魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~   作:Sady

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気付けば前投稿から3カ月・・・(´ω`)お待たせしました。

おそらく次でこの暴君との邂逅編?は終わります。
中々戦闘に入らない・・・


20話 暴君

 

 

「待たせたな」

 

 

デバイス片手に研究所跡地から出てきたウォルフザークはまるで待ち合わせに遅れた友人のように悠然と歩いてきた。その足取りからして私達が撤退することなど微塵も考えていなかったようだ。

 

 

「全くだ。挙句折角の情報源を目の前で潰された身にもなってみろ」

「ウハハハハ! 本来であれば貴様らが来る前に事を終えている筈だったのだがな。やはり、途中で見つけたあのゴミ共から足がついたか」

 

ゴミ、というのは生命反応が途絶えたと言う捜査員のことだろう。人を人と思わない言い草は許せないが、熟練の局員を蹂躙出来る強さの裏付けでもある。

 

 

「で、待たせた詫びにでも答えろよ。お前の目的はなんなんだ?」

「余が、それを教えると思うか?」

「ああ思う。他ならぬ俺が聞いてるんだからな。お前はそういう奴だ。それにまずは語り合い、なんだろう?」

 

2人のやりとりを聞いてると、アークの言葉は刺々しさこそ目立つものの、それを踏まえてでも敵とは思えない程に親しげで、相手のことを理解しているような口振りだった。普通敵に目的を聞かれた所で答える訳がないのだが、アークはある種の確信を持って問いかけている。

 

「ハハハッ、愉快だ。実に佳い気分だ。待たせた詫び、か。いいとも、教えてやろうぞ。語り合い、であるしな」

 

感慨深そうに笑いながら返ってきた言葉は、私にとっては予想外のモノで、アークにとっては予想通りのモノだった。てっきり暴君という名の通り拳で語り合う、というシグナムみたいな脳筋だと思っていたのだが、先程言っていたように話し合うという考えはあるらしい。今も昔もベルカの人間は口より先に手が出るイメージだったのだが改めなければならないようだ。

 

「それで、余の目的であったな。まずは、昔の領地を取り戻す事だ。あそこは管理局でも聖王教会でも誰のものでもない。幾星霜の時が流れようとも余のモノだ。これだけは何があろうと譲れん」

 

昔の領地、というのは諸王時代に暴君が支配していた国のことだろうか。古代ベルカの時代に暴君という王が存在していたことは知っていても、その王について詳しく知ってる訳じゃない。私が知っているのなんて圧政を強いていて本人が武闘派で強いこと、その最期は聖王が乗るゆりかごによって死を迎えたということくらいだ。あとは、アークが持っているデバイスが暴君由来っていうのもか。

 

「そして世に蔓延るクズどもを一掃し、余の武を知らしめ世界を掴む。ラグナロクという組織に身を置いているのもその一環よ。管理局なぞ有象無象の塊でしかないが流石に1人で潰すには骨が折れるのでな」

「その有象無象に前回やられたのはどいつだ?」

「前回、ランディやあの3人の若造どもにあと一息の所で負けたのも、侮り過ぎていたのも否定はせん。だからこそ、今度こそはうまくやる。なんならば貴様も余と手を組まんか? 貴様がおればあのように胡散臭い奴らとつるむ必要もない。あの時のように背中を預け合って、な」

「ふん、馬鹿なことを言うな。ありえん」

「ま、であろうな。あの時は利害が一致していただけであるからな。あの戦艦が相手では流石に余であっても手に余る」

 

 

取り敢えずウォルフザークは昔の領地の奪還と打倒管理局を掲げているのは分かったけど、前回というのは何なのかとかランディや3人の若造っていうのが誰なのか全く分からない。アークは分かってるみたいだけど私は会話に追いつけないでいる。というよりもウォルフザークが私に一切興味がないみたいなのは元よりアークですら私の存在を軽く無視してて、私はバルディッシュを構えていつでも戦える態勢に入ってるのに、ちょっと部外者扱いなのが辛い。構って欲しいとかそういうのじゃないんだけど、せめてもうちょっと私という存在に目を向けて欲しい。いや、そんなことより敵から情報を得る方が大事ってのは分かってるんだけどね。

自分でいうのもなんだけど私は最近有名になってきてるのにこうして敵に警戒もされないのはなんか悔しい。

 

「どういうこと?」

 

話に全くついていけない私は事情を把握しているアークに近寄り小声で尋ねる。

邪魔しちゃうのは気が引けるけど会話の流れや状況を把握出来てないのはまずいと思ったからだ。さっきみたいにいきなりあんな攻撃されても大丈夫なように状況は把握しておかないと怖い。特に防御が薄くて、その上リミッターが掛かってる私にとってさっきのような攻撃は致命傷になり得る。下手したら余波ですらダメージを負うかもしれない。

