気ままに書いていきます。
<<< 〝魔都〟 >>>
「「「「 ■■■■〜〜〜ッ!!! 」」」」
備前銀奈の張った結界が破られ、無数の醜鬼が我先にとなだれ込んできた。
「京香さん!」
「組長!」
外の異変を察知し寮から急いで出てきた服部と朱々は、即座に状況を理解するに至る。
交流戦どころの話ではなくなったと……。
「交流戦は中止だ!醜鬼を撃滅する!!」
「了の解!!」
即座に思考を戦闘モードに切り替えた京香の指示を受け、能力を発動し醜鬼の群れに突っ込んでいった朱々。
その表情に先程までの翳りは微塵もなく、いつも通りの元気ハツラツな彼女であった。
試合で戦っていた若狭サハラとも共闘して醜鬼の群れを蹂躙している。
あちらはほぼ問題ないだろう。
「非戦闘員を寮に運んでいくよ」
「寧からの索敵報告も聞いておけ!」
六番組組長の出雲天花が能力によって寧と銀奈を移送するのを見届けた服部は、そこかしこで大暴れしている無数の醜鬼を見渡しながら内心冷や汗を流していた。
「京香さん、結界が破られているようですが一体どんな醜鬼が現れたんですか!?」
「奴だ、奴が結界を一撃で破壊して―――」
……京香の指差す方向には誰もいなかった。
そして、服部はいち早く気が付く。
「日万凛ちゃんは何処にいますか!?」
「日万凛は今あそこで醜鬼の相手を―――っ!!」
京香と服部の視線の先には、大量の醜鬼相手に腕を武器化して対抗する日万凛と、結界を破壊した張本人である鬼の面を被った大柄の醜鬼雷煉の姿があった。
「お前は標的ではないな。……とりあえず、炭になってもらおうか」
腕を振り上げ雷雲を発生させていく雷煉を見て呆気にとられる日万凛。
服部はその光景に言葉にならないほどの危機感を抱いた。
アレを食らえば日万凛は死ぬ、と……。
服部の体がひとりでに動き出す、と同時に八千穂が間一髪で日万凛を落雷から救い出した。
二の足を踏む結果となったが日万凛が無事なことに安堵する服部と京香。
「ほぅ?」
「八千穂!?」
「日万凛、あいつは骨が折れるぞ!」クイッ
その時、すぐ近くにいた日万凛や少し遠くで様子を伺っていた服部は八千穂が疲弊していたことに気が付く。
それは時を戻した証拠。
……つまるところそれは、日万凛が
自分では歯が立たない。
その事実に歯噛みしながらも、すぐに思考を切り替えてこの場は八千穂に預けることを選択した日万凛。
ジャリ…「落雷を予知していた動きだったな」
踵を返してこの場を後にする日万凛を尻目に、八千穂は目前の敵に絶大な殺気を浴びせた。
妹に雷を落として殺した化け物に容赦などしない。
「よくも日万凛を……貴様ぁ、許されぬぞ!!」
一方、日万凛のほうもただ逃げ出したワケではなかった。
むしろその逆、自分では到底敵わない化け物を実姉が倒せる保障などどこにもない。
故に助太刀を求めるため、ある人物の元へ駆けたのだ。
それは、醜鬼の群れ相手に無双する服部と京香。
「組長!……自分も弦太郎に乗せてください!」
『っ!!……よし日万凛、三人でいくぞ!』
「えっ!!?」
京香には確信があった。
〝
日万凛の手に口づけをする服部。
変化は急激に起こった。
元々2mは優に超えるほどの上背を誇っていたが、日万凛をも取り込むことで更に巨大化し、5mサイズの小山ほどの体格へと成長を遂げた。
そして、後頭部から尾にかけて結晶にも似た瑠璃色のトゲのようなものが無数に生え、そこを起点に膨大な量の冷気が漏れ出てくる。
体色はいつもの黒から一転、初雪を思わせる混じり気のない綺麗な白に染まっていた。
さながら現在の服部の能力を表しているようである。
『……まさか、こんな形態まで……!?』
『素晴らしいぞ弦太郎!さぁ暴れてみろ!!』
「す、凄い力、というか冷気だ……!」
服部は、自らの身を蝕むほどの膨大極まる冷気に手を焼かされていた。
だが、ここで手をこまねいている場合ではないと気合でなんとか必殺技のチャージを行っていく。
服部もまた確信していたのだ。
ここで一発ドカンと撃っておけば、自分は完全にこの力を制御することが出来ると……。
「(超振動波の要領で出せるはずだ。力を一点に集約し、一気に解き放つ―――)」
背鰭を激しく発光させ、口内に溜まりきったエネルギーを四方から迫る醜鬼の群れめがけて発射する。
『『「
