魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~ 作:Sady
でも今回は1万字越えといつもより文量が多いので多めに見てやってください((((;゚Д゚))))
そういえば皆さんリリなの一番くじはしましたか?
私は5回しましたがF1G4というくじ運のなさに絶望しましたよ。
海上訓練所を出た俺達は、食堂でリインフォースと向かい合う形で座り高町教導官と新人達を待っている。
先に食べるのも食事を誘った側としては失礼だと思い手をつけずに冷めても大丈夫な物――サンドイッチを注文してテーブルに並べている。
頼む際にリインフォースがスバルとエリオがかなり大量に食べるため多めに注文しておけとの忠告を受けテーブルにはサンドイッチが所狭しと置かれている。
スバルが大食いと聞いてこれも遺伝か・・・と納得してしまったが、エリオはどうなんだろうか。成長期だからなんだろうか。
「まだか・・・」
テーブルにある山盛りのサンドイッチを見て他の職員達が奇異の視線が痛い。早く来てくれ、マジで。
リインフォースとの会話も特になく静かな空気のまま待つ事数分――俺には数十分にも感じられたが――ようやく高町教導官と新人達がやってきた。
「お待たせしました!」
元気な声を聞きその方を向くと新人達4人と隊長2人、つまりフェイトもいた。丁度いいタイミングで仕事が終わりご飯に誘ったという所だろう。この2人は仲が良いと聞くしなんら不思議ではない。2人は付き合ってると言う噂が立つくらいだしな。
「いや、そんなに待ってはいないさ。料理はもうこの通り準備してあるから食べようか」
皆が席に着きようやくこれでリインフォースと2人だけで大量の料理を前にただ座っているだけと言う状況は終わった。だがそれで周りからの視線がなくなったわけでなく、寧ろ増えた気がする。まぁ先程の奇異の視線ではなく今回は何故俺と隊長陣や新人達と共に食事をしているのかという好奇の視線だからまだマシというものだ。
そして席順としては俺の右隣に高町教導官、その奥にフェイト、エリオと続き向かいのリインフォースの隣にスバル、ティアナ、キャロとなっている。
俺は長方形のテーブルの端に座っている都合上左には誰もいない。
「えっと、私も一緒しちゃっても良かったのかな? アーク」
恐る恐る、と言った様子で同席の許可というか確認を求めてくるフェイト。
言葉遣いが柔らかい――いや、これが普段通りなのだろうな――のはやはり先程車好きの同志認定されたからなのだろうか・・・?
「あぁ、全然構わないぞフェイト。見ての通り料理は山程ある訳だしな」
「それは良かった。でも、料理に関してはこれでも足らないかもね」
苦笑いしながら指を刺した方を見ると既に一つの山を半ば程に切り崩しに掛かってるスバルとエリオの姿が見えた。
成程これは足りなくなるかもしれないな、と凄まじい勢いで減っていくサンドイッチとスバル達を見てるとその隣にいるティアナは見られている事に気付いたのか「いつものことですから」と、失笑気味に言った。
その様子を見てクイントに振り回される俺もこんな顔してるんだろうなぁ、と思うとスバルに振り回されてそうなティアナに少しだけ親近感が沸く。
と、そんな事を考えていると右隣から視線を感じた。
「フェイトちゃんと名前を呼び捨てで呼び合って、いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」
その視線を感じた方、高町教導官の方を向くと、不機嫌なのか心なし怒気を孕んだ顔で質問を投げかけられた。俺がフェイトを誑かしたみたいな言い方はやめてくれ、向こうから寄って来たんだ。車に釣られて来ちゃったんだよ。
「公式の場やフルネームで呼ばれる時はともかく、俺は日常でリリィと呼ばれるのが好きじゃなくてな。それに、これから共に捜査を行うことも多いだろうからあまり堅い話し方をしているのもな」
「それでなくてもアークの方が歳も階級も上なのに私だけファミリーネームで呼ばれるのもあれだしね」
趣味が合って仲良くなったなど思いたくない俺がそれっぽいことを言ったら、それを補足する形でフェイトも会話に入ってきた。
答えを聞いて高町教導官は少しだけ考える素振りを見せた。