 

「伝説の3提督が鎮めたという管理局設立当初にあった黎明期。その黎明期を起こした原因こそが暴君だったと、そういう記録が残っている」

 

 

アークも私の心情を汲み取ってくれたのか簡潔に説明してくれる。意外だったのがウォルフザークが説明の間特に変わった様子を見せずに大人しく待っていてくれたことだった。虐殺王とか暴君とか物騒な通り名ばかりなので、後回しにしろとか無視して話を進めるのかと思ったが、私が想像してたより常識的な対応だった。

 

しかし、3人の若造というのは伝説の3提督のことだったのか。ランディというのが誰かは分からないままだが当時のエースの名前とかだろう。流石に3提督が若造と言われる黎明期時代の人間がまだ生きてるってことはないだろうし。アークのお陰で今までの話の大体は把握出来た。あの時のように、ってのが過去に何かがあったことを匂わせる発言も気になるけど、そこは今は関係なさそうだ。多分話が進むとまた分からない部分が出てくるかもしれないが。

 

 

「だが、貴様も分かっているであろう? 今の世の惰弱さが、脆弱さが。失望はせんか? あの小娘が自らの命を捧げてまでして作った安寧の果てが、こんな世界であることが」

 

 

小娘とは誰の事なのか、アークとの関わりが深い人間であることは間違いないと思う。

だけどそれを抜きにしても私には、ウォルフザークの言っていることの真意は分からない。戦乱の中にあった古代ベルカと比べれば、今の世界は弱く脆く感じるかもしれない。だけど、言い換えればそれは平和で穏やかな世界だという証明にはならないのかな? 惰弱と言われようとも人の死が当たり前な世界より余程良いに決まってる。

でも、私と違ってウォルフザークの語る内容に感じる所があるのかアークは反論することもなくただ静かに耳を傾けている。

 

「少なくとも余には我慢出来ん。あの時代は聖王の小娘に始まり覇王に夜天の王、エレミヤに雷帝、今の時代では語り継がれておらぬ強者共。そしてリリィ、貴様や余がおった! いずれも世界を統べる器量がある者達であった」

 

同じ時代を生きた王達を想ってのことか顔前で拳を強く握りしめ、怒気を孕んだ声で続きを語るウォルフザーク。いずれも著名な王であるが、アークのファミリーネームと同じであるリリィという名前だけは聞き覚えのないものだった。だけどベルカに詳しい訳でもない私ではそれも仕方ないのかもしれない。

 

「それに比べ今の世はどうだ!? 腑抜けた老人共が我が物顔でのさばっておる! 真に優れた者が統治するならば余も精々昔治めていた世界を配下に置く程度で済ます心算ではあった。だが、世界を愚鈍な支配者に遊ばせておるくらいならば余が戴く!」

 

 

・・・やっぱり、私には分からない。確かに管理局は傲慢な所があるし上層部では怪しい動きもある。それでも、世界は一応の安定をみせているし平和と言っていい。次元世界に平和を齎した偉業を成したのは間違いなく管理局の力だ。多少の問題はあったとしても愚鈍と言われる程ではない。

 

 

「どうして・・・」

「んん?」

 

気付けば、思っていたことが自然と口から零れ出ていた。

 

「戦乱の時代は終わった。今は大きな争いもなく平和な世界になっている。なのにどうして、暴君と呼ばれながらも王だったなら――」

 

圧政を敷いていたとはいえ、王だったなら自らの国を持ち、民を生かしてきたはず。それは現代であっても難しいことだ。戦乱が絶えなかった古代ベルカの時代ならばなおさらだろう。それならば、いくら暴君と呼ばれようとも平和の尊さを知っているのではないか?

 

 

「フハハハハハッ! 余に王道を説くか小娘!」

 

 

零れ出た言葉は高らかな笑い声によって遮られた。

 

 

「王とはな、立ち止まってはいかんのだ。臣下を――民を従わせ支配するか、民を守ろうか、民に支えられるか、民を導くか、王としての在り様は様々だ。だがな、王とは歩み続けてこそ王なのだ。常に邁進し道を切り開き戦い続けてこそ民は王を認め共にあろうとし追随す。行いの善悪正義の問題ではない、先を見続け求め続けることこそが! 王で在る者の姿だッ!!」

 

 

 

――ッ!

