魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~   作:Sady

18 / 29
どうもお久しぶりです(´ω`)すんごい間空いちゃってすいませんホント




16話 想いを言葉に

 

 

 

 

昔はそれが当たり前のことだった。

だけどいつしか私は大人になってそんな当たり前のことを忘れてしまっていた。

忘れていたそれを思い出させてくれた――私にとっての1番の魔法、分かり合おうとする勇気

 

 

 

 

 

 

 

――こんなところか

 

そう思いながら右肩、左肩、と行動を制限するように撃ち抜いて行く。

ティアナはもはやトラウマと言ってもいい兄の話が精神的にも堪えたのかやや錯乱気味だ。

まぁ当時のティーダ・ランスターに関する記録を調べ上げてわざわざ同じタイプ拳銃の用意までしたんだ。ダメージは大きかったのかもしれん。

 

 

多少言葉はきつかったかもしれないが、これだけ言って考えを改めないならそこまでだ。その時はティアナには六課から出て行ってもらう。今の六課の現状をレジアスにでも報告したら喜んで権限を行使してくれるだろう。あいつは海や教会が大嫌いだからここぞとばかりに切り込んでくる筈だ。

 

ここまで追い込んでおいて酷かもしれんがそれも仕方ない。

いつまでも駄々をこねる子供に構ってやる暇などないのだから。

 

 

 

 

 

もう立っているのも辛いであろうティアナに止めを刺すべく眉間に狙いを定め最後の弾丸を撃ち出そうと引き金を引こうとした時、遠距離からの射撃魔法を放った時独特の、空を切る音が耳に入った。

 

 

タイミング的に避け切れるかも分からないと思うと既に半ば反射的に少しでも威力を殺す為に音のする方へ魔力刃を飛ばしていた。

現代用に合わせ多少のバージョンアップこそ果たしているものの最近のデバイスと違ってロックオンされた、とアラートの鳴らない自分のデバイスに不便さを感じつつ砲撃に備えプロテクションを張る。

 

直後、ディバインバスターと思われる砲撃魔法が着弾する。

本当にリミッターが付いてるのかと疑ってしまう程の負荷がプロテクションにのしかかる。

攻撃を止めるだけならアクセルシューターやもっと威力の低い魔法で良かっただろうが・・・っ。

 

プロテクションに僅かだが亀裂が入り、そろそろやばいか?と思い始めた頃にようやく砲撃が止む。

 

 

 

「何か、問題でもありましたか? 高町教導官」

 

 

今の砲撃など気にも止めなかったという態度で、バリアジャケットに換装して上空から俺を見下ろすなのはに白々しく質問する。

 

 

「こんなの、やりすぎですっ!」

 

 

止めを刺そうとしたことか、兄のことで精神的に追い詰めた事か、はたまたその両方に対してのことかは分からないが、俺の行動になのはは砲撃を撃ってでも止めようとする程度には怒りを感じたようだ。

 

部下を徹底的に叩きのめした直後に甘い飴を与えるという洗脳紛いな指導方法をとる戦技教導隊に属する人間の言葉とは思えなかった。

 

 

 

「確かに最近のティアナにも問題があったけど、ティアナなりに特訓したり頑張って努力してたしもっと他にやり方が――」

「何故、そこまで分かっていながら今の状態になるまでなにもしなかった?」

 

俺を咎めるなのはの台詞を遮るように言葉を続ける。

 

 

「自分で気付くまで様子をみる? 言葉にしなくても自分の教導の意味は分かってくれる? ティアナが相談してくれるのを待っていた? その結果がこれだぞ!」

 

気には留めていた。もっといい方法があるかもしれない。仲間がいるからきっと大丈夫。1人で見つめ直す時間も必要だ。

――そんなのは全て言い訳、それは自ら行動しなかったことへの免罪符にはならない。確かに皆の預かり知らぬ所で思い悩んだり色んな考えを巡らしていたかもしれない。だがそれらは伝わらなければ意味はない。伝えようとしなければ、想いは届かない。

