頑張って書いていきます!
<<< 〝山形クナド〟 >>>
魔都に常時出現している〝門〟は入口と出口が固定されている。……その中でも魔防隊五番組の寮内部にある門は山形県に繋がっていた。
そんな山形クナドで大男…服部弦太郎は、普段の作業着とは違う私服姿で
「待たせたな」
「っ〜〜〜、いえいえ!そんなことより外の空気はいいもんですね!平和そのもので!」
「よく空気を吸っておけ。一日だけの休暇だ」
魔都での軍服姿は見慣れているものの、私服姿の京香も綺麗だなぁと、改めて惚れ直してしまう服部。
「早速だが電車に乗るぞ。お前は私のパートナーとして登録してある」
『パートナー』とは、女性一人が男性一人にのみ発行できるIDである。その女性と一緒に行動する場合、IDを持つ男性もある程度の権利が保証されていた。
「(はじめての女性車両……っていうか京香さん寝れているのかな……?)」
ガタンガタンと揺れる電車の中で男性車両とは比べ物にならない乗り心地の良さに軽くショックを受けていると、ふと隣で眠りこけていた京香から声がかかる。
「移動中は休むチャンスだからこうしてる。お前も自由にしていていいぞ」
「っ!」
「……飴はいっぱい持ってるから欲しければ言え」
「あ、ありがとうございます……」
休んでいるように見えて隙のない京香の軍人ぶりに軽く畏敬の念を抱きつつ、今日いきなり連れてこられた理由についてある程度推測することができた服部。
ここは
つまり―――京香の故郷である。
<<< 魔都災害慰霊碑 >>>
「……月山大井沢事件で現世に迷い出た鬼達は数十体いたが、中に特別強力な奴がいた。今でもハッキリ覚えている。そいつは角が異常に発達した奴だった。……私は〝一本角〟と呼んでいる」
慰霊碑に花を手向ける京香の口調が怒りに震えていることに気が付いた服部。……余計な茶々を入れるようなことはせず黙って京香の話に耳を傾けた。
「魔都から迷い出た醜鬼どもは駆け付けた当時の魔防隊によって全滅―――そう思っていた。だが隊の記録を読むと一本角だけは門からまた魔都へ逃げ戻っていた……!」
「一本角は―――生きていると……?」
「あいつだけは、醜鬼の中でも特に許さん。刻んで倒してやる……!」
……自分の故郷を滅ぼした仇が生きているかもしれない。確かに、許せるはずもない。
「戦いになったら弦太郎もそう心得てくれ。……今日はそれを伝えたかった」
無言で首肯する服部。……もとより京香の力になるべく戦っているのだ。当然である。
「皆の仇は、必ず討つ―――」
墓参りを終え、休暇も終わったと言わんばかりにさっさと魔都へ戻ろうとする京香を引き止める服部。
事前のリサーチでこの近くに美味しいパフェがあることは把握済み、せっかくの休暇なのだから少しくらい羽根を伸ばしても罰は当たらないだろうと説得した。
「……では、少しだけな」
見事京香を説得することに成功した服部。
カフェに入り名物パフェを二人前注文してまったり過ごしていると、ふと京香が呆れ気味に話しかけてきた。
「思ったより強引だなお前、少し驚いたぞ」
「そりゃあパフェ食べたいですし、京香さんも確か甘い物が好きでしたよね?」
「それよりも魔都の様子が気になるんだ。ソワソワしてくる」
仕事一筋の上司をどう説得したものか服部は考えを巡らせ、少し前に京香に言われた言葉を思い出す。
「……俺の友達のお姉さんも魔都災害で行方不明になっています。その時の友達のことを思えば京香さんの気持ちは痛いほど分かりますよ。でもあまり根詰めると復讐する前に倒れちゃいます。
……仕事ばかりじゃ潰れる、ですよね?」
キョトンとした表情になる京香。
