魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~ 作:Sady
FGO第2部も始まるということなのでエイプリルフールにあやかって思い付きでリハビリがてら。
短いです。
「クソッ!」
その日、時計塔のロードであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトは苛立ちを隠せずにいた。東方の地で行われるという聖杯戦争、その戦争の要であるサーヴァントを呼び出す触媒を失ったからである。
征服王イスカンダルのマントの一片、この触媒であればイスカンダル本人はおろか彼の王に縁ある『万学の祖』アリストテレスやプトレマイオス朝開祖『
「ふん、まぁいい。伝承にある彼の王を考えると私との相性も良いとは考え難い」
ケイネスはサーヴァントというものを信用も、理解もしていなかった。
勿論戦力として有効な手駒であるとは理解している。だが所詮は使い魔、自身の魔術師としての実力さえあれば大きな問題ないとタカをくくっていた。
ケイネスにとって聖杯戦争とは願いを叶えるためではなく自らの武勇を示すためのものであり、ケイネスの魔術師としての階位が実質上の最高位であることも含めそう思い込んでしまうのも仕方のないことだったかもしれない。
「そう思えば、何が召喚されるかも分からんというのも一興。ある意味、私に相応しいサーヴァントを喚ぶ丁度いい機会かもしれんな」
他陣営からの妨害で触媒を失ったと考え、既に戦いは始まっていると気を引き締めれたと思えばさしたる痛手ではない。むしろ慢心を捨てより戦意が高まるケイネスだった。
そうして先の触媒を失ってから手配したこの新たな触媒。
資金も時間も余裕がある訳ではなく間に合せといっても良い。
とある伝手から仕入れた宝石であり、開催地である日本に縁がある代物らしく、サーヴァントには知名度補正なるものもあるということでこうして現地に足を運んでから召喚するハメになった。
怪しくはあるが、降霊科学部長ソフィアリ家からのお墨付きもあり、ケイネス自身もこの宝石に宿る魔力の力強さを認めていた。
この宝石は複製品であり魔力タンクでしかないが、その原典なるは願いを叶える石と呼ばれていたらしい。
その宝石の名は―――『ジュエルシード』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――聞こえる。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
誰かが俺を喚ぶ声が。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。」
次元世界という壁をも越えて俺を喚んでいる。
「我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、」
丁度いい。
俺もその世界でもう一度戦いたかった。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
「―――召喚に応じ、此度はランサーの位を承った。お前が俺のマスターだな?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ランサーのクラスで召喚されたサーヴァント、アーク・L・シーリングと名乗る英雄の名前をケイネスは過分に聞いたことがなかった。
これでも人並み以上に知識を有しており、且つ今回の聖杯戦争に向けて過去の英雄や偉人も調べ上げているのにも関わらず、だ。
これは外れを引いたか? と思ったがランサーの話を聞くとどうやらそうでもないらしい。
聞き慣れぬ言葉もあったが何やら平行世界、かの第ニ魔法に属する現象が発生しているとか。
そして何より、触媒に使ったジュエルシードとやらの原典の1つをこの男が所持していたことが最たる要因であったようだ。
「ふむ、おおよその経緯は把握した。してランサーよ、召喚に応じたということはどのような例外であれ願いを持っているということだ。だが話を聞くにお前はどうやら願いを叶える石の原典を持っているらしいではないか。おかしいな、これは矛盾ではないかね?」
「道理だな。論理的な思考が出来るマスターで何よりだ。それを説明するにまず、俺というサーヴァントについて少し理解してもらわねばならない」
と、自身の身の上を語りだすランサー。
曰く、ランサーは生前は異なる世界の王であったらしい。
だが王であるとも同時に騎士でもあった。今回は騎士の側面を切り取られランサーとして現界したようだ。王としてならばまた違うクラスで現界するとも。
「私はなランサー、騎士などという連中の口先だけの矜持など理解も、信用もしておらんのだ」
「成程成程、分かりやすい返事だな。では俺も分かりやすく言葉にしようか。
俺は生前、力を奮う機会にあまり恵まれなかった。高すぎる地位と強すぎる力は制約が多いものだ。だから俺は存分に戦いたい。王として盤上の駒を操るのではなく、騎士としての力で全てを制したい。
マスターはどうだ? 俺が察するに、聖杯が目的ではないように見える。いや、興味はあるがあくまで勝利の戦利品程度、といったところか」
「野蛮だな」
ケイネスは蔑み鼻で笑いながらも納得した。
そうだ、誇りや矜持など屁理屈で建前を述べる輩など信用できるものか。
聖杯などというある意味俗物極まりない代物を奪い合う戦争に参加しておきながら騎士として忠誠云々など言われようものなら噴飯ものである。
聖杯への願いが無いにも関わらず召喚に応じるということは戦闘そのものが目的だから。
成程、聖杯戦争で勝利したという箔が欲しい自身に令呪が宿ったと同じ道理。
ならば納得出来る。
自らに比べれば多少下賤なきらいがあるが、そこは戦場で殺し合いをする連中だ。
丁度良いくらいだろう。
本来の歴史とは歪められた運命の邂逅。
正史においてケイネスが召喚するはずであったディルムッド・オディナ。皮肉にも彼と同じく聖杯を目的とせず、同じく騎士でありながらマスターからの一定の理解を得たアーク・L・シーリング。
この歪みはケイネス率いるランサー陣営、ひいてはこの物語の結末へどのような影響を与えるのだろうか。
―――第4次聖杯戦争、ここに開幕。
聖杯問答とかまでやってみたかったけれど、続きません。