

 

そんな私は今デバイスをメンテナンスするためにデバイス整備室に向かっている途中である。

私のデバイスはレアスキルである読心の補助を目的としていて莫大な情報の取捨選択を行う為非常に高性能で処理能力は現存するデバイスの中でも最高峰に位置するものだ。

何せこのデバイスはあのアルハザードの遺児『無限の欲望』ことジェイル・スカリエッティ製なのである。

因みに私はあの変態が大嫌いだ。アーク様の友人というが信じられない。

しかし向こうはそうでもないらしく、このデバイスが届いた時にもメッセージが同封されていて――

 

『これであの人の心も見スカシエッティ☆』

 

というものがあった。

正直あの時ほど人にイラついたのは生まれて初めてだ。

 

 

余談だが、私の読心は強力無比な力だが現在はデバイスを使ってそれでも尚力が及ばない人間が、この部隊には4人いる。

 

1人は勿論アーク様。私の能力の封印・解除行ってるだけあって対策もバッチリらしくあの人の心は私にも分からない。聞いた話ではレアスキル持ちの査察官の思考捜査すら凌いだとか。

 

2人目はランディおじいさん。最初にアーク様と会った時の妨害魔法を組んでただけあり、それを改良し今ではほぼ完全に防がれている。まぁその魔法も難易度が高くランディおじいさん以外は扱いきれるかは分からないみたい。実際部隊の中でその魔法を扱えるのはおじいさんだけだし。

 

3人目はコウヨウ・コガラシ。心眼の名は伊達でなく、私の行っている諜報活動の前任者だけあって心を覗く、という対策はバッチリみたいだ。どうでもいいが、私はこいつが嫌いである。

 

そして最後の4人目が――今はある犯罪組織を追う長期任務に出ていてミッドにはいないが、シェリーという名の訳の分からない力を使う我儘女である。彼女の振るうその訳の分からない力で読心を防いでるみたいでその能力の詳細は私は全然知らない。とんでもないじゃじゃ馬で彼女の入隊の際には前代未聞の事件が起きたらしいがそれは機密となっており当事者達以外は何も知らないという。あの傍若無人な振る舞いを見れば何故未だにこの部隊にいるか甚だ謎である。

 

 

 

と、そんな事を考えていると廊下の向い側から目に赤い布を巻いた黄色い髪の男が歩いてくる。

 

 

「ん? 嬢ちゃんじゃねぇか。よっす」

「・・・こんにちは」

「なんだ~元気がねぇじゃねぇか? ん?」

 

 

貴方の顔を見たからです。と言いたかったがそれはやめておいた。

しかし言わなくても分かってるだろうにこの男は馴れ馴れしそうに話しかけてくる。これからはアーク様は機動六課とやらに出向するので一層会える機会が減ると言うのに何故この男とはこうも簡単に会えるのだろうか。まぁその答えは、こいつは地下での仕事の比率が大きいからだけど。

 

 

「さてはあれだな? アークの奴が六課出向で会う機会が減るから元気ねぇんだろ! 当たりだろ?」

 

 

思っていた事を当てられ、顔に出ていただろうか。と少し眉をひそめるがそれも無意味だと思い出し気にすることをやめた。

なにせ、この男は目でものを見ているのではないのだから。

 

 

「はっはっは! 嬢ちゃん! お前は人の心読めるってのに自分の心を読まれないようにすんのが下手だな! そんなんでこれから大丈夫か? なんなら俺が指導してやろうか!?」

「うるさい・・・・・・ひよこ頭のくせに」

 

 

こいつのこういう所が嫌いなのだ。なんでも見透かしたような事ばかり言い親心でもあるのか知らないが頼んでもしないアドバイスや忠告をいつもしてくる。

 

 

「ひよっ・・・とんでもねぇこと言うな」

「ふん、あなたみたいな人はひよこ頭で十分です。さっさと仕事でもしてきたらどうですか」

「相変わらずアーク以外の奴にはキツイな嬢ちゃんは。ま、俺も言われたように仕事に戻るかね。じゃあまたな」

 

 

そのまま私の横を通り過ぎ肩越しに手をひらひらと振りながら去っていく。

 

 

 

「また遠まわしな言い方ばかり、言われなくても分かってますよ」

 

 

アーク様の名前をイチイチ出さずとも、分かっている。私があの人に依存していて生きている事くらい。

あのひよこ頭は一人でも生きれるようになれと、心配してるのかは知らないが少なくとも私を思って言ってるのだろうが、大きなお世話だ。

 

あの地獄から救ってもらった時に決めたのだ。

この人が死ぬ時が私の死ぬ時だと――

この人に全てを捧げると――

たとえ何があろうと私だけは味方でいると――

 

人に何を言われようとこれだけは変わらない。

 

 

私はあの人の為に生きて、あの人の為に死ぬのだ。

 





やっと名前出ましたね。コメットちゃん
因みに彼女のスペルはComet Syrrphです
結構強引な読みですけどアナグラムなのでまぁ仕方ないですね。
元の単語予想してみようと思う方はどうぞお試しください(´ω`)

今回の話では彼女がどういった経緯で暗部入りしたかって話と、新しいオリキャラ登場の伏線に部隊名を出せたってものですね。
感想の方で主人公より主人公っぽい設定なんじゃないかってコメントがあったんですが、実はコウヨウさんの方がもっと主人公っぽい設定なのでご安心ください。

また番外という形でオリキャラの過去を書いていくと思いますが次はいつになるか分かりません。未定です。ネタバレになるかもしれないので。

次からはまた普通に本編戻ります。主人公の六課入りからで、今までのは多少長かったプロローグ、といった感じでしょうか。
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