魔都怪獣王のHATTORI   作:びよんど

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第三話 朱々という少女

 

 

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「うーん、恋愛漫画ってアタシ的にはワクワクしないんだよね〜。やっぱ冒険活劇のほうが燃えるわ。……そう思わない、管理人さん?」

 

「……それよりこの部屋の散らかり具合、自分でなんとかする努力をしたほうがいいって……」

 

 

女の子…駿河朱々の部屋の散らかり具合に思わず苦言を呈する服部

 

 

「文句言わない言わない。管理人さんはもうアタシの奴隷なんだからね。……これ、バラされるの嫌でしょ?怖いよ〜組長の粛清は」

 

「(そんな……ほぼ事故みたいなもんなのに……こんなの流石に理不尽だって……!)」

 

 

図らずも日万凛の入浴シーンを目撃した場面を朱々に撮られ、それをネタに脅された服部はその日を境に朱々の奴隷としてこき使われるようになってしまった。

 

いくら体力に自信があるとはいえ、管理人としての激務に加えて朱々の身の回りの世話は流石に堪えた。

 

 

「パンツまで落ちてるし……一応整理しとくよ?」

 

カシャッ「今のもネタとして使えそー」

 

「ちょ……撮るなァァァ!!?」

 

 

……脅しのネタが増えていく、体力の消耗以上に朱々への恐怖で服部の精神は疲弊していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(とはいえだよ、覗いちゃったのはあくまで事故なワケで、京香さんに密告されたところでそこまで怖くはないんじゃないかな―――)」

 

 

ドンッ パンッ パパパパンパッッ

 

 

もっと(はや)く鋭くだ日万凛!反撃の隙を与えるな!

 

はい!!

 

 

肉と肉がぶつかり合う鈍い音が響く。……その音のするほうを見やると、そこには京香と日万凛が高速で手打ちをする光景が広がっていた。

 

日万凛の決して遅くはない攻撃を京香はやすやすと捌いていき、日万凛の攻守における拙い点を指摘しながら休むことなく特訓を継続している。

 

 

「っ、醜鬼!」

 

「むっ……一体ならちょうどいい、見ていろ!」

 

 

地面から飛び出してきた醜鬼に一切反撃の隙を与えることなく致命の連撃を食らわせる京香。

 

呆気なく地に倒れ伏す醜鬼に目もくれず、これが連続技だ(ドヤ顔)と日万凛に手本を見せた京香。

 

 

能力なしで!流石組長!!

 

「(す、素手で……!!?)」

 

 

日万凛のようにポジティブに捉えられればどれだけ良かったことか。……服部は地面に倒れ伏す醜鬼に、最悪の末路を遂げた自分を重ね合わせていた。

 

妙な誤解を与えたらどうなるか分かったものではない。

 

京香の強さに畏怖を抱いていると、ふと誰かに自分の服の裾を後ろから引っ張られていることに気が付く服部。

 

……誰かとは、寧であった。

 

 

「上司として伝達がありますっ」

 

「は、拝聴します」

 

「もうすぐ組長と日万凛さん、そして寧は会議に行きますので、朱々さんとお留守番していてくださいね」

 

「…………………………………朱々ちゃんと?」

 

「どうしたんですか?」ビクッ

 

「い、いや、何でもないよ。ハハハ……」

 

「朱々さんはとてもいい人ですから、この機会にたくさんお話してみると吉かもしれませんね」

 

「………」クイクイ

 

 

いい人のする笑顔じゃない。……そう思いながらも上司の命令には逆らえない服部であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜〜いいね〜〜(≧∇≦)b

鍛錬で動かした体にスウッと効いて……」

 

「(……この子も一応は魔防隊の一員として頑張っているんだ。そう考えれば話し相手が女子しかいないこの環境で男の遊び相手を欲しがるのも分かる……気がする)」

 

「ねぇ、なんでこんなに肩揉み上手いの?」

 

「……友達の肩揉んでたら上達したんだよ」

 

「兄弟姉妹とかいないの〜?」

 

「いや、オレは一人っ子。……君は?」

 

「ウチは三人姉妹でアタシ末っ子。……パパはいなくてさ、ずっと女子だけの学校通いだから男子と話したこと全然なくてね」

 

「……やっぱり、(オレ)は珍しかったんだ」

 

「じ〜〜っくり観察してたよ。……んで、面白そうだから朱々の奴隷になってもらおうって」

 

「面白そう?そんな理由で……?」

 

「面白そうって何より重要だと思うけどな。魔都に来たのだって刺激を求めてだし」

 

 

刺激を求めて魔都に来る。……OLでも考えない割とぶっ飛んだ理由で魔防隊に来た朱々に軽く引いていると、ようやく満足したのか朱々はおもむろに立ち上がり体をググッと伸ばしつつゲームを提案してきた。

