魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~   作:Sady

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今回はいつもより少し短めで番外編です。
オリキャラと舞台設定の理解を深めるだけの話っていう感じなので読み飛ばしても一応は大丈夫な筈です。





番外2 盲いた眼に映るのは

 

――アーク・リリィ・シーリング

 

俺があいつのことをどう評価しているかと聞かれれば俺は少し悩んだ後にこう答えるだろう。

――怪物、と。

才能があり間違いなく天才と呼ばれる人種だが、才に驕ることなく研鑽を積んだあいつは既にその天才という領域すら越えている。

 

ロストロギアである魔力を断つデバイスにあらゆるものを封じるレアスキルを組み合わせ完成された戦闘スタイルによる純粋な戦闘力。

あらゆる事態に対応する柔軟性に決断力。

表の世界では奮えない能力や事情を抱えた者が多く、個性の強い部下達を纏め従わせるカリスマ。

目的を果たす為ならば清濁に関わらず全てを飲み込む強靭な精神力。

 

言葉にしてみればこんな所か。

だが、怪物と感じさせたのはそんな言葉に表せられるような理屈じゃなかった。

光を失った筈の俺すら射抜いた爛々と輝き燃え盛るような眼光、心眼を持ってしても全てを見通せぬ中身に、ただただ圧倒されこいつには勝てないと思わされた。

これでも俺は自分の強さに揺るがぬ自信を持っている。事実、対人に限った戦闘能力で言えば管理局の上位10人には数えられる筈だ。アークとの模擬戦でも10回やれば大体7回は勝ちを拾える。魔力量や攻撃力、地力では間違いなく俺の方が上だ。だがもし模擬戦でもなんでもない殺し合い、敵として戦えば自分が勝てるビジョンが浮かばない。敵対関係にあるとすればそもそも戦闘というステージに立てるかすらも分からない。管理局の鬼札、JOKERと揶揄されるに通りその姿を見る時点で既に決着している可能性も大きい。

 

 

最高評議会からの評価もその任された権限を見ればどれ程の期待と信頼を寄せられているかが分かる。

 

次元管理特務部隊隊長

最高評議会補佐

次元管理局支部統括官

本局執務官

管理世界外交官

 

 

表に公表されず正式な肩書でないものも含まれるが、最高評議会の権限をほぼそのまま使える以上、生身の人間という括りでは事実上のトップとも言える。あいつならば与えられた権限を持て余さず行使出来る。そう判断されているからこそだ。

最高評議会の人を見る目というのだろうか、人を意のままに操る能力は恐ろしい程だ。もはや生命の維持すら他人の手に委ねているというのに未だに生き永らえている一点だけでもその恐ろしさが分かる。彼らに大した忠誠心も好感も持ってない俺ですら尊敬してしまう技量だ。

 

人を使うのが上手い、ということに関してはアークもそうだろう。

先程挙げた役職も、当然全てあいつ1人で兼任して補える仕事量ではない。ではどうしているのかと言うと、自分で仕事を処理するのではなく誰かにその仕事を割り振っているだけだ。それに加え管理局以外の外部の人間も起用していたりもする。

そんなのは当たり前だ、と思うかもしれない。ただ、その仕事の割り振りは恐ろしく適切で効率が良い。誰に、どれを任せるか。部下の能力を熟知していなければあれ程の効率は生まれない。仮に俺が同じ人材を扱っても同じ結果を出せない自信がある。

 

現に今、こうして書類の山を片付けているが俺の処理能力を越えるようなものは1つもない。そして逆に誰でも出来るような小さな案件もない。そういったものはもっと下っ端に分配されているだろう。因みに目が見えないのに何故書類整理が出来るのかという疑問がありそうだが、紙媒体のはインクの凹凸や筆圧でも分かるし検索魔法の応用でも内容は分かる。端末で処理するデジタル状のものも魔力が見える俺にとってなんの問題もない。

 

 

「ねぇねぇ」

「んぁ?」

 

書類と睨めっこ――盲目だけど――してる俺に声を掛けてきたのは、俺と同じく書類整理をしている筈のシェリー。

 

「終わったから帰って良い?」

 

シェリーの手元に意識を向けてみれば成程全て終わっている。それなりの量があった筈が綺麗に纏められていた。

 

「良いけどよ、俺を手伝うっていう発想とかはねーの?」

「はぁ? いやっぷー、見たいドラマあるの」

「つめてー奴だな」

 

手伝ってくれるなんて欠片も思ってなかったが断られる理由がドラマが見たいっていうのはなんか少し傷つくなおい。俺はドラマ以下か。

 

「そもそもあんた私の上司って訳でもないしアークが言うから仕方なくある程度言う事聞いてあげてんのよ? という訳で帰りまーす」

 

そうやって言いたいことを言い終わったら部屋を退出していった。

あいつは特務部隊でもなければスカリエッティのように最高評議会の部下という訳でもなく、アークが個人で雇っている私兵という立場だ。何故ならば、アーク以外に手綱を握れる奴がいないから。人格にさえ目を瞑れば相当に優秀だ。

特にこれといった目的も志もないため利用出来ず、脅そうにも家族や身内がおらず弱みがない。力で抑えつけていうことを聞かせるには強すぎる。駒として扱おうにも扱えないような人種。下手に機嫌を損ねれば何をしでかすか分からない。だから爆弾娘。

相性の問題もあり俺ですら勝ちを拾うのは難しい。

性格的な相性で言えばスカリエッティと馬が合う数少ない人間でもある。やりたいことを

好きにする。そういう欲望に忠実な所が気に入ったとか言ってた気がする。それに解明不能なレアスキルも実に興味深いとも。

 

 

レアスキルと言えば最高評議会が揃えようとする人材にはいくつか種類がある。

まずは単純に強い奴。

そして読心系スキル保持者、移動系スキル保持者、対古代遺失物スキル保持者。あとは優秀な研究者。

これらに該当するスキルを持つ者がいれば基本的に特務部隊への勧誘が行われる。

勧誘、と言えば聞こえはいいものの、その多くの場合は従わざるを得ないような脅迫である。まぁ従うメリットは充分に提示しているが。

聖王教会には、予知能力という未来を知れる破格のレアスキル保持者がいるが、数年に一度、解釈が難しく不安定、特定の事象を意図的に予知出来ない。更にその予知された内容はある程度公開されており、教会との関係を考えるとわざわざ勧誘する価値はないと判断されている。

 

 

 

 

現在の特務部隊は歴代最高と言って良い程の精鋭揃い。10年前に前隊長が抜けた際に開いた穴も既に塞がっている。先程挙げた能力者も全て揃っており隙がなく層が厚い。読心系スキルでいうと『心眼』を持つ俺と『読心』を持つ嬢ちゃん。まぁ俺達のは能力というより生態だが。移動系スキルはアークがどこからか発掘してきた奴がいて、研究者はアルハザードの遺児『無限の欲望』スカリエッティ。戦闘能力の高い人間は、かの3提督の師でもあり老いてなお至高とも言えるミッドチルダ式の魔導師ランクSSSのランディを筆頭に近接最強を自負している俺、JOKERである特務部隊隊長のアークとそのアークに雇われている超能力者シェリー。

対古代遺失物能力に関しては長年最高評議会が理想として求めていたレアスキル『封印』を持つアーク。

 

無限書庫にある古代ベルカ諸王時代の伝記の一節には『封印』のレアスキルを持った騎士のことも記されていた。

曰く、戦乱の時代に於いて最も自由であった騎士。数多のロストロギアを操り戦場を駆けたらしい。それこそ王と呼ばれても不思議ではなかったそうだが、自由を好み縛られることを嫌ったからではないか、という説もある。

血のような紅い髪に燃える炎の如き眼とその魔力光、あらゆるものを封印するレアスキルからその騎士は『緋色の騎士』、『封魔の騎士』などと呼ばれていた。

 

 

その騎士と同じ血が流れているアークを筆頭とした特務部隊に最高評議会という次元世界の王は守られている。

もし管理局を、世界を変えようと思うならば最高評議会の存在は避けては通れない。最高評議会の死なくして革変はありえない。過去管理局を変えようとしてきた人間が越えられなかった壁。どれ程民衆の支持を得ても、聖王教会の力を借りようと、局員を味方につけようとも、最高評議会には届かなかった。届いても、倒せなかった。排除出来なかった。

最高評議会を打倒するならば、3つの要素が必要だと俺は思う。

1つは権力、最高評議会の存在を知る事。これは最低限の前提条件でもある。

2つ目は武力、物理的に最高評議会の元へ辿り着く事。単純だがこれが難しい。何せ特務部隊の戦闘員は人数こそ多くないが誰もがエース級の実力を持っている。非殺傷設定が使われる方が稀な戦闘をこなしてきた精鋭達。文字通り殺し合いの中生き抜いてきた人間。それに加え特務部隊の幹部、アーク、じいさん、俺の内誰か1人は基本的に最高評議会の守護に就いている。これら全てを撥ね退けて初めて最高評議会の元へ辿り着く。

そして最後の要素、世界を変える覚悟。これが最も重要だ。分かりやすく言うなら、事後処理をする責任と能力。1つ目と2つ目をクリアしている伝説の3提督にすら足りないものでもある。これは最高評議会を倒したと仮定した場合の話だが、倒した後には何が待っている? トップがいなくなった組織に混乱が訪れるのは当たり前、当然誰かが代わりにトップに立たなくてはならない。空白の王座を求める覇権争いを制し、最高評議会が背負っていたもの全てを代わりに背負う。つまり、次元世界の全てを背負うと同義だ。しかし、最高評議会以上に優秀な結果を残せる人間などいる訳がない。そんな後継がいないからこそ彼らは肉体を捨ててまでも永らえているというのに。最高評議会の元に辿り着けるような人間がいたとしてもそんなことは分かりきっているだろう。3提督が良い例だ。

もしくは、それを知ってでも、次元世界に多大な混乱が訪れ結果的に多くの死を招くと知ってて尚その引き金を引く覚悟があるか、だ。

 

これらを併せ持った存在だけが管理局を――世界を変える資格を持っている。

それを僅かでも成し得る可能性があるのは、現在の最大の警戒対象であるラグナロク。単独でも世界を消滅させる可能性を持つ犯罪者が徒党を組んだ危険な組織。奴らのミッド侵攻の噂が流れており動機は分からないがその目的はまず間違いなく最高評議会抹殺及び管理局の崩壊。

次点でジェイル・スカリエッティ。あのマッドサイエンティストは最高評議会を倒しうる科学力を持っており、その死後世界がどれだけ荒れようがどれだけの人間が死のうが関係ないと割り切れる狂気も持っている。あいつの手綱を握りきれなくなった時には何が起きるか見当もつかない。シェリーを爆弾と例えたように敢えてスカリエッティも例えるとするならば、あいつはニトログリセリン。人を救う医薬品にも、人も殺す爆薬にも成り得る存在。全ては扱う人間次第。

この2つの存在だけが現在世界を変える可能性を持っている。まぁ厳密に言えばもう1人いるのだがそれは今はいいだろう。この何れの存在も生み出された背景に最高評議会の影があるのはなんという皮肉だろうか。

 

 

 

アークによれば機動六課の部隊長、八神はやても管理局を変えようとする1人らしいが彼女はどうだろう。

管理局の闇こそ確信しているものの最高評議会の存在にまで辿り着けているかというと微妙。武力においてはどうか。総合魔導師ランクSSといえば聞こえは良いが魔導師ランクと戦闘力は直結しない。典型的な後衛型で大規模戦闘や対軍戦では無双の力を発揮出来るだろうが対人戦や局地戦ではお荷物に等しい。次に彼女が個人で保有する戦力である夜天の守護騎士ヴォルケンリッター。確かに強いが、数が4騎と少ない上に10年前の闇の書事件での守護騎士プログラムの改変により稼働限界があり1度死ねばそれで終わり。過去の闇の書の主との戦いの記録を見ても分かるが守護騎士の1番の特性は強さでなく魔力さえあれば再生可能な不死の騎士であった点にある。闇の書には膨大な魔力が蓄えることが可能で多少強引だが即時蘇生さえ出来た。その為4騎全て同時に倒さなければ主の元に辿り着くのは難しかった。だが今は1騎ずつ潰して行けば事足りる。プログラムである最大の利点が消えている。

彼女に味方する人間は高町なのは、フェイト・T・ハラオウン。クロノ・ハラオウン提督にリンディ・ハラオウン統括官。あとは精々動かせてもレティ提督に地上部隊の一部と聖王教会のカリム・グラシアの所属する派閥といった所か。これらを全て合わせた所で、戦力不足と言わざるを得ない。隠居したギル・グレアムを引っ張り出してきたり夜天の管制人格が全力で動けるならば話はまた変わってくるが、あれはアークが命を握っていると言っても過言ではない以上無理な話だ。

最高評議会を倒せたと仮定してその後の混乱を治められるかというと、機動六課を設立するくらいだ。管理局の次世代を担う中心人物にはなれるだろう。夜天の書に選ばれただけあって人の上に立つ素質、王としての素質はあるが未だ完成とは程遠い、現時点において最高評議会の代わりに次元世界全てを担う器量があるようにはとても思えない。

総じて評価するならば、10年、あるいはそれ以上の時が経て夜天の王としての才覚が磨き上げられたなら可能性は無きにしも非ず、と曖昧で不確かで中天にかかる月を掴むような夢物語に近い話だろう。まずはその夢物語の序幕である管理局の闇を全て知って尚飲み込めるかすらも分からないのだから。

更に現実として決定的に時間がないのが悲しいな。

 

既に決戦は目前、その規模はおそらく黎明期にも匹敵する過去最大級のものとなるだろう。そしてその決戦がこそ新たな時代の産声になる。

 

 

 

「さーて、俺もそろそろ休みてーしさっさと片付けるか」

 

今もこうして行っている書類の整理とて、新時代を迎えるためには必要なモノ。

新たな世界を求める人間としてやるべきことは全てやっとかないとな。

凝り固まった肩を解すように腕を回して集中し直す。

 

――平和を守るのに必要なことなんて地味なもんばっかりだ。華々しく戦って勝利を飾ってハイ終わり、ならばどんだけ楽なんだろうな。

 

 




オリ主は他人目線で見ると凄い大きな評価を得ているってのはもう定番ですよね(´ω`)今まではそういう描写少ない感じでしたのでここらで主人公ヨイショしとこうと思います。

そして地味ーに伏線が散りばめられている回にもなったと思います。全部回収出来るかは分かりません。

次回は本編ストーリーが大きく進む予定です。戦闘回でフェイトさん視点、そしてようやくオリ敵の登場になる予定。多分主人公よりキャラ立っててインパクト強いかもしれません。


なのポ最近始めましたがBOAを先にしてこんなもんか、と思ってたらGODめちゃくちゃ面白いです。
ヴィヴィオかわいい。この小説でも早くだしたいものです。
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