魔都怪獣王のHATTORI   作:びよんど

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さー魔都交流戦始まりました!

初戦は東家の姉妹対決!


第七話 魔都交流戦 ①

 

 

<<< 〝魔都〟 >>>

 

 

そこかしこで雷鳴が響き渡る中、七番組と六番組の精鋭三名は穏やかながらも静かに火花を散らしていた。

 

 

「互いに出張メンバーが戻らんと交流戦の競技も限られてしまうな」

 

「今回は予定通り、一対一の決闘だね」

 

「ゴクッ……(いよいよ始まるんだ……!!)」

 

 

緊張を露わにしながらも服部は、この魔都交流戦に出る日万凛の役に立つべく気持ちを新たにする。

 

 

「審判は十番組の備前銀奈がやらせていただきます!」

 

 

会員制闘技場(ギンナクラブ)

 

 

備前銀奈の能力で、自身が地面に引いた線を境として結界が発動するというもの。

署名した者は結界に入れ、また署名をした者同士の戦闘は結界内であればどんな傷でも治る。

 

この能力のおかげで訓練に交流戦に引っ張りだこの彼女であったが、自分の欲求を満たせる都合のいい能力にむしろ感()のあまり大はしゃぎしていた。

 

 

「(我ながら本当に夢のような力だわ!魔防隊を間近で見られるもの!桃の恩恵って本人の気質や素養で能力決まる説あるけど激同意!!)」

 

「醜鬼が千匹来ても壊れない結界だね」

 

「その調子で審判も頼む」

 

「はい天サマ京サマ!!頑張っちゃいますよッ!!」

 

 

……様付けで呼んでいるということは京香のファンなのかと銀奈を見た服部であったが、そんな彼女とふと目が合った。合ってしまった。

 

 

「(・д・)」シラッ…

 

「(おぉ……男には冷めてるな……!?)」

 

 

やはり女尊男卑の価値観は根強いなと思っていると、隣で手作り感あふれる応援タオルを掲げるがいた。

 

 

「それ、作ったんだね」

 

「寧は非戦闘員ですから応援たくさん頑張ります!」

 

 

寧の純真さを微笑ましく思う間もなく、銀奈の一声とともに交流戦が幕を開けた。

第一試合の相手は―――日万凛を挑発する東八千穂

 

 

「……自分が行きます」

 

 

敢えてその挑発に乗った日万凛は、手を服部に向けて無窮の鎖(スレイブ)を発動させる。

 

 

『能力の一環として彼も参加するわ。……と言っても参加せざるを得ないけどね』

 

「構わん、犬使いに犬を使うなと言うのは酷かろ。男と合体した程度で何も変わらんのじゃ」

 

ルールはギブアップもしくは戦闘不能で負け、怪我治るし思い切りやっちゃって!!

 

 

いよいよ始まる。……日万凛に背を預けた服部は、初となる能力者との真剣勝負に緊張と興奮を禁じ得なかった。

 

 

「私様が勝った後は東家に帰ってもらう。私様の部屋で過ごすのじゃ。みっちり矯正してくれるわ」

 

「勝つのはこっちよ、八千穂……!!」

 

 

第一試合

 

七番組副組長 東日万凛

 

VS

 

六番組副組長 東八千穂

 

 

はっじめーっ!!!

 

 

待ったなし。

副組長同士、何より姉妹の一大決戦が火蓋を切った。

 

八千穂は不敵な笑みを浮かべながら勝利宣言を行う。

 

 

「予告してやろう日万凛。

お前は秒殺されるの―――」

 

 

パ ン ッ

 

 

「『 超振動波!!! 』」

 

 

……服部の鼻角から発せられた振動波が一瞬で八千穂の全身を襲う。

肉を千切り血を沸騰させる必殺技を真っ正面から食らった八千穂は、激痛とともに酷く困惑を露わにしていた。

 

日万凛、こんなに強かったっけ?と……。

 

 

「(いきなり―――何してくれるんじゃあ!!?

東の辰刻(ゴールデンアワー)!!……五秒戻れ!!)」

 

 

 

 

 

<<< しばらくお待ちください >>>

 

 

 

 

 

「( ´ー`)フゥー…」

 

『(……っ、疲労している、時間を戻したわね!!)』

「(超振動波をマトモに食らっても能力を発動できるのか!?思ってたよりタフだ……!!)」

『(問題ないわ、そのパターンも想定してきたもの!)』

「(ここは作戦通りに攻めるんだね!)」

『(えぇ!行くわよ服部弦太郎!!)』

「(応ッ!!)」

 

はっじめーっ!!!