 

 

「ゲーム?……あんまり自信がないんだけど……」

 

「じゃ、罰ゲームありね。負けたほうは一枚ずつ服を脱いでくの」

 

「えぇ!!?そんな脱衣麻雀みたいな……!」

 

「勿論奴隷に拒否権はありませーん」

 

 

……どうしても服部を負かして裸を見たいらしく、その目は好奇心で光り輝いていた。

 

 

「ほ、ホントに自信がないんだって……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

K.O.!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………は?アタシの、負け……!?」

 

「……ふぅ、優希くんほどじゃなくて良かった」

 

「いっ……いやいや!?強すぎでしょ管理人さん!!」

 

「そりゃあ……カイルを封じられし男・和倉優希と切磋琢磨する間柄だからね……」

 

「いや誰ェ!!?」

 

 

朱々は計算違いをしていた。

 

服部は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あんまり自信がないと言っただけで、苦手と言ったワケではない。……むしろ、朱々のようなゲームが上手い()()のプレイヤーを蹂躙できるだけの卓越したセンスと膨大な経験値を持ち合わせている。

 

……途中から指二本だけの縛りプレイで朱々を圧倒していたのはあくまで余談である。

 

 

「もうやめにしよう朱々ちゃん?……君もうパンツしか履いてないじゃないか……」

 

「っ〜〜〜、ば、罰ゲームは罰ゲームだから〜〜(///)」

 

 

唯一身に付けているパンツに恐る恐る手を伸ばす朱々。そんな彼女を制止しようと服部は手を伸ばし―――

 

 

うがーっ!!アタシだけ恥ずかしい思いをするなんてズルいぞーっ!!

 

「ちょっ!?急にデカくなるな……!!?」

 

 

突然、能力によって大きくなった朱々に拘束される服部。朱々の臀部に顔をうずめ、下半身を完全にロックされてしまった。

 

 

……さーて制圧完了♪アタシに恥ずかしい思いをさせた罰として、管理人さんの()()()を見せてもらうからね〜?

 

「ふごっ……や、やめ……!!」

 

だーめ!……えいっ

 

 

服部のズボンとパンツをあっという間に脱がせ、男にしか付いてないという()()()をマジマジと見る朱々。

 

 

えっ……棒……?

 

 

それは、あまりにも大きすぎた。

 

大きく、分厚く、重く、そして―――大雑把すぎた。

 

それは、まさに肉の棒だった。

 

 

?……??……???(//////////)

 

「(だからやめてって言ったのにぃ……!)」

 

 

服部のアソコから目を離せずにいる朱々に早くどいてと心の中で懇願する服部。……傍から見ていると滑稽なものであった。

 

 

ドォォォォォォォォォォォン!!

 

 

「「 !!? 」」

 

 

……その時、寮の外から凄まじい轟音が響き渡る。

 

何事かと大急ぎで下着を着てから駆け付けると、そこには結界を破壊せんと迫る大型醜鬼の姿があった。

 

 

「そんな……京香さんがいない時に限って……!」

 

「……管理人さんはここで待ってて!」

 

「えっ、一人で大丈夫なのか!!?」

 

「男子は弱いんだからじっとしてないと!」

 

「っ……」

 

 

朱々の発言に思わず黙り込む服部。……男である自分が醜鬼に立ち向かって死なないよう気を遣ってくれたことは分かるが、こうも面と向かって言われると言葉にならない無力感が溢れてくる。

 

 

「(サイズ差で圧倒?いい作戦だね、だけどこっちは更に上をいくけどね。……アタシが桃で得た能力〝玉体革命(パラダイムシフト)〟で!)」

 

 

肉体を限界まで巨大化させ、勢いそのままに突進する。

 

 

はいど―――ん!!

 

 

……体積の増加に伴い重みの増した拳が大型醜鬼の顔面を捉え、一撃で遥か彼方にまでぶっ飛ばしてのけた。

 

 

「(す、凄い―――けど!!?)」

 

これでゲームの鬱憤は晴らせたー♪でも大きくなるのは疲れる疲れる……

 

「朱々ちゃーん!後ろ後ろー!!」

 

えっ?……あぐっ!!?

 

 

背後からの奇襲を受けて思わず体勢を崩す朱々。

 

 

もう一体隠れてたのかセコ……!?

 

 

どうにか体勢を立て直した朱々の目に飛び込んできたのは、背後から奇襲を仕掛けてきた大型醜鬼に続々と大量の醜鬼が群がり、一回り以上も大きくなる光景。

 

限界まで巨大化した自分と同等以上のサイズにまでなった超大型醜鬼を前にして、さしもの朱々も焦りを感じ始めていた。

 

 

(アタシの消耗を狙って?……だったらまずったな〜。初っ端から本気出しすぎちゃったし。……でも、何とかするしかないじゃん!)

