転生博麗   作:ライダー☆

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第十一話 破壊

光弾が、放たれた。

数ではなく、密度だった。部屋全体が光で埋まった。隙間という概念が消えた。弾と弾の間に空間がない。上も下も前も後ろも、光で塗り潰されていた。

俺は動いた。

霊力を全身に巡らせ、光弾が触れる直前に向きを変える。完全には防げない。肩が、脇腹が、熱くなった。それでも、致命的なものは避けた。

御札を三枚、続けて投げた。爆発が連鎖した。一瞬、視界が開けた。その隙間を抜ける。

 

「楽しい!久しぶりに、力を使える!」

 

フランドールの声が、弾幕の向こうから聞こえた。屈託のない声だった。心から楽しんでいる声だった。

その無邪気さが、放たれる力の破壊性と釣り合っていなかった。だからこそ、恐ろしかった。

 

「魔理沙!」

「わかってる!」

 

魔理沙が側面から弾幕を展開した。フランドールの光弾とぶつかり、空間で爆発が連鎖した。壁が削れ、石材が落下した。館が、さらに壊れていく。

俺は動きながら考えていた。

このままでは長くない。館が崩壊する。レミリアが倒れる。美鈴も、まだ意識が戻っていない。

吸血鬼の弱点を思い出した。日光だ。この身体に染み込んでいた知識が、その一点を示していた。

だが試す前に、確かめなければならないことがある。

 

「魔理沙、外に引き出せるか」

「外へ?」

「館の中が持たない。フランドールを外に誘導する」

 

魔理沙は一瞬だけ俺を見た。

 

「わかった」

 

魔理沙が弾幕の向きを変えた。フランドールを押し込むのではなく、横へ誘導するように。俺も御札を使ってフランドールの前方を塞ぎながら、側面を開けた。

フランドールは、素直に動いた。

 

「逃げるの。つまらない、もっと戦いましょう」

「逃げていない。移動だ」

 

ベランダを抜けて、外に出た。

太陽の光が、一気に降り注いだ。

日光が、フランドールの身体を照らした。

だが、何も変わらなかった。

 

「ん…?」

「だめだ!」

 

レミリアの声が、館の中から響いた。

 

「フランは自らの弱点を破壊している。吸血鬼としての弱点を、自分で壊したんだ。日光は通用しない。逃げろ!」

 

俺は、その言葉の意味を一瞬で処理した。

自分の弱点を、壊した。

あらゆるものを壊せる力は、自分自身も例外ではない。吸血鬼としての弱点を構成する部分を、自ら壊してしまえば、弱点はなくなる。

その理解が追いつく前に、フランドールの両手が頭上で組まれた。

振り下ろされた。

俺は腕をクロスさせて霊力を集中させた。衝撃が全身を貫いた。防いだ。だが防いだ腕が痺れ、体勢が崩れた。地面に叩きつけられた。石畳に。

息が詰まった。

立ち上がろうとした時、魔理沙が動いていた。

フランドールが俺を見下ろしている隙に、背後から全速力で迫っていた。箒に魔力を凝縮させて。

 

「遅い」

 

フランドールは振り向かなかった。

右手を後方に向けて、握った。

パキン、という音がした。

魔理沙の箒が、真っ二つに折れていた。触れてもいないのに。距離があったのに。

 

「いっ……」

 

魔理沙が空中で体勢を崩した。箒を手放し、魔力だけで浮遊を保ちながら着地した。

両手に魔力を集めた。

極大の光が、フランドールに向かって放たれた。

フランドールは前を向いたまま、左手を前に出した。握った。

光が、消えた。

音もなく。残光もなく。ただ、消えた。

 

「……」

 

魔理沙が、何も言えなかった。

 

「全ての物には、目という部分があるの」

 

フランドールが言った。誰かに話せることが嬉しくて仕方ないような声で。

 

「最も緊張している部分。そこに力を加えれば、どんなものでも壊れる。鉱物の劈開と同じ原理よ。ダイヤモンドでさえ、特定の方向から力を加えれば割れる。私はその目を手の内に移動させて、握り潰すことができる。距離も関係ない。触れなくていい。目さえ掴めれば、それで終わり」

 

嬉しそうだった。

四百九十五年間、本の中だけにあった知識を、初めて誰かに話せている。その喜びが、声に滲んでいた。

フランドールは右手を空に向けた。

握った。

空に浮かんでいた雲が、消えた。

音もなく。形を留めず。一瞬で、跡形もなく。

誰も、何も言えなかった。

俺は石畳に片膝をついたまま、その場所を見ていた。雲があった場所を。今は何もない、ただの青空になった場所を。

底が、見えない。

 

「……どうやって、止める…」

 

地面に手をつきながら、呟いた。

力では届かない。これはわかった。弱点もない。これもわかった。

では、何が残る。

俺は、フランドールを見た。

この少女は今、楽しそうだ。力を使えることが嬉しい。知識を誰かに話せることが嬉しい。それはつまり、誰かと関わることが嬉しいということだ。

四百九十五年間、一人だった。

誰とも話せなかった。誰にも知識を伝えられなかった。

 

「………まだまだこれからよ」

 

フランドールが、俺を見た。楽しそうに。その目に、純粋な喜びと、四百九十五年分の何かが、混ざり合っていた。

俺は、立ち上がった。

ゆっくりと。霊力を足に流しながら。

この少女に、力は通じない。言葉が、通じるかどうかもわからない。

だが、他に道がない。

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