ボチボチと書いていきます。
<<< 〝魔都〟 >>>
「「 ………(//////////) 」」
言葉が出ない。あまりにも気まずい。
ガタンガタンと車に揺らされながら服部と日万凛は、すっかり肉体関係を築いてしまった隣の相手にどう声をかけたら良いか分からず悶々としていた。
「……日万凛ちゃん、これで分かっただろう?
能力はほかのを使ったほうがいいって」
「……無理なのよ」
「なんで?」
服部の疑問に答えるように日万凛は口を開く。
曰く〝
例えば駿河朱々の〝
「でも、京香さんの能力には代償があるんだよ?」
「組長も志のために頑張っているのよ。……自分だってあれしきのこと!(//////////)」
「……君の志って?」
「………」
〝魔都〟での功績が大きい名門。……そして、日万凛の実家でもある場所。
姉達は揃って優秀であり、日万凛自身も将来を有望視されていたが、彼女にはある欠点があった。
大事な試験を前にして張り切りすぎるあまり怪我をしたり、緊張で熱を出したりしていつも結果を出すことが出来なかった。つまり彼女は本番に弱い体質だったのだ。
どれだけ練習を積んだところで本番の緊張に押し潰されることもあるのが人間なのだと日万凛の話を聞きながら内心フォローを入れた服部。
初めは取っ付きづらい性格をしていると思っていたがなんてことはない、彼女は自分の尊厳のために戦い続ける努力家なのだと理解した。
「桃の能力も初めは凄いって言われてたけど……」
「さっき言ってた欠点が分かっちゃったんだね」
「……おかげで東家では落ちこぼれと馬鹿にされる日々だったわ。特に姉の八千穂からは毎日毎日絡まれて……」
日万凛にしてみれば、今回の交流戦は東家を飛び出して初めてやってきた見返すチャンスであり、加えて自分と相性のいい能力とその奴隷が手元にあるという二度とない絶好の機会なのだ。
「だからアンタ、ありがたく協力しなさい!」
「うん、協力するよ」
服部にしてみれば、日万凛の貞操を図らずもいただいてしまった負い目のほうが割合としては大きいためどう頼まれようと受け入れるつもりではいた。
それに、自分と同じように強くなるための努力を欠かさない彼女の姿勢は好感が持てる。服部が協力する理由としては十分であった。
「いい返事だわ。……最終的な自分の志はね、組長のような英雄になること!」
「っ、それって―――」
「今まで日の目を見なかった分、思い切り活躍したいのよ……!」
〝オレは京香さんと一緒に、困っている人達を助けるヒーローになりたいです!〟
「(日万凛ちゃん、君はオレと同じことを……)」
「でも今の段階じゃ、交流戦の勝利に足りないものがあるわ」
日万凛の言う足りないもの、それはもしかしたら自分の強さなのかもしれないと恐る恐る耳を傾ける服部。
「それは―――継戦能力よ」
「……え?」
あまりにも意外な解答に思わず力が抜けそうになるが、よくよく考えてみれば確かにそうだと納得する。
「……そう言えばそうだね、京香さんの時と比べて変身できる時間が極端に短かった気がするよ」
「その様子だとアンタは実感できてなかったようね。
……変身している間、自分は物凄い疲労感に襲われたんだから。疲労がピークに達した瞬間変身が解けたのよ」
「もしかして……?」
「そのまさかよ。変身できる時間は組長や自分の体力に比例すると思うわ」
京香との初変身時の記憶を掘り起こす。……京香は確か、私の力を吸い取っているのか!!?とか言っていた気がすると思い出した服部。
「なるほどなぁ、君の体力を吸って変身を維持していたと考えると辻褄が合う。となると足りないものは確かに継戦能力だ。でもオレじゃどうしようもないよコレ?」
「……こんな言い方は不服でしかないけど、アンタの電池として自分が更に体力を底上げしなきゃどうにもならないわ。けれど交流戦まで時間なんてない」
「代替案があるんだね?」
勿論と首肯する日万凛の表情は自信に満ちている。
「簡単な話よ。変身が解除されるより早く敵を倒せばいい。そのための必殺技を開発するわよ!」
「必殺技……!今まで殴る蹴るだけで倒せなかった敵がいなかったけど、更にハイレベルな戦いともなるとそういうワケにはいかないもんな……」
「……よくよく思い出せばそうね。組長の仇をパンチ一発で消し飛ばした時なんて―――」
あれ?もしかして今更必殺技を編み出すまでもない?