 

もし、あたり触りのない事じゃなく恐れずに相手の心に踏み込んで自分の心を言葉にしていたならば今とは違う結果になっていたかもしれない。

 

 

「少なくとも、10年前のお前ならこうはならなかった筈だ。言葉にしないと解り合えるものも解り合えないと、そう言ったのもお前の筈だ! 高町なのは!」

 

 

高町なのは、彼女は良くも悪くも大人になった。今は少し感情が高ぶっているだけで直に落ち着くだろうし、その時に改めて今回の教導にはこういう意図があったのだ、と説明すれば納得してくれるだろう。わざわざ興奮してる状態で相手をする必要はない。

 

なのに、今こうして声を張り上げてしまっているのは、僅かに苛立ちを感じるのは――そう、俺が彼女に幾許か失望してしまっているからかもしれない。

 

 

10年前、全次元世界の全ての人間が忌むべきものとしてる闇の書相手にですら対話を試みようと――解り合おうとしていたその姿は、人と向き合う怖さを知る俺にはとても眩しく見えた。

闇の書のことを詳しく知っている訳でもない。どれだけの絶望を抱えているのかも知らない。それでも、だからこそ、言葉にして言ってくれないと始める事すら出来ないと、助けたいとひたすら前だけを見続けている彼女は確かに輝いていた。

 

その闇の書の闇すら照らした星光の輝きが、僅かにでも翳りが見えることに少なくない失望を感じてしまっている。

 

だから、今度は俺が示してやろう。

想いは言葉にしないと、行動で示さないと伝わらないということを。ただ見守るだけという、意味の小ささを。

現に今この時でもどれだけ周りの仲間に心配を掛けさせているかも、本当の意味では分かっていない。

まずはそのきっかけとして俺のこの胸の内にある苛立ちを少しはぶつけてしまうのも、良いかもしれない。

 

 

 

「Sonic move」

 

 

ポツリと呟くように高速移動魔法を発動させる。エリオのように近代ベルカ式用に調整することもなくそのままミッドチルダ式の術式で使う。理屈の上では近代ベルカ式もミッドチルダ式の魔法でエミューレートしているので大雑把に言えば使っている魔法理論も根元は同じだ。

それに元々俺はミッド式の適性もそれなりにある。これくらいならデバイスに頼らなくとも発動は容易い。

 

魔法を発動し加速された本気のスピードは呆気ないほど簡単になのは後ろを取る。もしリミッターがなければ、いや、リミッターがあっても万全の状態だったならこんなに容易く後ろは取れなかっただろう。疲労によって影響が出やすいのは咄嗟の反射速度なのだから。

 

「オラァ!」

 

後ろを取っておきながら相手が振り向くのを待つ訳もなくその無防備な背中にデバイスを叩きつける。

 

『Protection』

 

流石は長年戦い続けてきたインテリジェントデバイスというところか、ピンポイントで正確にバリアを張ってくる。

だが魔法を切り裂く特性を持つロストロギア、マッサークルの前では堅牢を誇るバリアも精々コンマ数秒を稼ぐのが精一杯だ。

 

なのははそのコンマ数秒のお陰でなんとかレイジングハートを体の前に割り込ませることが出来たようだが、膂力の差からガードごと弾き飛ばされビルの1つに激突する。

そこへ追撃の手は緩めずに魔力刃を飛ばす。

 

 

 

 

 

その着弾の衝撃で舞い上がった粉塵も少し時間が経てば風に吹かれ流されていき、奥からほぼ無傷のなのはが瓦礫をどけて姿を現した。

 

 

「もしお前が万全の状態だったなら、この程度の攻撃なんなく捌き切っただろうな」

 

俺の攻撃特性は既になのはも理解している筈。ならば普通は防御するよりも相殺か回避を選ぶ。それが出来る俊敏性も機動性もなのはは持っている。もし普段の俺達のデータを入力して先程のパターンをシミュレートしてみても結果はおそらく俺の一撃は避けられる、と出るだろう。

 

「それが出来なかったのは何故か、簡単だ。万全の状態じゃないからだ」

 

なのはとて今の自分の体調くらい把握出来てる筈だ。それでも休まないのはこの程度ならまだ勤務可能だと判断しているから。事実これまでジェイルのオモチャ相手にも遅れは取ってないし教導での模擬戦にも影響は殆ど出ていない。

この疲労なら大丈夫、というラインがこれまでの経験上あるのだろうし、この一件が終わるまでは頑張ろうという思いもあるんだろう。

 

昔と違って今は限界は超えないようにギリギリ最低限の休息をとっているのは少しは成長したということ。

疲労が重なってほんの僅かに反応が遅れただけで、動きが鈍っただけで命を落とすこともある。それをなのはは8年前に身を持って知ったが故にだろう。

だがそれでは足りない。ギリギリでは普段の日常が繰り返される分には大丈夫かもしれない。しかし何か予想外な事態が発生しただけで簡単に限界を超えてしまう。そして管理局という所はその予想外の事態が当たり前のように発生する場所。そんななのはの疲労の溜まり具合をたとえるならばグラス一杯に張りつめられた水と同じ。少し揺らしただけで溢れてしまう。まさにそんな危うさを感じさせる状態だ。

 

今がまさにその極限に近い状態。自らの教え子が壁にぶつかっているのをなんとかしてあげたい一心で寝る間も惜しんで訓練スケジュールを組んでいる。

戦技教導官は短期間の指導しか行わないために教え子に対しメンタルケアなどのサポートはほとんど行わない。悩んでいる教え子がいれば悩む暇などないほどに模擬戦をしてやろう。という考え方だ。

そんな部署にいたせいかなのはは教え子が躓いた時の対応が分からない。特にティアナのようなタイプは初めての筈だ。その戸惑いは確実になのはの生活に影響を与え、ストレスや疲労を与えただろう。

 

 

分からないことがあった。疲労が溜まってきた。

それでもなのはは1人でやり通そうと頑張ってきた。

 

答えを知ってる人に聞く。仕事を手伝ってもらう。

なまじ優秀なだけにそんな当たり前のことが出来なかったなのは。

誰かを頼るというのは決して悪い事じゃない。寧ろ、誰にも頼る事が出来ない、というのは欠点でもある。

 

それが分からなければいずれまた8年前の出来事を繰り返すことになるだろう。次はもう歩けなくなるかもしれない。次は命を落としてしまうかもしれない。

俺でさえ見てて危ういと思うんだ。より近しい連中からしたら気が気じゃないはずだ。

もっと自分を頼って欲しいとも願っているだろう。

 

 

「ティアナを見ていて心配だっただろう? お前の周りの人間はずっと同じ思いを抱いてるよ。本当は休んで私を頼って欲しい、でも寝る間も惜しんで教え子の為に身を削って頑張ってる姿を見たら自分からは何も言えない。ってな」

「あっ・・・・」

 

 

 

――なのは、調子はどう?

――うん、良い感じだよ。このメニューをこなせるようになったらきっと皆もっと良くなると思う。

――そっか・・・あんまり詰め込み過ぎないようにね。

――分かってるってばフェイトちゃん。ちゃんと無理のない範囲の内容だから。

 

 

先日こういうやりとりがあった、とフェイトから聞いた。

私はそんなことじゃなくて、なのはの体の調子を聞いたつもりだったんだけど。と苦笑いしながら話していたのを覚えてる。

 

似たようなことは何回もあったらしく、なのはもそのことに思い当ったのか小さく声を漏らす。

 

 

 

「そっかぁ・・・私皆にこんな辛い気持ちにさせちゃってたんだ」

 

なのはは、まいったなぁと空を仰ぎながら額に手を当てている。

本来は指導する立場にある教え子の姿を見て己の欠点を理解させられるという自分の至らなさが嫌になったのか徐々に肩を落としていき大きな溜め息を吐いている。

しかしそれで気持ちの切り替えは出来たのか、バリアジャケットの汚れを手でパンパンと叩いてからこちらを向き

 

