魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~ 作:Sady
暴君との戦闘を終えてからの事後処理がようやく粗方終わりを迎えた。
引き抜いてきた研究データ、これに関しては特に問題もなく解析も進んだ。他の傘下組織と思われる情報も手に入ったからそこは部下に任せておけばいいだろう。
持ち帰った暴君の左腕、これに関しては扱いが少し面倒だったが研究機関に送られる前に聖王教会へと運ばれることになった。ある種の遺骸とも言える王の体の一部、欲しがるのは当然であった。普段は王の系譜でありながら犯罪者に身を落としておりベルカの汚点だと言いながら随分都合の良い事だが、どうせあんな腕一本程度で分かることなど何もない。それこそジェイルクラスの研究者でなければ無用の長物と化すため、貸し作りにと優先的に教会に回してやることにした。
そしてレリックの破片、これは勿論機動六課へと渡る事になった。レリック自体がロストロギアであり尚且つ機動六課の表向きの設立理由である原因だ。古代遺失物管理課に送られるのは当然だろう。細かい処理はフェイトの方ですることになり別段俺に手間はなかった。
肝心の暴君本人についてだが、フェイトはあいつを戦線離脱させることに成功させたと思っているだろうが俺はそうは思えなかった。確かに左腕は奪った。それも俺のメイスによるAMF属性を持つ一撃だ、再生は容易ではない。
それでも、あいつは必ず最終決戦には出てくる。確信だ。何せその時のミッドには俺だけでなく夜天の王に聖王がいる。預言と照らし合わせても間違いないだろう。それにフェイトと俺の2対1だったとしてもあそこまでのダメージを追わせれたこと自体出来過ぎだったんだ。レリックを使い捨ててまでしてあの時出せる力はほぼ出していただろう。が、最後に使ったレアスキルも温存していたし所詮はお遊び感覚だ。精々前哨戦、といったところだろう。
まぁ、戦いの中の会話で色々分かった事もある。
問題は、その過程でフェイトにも色々と情報が渡ってしまったことだろう。断片的な情報のため大したことはないのだが、この時期にちょろちょろ嗅ぎまわられるのは面倒だ。
フェイトに知られること自体は問題ではない。管理局の闇などこれからも執務官を続けていればいずれ知る事だ。だが、それも時期が悪い。決戦までの対応がこれから管理局の未来を左右するといっても過言ではない。出来れば六課解散まで、せめて決戦が終わるまでは今のままを維持しておきたい。
ある程度まではリインフォースに頼んでいけば大丈夫だろう。あいつは六課の人間が管理局の闇に触れることを避けたがっている節がある。
とはいえ、それだけでは足りない。流石にリインフォースだけでは制止しきれないだろうし余り口を出すと怪しまれるからな。
「となると、やはりこれが一番か」
端末を開き今から訪問のアポインメントを入れる。
急だがあそこには特務の人間が入り込んでいるし大丈夫だろう。あの施設は管理局内でも重要な所だからな。10年前から本格的に機能しだしていることもある。
では、今から向かうとするか。
最高評議会の御膝元であるクラナガンの地下、特務部隊の本部であるここは管理局の重要施設への転送ポートもあり大した時間も掛からないだろう。
「お? どこ行くんだ?」
と執務室を出るとコウヨウがいた。俺が六課に出向してからは捜査に出る時間が増えたのでその分の事務処理と書類は、他の幹部であるランディとコウヨウに回っている。犯罪組織の殲滅活動の任もあるが最近はそれも片付きつつある。
なので、出会ったついでとばかりに返事と共に追加の仕事を送りつける。
「ちょっと、無限書庫へな。あと今送った仕事、頼んだぞ」
送られてきた仕事の量を確認したコウヨウの叫びを背に俺は無限書庫へと歩を進めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お待ちしておりました」
無限書庫前で俺を出迎えたのは司書の1人の女性。役職は副司書長だ。本来は司書としての仕事をしつつ重要施設のコントロールのために潜入、監視している人員なのだが、司書としての業務が忙し過ぎてそっちで手一杯のようだ。司書長であるユーノ・スクライアと個人的に友誼のある提督からの資料請求頻度が尋常じゃないらしい。
「司書長は今管理室にいますので案内致します」
管理室か、現場で仕事をしていると思ったが訪問の知らせを聞き比較的会話のしやすい所に移動したっぽいな。どうやら気を遣わせてしまったようだ。
