序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

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98.気配り上手

 ハザに連れられ、結界の縁、魔力と魔力の境界、位相空間の層と層の重なる部分などを歩くこと二十五分くらい。

 ずっと見えていたけれど、どれほど歩いても近付いてこなかった場所……オールトヴァルト村に、突然辿り着いた。

 

「……道を知る者の案内がなければ、辿り着くことさえできない秘境。外界では俺達エルフがさも御伽噺の存在であるかのような語り草で話されているが、本拠地とも言えるここがこの様子ではさもありなんだろうな」

「エルフ以外は知覚さえできないからね、そりゃそうさ。……ふぅ、いやぁ蒸れる蒸れる」

 

 なんて言いながら虚無僧笠を取るハザ。その下から出てきたのは、やはりエルフの特徴そのままの容姿。

 ……しかし、なるほどな。

 エルフというのが緑月に由来する生物であるとするのならば、そして他天体の在り方から準えるのならば、エルフとは緑月がデザインした生物と言えるだろう。

 こいつらの浮世離れした美貌はその辺が由来しているのかもしれない。言ってしまえば宇宙人で、言ってしまえば西洋人形などに感じる美しさに通ずるのだろう。

 生物ながらに不気味の谷を有しているというかなんというか。

 

「なんでそんな暑苦しいものつけてたのー?」

「これが無いとさっきのあんたみたいに飲み込まれちまうからさ。『決して目を合わせてはならない。決して耳を傾けてはならない。決して口を利いてはならない』。根の界の三黙則ってヤツ。この村で生まれ育てばみんなそう教わるよ」

「さっきのあったかいのってそんなに危なかったんだぁ」

 

 エルフとハイエルフの違いはあまりわかっちゃいないが、エルフよりアンテナが高いとかだったらマジで危険かもな。

 こいつの安否を気にしてやる義理は無いし、どうにかなってもどうとでもなるだろうという信頼はあるけれど、……まぁ、教え子の友人か。

 多少気に掛けたってバチは当たらんだろう。

 

「根の界。それが超自然的な概念らに対する総称か」

「そうだね。村のみんなはそう呼んでいる。気象・気候・そして魔物の出入り。すべては天光の樹の根の気分。そのままネノカイ様なんて呼ぶ連中もいるけど、私は好かないね」

「天光の樹~?」

「おや、外じゃあ馴染みない考え方かい? 事の真偽がどうであれ、世界の中心には、涯無き光を湛える巨樹があって、世界とは、あるいは魔力とは、その枝葉や根が落とした影に過ぎないんだ、ってね」

 

 ……また、どこ由来かわからん思想が出てきたな。

 けど言われてみればこの世界って世界樹みたいなもの無いんだよなー。いつだかに考察した魔力浮点(フロートポイント)にそれが生えているって想像してんだけど、それに関係する話は聞いたことが無いし。

 エルフで話が止まっている……というか、エルフが絶滅しかけているから広まらなかった話ってことなんかな。

 

「カンケーあるかはわかんないけど、【マギスケイオス】の集会所には涯無き天光に生ゆる樹木(アルボセン・ラディコイ・アウフォリオイ)っていうでーっかい樹があるよー。いつから生きてるのかわからない樹~」

「へえ。いいじゃないさ。そのまぎなんとかってものが何なのかは知らないけど、エルフが身を置く場所にあるのは良いことさね」

 

 ……いや。関係があるかどうか、じゃなく……多分それは本物の、だろうな。

 あー……じゃあ、今回こいつがついてきたのは銀・結糸の気まぐれというよりはハニー老の差し金だったりするのか? なんか狙ってんだよなあの爺さん。おくびにも出さんかったけど。

 本質的な部分が俺と似ているから、わかる。あれは己の目的のためならばどんなことだってやる手合いだ。

 

「ワンデラーお兄さん、行くってよー? 帰ってきてー」

「ああ。……わかった、今行く」

 

 共闘こそしたが。

 ──食い合うようなら、容赦はしないぞ。

 

 

 で、オールトヴァルト村は……なんでもない普通の農村って感じだった。

 見る村人見る村人全員が美男美女ではあるのだが、別に樹上生活をしているでもなし、とりわけ弓が得意な種族というわけでもなし。

 外のエルフは珍しい、という様子ではあるものの、自分たちの畑仕事の方が忙しい、という具合で、話しかけてくるとかはない。

 

「なんかー、ピリピリしてるねー? あたしたち邪魔ものー?」

「閉鎖コミュニティに外部勢力が侵入すればどこだってこんなものだろう」

「まぁその通りではあるんだけどね、ちょいと最近物騒というか、色々あって気が立ってるんだ。とりわけあんたらに思うところがあるってわけじゃないから許しとくれ」

 

 そう聞いた瞬間、「お」という……そして「おお!」という……待ってましたと言わんばかりの表情になって俺を見てくる銀・結糸。

 知らん知らん。勝手にやっててくれ。

 

「詳しく聞かせて? これでもあたしたち、外界じゃ名の通った名コンビなんだよね♪」

「おい」

「西へ赴けば悪竜を退治し、東へ赴けば神を説き伏せ、感謝された数は青天井! ワンジェイ興信所とはそうあたしたちのこと!!」

「へえ。興信所っていうのがなんなのかはよくわからないけど、つまり悩み事とかの解決をしてくれる、みたいな意味合いかい?」

「まさに!! だからなんでもお話痛ぁい!?」

 

 爪と爪をこすり合わせて発生させた「音の呪詛」を銀・結糸に通す。

 歯の神経に直接痛みを与えてみた。虫歯とか経験無いだろうからな、驚くほど痛いはずだ。

 

 銀・結糸はこれを受け、仰け反り、もんどり打ってバタバタする。悪は成敗した。

 

「すまん、こいつの言うことをあまりマトモに受け取らないでくれ。……が、何か困っているというのなら聞くよ。道案内の礼くらいはする」

「そりゃありがたいけど……大丈夫かい、あれ」

「ああ、頑丈だからな」

 

 口の中に無理矢理団子を詰め込む行為ができるんだ。

 こういう攻撃だってお手の物だよ。

 

「酷い……痛い……結局話は聞いているのに何この仕打ち……」

「あー……そうだ、これでも舐めときな」

 

 といってハザが取り出したるは……飴のようなもの。

 ペイトランの時に作った調整飴に似ているな。いや、それのエルフ版か?

 

「わーい! 優しい!」

「あまり甘やかしてくれるな。後が面倒だ」

「すまないね、つい。エルフはほら、子供が中々生まれないだろう? だから若い子を見るとついつい甘やかしたくなっちまうんだ」

「子供って……コイツもう450とかだぞ」

「失敬な! まだ419ですