魔法少女リリカルなのは~鬼札と呼ばれた魔導師~ 作:Sady
次もおそらく主人公視点じゃない話になると思います。番外編的な?
私は今、上からの通達にどうしようか頭を抱えている。
『古代遺失物管理部 機動六課へアーク・リリィ執務官を出向させる』
これが、今私に頭を抱えさせている内容だ。
この辞令の出所はおそらくレジアス中将。名目上は先日警備に行ったホテル・アグスタでの戦闘記録を見た上の人が戦力を増やすべきではないかという意見と、フェイトちゃんが行ってる違法研究の捜査協力の申し出を合わせた結果、アーク・リリィ執務官が出向ということになった。
確かに、この前の時のように隊長陣が動けない時を考えれば戦力が増えるのは嬉しい事やしジェイル・スカリエッティを一連の犯人と仮定して追ってるから違法研究捜査が専門とされる執務官が来るのもありがたいけど、けど! おかしい、これは絶対何か裏がある。
レジアス中将が増員を送り出すのはおそらくスパイ目的しかない。あの人は海と教会嫌いで有名やし陸で好き勝手してる六課の内情を知りたいのは当然や。寧ろ今まで特に誰も差し向けてこなかった方が不自然なくらいやった。
スパイというのは基本信頼出来る者を差し向ける。となると、レジアス中将とアーク執務官はそれなり以上の交流があるはずだが。次元世界を飛び回ってるという執務官と何故交流があるのか――
いやでもレジアス中将もアーク執務官も財界への繋がりがあるという共通点があるし、もしかしたらそこから知り合った可能性も・・・
「あかん・・・さっぱりや・・・」
「しかし主、この前のホテル・アグスタでの警備でアーク・リリィ執務官は良い人だったと、そう言っていたのではないですか?」
「確かに、ええ人やったよ。でも、それとこれは話が別や」
丁度同じ部隊長室にいたリインフォース・アインスが疑問を投げかけてくる。
あの任務が終わってから取り敢えず守護騎士の皆には彼の事を話した。闇の書事件で詳細が分からなかった人に会えた事と、あの日事件の事を聞いたっていうユーノ君から教えてもらった事を。
その時は良い人だったと話していたから、今これだけ疑って掛かってる事を不思議に思ってるのかもしれない。
アーク執務官は毎年アグスタの警備に参加していたらしく、今年六課が警備に入ったのはガジェット出現の可能性を危惧して無理矢理ねじ込んだ形になる。
簡単に言ったら私達が押しかけたから、事前に六課と接触させる為にわざと仕事をブッキングさせたって事はありえへん。
それにおそらくこの出向が決まったのはホテル・アグスタの警備以降。上層部は前から増員を考えてたかもしれんけど少なくともあの時点ではアーク執務官も何も知らなかった筈だ。
それなのに私達の責任やないとはいえ、ガジェットという面倒事が舞い込んできたというのに、特に私達を嫌がる事もなくそれどころかこちらが動きやすいように配慮してくれたのは、下心やなくて親切心やったんやと思う。
が、六課に出向となると話は違う。絶対に何か裏がある。
闇の書事件で迷惑掛けて、助けてもらった恩人の一人とも言える人を疑うのは心苦しいけど私は部隊長や。部隊の為に常に最悪を想定して全てを疑って掛かる位の気持ちでいなあかん。
まぁもう出向は決定事項や。上層部の思惑は置いといて、通達と共に送られてきたアーク・リリィ執務官のデータを見る事にする。
アーク・リリィ 24歳 魔導師ランクはAAAで近代ベルカ式
三佐待遇の執務官で違法研究の捜査が主な活動分野、補佐官はおらず一人で行動している。
多くの違法研究所を発見しているが、発見後はよほどの緊急性を感じない限り管理局に報告し武装隊に任せて自らが突入する事は少ないらしい。理由はどうやら制圧力が低いと書かれている。
詳しい戦闘データをみると、適性だけで言うと結界魔導師――特に捕獲魔法のケージタイプ系の適性が群を抜いて高い。
逆に射撃・砲撃魔法の適性が低い。が、魔力付与魔法の適性も高い事からミッド式の結界魔導師でなく近代ベルカ式をとったのだろう。
たとえるならば、接近戦が出来るユーノ君って所やな。
確かに捕獲魔法が優れていても基本的に接近戦主体の近代ベルカ式なら対人戦には強くとも研究所などの拠点制圧には向いてない。
ん?