……いやいやそんなことはないとかぶりを振る日万凛。
だって目の前でこんなにもやる気を漲らせている服部がいるのだから。
「……君と一緒に必殺技を作ってみるよ!オレだってもっともっと強くなりたいんだ!」
「いい返事よ!」
「それで?君のお姉さんの、東八千穂ちゃんの能力は?」
「〝
「わァ……ぁ……」
桃の恩恵により発現する能力の多くは筋力が強まるとか記憶力が高まるとか、いわゆる基礎能力の強化が殆どだが、実力至上主義を敷く東家に天与の才をもって生まれた八千穂の能力は強力を通り越した超常な代物である。
それは崇高な構えとともに時を5秒止めるか巻き戻すことができるというもの。
『……確かに八千穂の能力はヤバいけど、大技だから数回使ってればバテてくるのよ。そこに勝機はある』
「数回使えるだけでも凄く厄介だよ……」
『あと能力を発動させるために謎のポーズをとるの。己を高めるルーティンだって』ビシッ☆
「なるほどぉ……だったら必殺技は得意のスピードを活かしたものがいいよね」
『そうね、時を止める暇さえ与えない最速の一撃!』
現在、寮の外で適当な醜鬼が湧いてくるのを待ちながら必殺技に関する話で大いに盛り上がっていた服部と
長い尻尾をドシンドシンと地面に打ち付け、どんな必殺技が良いか適当に体を動かしながら思案する。
「素早く踏み込んで―――真っ直ぐ突く!」
『……遠くの岩山が抉れたわね。これを回避不能の技に昇華できれば尚いいと思うわ。負担も少ないし』
「でもこれ、人に当てたら死ぬよね?」
『派遣されてくる審判の能力で交流戦のダメージは決着後すぐ全快するわ。だから遠慮せず戦えるのよ』
「なるほど、至れり尽くせりだね」
『そういうこと。……醜鬼が出たわ!今のうちに試せることは試しておきましょ!』
「応ッ!!」
地面を突き破って出てきた数匹の醜鬼に突進を仕掛ける服部。その時日万凛から指示が飛ばされる。
『アンタの尻尾はリーチが長くて切れ味も鋭くて出だしも速い、今のままでも十分強力だけどその一点に力を集約させればどうなるかしら!?』
「っ、やってみるよ!!」
即座に力を一点に集約する。
するとどうだろうか、ただでさえトゲトゲしかった尻尾が更に凶悪さを増し、さながら一本の大剣のように変形してしまった。
限界まで圧縮した力を尻尾の横薙ぎとともに解放する。
「HATTORI ディノスラッシュ!!!」
『……技名ダサッ』
ネーミングセンスを含めた何もかもが壊滅する。
醜鬼は勿論のこと、目に映る魔都の光景に横一文字の切れ込みが刻まれたのだ。
『凄い、凄いけど……もう限界」
「あっ……日万凛ちゃん」
ごく自然に服部の背中に体を預ける形となった日万凛は、凄まじい疲労感の中に確かな手応えも感じていた。
「……力を一点に集中させるやり方、凄く有りね」
「うん、これなら格上相手にも戦えるよ」
「……アンタ疲れてないの?自分の前で虚勢は張らないでちょうだい」
「えっ?……ちょっとは疲れてるよ、ちょっとだけね。
流石に今の日万凛ちゃんほどじゃないけどさ」
「くぬぬ……男の癖に生意気―――……あっ」
その時、日万凛の唇が服部の唇と密着し、彼女の柔らかな舌が服部の口内にねじ込まれていく。
今回のご褒美はディープなキスらしい。
「(い、いやらしい……!!)」レロレロ……
ご褒美もそこそこに体力を回復させた日万凛は、続けざまに変身してさっきの戦いの反省をしながら更なる必殺技の開発に望んでいた。
そこに近付く気配が一つ。
「やってるな日万凛、弦太郎」
『組長!』
「京香さん!」
「私の能力はしっかり使えているようだな」
