最古の英雄王になりたくて!   作:sk20100626

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第15話 英雄王vs実力者

「……(オレ)がやろう」

 

黄金のソファから立ち上がった(オレ)の言葉は、パニックに陥ったスタジアムの喧騒を物理的に圧殺した。

ドエム・ケツハットの顔が、期待と恐怖の混ざり合った卑俗な歪みを見せる。

 

「お、おお! ギルガメッシュ殿! 貴公がやってくれるか! さあ、その黄金の力で不遜な影をなぎ払え!」

 

「……黙れ、雑種。貴様に命じられた覚えはない」

 

(オレ)は一歩、虚空へと踏み出した。蔵から溢れ出た魔力が黄金の階段を形成し、(オレ)をシャドウと同じ高さへと導く。

眼下では、シャドウ――兄上が、漆黒のコートを風になびかせ、冷徹な仮面の奥から(オレ)を見上げていた。

 

(……ふふふ。いいよ、ギル。やっぱり最後はこうこなくっちゃ。最強と最強がぶつかり合い、世界が震える。……これぞ『陰の実力者』のクライマックスだ!)

 

兄上の瞳には、狂気にも似た歓喜が宿っている。(オレ)もまた、口角が上がるのを止められなかった。

背後の空間が波打ち、数百、数千の黄金の波紋がスタジアムの夜空を埋め尽くす。

 

「シャドウよ。貴様の闇、この王の光でどこまで耐えられるか……試してやろう。さぁ、神話に残る一戦、今ここに始めようか!!」

 

(オレ)の合図と共に、波紋から放たれたのは伝説の『原典』たる数多の宝具だ。音速を超え、大気を焼き焦がしながら漆黒の影へと降り注ぐ。

ドォォォォォォォォォォォォン!!

 

スタジアムを揺るがす爆発。土煙が舞い上がるが、(オレ)の『全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)』は、その煙の中に無傷で佇む影を捉えていた。

 

「……遅いな、黄金の王。その程度では、我の影をかすめることすらできん」

 

シャドウが動いた。

一瞬。まさに一瞬だった。

漆黒の刀が、の首元へと迫る。

 

ギィィィィィィィン!!

 

(オレ)は蔵から引き抜いた神代の魔剣でそれを受け流す。火花が散り、衝撃波だけで観客席の屋根が吹き飛んだ。

 

「フハハハハハハハ! 良いぞ、雑種! その太刀筋、蔵にある名剣たちも震えて喜んでいるぞ!」

 

「……戯言を」

 

二人の衝突は、もはや凡人の目には捉えられない領域へと突入していた。

空中で交錯する黄金と漆黒。一撃ごとに空間が歪み、スタジアムの石壁が塵へと変わっていく。

 

シャドウの剣が変幻自在に形を変える。

ある時は巨大な鎌、ある時は見えない針。シドが得意とする「認識の阻害」と「錯覚の演出」が、(オレ)の視界を闇で塗り潰そうとする。

 

「見えているか? この影の底に沈む絶望を」

 

「……フン、小癪な。王の眼を欺けると思うなよ!」

 

(オレ)は蔵の門をさらに広く開放した。

「――出よ、天を覆う万象の盾(ハイ・アイアス)!」

 

七枚の光の盾が展開され、シャドウの不可視の斬撃をすべて跳ね返す。同時に、(オレ)は蔵の中から一振りの杖を取り出した。

 

「――燃え尽きよ。我が法は黄金の理(レグヌム・アウレウム)!」

 

スタジアム全体を、重力を無視した黄金の炎が焼き尽くす。これは単なる魔法ではない。蔵にある「原典」が書き換える世界の法則そのものだ。

 

「……っ。流石は英雄王、派手にやってくれる!」

 

シャドウは炎の中を、影を纏って悠然と歩く。

(……最高だ。これだよ、これ! 全てを破壊し尽くすライバルとの最終決戦! 僕のアイ・アム・アトミック、どこで撃とうかな……!)

 

兄上のワクワクが伝わってくる。(オレ)もまた、全身の血が沸騰するような高揚感を感じていた。

 

「……黄金の王よ。貴様の輝き、ここで終わらせてやる」

 

シャドウが刀を鞘に収め、腰を深く落とした。

周囲の魔力が、目に見えるほどの漆黒の渦となって彼の手元に集束していく。

空気が凍りつき、スタジアム中の人々が、死の予感に震え上がった。

 

(オレ)は不敵に笑い、背後の波紋を一点に集中させた。

「……よかろう。ならば(オレ)も、王としての最大級の礼を尽くそうではないか」

 

「宝物庫の鍵を開けてやろう」

(オレ)の手の中に、一本の「鍵」が現れる。それは形を変え、異形の剣へと変貌した。

円柱状の刃が三段に分かれ、それぞれが逆方向に回転を始める。

赤い稲妻が走り、空間が、世界そのものが、その圧力に耐えかねて悲鳴を上げた。

 

「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。死して拝せよ!」

 

「アイ・アム」

 

「――天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」

 

「――アトミック!!」

 

漆黒の魔力放射と、空間を切断する黄金の旋風。

二つの最強の力が、スタジアムの中央で衝突した。

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 

爆音すら聞こえない。あまりのエネルギー量に、世界の音が消えた。

白光がすべてを飲み込み、ドエムも、アイリスも、ローズも、ただその光を呆然と見守るしかなかった。

 

光が収まった時。

スタジアムの中央には、深さ数十メートルにも及ぶ巨大なクレーターが穿たれていた。(オレ)は傷一つない黄金の甲冑を纏い、クレーターの縁に立っていた。

 

目の前には、ボロボロのコートを翻しながらも、不敵に笑うシャドウの姿。

 

「……フッ。勝負は預けておこう、黄金の王。……今夜の戦い、悪くなかった」

 

「……フン。逃げるか、雑種。……だが、今日という日は、この世界の歴史に刻まれた。黄金の王と、漆黒の影……真の支配者が誰であるかをな」

 

シャドウはローズの腰を抱き寄せ、闇の中へと消えていった。

「……顔を上げろ。今宵、貴様の運命は書き換えられた」

 

その言葉を残し、影は完全に消滅した。

 

われは黄金の船『ヴィマーナ』を呼び出し、ゆっくりと座乗した。

眼下では、ドエムが腰を抜かし、アイリスが震える手で剣を握りしめている。

 

「……さて。雑種ども。祝祭は終わりだ。……精々、明日からの『新世界』を怯えて待つがいい」

 

ヴィマーナは爆音と共に加速し、夜空へと消えていった。

あとに残されたのは、伝説の戦いを目撃した人々の、消えない震えだけだった。

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