 

 

開幕から必殺技を放って倒す作戦は失敗したが、それが上手くいかないことは日万凛も薄々分かっていた。

万全な状態、それこそさっきみたいに開幕から不意打ち気味に撃ってようやく一発当てられる大技だ。

正直言って使いこなせているとは言い難い。

 

 

「(行動を変えてきた。……偶然か作戦か見極めねば)」

 

 

故に消耗の少ない接近戦で勝負を仕掛ける。

服部と日万凛は目にも止まらぬ速度で八千穂に迫る。

 

 

「(油断は消えた、そして日万凛!……お前は私様の能力が成長しているとは知らんじゃろ!)」

 

 

……成長したのは何もお前だけではない。

妹の日万凛としばらく離れている内に、八千穂は〝東の辰刻〟を更に強力な能力へと仕上げていた。

 

 

「(姉に妹は勝てぬという世の摂理、東の大辰刻(プライムタイム)にて証明してやろう!!)」

 

『(絶対倒してやるッ!!)』

 

 

……交流戦が始まる少し前、ともに湯に浸かった六番組の若狭サハラに八千穂の近況について聞いていた日万凛。

仮想敵の情報を少しでも引き出そうという魂胆で尋ねたが、サハラから返ってきた言葉は〝特に変わりなし〟

 

日万凛のプライドが刺激されたのは言うまでもない。

 

 

『(……やっぱりそれがメイン武器ね!)』

 

 

空を跳ぶ服部を魔都用に改造された銃で捕捉する八千穂。

通常兵器では太刀打ちできない醜鬼でも、あの銃で撃たれればただでは済まない。

それは服部も例外ではない。

 

 

「(身動きできん空に跳ぶとは愚かじゃ!降りてくるところで時を止め撃ち抜ズバッ

 

 

おかしい、何かがおかしい。

左手側の感覚が殆どない。

どういうことだと左に視線を向ける八千穂。

 

……銃を握る左手ごと綺麗サッパリなくなっていた。

 

 

「(っっっ〜〜〜〜〜!?……わ、私様の左手がッッ!?

東の辰刻(ゴールデンアワー)!!……五秒戻れ!!)」

 

 

 

 

 

<<< しばらくお待ちください >>>

 

 

 

 

 

「( ´ー`)フゥー…フゥー…(い、いかん!一瞬何をされたのか分からんかった!……じゃが、早めに能力を使えば時を止めたタイミングで奴らは間近に来てるはず!!

東の辰刻(ゴールデンアワー)!!……五秒止まれ!!)」

 

 

〝5〟

 

 

「(っ、ま、まさか尻尾で攻撃していたとはな……)」

 

 

〝4〟

 

 

停止世界の中、目と鼻の先にまで迫っていた服部の長大な尻尾を確認し思わず冷や汗を流す。

 

 

〝3〟

 

 

「(しかし、タネが割れれば恐れるに足らんッ!)」

 

 

〝2〟

 

 

長大な尻尾の射程から外れ、狙うはそのガラ空きの胴体。

自分に三度も能力を使わせたことを上から目線で褒め称えながら引き金を引く。

 

 

〝1〟

 

 

「(終わりじゃ日万凛―――っ!!?)」

 

 

〝0〟

 

 

あんぐりと口を開ける八千穂。

何故ならそこには―――

 

 

……豆鉄砲でも食らった気分パラパラパラ…

『相変わらず呆れるくらい頑丈ね……』

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()無傷の服部がいたからだ。

 

……魔都用に改造された銃であれば()()服部の表皮を傷付けることは出来ただろう。

だが、変身したことで肉体強度が増した今の服部には文字通り豆鉄砲ほどの効果しか期待できない。

 

口では呆れていた日万凛も、今まさに目の当たりにした八千穂も、なんなら見物している京香達も、服部の頑丈さに内心戦慄していた。

 

 

『能力を無駄打ちさせた!このまま削り切るわよッ!』

応ッ!!