極太の光の柱が醜鬼の群れに突き刺さる。
「「「「 ■、■■■……! 」」」」
モロに光線を食らった醜鬼達の体が急速に冷え固まり、それらは例外なく氷の彫刻となってしまった。
直撃を免れた生き残りの醜鬼達も、あまりの冷気に著しく動きを制限されていた。
「ふぅー、何とか慣れてきた」
『これが二人乗りの力……!』
『よし!このまま大軍を掃討する!』
『でも八千穂が……ッ』
背鰭と化した日万凛の視線の先には強敵雷煉と相対する実姉八千穂の後ろ姿。
そんな日万凛の心配をよそに、京香は自信たっぷりに口を開いた。
『敵将のほうは六番組に任せる、天花がそう言った!
交流戦の代わりに見せてやる、組長の戦いというものを!』
「助けに行くのは目の前の敵を全員倒してからでもいいですよね、京香さん!?」
『っ、そうだな、なら急ぐぞ!』
『「 はいッ!! 」』
<<< 七番組寮内 >>>
「うううショック!!……天サマと京サマが戦うのに待機なんて……(;´Д`)フヒィ…フヒィ…」
備前銀奈は懊悩していた。
この身に宿る能力がお世辞にも戦闘向きではなく、そんな自分の立ち位置もあくまで非戦闘員であることには正直不満などない。
手に汗握る最高の戦いを最前列で見られれば、彼女にとってそれで十分なのだ。
……それなのに、非戦闘員であるばかりにこのような屋内に押し込められては見れるものも見れない。
バトルマニア特有の禁断症状と呼ぶべきか、いつも以上に挙動不審になってしまっていた。
「寮の結界が一番頑丈ですから……(ー_ー)」
銀奈の奇行を宥めながらも寧は外の様子を千里眼で逐一確認していく。
「うえぇぇぇ……。・゚・(ノД`)・゚・。」
「………」
「みたいよ〜みたいよ〜。・゚・(ノД`)・゚・。」
「………」
〝気が散ります、静かにしていてください〟
……この言葉をオブラートに包めないか考え抜き、寧が辿り着いた結論は―――
「今の寧に触れれば視点が連動します。応援できますよ」
「マジ!?流石大川村さん激ナイス!」
……視点だけでも共有することだった。
これで少しは大人しくしてくれるだろうと思ったが、千里眼を通じて外を視ていた寧や視点だけ共有してもらった銀奈は驚くべき光景を目の当たりにする。
「しゅ、醜鬼が全部倒されてます……!?」
「……いくらなんでも早すぎ〜(泣)」
少し目を離した隙に、醜鬼の群れはほぼ壊滅していた。
後に残ったのは七番組の朱々と六番組の八千穂とサハラ。
『馬鹿な……ありえん……!!』
……そして、見るからに全身ボロボロな雷煉と、それを見下ろす変身した姿の服部であった。
<<< 少しだけ時間は遡る…… >>>
天から雷鳴が鳴り響き、直後に落雷が降り注ぐ。
そんな自然現象が幾度となく八千穂の身を掠めていた。
時間の巻き戻しによって擬似的な未来予知を行い、辛うじて命脈を繋いでいた八千穂も、雷煉の圧倒的な力を前にして内心肝を冷やしていた。
「(こいつ何て火力じゃ……醜鬼とは明らかにモノが違う……!!)」
知性なく本能のままに暴れる醜鬼とは明らかに生物としての〝格〟が違う。
知性は勿論のこと、残虐性も戦闘能力も八千穂の知る醜鬼とはまるで比べ物にならない。
その時であった、突然雷煉が大口を開け火炎弾のようなものを生成し発射した。
「(狙いは……私様の腕かッ!!)」
火炎弾の予想外の速度を前に、これは避けきれないと回避を断念する八千穂。
疲労が溜まる一方だが能力を使って予知するしかないと崇高なポーズを取る準備を行う―――
『『「
……が、そうはならなかった。
火炎弾の横合いから突然光の柱が激突し、火炎弾に内包されていた膨大な熱を冷却し無効化してしまったのだ。
そして、火炎弾を消火するのみに留まらず光の柱は徐々に横薙ぎに移動していき、直線上にいた醜鬼の大軍や雷煉を次なる標的に定めた。
「ぬぅ、小癪な……!!」
光の柱に当たった醜鬼から続々と凍りつく様を見て流石に危険と判断したのか、雷煉は受けに回るような愚かな真似はせず全力で回避に専念した。
「こ、これは……!?」
「お疲れ八千穂」ヒョコ
「のわっ!!?……組長?」
雷煉に狙いを定めた光の柱を間近に感じてその冷気と威容に肝を冷やしていると、不意に隣から天花が現れ色んな意味でビックリした八千穂。
……あの光の柱は天花が放っているワケではなかった。
では一体誰が……?