「うーん、だったら私のこともなのは、って呼んで下さい! 一緒に教導することもあると思いますし、ねっ」
「まぁそういうことなら」
名前で呼ぶ事を了解すると高町教導官、いやなのはの不機嫌そうだった顔が一転して笑顔になる。
この程度の事で、と思ったが女性はその程度の、という些細な事でも一喜一憂したり機嫌がコロコロ変わる生き物だということはクイントと過ごした8年間で学んだ。
それに、昔のPT事件、闇の書事件でもそうだったが彼女は分かり合うにはまず名前で呼び合う事から、という信条を持っている事を思い出した。
話を聞いて! と言いながら砲撃をぶちかます当時10歳やそこらの少女を見て映像越しとは言え少し狂気染みた何かを感じたのは内緒だ。子供故の矛盾と言えばそこまでなのだが。
「アークさんって凄腕の執務官って聞いてるんですけどやっぱりフェイトさんと同じくらい強いんですか?」
そんな質問がスバルの口から出たのはサンドイッチの山(結局足りなくて追加注文した)も消え食後のアフタヌーンティを飲んで会話し緊張感や空気が緩んできた頃だった。
「あっ、それは私も気になります」
その話題に食いついたのは今まで特に積極的な発言がある訳でもなかったティアナだった。執務官、という役職に人並み以上に思い入れがある彼女はそれ関連の話の興味は尽きないのだろう。
「んー、意外と答えにくい質問だな。それは」
「なんでなんですか?」
「執務官というのは極端な話、強さが重要じゃないんだよ。だから凄腕、なんて言われてもそれは戦闘が、って意味じゃない」
強くなくていい、という俺の言葉の意味が分かり兼ねているのかクエスチョンマークを幻視しそうな程揃って首を傾げている新人達、となのは。
おい、新人達はともかく、おい。お前まで首傾げんな。
「えっと、強さが重要じゃないってじゃあ何が重要なんですか? 執務官って管理局の資格の中でも最難関って言う位試験が難しくて合格してる人達って所謂エリートなんですよね?」
「こういう言い方したら自画自賛みたいだが、執務官ってのは賢かったらそれでいいんだよ。俺はこれでも執務官としてそこそこの功績を積んでるんだが、実の所俺が戦闘して解決した事件と言うのは、そんなに多くない。俺は違法研究所を見つけても突入の段階にまでなるとそこからは武装隊に任せてるからな。まぁこのやり方は賛否両論食らってるが」
「へーそうなんですかー」
気の抜けたスバルの感想に多分なんとなくしか分かってないんだろうな、と思った。
実際は制圧がめんどくさいだけだとは口が裂けても言えない。まぁお膳立てはしてあるし武装隊にしても結果を出してることになるのである意味win-winの関係とも言える。
因みに賛否両論の賛成意見は適材適所、執務官にしか出来ない事だけをこなし他の人間でも出来る事は任して効率が良いということ。
逆に否定的な意見の方は、制圧が個人でも実際可能であるにも関わらず武装隊を呼ぶなど万年人手不足の管理局ですることではない。また他人に頼らなければ事件解決が出来ないのは管理局のエリートである執務官のブランドを落とし面子に関わるとのことだ。
無論どちらの意見も正しく、どちらが悪いということはない。
「勿論捜査から制圧まで何でも一人でこなせる万能型が執務官としては理想なんだがそんな魔導師は滅多にいないからな。その為の補佐官ということでもあるし。まぁ、その理想がそこにいるんだが」
「え! わ、私っ!?」
理想とまで評価されたフェイトは驚きの余り奇声を上げる。ここにいる全員が一斉に視線をフェイトに向けていたので気持ちは分かるが。
だが今はそれを無視して話は続ける。
「これは俺の持論だが、執務官に必要最低限の強さって言うのは単独戦闘での生還力と言っても良い。どうしても情報収集の段階でも戦闘が避けれない時ってのがあるからな。戦える捜査官ってのが俺の中での執務官のイメージだな」
「戦える捜査官、か。うん、確かに言われてみればそんな感じだね」
なるほど、と顎に手を当てて頷いて同意するフェイト。
俺は執務官は捜査官の上位職なイメージなのだが、執務官の権限は大きく様々なタイプの執務官がいるのでこの意見に反対する奴もいるだろうけどな。