『はい、お陰様で今は必殺技の開発中です』
「ふむ、一点に力を集中させ高い効果を生み出す。
……私も人型との戦いに備えて訓練しようと思っていた。先んじて試しているとは素質があるな」
『ありがとうございます!』
「醜鬼相手にも有効的な技をいくつか編み出せました。中近距離は余裕でカバーできます!」
服部の自信に満ちあふれた発言にそうかと頷くと、顎に手を当て思案しだした京香。
「……弦太郎、最初に変身した時使ったビーム、あれは使わないのか?」
『えっ、ビーム……?』
「……あっ、忘れてた」
京香の体力をごっそり削って繰り出したビーム、あまりに絶大で負担の大きそうな技ゆえに無意識に選択肢から除外していた服部はうっかりしていたと言わんばかりに頭をペチンと叩く。
「うっかり者め。……訓練を積むのならあのビームも使いこなせるようにしておくことだな」
「は、はい!すみません!」
『もう!そんな凄い技があるなら最初に言いなさいよ!』
「ごめん日万凛ちゃん!」
「……フッ、励めよ。私は仕事を片付ける」
「ありがとうございます!」
『ありがとうございます!』
この場を後にする京香を見送った服部と日万凛は、早速ビームを撃つべく訓練を再開する。
「とはいえ、強力な分体力も著しく消耗するんだよ。最初撃った時なんてそれで変身解除したんだから」
『……ここぞという時の奥の手、まさに必殺技って感じでいいじゃない!燃えてきたわ!必ずモノにするわよ!』
「……噂をすればだ!」
地面を突き破って醜鬼が飛び出してくる。
今度は数十匹単位のそこそこな群れだ。
「最悪途中で変身解除するかも!」
『弱音なんて吐かない!アンタは自分を信じてぶっ放せばいいの!』
「……気をしっかりもってくれよ!!」
服部は、最初にビームを撃った時の感覚を思い出しながら体中に力を込めていく。
すると、
『っ、これは、想像以上に、ヤバい、かも……!』
「日万凛ちゃん!!」
『大丈夫よ!……これ、しき!!』
「「「「 ■■■■■■〜〜〜!! 」」」」
迫る醜鬼。
自らの体力を奪い、エネルギーへと変えていく服部。
明滅しだす意識。
それでも日万凛を突き動かしていたのは―――
『今よ!』
「HATTOR『超振動波!!』え?」
……鼻角から発せられるビーム、もとい振動波が直線上にいた醜鬼を襲い、その肉体を跡形もなく破裂させた。
後から続くように現れた醜鬼も例外なく破裂させていき、気付けばあっという間に全滅させてしまった。
影も形もない揺れる殺意、まさに―――
『まさに、必殺技だわ……でも、もう無理」
「あっ……日万凛ちゃん!」
度重なる変身に加えトドメのビームを発射したことで精も根も尽き果てた日万凛は眠るように気絶する。
自分の背にしなだれかかる彼女の疲労困憊ぶりを察した服部は即座に訓練の続行を断念、そのまま彼女を背負って寮まで引き返すことにした。
図らずも中断することとなったが成果は十分、いや十二分に挙げられた。
「(……やっぱり君は凄いよ日万凛ちゃん。オレももっと頑張らなくちゃな……!)」
日万凛のおかげで自分の潜在能力の高さを深く自覚するに至った服部。
その恩に報いるためにも、隠れてこなしている日課の筋トレを更に増やす決意を固めた。
そして数日後―――にょん
「ノルマは六番組の完勝で行こ」
「優雅も付け足そう、優雅なる完勝じゃ!」
……七番組寮に六番組の猛者が集う。
即ち、魔都交流戦の始まりである。
区切りがいいのでここまでにします。
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