「なぁリインフォース」
「なんでしょう主」
「闇の書事件の時アーク執務官と戦ったらしいけど、どんな感じやったん? これだけみとったら到底あの時のリインフォースと戦えたとは思えへんねんけど・・・」
「・・・そのデータを見せてもらっても構いませんか?」
「うーん、あんま個人のデータを他人に見せたらあかんけど、まぁええやろ部隊長権限ということで」
リインフォースにもデータをみせると相変わらずの無表情で見ていて、私はそれを黙ってその様子を見守っている。
感情が読みにくいってよく言われてるけど、長年家族として一緒にいた私はそうは思わへん。確かに一見無表情で何考えてるか分からんけど、この子は照れ屋なだけや。今だって無表情に見えるけど、何か思う所があるのか眉を寄せて悩んでるみたいやし、良く見れば分かる。
「ありがとうございました」
「それで、何か分かったん?」
「まず一つ目はデバイスですね」
「デバイス?」
「このデータにはデバイスの詳細が載っていませんが、私はよく覚えています」
「デバイスか・・・確かにクロノ君のデュランダルみたいな特製のデバイスがあったら格上とも戦えるやろうな・・・」
「恐らくですが、彼のデバイスは夜天の魔道書と同じ古代ベルカに存在したものです」
「っちゅうことはそれってロストロギア!?」
「いえ、ロストロギアの一歩手前、といった所でしょうか。長い間どこかの遺跡に保存されてたのを発掘したんでしょう。しかし・・・その、私が壊してしまった訳ですが・・・」
「ええ!?」
悪い事をしたのがバレた子供のような態度のリインフォースから予想だにしなかった事が告げられる。
壊してしもうたやって!?
これは・・・お礼を言うどころか謝らなければいけない事が増えてしまったみたいやな・・・
壊れてしまったとはいえリインフォースと打ち合えるほどのデバイスや・・・相当高性能な筈や。これは流石に申し訳ない・・・
「い、いえっ!全壊させてしまった訳ではないので修復可能の範囲だった筈です!・・・・・多分」
私が申し訳なさそうな顔をしてるのをみて少し慌てながら言い訳するリインフォース。
私としてもそのデバイスが修復可能やった事を願わずにはいられない。最後の多分という台詞が気になるけど。
「ま、まぁデバイスがどうなったかは本人に聞くしかないことやな。それで、一つ目って事は他にもまだ分かったあるんやろ?」
「はい。これは確信がある訳ではないんですが・・・」
「言うてみ」
「彼は・・・人造魔導師かもしれません」
「それって、フェイトちゃんやエリオみたいな?」
「出身が書かれてない事と、ユーノ司書長も話を加味してその可能性もあるかと」
「それもうちょい詳しく言ってくれへん? 出身が書いてないって孤児とかの可能性もあるやん」
「あの時の戦闘中、私は彼のレアスキルを確認しました。そして昔、彼と同じレアスキルを持った当時有名だった騎士をみたこともあります。あれはベルカの血統の人間しか目覚めない遺伝型のものですが――」
「クローンなら、遺伝子が同じだからそのレアスキルが覚醒することもある。って事やな」
「まぁホントにベルカの血統を引いた一族の可能性もあるのですが」
成程、それなら確かに色々筋が通る。
ミッド式でなくベルカ式をとったのは、昔の騎士のクローンだから。
ユーノ君の話をそのまま信じるなら、グレアム元提督に恩があるのはその人造魔導師の研究をしていた所から救ってもらったとかそんな所だろう。
執務官になって違法研究ばかりを追っているのも自分が人造魔導師という事からかもしれない。これに載ってる功績の多さをみると有り得る話や。
デバイスにしてもレアスキルが覚醒した成功例に用意されていたものという線もある。
「でも、このデータにレアスキル持ちって書かれてないのはどういう事やろか。まーレアスキル持ちの情報は秘匿される傾向にあるし載せてへんだけかもしれんな」
「もしくは、もう使えないのかもしれません」
「ん? もう使えんってどういうや?」
「幾つか可能性がありますが、その中でもありえそうなのが人造魔導師である事からの不具合で能力が使えないのと、昔私が撃墜した・・・その負傷が原因で使えなくなったのかもしれません・・・あの時の戦闘では、非殺傷設定で魔法を行使していた訳ではありませんし・・・」
もし、リインフォースの言う通りレアスキルが消失していたとしたら、リインフォースは――私は彼の色んなモノを奪っていった事になる。最悪、デバイスにレアスキルの両方がなくなってしまっているのだ。
そうだったならば、これは歴代の主でもなんでもない。私が起こしたもので私が背負わなあかん罪や。
――憎まれているかもしれない。そう思うと胸が締め付けられるような錯覚に陥り改めて自分の罪深さを知る。
とはいえ、少なくとも今は私情を持ちこんだあかん。部隊長としての責任は果たさなな。
もしかしたらこの事情を知ったお偉いさんが精神的な圧迫を狙って人選したってのもありえるし。
「もう片方の人造魔導師の不具合ちゅうのは?」