この話題に一番興味を持っていたであろうティアナを見てみるとこういう考え方はしたことがなかったのか神妙な顔つきで何かを考えているように見える。
「執務官については分かったんですけど結局アークさんってどのくらい強いんですか?」
「そういえば、そういう話題だったね」
ホントに分かったのか、とはこの場の誰もが思っただろうが、言ってる事はまさしく俺がうやむやのまま誤魔化そうと思っていた部分でなのはも今思い出した、と言った感じでスバルに同調した。
「じゃあ私と模擬戦っていうのはどうですか!」
名案だ! とばかりに顔を輝かせてこっちをみているなのは。
流石にそれは俺としても都合が悪いので回避したい。
「残念だが、俺としては遠慮したいな」
「え・・・」
俺の拒絶の言葉に一気にしょんぼりするなのは。これが犬や猫ならその耳は見事に垂れてるだろうと思う。
「デバイスどころか、本人にもリミッターが掛かってる状態の相手と戦うのはどうもな。そもそも、強さを計るのが目的なら戦闘スタイルが合わないし相性で勝敗が決まってしまう」
「それは一理あるんですけど・・・」
一理あると言いつつもその不満げな顔を見るに納得してないらしい。どうしてそこまで戦いたがるんだ。戦闘狂とか勘弁して欲しい。
これからの動き次第で俺は機動六課とも敵対する可能性が少なからずある。だから手の内を見せたくないというのが本音だ。このままなのはと戦うならば、リミッター付きとはいえ仮にもエースオブエース、手の内を見せたくないなど言って加減して戦える相手じゃない。それに加減したら見破られるだろうし、ここは多少強引でも諦めてもらうしかない。戦闘スタイルが合わないというのはホントだしな。
だから――
「代わりにと言っちゃなんだが、スバルとの模擬戦なら受けても良い」
「え? あたしですか?」
「ベルカ式で近接戦闘なら比べやすいし俺も訓練に参加する時のことも考えて実力をこの目で見とくにも丁度良い。何より、強さを知りたいと言いだしたのはスバルだしな。身を持って体感してもらうのが一番良い」
手加減しても勝てる相手を選ぶ。
それに、クイントの娘であるスバルには少し興味があった。
と言う訳で、お昼の休憩を終えて訓練所にて模擬戦となった。
目の前にはバリアジャケットを展開しやる気満々で拳を合わせて気合を入れてるスバルがいる。
「準備万端、って感じだな」
「はい! ってアークさんデバイスは?」
そう、俺はバリアジャケットこそ展開してるもののデバイスを手にしていない。
どうでもいい話だが、管理局員でもデバイスがないとバリアジャケットを展開出来ないと思ってる奴がいるがそれは間違いだ。確かにバリアジャケットの構成やら術式はデバイスに組み込んでるがあれは気絶した時に解除されない為の安全装置の意味合いが強く別にデバイスがないとバリアジャケットを展開出来ない訳ではない。
ついでに言うと今の俺のバリアジャケットは地上部隊の一般隊員仕様だ。
「あぁ、ちゃんと持ってるよ」
待機状態である指輪をはめてる左手を見せる。因みに中指にはめている。薬指ではないぞ。
「・・・使わないんですか?」
「デバイスがなくとも最低限の魔法は使える。それに、俺の強さが知りたいんだろうから敢えて言うが、使わせてみろ」
「むっ、痛い目見ても、知りませんからね!」
そう言いながら突っ込んでくるスバルに備えて魔力付与魔法で体を強化する。流石に戦闘機人相手に生身で勝てるとは思えないからな。
「でぇぇえええええい!」
大きく振りかぶって突き出された右拳を半身を反らすようにして避けるが流石にスバルもこの一撃が当たるとは思ってなかったようで空振った勢いで回転して左後ろ回し蹴りを放つ。が、それも後ろに跳んでかわす。
「リボルバーシュゥウゥウト!」
後ろに跳んだ俺にカートリッジを1発を消費した衝撃波が襲い来る。
衝撃波というのは基本的に有効範囲が広く避けにくい。故に避ける事は諦めバリアを張っての防御を選んだ。俺のバリアはそんなに強度がある方ではないがBランク魔導師が放つ程度の攻撃ならなんの危なげもなく防ぎきれる。
俺が防御を選ぶ事を見越してたのか防いでる間にスバルが距離を詰めてきている。
そしてそのまま拳、蹴りの打撃コンビネーションを繰り出すも、その全てが俺に当たらず空を切る。
「くっ、このっ!」
