ヤンデレコユキ概念.改 作:先生曇らせ大好き男(享年16歳)
セミナーの備品であるはずのタブレット端末。
その画面には、ミレニアムの地図データと共に、点滅する赤いドットが表示されている。
それは、コユキの「光」であり「観測対象」――ミナ先輩の現在地だ。
「……ふふ、ミナ先輩。今はカフェにいるんですね。あ、隣に誰か座った。……え、誰ですかその女。知らない顔ですね。計算にありませんよ」
コユキの指先が、ピアノを叩くような速度で画面を滑る。
防犯カメラのログをリアルタイムで書き換え、音声データを抽出。コユキの脳内演算回路は、ミナの笑顔一つでオーバーヒート寸前まで跳ね上がる。
きっかけは、コユキが仕掛けたちょっとした悪戯だった。
セミナーの追手から逃げる途中、行き止まりに追い詰められたコユキ。万事休す、と目を閉じた彼女を救ったのは、通りすがりのミナ先輩だった。
「大丈夫? 私の後ろに隠れてなさい」
そう言って、追っ手を鮮やかに(あるいは天然な強引さで)撒いてくれたミナ。その時、差し出された手のひらの体温が、コユキの心臓の鼓動を狂わせた。
確率論も統計学も通用しない。100%の確信。
「あ、これ、私が独り占めしなきゃいけないやつだ」
以来、コユキの日常は「ミナ先輩」を中心に回り始めた。
コユキにとって、愛とは「把握」だ。先輩が何を飲み、誰と話し、一日に何歩歩くのか。そのすべてをログに残す。
「ニハハ! 先輩、今日は昨日に比べてカフェインの摂取量が15%多いですよ? 疲れが溜まってるなら、コユキがマッサージしてあげましょうかー?」
背後から突然現れたコユキに、ミナは驚きつつも苦笑する。
「どうしてそれを? ……まあ、コユキちゃんは物知りだもんね」
「物知りなんてレベルじゃないですよぉ。先輩のことは、先輩以上に知ってるんですから!」
コユキはミナの腕にしがみつき、その温もりを享受する。
視線の先では、先ほどまでミナと楽しげに話していた女子生徒を、冷ややかな瞳で射抜いていた。
(……ミナ先輩に触れていいのは、私だけ。あんな不純物が混ざるなんて、計算式が汚れます)
「ねえ、ミナ先輩。これからもずっと、私の視界の中にいてくださいね?」
冗談めかした声。
いつもの「ニハハ!」という笑い声。
けれど、その瞳だけは笑っていない。
ミナが「また変なこと言って」と頭を撫でると、コユキは蕩けるような顔で目を細める。
先輩は知らない。
彼女が持ち歩くスマホの待ち受けも、カバンの中のGPS発信機も、すべてコユキによって「管理」されていることを。
そして、もし先輩が自分以外の誰かを一番に選ぼうとしたら――その時は、ミレニアム中のすべての扉をロックしてでも、二人きりの密室を作り上げる準備ができていることを。
「だって、先輩という『解』に辿り着けるのは、この世で私だけなんですから」
タブレットの中で、赤いドットがミナの鼓動に合わせて優しく点滅していた。