 

 

……日万凛の負けたくない、勝ちたいという気持ちが自分の中に流れ込んでくるのを感じた服部。

自分と同じヒーローになりたいという志を持つ彼女を勝たせるべく、服部は更に心を燃やした。

 

 

「す、すごいです!まるで分身しているみたいな……!」

 

「よーし、ぶっ飛ばせぇ!」

 

「(あいつ結構ゴイスじゃん!!)」

 

 

寧達の反応をよそに、日万凛は自分の予想を遥かに超える働きを見せる服部にただただ感謝の念を抱いていた。

故にこそ、服部の働きに報いるべく日万凛もまた勝利を目指して心を燃やした。

 

……東の辰刻(ゴールデンアワー)は、ノータイムで使えない欠点がある。

技の起こりである妙なポーズを始めたら、間合い次第で潰すか逃げるか受けるかすればいい。

 

加えて、八千穂の顔を見ていればその機微で能力を使ったか判別できる。

急に疲労していたら時を戻された証拠、想定していた動きとは違うパターンを取って撹乱する。

 

 

「(……精々能力を使えるのはあと数回、無駄打ちさせきれば勝ち確定、唯一の攻撃手段である銃撃も効かない、なんて日万凛は考えとるんじゃろうなァ!絶対家に連れ戻してツンツンしてくれるわ!!)」

 

 

服部とある程度手合わせしただけである違和感に気づいた八千穂。

 

 

「(あの男……ずっと私様に背中を見せずに戦っておる。()()()()()()()()()()()があるのか……!)」

 

 

どんなに強力な能力にも必ず穴はある。

組長ほどの強者ならばその穴を熟知し上手くリカバリーできるが、恐らくこの男はそういった戦闘経験が乏しいのだろう。

あまりに見え見えな戦い方に一筋の光明を見出す。

 

 

「(……ここはやはり奥の手を使う!姉の偉大さ思い知れい!!)」

 

『(構え!時を止めてくる!この距離なら回避―――)』

 

 

東の大辰刻(プライムタイム)

 

 

〝10〟

 

 

「(……五秒ではお前達の速さには対応しきれん、それは認めてやろう)」

 

 

〝9〟

 

 

「(だがッ!10秒の静止であれば問題ない!背後を取る程度ワケないぞ日万凛!!)」

 

 

〝8〟

 

 

重くのしかかる疲労感を押し殺して歩を進める。

 

 

〝7〟

 

 

「(男のほうの硬さを突破することは出来んだろう)」

 

 

〝6〟

 

 

「(だからこそ、これは賭け)」

 

 

〝5〟

 

 

八千穂は服部ではなく()()めがけて銃弾を浴びせる。

 

 

〝4〟

 

〝3〟

 

〝2〟

 

〝1〟

 

 

結論から言って、八千穂の推測は正しかった。

 

 

〝0〟

 

 

『……がっ、はっ……!!?」

っ!!日万凛ちゃん!!」

 

 

八千穂からの銃撃をマトモに食らった背鰭、もとい日万凛は変身を維持できなくなるほどの重傷を負い、堪らず地面に投げ出されてしまう。

 

服部のほうは幸いにも無傷であったが、途中で変身を解除されたことで無防備な状態となる。

 

 

「日万凛ちゃ「動くな男」〜〜っ!!」

 

 

日万凛の元へ駆け寄ろうとする服部のこめかみに銃口を向け制止する八千穂。

 

地に這いつくばり血をドクドクと垂れ流す日万凛。

先程までの優勢から一転、劣勢に追いやられた現実に心が張り裂けそうになっていた。

 

 

「こんな、技が、出来ていたなんて……!!」

 

「私様は成長の度合いも天才的じゃ!それを計算に入れなかったのが敗因よ!!」

 

 

奴隷を攻撃したところで硬すぎて意味はない。

ならば背鰭と成って一体化している主もそうか?

 

答えは否、主の硬さは奴隷ほどではない。

それこそ魔都用に改造された銃で撃ち貫けるくらいの耐久度しかないと身をもって証明することが出来た。

 

 

「男の強さは認めてやろう。……だが日万凛、お前は昔から全く変わらんな」

 

「……っ」

 

 

……この戦い、既に雌雄は決してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、盛り上がってるみたい。少し様子を見ようか。……標的が増えるかも、相手は多いほうがいいでしょ」

 

「今回は我がやる。お前は三番組とやら相手に暴れたからな」

 

「………」

 

 

……魔防隊に迫る影が三つ。

今はまだ闇に潜むのみ―――

 




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