防がれるでもなく避けられる事が悔しいのか半ば意地になって魔法もあまり使わずに攻撃してくるが、やはりその全てが当たらない。
そもそも、当たる訳がない。実力差とか魔導師としてのランクとかそういう問題じゃない。
どのような攻撃をしてくるかを既に俺は知っているのだから。
何故ならスバル・ナカジマが扱うシューティングアーツはクイント・ナカジマがスバルの姉であるギンガ・ナカジマに師事したものをそのままスバルが学んだからだ。
技のキレも連携も、クイントのそれには遠く及ばない。
そう確信した所で俺も攻勢に出る事にする。
そう決めた時に丁度良くスバルが放った右拳を左手で受け止める。避けられると思ってたのか受け止めたのを一瞬驚いてたが半ば反射的に続いて左拳が飛んできた。
そしてそれも、右手で受け止める。
「んぎぎぎぃ」
結果、押し合いの力比べになって改めて思うがこれは流石戦闘機人というしかない膂力だ。明らかにBランクのパワーじゃない。魔導師としての力量差故に俺の方がまだ力は勝ってるようだがお互い生身の状態なら恐らく負ける。
しかし、唸ってるスバルには悪いが俺はこのまま力比べをするつもりはない。
力を緩めると押し合ってた均衡と共に体勢も崩れる。支えとも言える俺の力が緩まったせいでそのままの勢いで上体が流れて浮いたスバルの体を掬うようにして投げる。
「えっ?」
いつの間にか地面で仰向けになっていて何が起きたか分からないと言った感じで地面に寝転がって声を上げるスバル。感覚的には押し合ってたらいつの間にか投げ飛ばされてた、といった所だろうか。
「空気投げというんだが、その様子じゃ力任せに投げ飛ばされた事はあっても完全な技術だけで投げられた事はないみたいだな」
まぁそれも仕方ないのかもしれない。管理世界の人間は魔力でゴリ押しが基本だ。
シューティングアーツやストライクアーツも格闘技としての体系、流派があるがそれも基本は打撃中心。管理局の中でも純粋に技術を磨いているのは戦技教導隊や部隊のエース級の人間だけだ。少なくとも、訓練校で習うようなモノじゃない。投げ飛ばすより殴ってダメージを与えた方が速いという考え方だ。
しかし、次元管理特務部隊では体術は徹底的に仕込まれる。管理局での禁忌である殺人すらも行う部隊であるからして当然効率よく殺す術を学ぶ。それも正々堂々決闘をする訳でもない暗殺が主である。
魔力ダメージによるノックダウンで相手を無力化する表の部隊と、どんな方法でも良いから相手を制する裏の部隊との差とも言える。
「終わりか?」
「ま、まだですっ! せめてデバイスを使わせてみせます!」
魔導師としても、格闘技を扱う者としても実力差はとうに分かってるだろうがそれでもスバルにもなのはの苦しい訓練をやってきた意地があるのか諦める様子はない。
それでこそ、クイントの娘だ。
それから数分間、投げられたりこかされたり、大きな怪我をしないように気をつけながら地味に痛いように顔面から地面にぶつけられてもスバルは俺に向かってきてた。
俺も反撃する為最初のように全て避けれてるということはなく防御もするが、それでも未だにデバイスを使う程ではない。
そろそろ諦めたら? となのは達も言ってたが頑として聞かずに挑み続けている。
「やぁぁあああぁあ!」
最早何度繰り返したかも覚えてないが、俺の顔面に向かって放たれた拳を受け止めようと思い手を上げたが、受け止めようとした寸前この一撃は今までと違い素手では受け止めれないと俺の経験が言っている。が、もはや回避も出来る距離でもない為デバイスを展開して受け止めるしかなかった。
俺の手に今握られているのは10年前、暴走状態のリインフォースとも打ち合えた準ロストロギア級斧槍型デバイス『マッサークル』――古代ベルカの王の一人が所持していたというベルカ語で大虐殺の名を冠すデバイスである。
「や、やった・・・!」
ついにデバイスを使わせる事が出来たのがよっぽど嬉しいのか笑顔で喜ぶスバル。
最後の一撃、別に俺は油断した訳でもなく、いい加減可哀想だからと親切心でデバイスを使った訳でもない。それでも受け止められなかったのは、単純に予想していたより威力が遥かに高かったからだ。
戦闘機人モード――本人も無意識なんだろうが最後の一瞬だけ確かに目が翠色から金色に切り替わったのが見えた。