む、無茶苦茶だ。民の事を考えず、自らの望むことのみを追求することが王である条件だと。傍若無人に、善悪も問わずにただやりたいことを成せばいいと。まさに暴君の名の通りの考えだ。だけど――その出鱈目な、自らの考えこそが世の真理であるかの如く言い切ったその姿とその覇気に、気押されてしまった。

これが・・・ベルカの戦乱を駆け抜けた王・・・ッ。

彼を暴君という事実を知らぬ人間しかいないと言っても良い現代に於いてなお、虐殺〝王〟という名を冠している理由の一端をこの身を以ってして理解した。

 

 

「成程確かに大きな争いがないと言う点に於いては平和と見てもいいかもしれぬ。だが、

余が生きた時代の人はたとえ明日をも知れぬ禁忌に手を出そうとも、それでも懸命に今日を生きていた! たとえ死に瀕し怨嗟の声をあげようとも後悔だけはしなかった。何故だか分かるか小娘? 死に至るその瞬間まで! 全力で今を生き抜き、悔いることなどなかったからだ! それに比べ今の世はなんと弱き者の多い事か! ああすれば良かったこうすれば良かっただのを死ぬ直前まで理解出来ず後悔に塗れて死んでゆく! 人としての輝きを失った時代を作り上げた支配者に、何を以ってして王の器があると言えるのだッ!!」

 

 

暴君が今の時代に何を見たか分からないけどこれだけは私は胸を張って言える。人は、輝きを失ってなんかいない。だって、私は全力で生きて全力で私と向き合ってくれたなのはのその輝きに救われたんだから。

それに、後悔することは決して悪い事じゃない。私達は間違ってしまったり、すれ違ってしまって悲しんだりもするだろう。

でも人は、後悔して過ちを知って強くなって行くって私は知っている。

 

 

「そしてこのような今を平和と断ずる管理局の怠慢と傲慢がローガンやホーリーやあの男、そしてスカリエッティのような者を生みだしたと知れ!」

 

 

このウォルフザークの言葉だけは聞き逃す訳にはいかなかった。

今、なんて言った? 私の聞き間違いでなければウォルフザークはスカリエッティのような者を生みだした、と確かに言った。管理局の怠慢と傲慢がスカリエッティを生んだ? 今まで私が数年を掛けた調査でも、スカリエッティの出生は分からなかった。突然、そう、いきなり現れたのだ。私の知る限り一番最初に確認出来たものは、非公式であるが広域手配される以前、まだ犯罪者ですらなかった時に『JS』と匿名で学会に発表された研究だった。専門でない私にその研究内容は理解出来なかったが、その研究を行うにあたり、それなりの規模の設備と費用が必要であることは分かった。当時無名の科学者にそんなものを用意できる訳がない。必ずその出資者がいるはずだった。

となるとやっぱりスカリエッティと管理局には何かしらの繋がりが・・・? 

 

 

「ましてや、かつての戦乱は終わってなどおらんのだ。余がこうして生きておる限り終わらんさ」

 

 

――聖王を平和の象徴とするならば、暴君とは戦乱の象徴であった。

 

世に広まっている聖王物語の中にある一節が、ふと頭によぎった。本人の言葉通り、暴君が野望を秘めてこの現代にいるということはそういうことなのかもしれない。彼がいる以上・・・戦乱は終わってなど――

 

「終わったんだよ。オリヴィエが、終わらせたんだ」

 

 

丁度私の思考を遮るようにアークが口を開いた。

ベルカの混乱期の紛争を収めた人物は聖王オリヴィエ。次元世界の誰もが知っている。けど、アークの言葉はそういう歴史を述べているのではなく、まるでその一幕を見てきたかのような実感を持っていた。

 

 

 

「お前の言うことはある程度の事実を捉えているし、その考え方も嫌いじゃない。だけどな、何を言おうが所詮お前は過去の亡霊なんだよ」

「亡霊、か・・・的を射た表現ではあるな。」

 

子孫を乗っ取るという暴君を皮肉ってか、亡霊と評するアーク。

対するウォルフザークもその表現に納得してるようだ。

 

 

「お前はこれからの世界には邪魔だ。ここで死ね」

「分かっておったが、やはりこうなるか。それに、語り合うというには少し余が話し過ぎたな。次は対等に、武で語り合おうではないか」

 

アークはそう言ってデバイスを構え臨戦態勢になる。

対するウォルフザークもそれに応えるように片手で剣型のデバイスを構え戦闘態勢に入る。

 

ついに暴君とまで呼ばれた王の力が、振るわれる――

 

 

 




次回もフェイト視点の予定です。
フェイトさん視点だと微妙に会話のテンポが悪いような気がして不安になってきます。


vividの話もちょいちょい盛り込んでるんですが後付け設定みたいな新しい事実が判明!とかなってこの小説の話が矛盾しないといいなぁ・・・(。≖ˇェˇ≖。)

さーて次から戦闘開始かぁ(´ω`)
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