 

「ご指導、ありがとうございました!」

 

 

と、お礼と共に頭を下げた。

その時に見えた顔は昔と同じように輝いていて眩しくみえた。

 

 

それにしても、ご指導って程大袈裟なことをした訳じゃないんだけどな。

少し八つ当たり気味でもあったのだが、そこらへんを好意的に解釈している基本的に真面目な教導官様に対して僅かに笑みが漏れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな、本当ならアタシらが言わなきゃいけないことだった。なのはのことも、ティアナのことも」

 

 

ヴィータとシグナムの2人組みに声を掛けられたのは模擬戦終了後、気絶したティアナとキャロを医務室に運び、ティアナはともかくキャロに関しては1時間もすれば目を覚ますそうなので専門家のシャマルに任せ残りのスバルとエリオは疲れているだろうからと一旦寮へ帰し終わり俺もオフィスのソファで少し休んでいた時だった。

 

「あぁ、気にしないでくれ。外から来た人間だから言いやすいというのもある」

 

いちいちそんなことを言いに来るとは律儀な奴らだ。

それだけ気にしてたんだろう。

 

「だが、2人のことを私達は勿論主も気にかけておられた。それでも礼は言わせてくれ」

「さっきもなのはに言ったが、気にかけていた、ってだけじゃ何も変わらないんだよ。言葉にしたことしか伝わらない。次からはお前達だけでなんとかしてくれ。口下手だからとか古い騎士だとかそんなことは関係ない」

「うっ・・・わ、わかった。その忠告は有り難く受け取っておこう」

 

私は古い騎士だから、とこの問題からある意味逃げていたとも言えるシグナムは言葉に詰まりつつも返事をする。

古い騎士うんぬんはこの前からティアナ達のこと聞いたら姐さんは自分自身をこう言ってたとヴァイスから聞いた。

 

 

「この時期にいきなり六課にやってきてどんな奴かと正直警戒してたけどお前案外いーやつだな」

「いいのか? そんな簡単に判断しても」

 

 

リインフォースやはやてから色んな話を聞いてたかもしれんがやっぱり警戒されてたんだな。隣でシグナムも頷いてるし。

まぁ10年前の時守護騎士達は闇の書に蒐集されてたから実際に会った訳でもない。それに加え今までも接触を避けていたし仕方ない。

 

「確かにやり方は荒っぽいかもしんねーけど、あいつらの為を思ってやってたのは確かだ。今だって、アタシ達も変わってかなくちゃいけないってことを諫言してくれてる。これでも長い事生きてんだ悪い奴かどうかくらい分かる。」

 

 

残念ながら、今までやってきたことは極悪人だけどな。と心の中で呟き上司でもある管理局のTOPを思い浮かべる。これでも一応正義の味方のはずなんだが。

 

 

 

 

その後はお互いに仕事は片づけており多少時間があったので交流を深めていた。

六課にきてからヴィータはもとよりシグナムとは特に会話が少なかった。それは警戒されているという以上に俺が捜査に出ているのとシグナムが交替部隊であることもあるのだが。礼を言ってすぐ帰らずに普段寡黙気味であるシグナムがこうして話しかけてくるのは主であるはやてあたりに何か言われてそうだ。どういう形であれ六課の仲間なんだからもっと仲良くしておけとかそんな感じで。

フェイトとの調査はどんな感じだとか以前にリインフォースと出掛けた時のことを聞かれたり一応話の種は尽きる事はなかった。

 

 

 

 

 

「どうやら騎士達とも随分打ち解けてきたようだな」

 

会話を始めて少し経った頃に、オフィスで話してる俺達に目が留まったのかリインフォースがやってきた。八神家において唯一おおよそ全ての事情を知ってるこいつは俺と騎士達には仲良くしてもらいたいと思っていたのかもしれない。

 

「おーアインスー、お前も仕事はもう全部片付いたのか?」

「あぁ、簡単な事務処理くらいすぐ終わるさ。それに私が全てやってしまうと他の者が育たなくなってしまう。グリフィス達はまだ頑張ってるよ」

 

まぁそりゃデバイスでもあるリインフォースの処理スピードに勝てる奴なんて管理局にはいないだろうよ。いや、特務部隊の書類関連のほとんどを受け持ってるランディのじいさんならもしかしていい勝負が出来るかもしれん。純粋な魔導師としての力量は未だ管理局最高峰に位置しているんだ。マルチタスクも並みの魔導師の数倍はある。

書類仕事出来る奴少ないんだよな、特務は。機密が多いからどこかから人材を引っ張ってくる事も難しいし。

 

「そんなことより私も混ぜてくれないか?」

「いいぞ、まぁ座れよ」

「すまないな」

 

丁度隣が空いていたのでそこに座る様に勧めるとリインフォースも礼を言いながらそこに座る。

友達などの間ではよくある気軽なやり取りではあったが、ヴィータはこのやり取りをみて衝撃を受けているのか口を開けてポカンとしていた。

 

「ん? どうした?」

「いや、家以外でそんな気楽にしてるとこ見んの初めてだからなんていうか・・・」

 

確かに、噂では勤務中は寡黙で常に無表情と聞いているがそれにしても、家族からも友達がいない奴だと思われてるんだな・・・不憫な奴・・・え、もしかして俺が昔馴染みを除いたら友人1号だったりするのか・・・?

リインフォースは俺のそんな視線に気付いたのかこちらを見て若干不機嫌そうな顔をしている。

 

「それに、10年前に戦って撃墜した相手だというのに気まずさや遠慮はないのだな」

「その件についてはもう話はついているからな、だろう? アーク」

「そうだな。もう終わった話だ。10年前ものことを引き摺る程子供じゃないしな」

「蟠りがないならそれでなによりだ」

 

問題がないと分かるとそれ以上の追及はせずにそういえば、と少しシリアスになった雰囲気を払うようにシグナムが新たな話に移る。

 

「この前のスバルとの模擬戦は見ていたが、やはり強いのだな」

「あぁ何せ10年前の暴走状態の私相手にまともに戦うことが出来たんだ」

「ほぉ、それは是非手合わせ願いたいな」

「おい」

 

 

その言葉で更に興味が出てきたようでシグナムが喜色満面といった表情になる。当時守護騎士達は蒐集されていたので俺達の戦いは見ていない。一応映像は残っているのだがあまり細部は映っておらず俺の実力がイマイチ分からないんだろう。そこに戦っていた相手であるリインフォースのお墨付きとなると、シグナムが求める強さがあると保証されたようなものだ。

面倒なことになっては困るからあまり余計なことは言うな、と視線で訴えるもリインフォースはその視線に気付きながら小さく笑いを漏らすだけだ。

それにあの時は暴走状態だからまともに戦えたとも言える。今やればどうなるかは分からないが、機会もなければ場所もない。

 

ともあれこの話題は続けるとめんどくさそうなので違う話題に切り替えたい。

シグナムの隣に座っているヴィータもまたかよ、と若干嫌そうな顔をしている。

 

 

 

結局、話題は変えれずにおよそ20分間シグナムは止まらなかった。正確にはそろそろ交替部隊の方の仕事の時間がきたので切り上げただけだった。なんだかんだ俺がベルカについては人並み以上に詳しいのもシグナムが止まらなかった原因の1つだろう。ベルカに精通している人間はそう多くない。もしかしたら遠慮なく好きなことを話せるのが嬉しかったのかもしれない。

 

 

「あれ? こんな所で皆何してるの?」

 

 

そしてシグナムが席を立ってから数分後に入れ替わる様になのはとフェイトがやってきた。

彼女達も少し時間が空いてるようでこの雑談に混ざることになった。

現在座っている場所は2人掛けの椅子が2組の4人席で、なのは側は3人で座ってるが幸いヴィータは小柄なのでそこまで窮屈という訳ではなさそうだ。フェイトがシグナムの抜けた所に座ってなのははヴィータを膝の上に乗せて座ろうとしたがその案をヴィータは断固拒否したためこの形になった。なのはとしてはほんの冗談のつもりだったのだろうがヴィータは真に受けたらしくプンスカしている。

 

 

「ほらヴィータちゃん、機嫌なおしてよ」

「ふん、うるせー」

「お詫びにまたアイスおごってあげるから」

「・・・・・ホントだろうな」

「もちろん」

「はやてには内緒だぞ」

「分かってるってば」

 

 

こうしたやり取りを見ていると2人とも外見通り年相応に見えるのでおかしくて少し笑ってしまう。リインフォースやフェイトにとってはいつも通りの光景なのだろうが俺の、というよりも局で聞く2人のイメージはエースオブエースや夜天の守護騎士など若き英雄、のようなものばかりだ。管理局のイメージアップのために広報部が誇張してる部分もあるだろうが管理局員や市井の人間も同じように思っていることだろう。

 

 

「どうしたの?」

「いや、微笑ましい光景だと思ってな」

 

 

俺が笑ってるのを見たフェイトが疑問を投げ掛けてくるのを思ったままに正直に答える。

案外普通の女の子なのだな、と。

その言葉になのはは照れてヴィータは微妙な顔をしている。もはや年齢が植物クラスの彼女は褒められてるか貶されてるか判断がつかないのかもしれない。

 

「お前達がティアナ達を見て思うように、俺から見たらティアナ達は勿論お前達もまだ子供だ」

「お前は歳の割には老成してるように見えるがな」

 

横のリインフォースが余計な茶々を入れるのも無視して俺は言いたい事を続けて言う。

 

「ティアナの件だが、子供は子供らしく言いたい事を言ってみたらいい。お互いに意見をぶつけあって得られるものというのは確かに存在する。部下の顔色を伺って言いたい事も言えない上司にはなるなよ」

「・・・・・はい!」

 

聞きようによっては馬鹿にしたような物言いだったが、なのはは言葉の裏に隠れた思いやりを感じ取ったのか少しだけ考え込んでから笑顔で返事をした。

 

 

「・・・でも、その肝心のティアナはいつ目が覚めるのかな・・・?」

 

話を聞いていたフェイトがボソリと呟いた一言で皆の視線が俺に集まる。

 

「疲労の溜まり具合やダメージからすると、そうだな・・・あと半日、とは言わないが目が覚めるのは夜になるだろうな・・・」

 

皆のジト目で多少の居心地の悪さを感じつつも俺の予想を告げる。

 

「結構手酷くやってたようにみえたけど出動に影響したりしない?」

「それは大丈夫だな。目が覚めない原因の一番は溜まった疲労ってシャマルが言ってたし、見た感じ後をひくような感じじゃなかった。ぐっすり休めば明日には元気になんだろ。ただ今日の内はすんげー痛いだろうけどな」

 

相変わらず心配性なフェイトだがヴィータの言葉を聞いて安心している。ヴィータの観察眼を信用しているみたいだ。

まぁ古代ベルカ時代の戦乱を戦い抜いてきたのだ。どこをどうすれば人が壊れるのかは俺以上に熟知しているだろう。

 

 

 

「まぁそういう訳だ。流石に今日出動命令が出たら無理だが明日以降なら大丈夫の筈だ」

 

これでこの話題は終わりだと締めくくりまた次の話へと移り変わっていく。

 

 

時間にして1時間くらいだろうか、まだ空いている時間がない訳でもなかったが確認したいことなどもあったのでそろそろお開きにしようと告げる。

 

「さて、そろそろ俺は部屋に戻る。お前もしっかり体を休めておけよ、なのは」

「はいっ」

 

なのはに一言注意してから席を立ちオフィスを出て寮へと向かう。

俺は捜査も多く六課にいる時間が少ないため自宅から通勤している訳だが六課の宿舎に俺のスペースがない訳でもない。仕事用具や着替えを置いておいたり、今日のように休憩時間や空き時間が出た時のために生活空間は必要であり、寮には俺の為に一室あてがわれている。