管理室には転送ポートも設置されているので移動はすぐとはいえな。
「ユーノ司書長、アーク・リリィ執務官をお連れしました」
「通して貰って。君もありがとうね」
「いえ、では私はこれで失礼します」
管理室へと俺を案内すると彼女は俺に頭を下げて司書としての業務へと戻っていった。以前から真面目な奴だったが、ここで仕事をしている内に一層磨きが掛かっているようだ。もしかしたらこの訪問で滞るユーノの分の仕事までするかもしれない。
「わざわざ時間を作ってもらってすまないな」
「いやいいよ。僕も働き過ぎだからちょっと休めって言われてたしね。それで、何か僕と話したい事があるって聞いたけど? アーク執務官」
そういうユーノは言葉通り過労気味なのか、本人は隠してるようだが僅かに疲労が顔に浮かんでいた。ここの所無限書庫は特に忙しいようだ。それも仕方ないだろう。各世界に蔓延る犯罪組織が一気に検挙されている現在、海所属の提督や将官はてんわやんわの筈。ユーノの友人である例の提督含め多くの人間が無限書庫へ資料を請求していることだろう。
「そうだ。そして、今日は執務官として来たんじゃないんだ」
「へぇ・・・それはどういう意味かな?」
俺の言葉の裏にある意味を正しく汲み取り、疲れが見え隠れしていたものから真剣な顔つきへと変わる。これは、俺に対して未だに疑いを残しているからこそのものだろう。
「勿論個人的に友誼を深めに来たという意味でもない。アグスタ以降、また俺の情報を集めているらしいじゃないか」
「・・・そうだね。あの時の話を聞いて少し、ね。気になったことがあると調べないと気が収まらない質なんだ。でもどうやってそれを? これでも気を遣って調べてたんだけど」
「その前に1つ聞いておこうか。10年前までろくに無限書庫が活用されていなかったことや民間協力者の身でありながら司書長という立場につけたことを疑問に思ったことはないか?」
無限書庫は管理局創設以前より存在しており現在確認されている最古の書籍は6500年も前のもの。未だに書籍の収集は機能し情報量は拡大し続けている。もしその全ての書籍を紐解けることが出来るならば全知全能も同然。世界の記憶が眠る場所とまで言われている。
その有用性を管理局が、最高評議会が分からぬはずがない。だというのに10年前までは大して活用されていなかった。
それは何故か? 答えはある種単純なものだ。無限書庫には世界の出来事の全てが記されている。勿論、管理局に都合の悪いことも、だ。表に出すべきではない情報も無限書庫にはあるのだ。だからこそ、未整理区画の一次調査は特務の人員で行われる。危険物、トラップの有無の確認出来る実力者、という名目で特殊調査員が駆り出されていることになっているが、実際のところは世に公開しても良い情報かどうかの判断が同時に行われている。一言で言えば歴史の隠蔽、だろうか。
それに加え無限書庫の有用性に気付いていても滞りなく運用出来るレベルに持っていくには時間も人材も足りていなかった。慢性的な人員不足である管理局に無限書庫を開拓する余裕はなく、上層部もまた現状でどうにかなっているのに管理局の闇を暴かれるリスクを背負う気もなかった。
だが10年前にその姿勢を改めざるを得なかった。
無限書庫を1つの施設として足る水準で運用出来る可能性が出てきたからだ。
ユーノ・スクライア。ギル・グレアムの使い魔の助けがあったとはいえ僅か10歳程度の子供の手によって無限書庫の区画整理、安定した情報検索が行われた。
その事実が管理局上層部を動かせた。
アクセス権の管理や規則も明確に定まってない以上、下手に使わせるよりも然るべき役職を与え無限書庫を稼働させた方が良いのでは、と。
民間協力者、ましてや子供ならば知られすぎたとて事故を装い消せば良い。その結論を以てユーノ・スクライアは無限書庫の司書長へ大抜擢され、現在に至る。
「それは、常識的に考えればおかしいよね。管理局が慢性的な人手不足だからでも、勿論当時はまだ在籍していたギル・グレアム提督からの推薦があったとしても。分かってるよ、管理局上層部の意図も、君が言いたいこともね」
やはりユーノ・スクライアは優秀だ。
親しい友人に海の提督がいることもあり管理局の内情、性質をよく知っている。闇の書事件やなのはの撃墜事件で感じ取った違和感もあっただろう。
けれども、優秀であると同時に厄介でもある。管理局の闇を知りある程度の暗黙の了解とされているルールも把握している。だが、正規局員ではない上に従っている訳ではない。