かつて服部にかけた言葉で一本取ってきたと悟り、思わず笑いがこみ上げてくる。
「なかなか説得するのが上手いなお前。よく私の言葉を覚えていた。……今はこれを味わうとするか」
「はい、いただきましょう!」
注文したパフェが届いた。早速スプーンで表層を掬い口に運ぶ。……極上の甘みが口いっぱいに広がった。
「うん、これはホントに美味しいですよ京香さん―――」
「ん〜〜……これはいい♪」(´~`)モグモグ
「………(///)」ポケェ……
「最近出来た店なんだな、よく見つけたぞ弦太郎」
「……えっ、あ、はい!」
「?……どうした?」
「……ハハ、ちょっと……」
あんなに可愛らしく笑えるのかと思わず不意打ちを食らった服部。……束の間の休息で得た新たな発見である。
「ホラ貝……!?」
「魔都から緊急コールだ。……ホラ貝一回は命の危機ではないが何か緊急の事態が起きたケース……」
服部は直感する。……一日だけの休暇があっという間に終わったことを。
「休暇はここまでだ。門へ急ぐぞ!」
「っ、はい!」
<<< 魔防隊 七番組寮 >>>
変身して全速力で移動し、あっという間に寮まで戻ってきた服部と京香。……その後タイツを脱がせるなど色々あったがあくまで余談である。
現在二人は、緊急コールをよこしてきた日万凛の説明を受けていた。
「本日のパトロールで発見したものです。南21キロの地点にクレーターのようなものが出現、凄い数の醜鬼がいます」
「「 !! 」」
「現在も寧の千里眼が見張っています」
寧曰く、そこから動く気配はなく、まるで巣のようであるとのこと。
「すみません、貴重な休暇を……」
「いや、でかした。巣とは潰し甲斐があるな!新たな生態も判明するだろう!これは七番組の大仕事だぞ!」
「大仕事……これは失敗できませんね!」
「おぉ、凄いやる気じゃん!」
京香と服部の考えが完全に一致した。
ここで纏めて醜鬼を倒せばその功績で京香は一気に総組長の座に近づける。
これ以上ないやる気をもって二人は事に臨んだ。
<<< 〝魔都〟 >>>
「凄い数……こんなところに人が迷い込んだら事ですよ京香さん」
『まだ突っ込むなよ。私の合図を待て』
あらかじめ変身を済ませた服部は、クレーターの中で無数に蠢く醜鬼の群れを見て息を呑む。
数だけで言えば今までで最大級と言って良く、あまりの数の多さに台所でちょくちょく見かける
それでも逃げたりはしない。……京香のために一匹残らず駆逐すると己の心に喝を入れる。
『七番組の必勝連携で壊滅させる』
「必勝……ですか?」
その時、能力によって巨大化した朱々が醜鬼の群れめがけて渾身のジャイアントパンチを浴びせた。
『まず朱々の一撃で相手に大打撃を与える』
四方に散らばる醜鬼達。
群れ全体が大パニックに陥る中、腕をマシンガンに変形させた日万凛が容赦なく追撃を加える。
『次に痛手を負った醜鬼達を日万凛が削っていく』
たまらず生き残った醜鬼達が合体し始める。
……ここまでが一連の流れらしい。
『……一つ一つ倒す手間が省けるな』
「俺達はあの大きくなった奴を倒せばいいワケですね?」
『醜鬼どもは強靭だが戦い方が単調だ。……このやり方でいけば私達に負けはない』
「そろそろ行きましょう京香さ―――」
瞬間、大瀑布の如き殺気が自分達、もとい
殺気の出処を目で追うと、そこには白髪の女性と―――その女性に跨がられている
「えっ……?」
まさか自分が狙われるなどとは露ほどにも思っていなかった朱々。……その表情は困惑に染まっていた。
目と鼻の先にまで迫った醜鬼が拳を突き放つ―――
「うおぉぉぉぉォォォォォォォォォォォォ!!!