 

仮眠室程度の認識だが、上層部からの意向で六課に出向している俺を監視したりするのは疑ってますと公言してるようなものなので、監視カメラなどを設置するのは体裁が悪い。故に誰にもプライベートを侵害されない空間は特務関連の情報をチェックする時などに誂え向きなので時々利用している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に日も暮れ外は真っ暗な時間帯、更新された管理局のデータベースのチェックも終わり俺は特務の方での進展はなかったかコウヨウと連絡を取っていた。

 

「で、調子はどうだ?」

『あー、これと言って何か特別なことはなかったな。ただ』

「ただ?」

『やる気出した爆弾娘はやっぱ半端ねーや』

 

コウヨウと犯罪者狩りに出ていたシェリー、部隊内での通称――爆弾娘。

特務の切り札、否、俺の切り札とも言える彼女。初見であればあのリインフォースにでさえ勝利する可能性を秘めていると俺は見ている。

 

『ちょっと今からデータ送るわ』

 

そう言って送られてきたのはとあるリスト。

その中には見覚えのある名前や組織が含まれていた。

 

『S級指名手配犯こそいねーが普通に考えりゃ有り得ん数だぜ、それ』

 

そのリストの実態はこの短期間でシェリーのよって葬られた者達の名前。

コウヨウの言う通りS級の犯罪者こそいないが、広域に指名手配されてるA級犯罪者や最近台頭してきていたという組織の名前があった。

この成果を言い換えるならば並みのエースの数カ月分の働きにも値する。まさに異常だ。

 

 

『逆に短期間でそんだけの犯罪組織が潰れたってことを情報操作する方に手間取るくらいだぜ。ま、その甲斐あってかどの連中も活動が落ち着いてきたな。今動いたら潰される、ってよ』

「なら一応最低限の目的は達成だな。しかしそれだけ派手にやったなら噂を聞きつけてローガンあたりが接触してくると思ってたんだが、よほどきつく言われたのか大人しいみたいだな・・・」

 

あの男ほど強い奴と戦いたいと願っている奴はそうはいない。ラグナロクのメンバーとして名を連ねているのも強い奴と戦う機会が増えるからという理由だ。故に組織としての体裁より個人の願望を優先させてシェリーに釣られて欲しかった。そしてその際にラグナロクの情報を少しでもと思ったが、甘かったか。

 

『んで、俺の方はこんなもんだがそっちはどーよ?』

「こっちもイマイチだな。少しずつ細かい情報は入ってくるが大きな収穫はナシだ」

『そっちじゃなくて六課の方よ六課の』

「あぁ、そっちね」

 

余程気になるのか早く早くと急かしてくるコウヨウに対し、今日のことをおおまかに説明してやった。

 

 

 

『ワハハハハハ! ちびっ子達相手に随分じゃねーか! お前ならもっと上手く出来たろーに!』

「一番手っ取り早い方法を選んだまでだ」

『手っ取り早い事には違いねーわな。けどそれじゃまだ全部片付いてねーだろ。その娘っ子が目ぇ覚めたら一回お前に会いに来るんじゃねーの?』

 

 

 

コンコン、と扉をノックされたのはその台詞を聞き終えた直後だった。

 

 

 

「あの、今お時間大丈夫ですか・・・?」

 

 

・・・流石は心眼だな。お前の言った通り来たよ、今。

 




この話の冒頭部分は原作StSっぽく誰かの独白とかそんな感じのやつです。多分これからは最初にこんな感じのを書いていくかもしれません。

ティアナ編とでもいうべき話はおそらく次回で終わりです。
この話が終わって2,3話後あたりにようやっと皆のアイドルヴィヴィオが登場するかもです。

描写はあまりされてないけど原作キャラ達との交流は着実にしています。
捜査の時に移動時間とかにフェイトとお話してたりもします。
実はもうフェイトさん主人公の車に乗ってます。その時につい興奮しちゃってたりもします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。