最古の英雄王になりたくて!   作:sk20100626

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第16話 無法都市

王都での「武神祭」という名の狂騒劇から数日。

ミドガル魔剣士学園の屋上には、相変わらず浮世離れした二人の姿があった。

 

「……兄上。この退屈な学園生活にも、いよいよ飽きがきたのではないか?」

ギルガメッシュは黄金の椅子に深く腰掛け、王都のさらに先、不吉な赤い月が昇る方角を見つめていた。

 

「……ふふ、分かってるじゃないか、ギル。次は『無法都市』……そこには三人の支配者がいて、伝説の『吸血鬼の始祖』が眠っているらしい。……まさに、陰の実力者が介入するにふさわしい、血生臭い舞台だと思わないかい?」

シドは、パッとしないモブの顔をしながらも、その瞳には「中二病の極致」とも言える輝きを宿していた。

 

無法都市。そこは国の統治が及ばぬ、力こそが法の暴力の巣窟。

「……フン、吸血鬼か。蚊の出来損ないのような雑種が、王の庭で増長しているというわけか。……よかろう。俺も、蔵に眠る『対・吸血鬼用の聖遺物』を整理したかったところだ」

 

二人の最強の「設定厨」は、互いに不敵な笑みを交わすと、それぞれの移動手段で闇へと消えた。

 

無法都市——その入り口。

荒れ果てた街並みに、場違いなまでの「輝き」が降り立った。

黄金の甲冑を纏い、マントを翻すギルガメッシュである。

 

「……汚らわしい。空気が腐っているな」

彼が歩むだけで、路地裏に潜む野盗や殺し屋たちが、その圧倒的な威圧感(プレッシャー)に泡を吹いて倒れていく。

 

「おい、そこの黄金の坊ちゃん! いいもん持ってんじゃねえか!」

命知らずな男たちが剣を抜いて襲いかかる。だが、ギルガメッシュは視線すら向けない。

背後の空間が波打ち、一振りの宝具が射出された。

 

ドォォォォン!!

 

一撃。ただの一撃で、男たちの立っていた地面ごと、建物の一角が消失する。

「……雑種が。王の所有物に触れようなど、万死に値する不敬と知れ」

 

ギルガメッシュは無法都市の象徴である三つの塔――「白の塔」「黒の塔」「紅の塔」を見上げた。

「……まずは、この都市の『富』を検分させてもらう。……おい、隠れているのは分かっているぞ。案内しろ、雑種共」

 

影から震えながら現れた案内役の小悪党を従え、黄金の王は無法都市という暴力の海を、我が物顔で闊歩し始めた。

 

一方、シドは「シャドウ」として、ひと足先に無法都市の深部へと潜り込んでいた。

彼の目的は、三支配人の一人、妖狐の「ユキメ」との接触……あるいは、彼女の商会を「陰から操る黒幕」として利用することだ。

それを利用して裏切りの陰の実力者ムーブをするのもいいと考える。

 

(……いいね。このスラムの空気、そして赤く輝く月。……今夜の僕は、ただの殺戮者じゃない。……運命を弄ぶ『影』だ)

 

シャドウが白い塔へと向かう道中、彼は一人の少女に出会う。

メアリー。吸血鬼を狩る「古のハンター」を自称する彼女に対し、シャドウは低く重厚な声で囁く。

 

「……月は赤い。……刻限は近いようだ」

「……貴方、何者なの? この都市の住人ではないわね」

 

(……きたきたきた! 謎のハンターとの意味深な会話! 100点だよ!)

内面でガッツポーズをするシド。だが、彼の背後から、さらに理不尽なまでの魔圧が近づいてきていた。

 

「――貴様か、兄上。相変わらず、薄汚い場所でコソコソと楽しんでいるようだな」

 

瓦礫を黄金の魔力で踏み潰し、ギルガメッシュが姿を現した。

メアリーは、そのあまりの神々しさと、シャドウに負けず劣らずの魔力に絶句した。

 

「……ギル。君、無法都市に来るなり『黒の塔』の宝物庫を半分吹き飛ばしたって噂、もう流れてきてるよ」

シャドウが呆れたように肩をすくめる。

 

「フン。宝物庫と言いながら、入っているのは安っぽい金貨とガラクタばかり。王の蔵のゴミにも劣るものばかりだったのでな。……掃除してやったまでだ」

 

ギルガメッシュは、メアリーを一瞥した。

「……ハンターか。小娘、貴様の追っている『始祖』とやらは、どこに眠っている?(オレ)が目覚めさせてやろう。……黄金の輝きの下で、灰になる特権を与えてやる」

 

「……な、貴方たち……狂っているわ……。始祖エリザベートが目覚めれば、この都市どころか世界が終わるのよ!」

 

「「……世界が終わる?」」

二人の声が重なった。

 

「フハハハハ! 面白い! 終わらせてみせろ、その吸血鬼とやらに! この(オレ)が許す限りにおいてな!」

「……ふふ、世界の終焉か。……僕が望むエンディングに、ふさわしい舞台装置じゃないか」

 

二人の最強の「設定厨」が揃った瞬間、無法都市の運命は決定した。

それは「救済」ではなく、「蹂躙」と「演出」による完全なる支配である。

 

無法都市の最深部。紅の塔。

教団の残党と、暴走する吸血鬼たちが儀式を完成させようとしていた。

ついに、伝説の始祖「エリザベート」が、棺の中からその瞳を開く。

 

「………………」

 

圧倒的な血の魔力が塔を破壊し、赤い月の光と共鳴する。

並の魔剣士であれば、その存在感だけで理性を失うほどの呪い。

 

だが。

「……フン。蚊の王が、随分と大きな口を叩く」

 

空を割り、黄金の船『ヴィマーナ』が降臨した。

その船首で、ギルガメッシュは一振りの「鍵」を手にしていた。

「……目覚めたばかりの寝ぼけた雑種よ。王の庭で夜更かしをする不敬、万死に値する」

 

同時に、塔の屋根には漆黒のコートをなびかせるシャドウの姿。

「……闇を統べるのは、唯一つの影。……吸血鬼の始祖よ、貴様の『赤』は、我の『黒』に飲み込まれる運命だ」

 

無法都市の空に、黄金の波紋と漆黒の魔力が交錯する。

三支配人の一人、ジャガノートが「何なんだあいつらは!」と叫びながら逃げ出す中、始祖エリザベートは、人生で初めての「本能的な恐怖」を感じていた。

 

目の前にいるのは、自分を狩りに来た英雄ではない。

自分を「演出の道具」か「蔵の肥やし」としか思っていない、理外の怪物たちなのだ。

 

「――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

ギルガメッシュが宝物庫の扉を開ける。それをシャドウが妨害しながら吸血鬼の始祖、エリザベートに肉薄する。しかし、それをエリザベートは迎撃。さらにその二人をギルガメッシュが攻撃。

最強の三竦み構造が完成する。

 

黄金の雨が降り注ぎ、漆黒の剣が大地を穿ち、鮮血の魔力が覆い尽くす。

無法都市の三塔は崩れ、赤き月は黄金の輝きに塗り替えられていく。

 

「……さて。兄上。どちらが先に、あの蚊の王を仕留めるか……勝負といこうか」

「……いいよ、ギル。勝った方が、今日の晩御飯をミツゴシ商会の最高級ステーキにする……っていうのはどうだい?」

 

「……フハハ! 安い賭けだな! だが、乗ってやろう!」

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