HATTORI ドロップキ―――ック!!!」
「「 っ!!? 」」
……が、そんなことを許す服部ではない。
「■■■■■■〜〜〜っっ」
想像以上に絶大な威力のキックに悶絶する醜鬼。……その衝撃は跨っていた女性にもダイレクトに伝わったらしく、二人仲良く血反吐をぶち撒けながら落下していった。
「あ、ありがとゲンチー……っていうかさっきの奴らは何!!?」
『あいつは……あいつこそが一本角だ!!』
「えっ!!?」
「組長の仇……?アレが―――」
京香の言葉に驚きを露わにする朱々と日万凛。……今一度向き直ると、そこには痛みのあまり悶絶する白髪の女性(よく見たら普通の人間ではなかった)と大きく凹んだ腹部を庇うように呻く一本角。
「ゲホッ、ゲホッ、チッ、油断した……!!」
「■■■■■■〜〜〜っっ」
思いっきり不意打ちをかました服部に向ける刺すような視線から敵であることはよく分かった。
日万凛達は即座に臨戦態勢に入るが、そこに待ったをかけたのはほかでもない京香の声であった。
『……日万凛、朱々。お前達は周囲の醜鬼どもを殲滅しろ。……奴は私と弦太郎が相手をする』
「「 は、はい!! 」」
「京香さん……」
『みなまで言うな弦太郎。……奴こそが私の故郷を滅ぼした仇―――だがそれよりも!醜鬼に乗る貴様は何者だ!!?答えろ!!』
京香の怒りに呼応するようにエネルギーが無限に湧き上がってくる。……膨張する肉体に窮屈感を覚えながら服部はまっすぐに一本角達を見据えた。
「……あえて言うなら魔防隊と戦う者。もう回復済んだわ、やるわよ鬼童丸!……鬼童丸?」
白髪の女性の呼びかけに応じない一本角。
どういうことだと声を荒げて名前を叫ぶ白髪の女性であったが、返事は意外な形で返された。
「■■■■■■■■■■■ッッ!!!」
ドッ「ぐあっ……!!?」
顔パン。……突然
『っ、来るぞ弦太郎!!』
「はい京香さん!!
必殺―――ハイパー HATTORI パンチ!!!」
一方日万凛達は、京香達の心配をしながらクレーターにいた醜鬼の群れをあと一歩のところまで追い詰めていた。
「(新手のあいつらは明らかにヤバかった……!
服部弦太郎が間に入ってくれなかったら朱々だってどうなってたか―――)」
「あとちょっとだねひまりん!このまま組長のところまで調子上げてこー!」
「そ、そうね朱々!早く組長のところへ行き―――」
「「 っ〜〜〜!!? 」」
空気の破裂する音が響く。……次いで血の匂いが辺り一帯立ち込めてきた。
最悪の可能性が両者の脳裏を過ぎる。
「(そんな、まさか、組長―――)」
バッと振り返る日万凛と朱々。
そこには―――
「……あー、えーっと、すみません京香さん」
『……何故謝る、弦太郎』
「い、いやぁ〜、だってまさか一発で、勢い余っていたとはいえ倒せるなんて、ちょっと申し訳ないというか何ていうか……」
『……苦しめて殺す趣味はない。お前はよくやった』
目立った負傷はなく、言葉通りならあの強そうな醜鬼を一発で倒したことになる。
「「 ……………………はぁ? 」」
思わずポカンとする日万凛と朱々。
「………………………鬼童丸?」
何なら白髪の女性すらポカンとしていた。
……無理からぬ話だ。パンチ一発で自慢の
あくまで余談となるが、
『……それより一本角に乗っていた奴だ。色々と事情を聞く必要がある』
「大人しく投降してくれるか分かりませんが、そうですね、一応話は通じましたし意思疎通が出来ないワケじゃ―――ん?いませんね?」
『何っ!!?』
かつてないほどの危機感を覚えた白髪の女性。
醜鬼の仇を取る―――なんて真似はせず、踵を返して全速力で走り去ってしまっていた。
「っっ〜〜〜(クソッ、クソッ、完ッ全に見くびってた!まさか魔防隊にあんな化け物がいたなんて……!!ココや波音が事を起こす前にあいつらのことを知らせないと―――)」
服部と京香の意識が逸れている一瞬の隙を突く形で逃走を選択したことが功を奏し、二人に追跡を断念させるほどの距離を稼ぐことに成功した白髪の女性。
「(今に見てなさいよ〜〜!!絶対絶対絶っ〜〜対ぶっ殺してやるんだからァ!!)」
白髪の女性―――和倉青羽は悔し涙を流しながら自慢の醜鬼を倒した
京香さん「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!故郷を滅ぼした仇のことを打ち明けたら、その日の内に仇を取れてしまった……。な、何を言ってるのかわからねーと思うが私も最初はわからなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」