引き込むべきだ。こちら側へと。
「なら話が早い。俺がここにきた理由はな、勧誘だ」
「勧誘? 君は確か派閥に属してる訳でもないし部下もいなかったと記憶しているけど?」
自らの予想していた話とは違っていたのか怪訝そうな顔つきで確認している。
俺が次元管理特務部隊の隊長、つまりはJOKERというのは局の上層部では公然の秘密になりつつあるが、それでも民間協力者であるユーノは未だに知らなかったようだ。まぁ当然と言えば当然だろう。クノロ・ハラオウンですら知り得ていない情報なのだから。
「最初に言ったように執務官としてここに来たんじゃない。ではどの立場の人間としてきたのか? 端的に言えばそう、闇の書事件に始まりアグスタ以降特にお前が懸念している方だ」
「――っ!」
ユーノの息を飲む音が聞こえてくる。ユーノが懸念していたのは管理局の闇を担う人間。
今まではチラチラと見え隠れしていただけの管理局の闇。それが今、少なくともその一端が目の前にいるのだから。
現実には一端どころか全貌とも言ってもいいのだが。
「聞いたことはあるかな? 管理局には隊員全てが何かしらの分野のエキスパートであり、曰く管理局の切り札―JOKERという魔導師が率いるという幻の特務部隊がある、と」
「それが君の、所属する部隊だと?」
恐る恐る、という表現があてはまるような問いかけだった。
ユーノの予想ではおそらく、はやてと同じくレジアスのような上層部の誰かの直属だと思っていたのだろう。僅かなヒントでそこまで考えを巡らせ、辿りついていたのはやはり優秀である証左。
「ということはやっぱり存在していたのか・・・最高評議会・・・!」
ユーノはもはや驚きを隠そうとすらしていない。
火のないところに煙はたたない。噂は確かにあった。綺麗事だけで世界は回らない以上存在してもおかしくはない。
けれど、その存在を確信することの意味は大きい。ましてや、その存在が目の前にいるということが。
「お前が知りたいと望んだことだ。色々嗅ぎまわっていたということは覚悟もしていたんだろ? ならば、もはや後には引けないのもわかっている筈だ」
「でも・・・なんで僕なんだい・・・? 僕を引き込むことで君達になんの利益が・・・」
ユーノも今更引けないのは理解しただろう。だけど納得出来ない。事情を把握しきれないでいる。仲間の為に情報を調べていたにも関わらず後手に回っている。
だからこそ悔しげに拳を握り理由を聞いてきている。
「その方が、都合が良いからだ」
「え・・・?」
「正直なところ、今のお前にそこまで大した価値はない。無限書庫の司書長と言っても既にマニュアルは確立しつつある。敢えて言うならば六課の人間を交流があることくらいだ。本来なら俺が直接きてまで勧誘する必要はあまりないのだが、生憎時期が悪い」
決戦までの時間は一刻と迫ってきている。六課とジェイルの茶番劇ではない。
ラグナロク率いる次元世界の犯罪者VS特務率いる地上本部の総力戦になる可能性もある。黎明期以来の本物の戦争だ。
今はその準備期間。局内だけでなくミッドにいる正規局員ではない魔導師をも纏めて戦力を整えなければならない。戦後処理の準備すら既に始まっている。
「勧誘と言ってもその部隊に所属しろと言っている訳じゃない。俺に協力してくれれば良い、私兵みたいなものだ」
重大施設を担う長が民間協力者であり闇を知らない状態なのは不都合だ。
ユーノに求める役割は情報規制と戦後の事後処理。
「協力してくれればお前の知りたがっていたことも、全て分かる」
「協力してくれだなんて、随分好意的な言葉だね」
頷く以外の選択肢なんてないようなもんじゃないか、と苦笑いしながら最後の抵抗に皮肉を言ってくる。
改めて握手を交わした後ユーノにこれからの役割を説明し、民間協力者用のIDだったものを変更しアクセス権を拡大させる。
「こんなもんか、それじゃあ後は頼んだぞ」
「はは、これからは大変だなぁ・・・」
これから大変なのはお互い様だ。と心の中で独りごちでから無限書庫を去る。
これで残る問題は鍵の保護、か。
お久しぶりです(´ω`)あまりに長く間が空いてしまったので何を書いてるのか自分でもちょっとわからなくなりながら書いてました。
未だにこの小説を待っていてくれる人がいて少し嬉しいです。
原作キャラは性格とか口調がしっかりしてるので少しやりやすくていいですね。
次はようやく我らがアイドルが・・・っ!