「プロジェクトFの最初の成功例は、フェイト・テスタロッサです。勿論彼がプロジェクトFで生まれた訳ではないでしょうが24歳というのが実年齢で、当時は高位の人造魔導師を作りだす程のクローン技術がまだ確立していなかった場合、成功例だったとしても短命やレアスキルの消失などのリスクがあった可能性も十分に有り得ます」
「成程な・・・」
これで、少しは色んな事が見えてきた。
もし彼が人造魔導師ならば、表沙汰にはされない様々な事を経験して知ってるのかもしれない。
レジアス中将も最近黒い噂が色々ある。その噂を調べ回る内にどう転んだか知らんけど、何かしらの繋がりが出来たんかもしれん。六課入りもそれぞれの思惑が絡んでの利害の一致の結果とかも有り得る訳や。
これは、やっぱり警戒が必要やな・・・
レジアス中将の目的はスパイかもしれんけど、アーク執務官の目的は多分違う。
カリムの預言のこともあるし何か、とてつもない何かが起きそうな気がする。
階級が上がり中央にも少しだけ近づいて私自身も感じつつある管理局の闇。
問題は山積みや――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
主を見ながら私は嘘をついた事を心の中で謝る。
申し訳ありません主、私はあなたにずっと――10年前から伝えていない事があります。
アーク・リリィ
彼と戦った事を今でも覚えている。まぁそもそもデバイスでもある私は記録したものを忘れることは中々ないのだが。
あの時私は一撃だけ、彼の攻撃を受けた。
それが普通の一撃なら問題ない。高町なのはのSLBとてあの状態の私なら一撃だけなら耐えられただろう。
だが、彼の一撃は到底普通と呼べるものではなかった。
レアスキル『封印』によるリンカーコアへの一撃。
それにより闇の書としての機能の一部が著しく低下した。戦闘中には影響は特に及ばなかったが、戦闘終了後から時間の経過とともにそれは大きな影響を与えた。
ユニゾン機能の消失、暴走プログラムの機能低下、蒐集機能の消失、再生プログラムの機能低下、魔法行使の制限
これが、おおよそ彼が私に影響を与えたものだ。
あのままなら遠くない未来、私はいずれ闇の書として復活していただろう。だが、様々な機能の低下により暴走プログラムが管理者権限で抑えられるレベルにまでなり、無限書庫から基礎プログラムの修正データを探すだけの時間が出来た。
そのお陰で今は多くの機能が低下した状態とはいえ、こうしてここにいられる。
そして主達には機能低下した今の状態を管理局が科した特別なリミッターと説明されている。これが彼が施したものと知っているのは私と彼と、その彼の直接の上司だけだろう。
あの一撃は10年経った今でも私を縛り続けている。
流石古代ベルカにおいて対ロストロギア最優と謳われたレアスキルだけありその効果は凄まじい。
つまり、先程は主に対してはああ言ったものの彼はレアスキルを失っていないだろう。
故に彼の判断次第では私に更なる制限を与える事も、暴走プログラムも消え基礎プログラムの修正を終えた今、枷でしかないこの封印を解く事も出来る。
これは私の生殺与奪権を彼が握ってるとも言える。
そんな彼がこの六課にくるという事は、実質私は人質となる事を意味してる。
その事を心優しい主が知ればどうなるだろうか。
決まっている――何としてでも、私を自由にしてくれようとするだろう。
今でさえこの封印を外す為に様々な手を打ってくれているのだ。
これは、私が今を生きるための代償だ。本来消えるべき私を生かしてくれている彼には感謝してこそ、主とその友人達が無事ならば恨みなど何一つない。
たとえ――その力で完全に封印されるという選択を突きつけられても、だ。
主が事実を知り私の封印と恭順を天秤に掛けられたら、私の為に恭順を取ってしまうかもしれない。
私は、主にそのような重荷を背負わせたくない。
もしかしたら彼は、管理局が私のようなロストロギア対策に生み出した存在なのかもしれないな。
将達は覚えていないが私は歴代の主の末路を全てこの眼で見届けている。
その全て悲劇で終わり、多くの死を撒き散らした。
この死の連鎖を止められるなら、管理局とて違法研究など構わずに行うだろう。
そしてその末に――彼が誕生したのかもしれない。
最近何気にあとがきを書くのが楽しくなってきた作者です。
ちょっと今回のあとがきは主人公の裏設定でも少しご紹介させて頂こうかと
やっと主人公の正確な年齢やらが出ましたしね。
まず名前ですが、アーク・リリィ・シーリングのスペルはArc Lily Sealing
シーリングはまんま「封ずる者」でArc Lilyってのは実はLyricalのアナグラムなんですよね。
つまり主人公はリリカル執務官!みたいな感じですw
リリカル執務官ってタイトルも有り得たんですけど、設定的にメインは執務官じゃないので没になりました。
あと、少し前に出た読心少女の名前やっと考えつきましたよ(´ω`)またアナグラムですが
名前から元の単語を予想するのも面白いかもしれませんね。まぁ無理矢理名前にしたんで当てるのは難しいかもしれませんが。
あとリインフォースさんやっと今回登場しましたね。生存してたのは最初の方から分かってたのにw
A's編の全容が分かるのは大分先だと思うので気長に待っててください。
まぁ大した内容でもないんですが。