「組長、アレは一体……?」
「見た感じ、京ちんと妹ちゃんがあの大っきい奴隷クンの主になってああなったっぽいね。凄い力」
「なんと!!?日万凛まで……!」
雷煉を追い詰めていた凍てつく光の柱は止み、それを発射していた服部の変身姿も露わになる。
その姿はさながら氷の鎧を身に纏う竜人のよう。
「おのれぇ、よくも我が軍勢を!……この代償は死をもって贖え、白き敵対者よ!!」
自らの身の丈の倍以上はある巨大な怪獣を前にしても臆することなく殺意を剥き出しにして睨みつける雷煉。
「……ここからは直接叩きます」
『了解だ、存分に力を見せつけろ弦太郎!』
京香の後押しを受けて一気に雷煉の懐にまで潜り込んだ服部は、膨大な冷気を右腕に込めてパンチを放つ。
「っ、いいだろう、天罰
想像を遥かに上回る服部の速力に雷撃を落とす暇はないと判断した雷煉は、その雷撃を左腕に込めて返り討ちにする選択を取る。
雷撃を乗せた拳と冷気を乗せた拳がぶつかり合い、鈍い音が魔都全体に響き渡った。
そして、雌雄はすぐに決した。
「っっっ〜〜〜!!?」
雷煉は驚きを隠せずにいた。
左腕に纏わせていた雷撃がどういう原理なのか
神経系にまで侵食する冷気を融かすべく体内で炎を発生させようとするが、ちっとも発火する兆しがない。
……それもそのはず。
現在の服部は絶対零度、即ちマイナス273.15℃の冷気を限界まで生成し意のままに操る過去最強クラスの能力を宿しているのだから。
超極低温は静止の世界、戦闘はおろか呼吸すら出来なくなるある意味究極の〝無〟を体現しているのだ。
そんな〝無〟に直に触れればどうなるか、それは現在の雷煉を見れば一目瞭然だろう。
「馬鹿な……ありえん……!!」
重度の凍傷により全身の筋肉や骨がひび割れ、力なく膝から崩れ落ちる雷煉。
血すら流れ出ない、痛みすら喪失した身でただただ現実を受け入れることが出来ずにいた。
『相変わらず凄まじい力だな、弦太郎』
「誰も巻き込んでは―――いないようですね。良かった良かった」
『もうアンタ一人でもいいんじゃ……いやいや、そんなことはないわよね!』
……京香が言ったような組長の戦いを見せる機会はなくなってしまった。
組長が出張るまでもなく、服部の手によってあらかた解決してしまったからだ。
「……嘘、雷煉負けちゃったの?」
「まずいな、このままでは……!」
「うん、かなりマズいね。……予定より早い顔見せになっちゃうけど、しょうがないよね」
「モンスターバース シーモ」って検索すれば出てきますよ。今回の服部の変身姿の元ネタ。
……京香さんや日万凛ちゃんという戦力を消費するんだから、このくらいは盛っておかないと、ね……?