ふむ、折角デバイスも起動した事であるしご褒美代わりに全力の一撃を見せてやることにする。別にデバイスを使わされたのが悔しい訳ではない。
「スバル、お前が気になってたAAAランク魔導師の本気の一撃を見せてやる。ちゃんと避けろよ」
俺の実力が知りたいという当初の目的も忘れ、浮かれてるスバルに一言注意だけしてデバイスに魔力を込め、振り上げる。
「緋炎、一閃!」
先に忠告したもののスバルが回避行動を取れるとも限らないので、ギリギリ当たらないくらいの位置を目掛けて全力で振り下ろす。
半ば予想通りというか身動きできなかったスバルに当たるすれすれを刃が通り過ぎる。
そのまま空を切った斧槍、ハルバードが地面に着弾し――そうまさに着弾という表現が相応しい――地面が爆ぜ、轟音と共にクレーターが出来た。
まぁリミッターも掛かってないAAAランクの魔導師が全力を出せば地面にクレーターが出来るくらいのことは別段おかしい訳でもない。
因みに、緋炎一閃と言っても俺に魔力変換資質はない。だから炎を纏った一撃という訳でなく、ただ俺の魔力光が緋色なのでそう名付けているだけだ。
今の一撃によって舞い上がった粉塵が晴れると大きな怪我はないが、非殺傷設定での一撃だったが俺のデバイスの特性上思った以上にボロボロになって所々破けてるバリアジャケット姿のスバルが出てきた。
その姿を見てある事に気付いた俺は自分のバリアジャケットの上着を脱いでスバルへ投げた。
「ケホッケホッ・・・って、上着なんて渡してきてどうしたんですか?」
俺はその質問に答えず無言で指差した。
スバルはその指の差す場所――顔より若干下へ視線を向け、その答えを理解して数瞬経ってから顔が赤くなっていく。
早い話――年の割に大きい胸が丸見えだった。
「き、きゃぁああああぁぁああああぁぁああああああああぁあ!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
なんだかんだでスバルとアークさんの模擬戦ということになってそれを観戦する私達。
夢であり目標でもある執務官の戦いというのを、私はフェイトさん以外に見た事がない。
執務官というのは大体皆忙しいしあらゆる事件を解決するために走り回ってるので、管理局のイベントである戦技披露会などに出る事もないので、訓練生の時も警備隊の時も執務官の戦いと言うものを終ぞこの目でみる機会はなかった。
それが今、目の前で行われるという事に私の興味は尽きない。
それも先程の会話の中で「執務官に重要なのは強さではない」とまで言い切った人の戦いだ。
その言葉は訓練の中でも上達をあまり感じなくて行き詰まってる私にとっては希望の一言でもあった。最低限の強さは必要とはいえ才能のない私でも執務官になれるかもしれない。
執務官になって証明するんだ。
ランスターの弾丸はちゃんと敵を撃ち抜けるんだって・・・っ
どうやらアークさんはデバイスは起動してないみたいだけど模擬戦は始まるみたいだ。どんな小さな動作も見逃さないようにしないと。
「スバルの攻撃をああまで避け切るなんて凄いね・・・」
「そうだね。私でも避けられると思うけどそれは高速機動で大きく回避する形になっちゃうからあんな風に紙一重で避けるなんて出来ないと思う」
一緒にいるなのはさんやフェイトさんも真剣な目で2人を見てる。
エリオとキャロのちびっこコンビも食い入るように見ている。エリオなど特に同じベルカ式なので参考になる動きはないかと注視しているようだ。
確かにあの身のこなしは凄い。それは才能とかじゃなくて確かな努力を積み上げて完成された技術なんだと分かる。
「なんだか、攻撃も当たらずにポンポン投げられてるのを見てるとちょっと可哀想だね・・・」
「うん、相当悔しがってるみたいだねスバルは。それにしても・・・」
「どうしたのなのは?」
「うーん、なんていうのかな。アークさんの身のこなし見てるとお兄ちゃんとお父さんと似てる気がするんだよね」
「そうだな。あれは、暗殺者の動きに近い」
なのはさん達の会話に割り込んできたのはシグナム副隊長だった。一体いつの間に。
それにしてもあの動きに似通う所があるなんてなのはさんの家族は一体どうなっているんだろう・・・
「シグナム、どうしてここに?」