 

 

一方、この状況に焦りを感じていたのは服部も同じであった。

 

 

「(あの様子だと巨大化ってそんなに保たないのか?だとしたら大ピンチじゃないか!……クソッ、変身したいけど京香さんがいなきゃ何もでき―――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝変身しなきゃ、戦えないのか?〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……誰、だ……?何処から、声が―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝誰かに頼らなきゃ戦えないほど、君は弱くないだろう?〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が、オレに、話しかけて―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝しょうがない。……様子見を決め込んでいたが、()()()()くらいは与えるべきか〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ―――」

 

 

瞬間、服部弦太郎の脳内に溢れ出した()()()()()()()

 

その記憶は主に戦闘時における身体の操作手順であったと、服部は後に述懐する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝何かを守りたいなら、何かを切り捨てるくらいの覚悟を持って戦え。二兎を追えるほど人生は甘くないぞ〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝声〟が脳内に響き渡るが、服部は今それどころではなかった。

 

常日頃から持て余していた人間離れした身体能力。……それを完全に制御するすべを突然身に付けたことで服部の心身はパニックに陥っていたのだ。

 

 

「(オレはいったい―――いや、そんなことは今どうでもいい。今なら朱々ちゃんを助けられる……!)」

 

 

……それでも自己を失わなかったのは流石と言うべきか。突然自分の中を駆け巡った全能感に酔いしれたりせず、成すべきことを成すため立ち上がった服部。

 

 

うあっ!!

 

 

ちょうどその時、超大型醜鬼に押し倒され朱々が大きく転倒してしまった。体のサイズも心なしか小さくなっており、限界一歩手前であることがよく分かる。

 

 

「っ、待ってろ朱々ちゃん!!うおぁぁぁあああああ!!!

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()謎のエネルギーを脚部に纏い、光を超える速度で一気に駆け出す。

 

一瞬で超大型醜鬼の懐に潜り込んだ服部は、右の掌に謎のエネルギーを集束させ、超大型醜鬼のもっとも命に近い部分めがけて掌底を叩き込む。

 

 

HATTORI アッパーカット!!!

 

 

ゴガガガガガガガガガッッ

 

 

……さながら水風船のように跡形もなく破裂する凄惨な最期を迎えた超大型醜鬼に目もくれず、服部は足早に元のサイズに戻った朱々の元まで駆け寄った。

 

 

「か、んりにん、さん……?」

 

「朱々ちゃん大丈夫?動けそうかい?」

 

「う、うん。……男子って、意外と強いんだね」

 

「ハハ……オレが特別頑丈なだけだよ。ヨイショ」

 

 

朱々の言葉に苦笑いを浮かべる服部。……確かに、生身で醜鬼を圧倒できる男などまずいないだろう。

 

 

「……うん、そうかもね」

 

 

自らを軽々とお姫様抱っこする服部の逞しさを目の当たりにした朱々。

 

……彼女の瞳には、服部のみが映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……変身せずに醜鬼を倒すとは。……というか初めて魔都に来た時点で一体倒していたとは驚いたぞ弦太郎」

 

「言わずに黙っていてすみませんでした……」

 

「いや、あの時はゴタゴタとしていたからな。……それより朱々はスリルを醜鬼に求めるな。舐めた戦いをしていると肉塊にされるぞ」

 

「はい、反省してます」

 

「礼として弦太郎の家事を手伝ってやるんだな」

 

「はい!」

 

 

京香の注意を受けた朱々は驚くほどすんなりと反省し、大人しく自分の部屋のほうまで戻っていった。

 

 

「……京香さん、オレも一人で戦えます。京香さんの手を借りなくても誰かを守れる強さをオレは持っていたんです。だから―――」

 

「……()()()()()()()()ことを気にしているのならそれは大きな誤解というものだ弦太郎。無窮の鎖(スレイブ)は文字通りの人馬一体、お前が命をかけているということは私も命をかけているということ。……戦力は著しく増強したが減退などしていない」

 

「っ、京香さん……」

 

「何度だって言うぞ。……お前は私の能力に必要だ。私の力となって私を高みに連れて行ってくれ」

 

「……はい!……はい!」

 

 

……京香と服部二人っきりの話を、体のサイズを小さくした朱々が物陰でこっそり盗み聞きしていた。

 

 

「(……組長だけズルい、アタシだって()()()()を独り占めしたい……!)」

 

 

どうやら二人の会話によって乙女心に火が付いてしまったらしい。

 

胸の高鳴りは、どうにも止められそうになかった。

 




次回はデート回!

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