魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~ 作:Sady
前話が5年半も前ってマジ? しかも本編じゃない? って驚いてます。
「ほう……この戦いの意味?」
私は我が子らの疑問に対し興味深そうに眼を光らせた。
その思いの外鋭かったらしい眼差しに少し怯んだのは質問を投げかけた張本人であるチンク。
そしてその周りにいたトーレ以下数名。
「いえ、我らは兵器。そのようなモノがなくともドクターの思うがままに戦います」
「いやいや、この際だ。そう云った事情も話しておくべきかもしれないね。何と言っても我らは
「戦争……ですか?」
ごくり、と息を飲む音がラボに溶け込む。
「我らと特務部隊とラグナロク。三者交えての戦いだがその規模は君たちが思う以上に大きい」
分かりやすいようにと空中へホログラムを投影し勢力を説明する。
「まずは我らスカリエッティ陣営。戦力は戦闘機人を主軸としてガジェット、そして絶対的制空権を有するゆりかご。意外かもしれないが数だけで言えば最大勢力になるだろう」
我らの強みは数千、万にも及ぶガジェット。研究者として面白味はないが、数とは力だ。
情報伝達にも優位性があり、他の陣営にはない時間経過という勝利条件もある。
「次にラグナロク率いる犯罪者陣営。実はあそこの参謀はかなりのやり手でね。数も質も相当な物に仕上げてくるだろう。最近よく聞く件の魔獣も出てくる筈さ」
ここの強みは制限がないこと。元より犯罪者、取れる手段の数が段違い。そして我らと違い人であるという点。恐らく管理局陣営の一番のネックがこれだろう。
ガジェットは所詮物だ。壊せば終いだが人はそうはいかない。非殺傷設定の解除による殺傷を認めたとしても躊躇いなく実行できる人間がどれほどいるだろうか。
管理局員の多くはガジェットと魔獣の対処に充てられる事になるだろう。
「最後に、特務部隊率いる管理局陣営。保有する個人戦力の強さはここが恐らく最も強い。が、戦闘員として動員出来る数は三陣営で一番少ないだろうね」
我らとラグナロクの共通事項として、全戦力をオールイン出来るという点がある。
だが管理局は違う。彼らにとって世界はミッドチルダだけではない。支部にも人員を配置しなければならないし、裏方に回す人員も相当である。
とは言え、この戦争の大本命でもある。
「ふふ、数千数万で戦いオーバーSランクが十数人以上が入り混じる戦場。まさしく戦争だよ、これは」
この戦争の結果如何で今後数十年が決まると言っても過言ではない。
研究者の身と雖もこれ程になると高揚するというものだ。世界が動く予感ですら身震いがしそうになる。
「おっと、私としたことが話が逸れていってしまったな。最初の質問、詰まるところ我らにとってこの戦いの意味、だが」
だが―――続く言葉を紡ごうとして様々な事柄が脳裏を過って、少し答えに詰まり勿体ぶった様に間を置いてしまった。
「好奇心を満たしつつ自由を求めて、といったところか。言葉にしてみると何とも陳腐なものだね」
悪党らしく世界征服とでも言えば良かったかな? とも思ったが娘たちの表情を見るにそこまで悪い答えではなかったようだ。
「それでこそドクター、それでこそ無限の欲望といったものでしょう」
と、この話は終わりだと言う様に秘書として傍に控えているウーノが締め、他の娘たちの退出を促した。
残ったのは私とウーノの2人だけ。ついでとばかりに少し気になったことを問いかけてみる。
「ウーノ、君は戦争という表現に少し不服そうだね?」
「それはそうでしょう」
僅かに表情を変え、眉を顰めるウーノ。
普段は機械的に無表情である娘の珍しい表情の変化を見て内心ニヤついてしまった。
「勝利、ましてや敗北も最初から存在しないなど、そんなものが戦争である訳がないではないですか」
「ははっ。勝ち負けだけでは量れない。それもまた、醍醐味だと思うのだがね」
私たちは勝てない。それは変えられない事実だ。
娘たちの手前最大勢力とは言ったものの、それは質を考慮しない数だけの話だ。
そういう意味ではリリィ君も同じだ。どう上手く勝つか。
しかし武力で戦って勝てないからと言ってそれがそのまま敗北に繋がる訳ではない。
私の望みが叶えば、それは負けではないのでないか?
戦えば負けるだろうが、私の望みが叶うとするならば、それは勝利なのか敗北なのかどちらだろうか?
ウーノが言っているのはそういう事だ。
秘書官として務めているだけあって、他の姉妹が知らない決め事を幾つか知っているからこその言葉。
我らは戦後の交渉を少しでも有利に進める為に戦うだけだ。まぁ私の趣味も多分に含むが。
結局のところ戦争はただの手段だ。私の目的は勝敗に関係ない。しかし戦わなければ達成出来ない。
仮に勝ったとて、そこで得るものなんてたかが知れている。
歴史に名を刻んで世界を統治する? それこそ面白い冗談だよ。
もし、戦争という表現を変えるとするならば、それは清算だろう。
黎明期、果ては旧暦から始まる管理局が生んだ負の遺産。
溜まりに溜まったツケが、積み重なった世界の歪みが限界になってきた。
もっと言うならば、散々引き延ばされていた世代交代の時期がきただけだ。
リリィ君はそれらを一気に解消する為に戦争という手段を取っただけだ。
本来10年単位で掛かるそれらを消し飛ばすウルトラC。
私はわざわざ自分から戦争を起こしたい訳ではないが、他人が起こすというのなら話は変わる。
戦場でしか得られないものはあるし、そこでしか手に入らないものもある。
だからやるなら混ざる。その程度だ。
様々な思惑が、因果が、命運が絡み合うそれが、どうしようもなく楽しみで仕方がない。
勝ち負けに重きを置かないからこそ、私は楽しめているのだろう。
リリィ君にしても、管理局ではない彼自身の因縁に訣別出来るかどうか、是非この眼で見届けたいものだね。