「いやなに、本局から今帰ってきた所なんだが面白そうな事をしてると聞いてな。見に来たんだ」
「そうなんだ、それで暗殺者の動きってどういうこと?」
「そのままの意味だ。動きが静かなんだ。恐らく戦闘行為よりも潜入捜査などの任務につくことの方が多かったんだろう。相当な場数をこなしてると見える、是非一度手合わせを願いたいものだ」
シグナム副隊長の解説に成程、と思う。犯罪組織のアジトへ潜入する時などは確かに敵に気付かれずに静かに敵を無力化する暗殺者がある意味理想だろう。
「シグナムは相変わらずだね。でも暗殺者なんていったら騎士であるシグナムなら卑怯とか正々堂々しろとか言うと思った」
「確かに好かんが、騎士であろうと暗殺者であろうと相応の修練を積んで武芸を磨く事には変わりない。それに、戦場では生き残った者が勝者だ、卑怯などという言葉は通じんさ」
騎士道とかは私には分からない事だったが、何故か動きがそれに近いというだけで、あくまでたとえなんだろうが暗殺者と言ってるのはアークさんにちょっと失礼ではないのかと思ってしまう。
シグナム副隊長の解説も終わり、会話を聞いていた分の意識を模擬戦へと戻す。
顔面から地面に突っ込むスバルを見て痛そうだな・・・と思うもそれでもめげずに立ち向かう相棒の姿をみて改めて自分とは違うんだなと思ってしまう。
何にでも真っ直ぐ立ち向かっては乗り越えてゆく姿には確かな才能を感じさせ、少し嫉妬してしまう。
現に今も、スバルの一撃でついにアークさんにデバイスを使わせることに成功した。
私だったら出来たかな、とシミュレートしてみるも今までの戦いをみてると絶対に出来るとは言い切れない。
「リインフォースって昔アークと戦ったことあるんでしょ? あのデバイスがあったから戦えたって聞いたけどあれがどんなデバイスか知ってることってある?」
「そうだな・・・あれは古代ベルカの戦乱の時代で『暴君』と呼ばれる王が使っていたとされるデバイスで、準ロストロギア認定をされている。聖王教会からしたら是非とも教会の管理下に収めておきたい物だろうな」
「その、準ロストロギア認定ってなんなんですか?」
あまり聞く事のない単語にキャロが質問する。
私も語感でなんとなく意味は分かったけど疑問に思っていたことなので代わりに聞いてくれたキャロに感謝する。もしかしたら知っていて当たり前な言葉かもしれないからだ。
「あのデバイス――マッサークルは魔法を切る、という特性がある。どういう原理か解明されておらず性能的にはロストロギアと言っても良いんだが、難しいとはいえ今の技術では擬似的に再現可能であるという理由からそうなってる。デバイスの刃をAMFでコーティングする、と言った具合にな」
あのデバイスがロストロギア・・・
そんな事実に私は思わず自分の耳がおかしくなったのかと疑ってしまう。
確かにロストロギアを所持することは申請すれば許可されることはあるが、戦闘に応用出来る部類のモノを所持する許可は中々降りないと聞く。それを考えるだけでアークさんがいかに大きな功績を積み上げてきたかが伺える。
自らの戦闘行為によって解決した事件はそんなに多くないと言っていたし、噂で聞く凄腕の執務官というのは本当の事なんだとより一層感じさせる。
それは私みたいな才能がない凡人でも力不足は戦術や戦略次第で補えるということを証明しているようで、最近ちょっと悩んでいて陰鬱としてた私の気分を奮い立たせるには充分だった。
学ぶことの多かった模擬戦も一昔前のコメディのようなオチで終わり、顔を真っ赤にした相棒の悲鳴を聞きながら、これからも一層特訓に励もうと心に決めた。
戦闘描写というのを今回初めて書いたんですけどどうでしょうね。うまく書けたか不安で一杯です。
うちのなのははちょっとアホの子入ってるのか書いてて我ながら可愛く思ってしまいます。原作ではシッカリしてますからね。意外と扱いやすいのでこれからも登場の比率が増えるかも。
そしてティアナ、これで悩み解決したようにみえなくもないですが魔王降臨フラグが折れた訳ではないんです。寧ろ主人公の理屈に影響されて奇策や突拍子もないことをし出す可能性が増えたんですよね。
しかしまだアグスタ終わってちょっとしか経ってないのか・・・完結までまだまだ遠いですね。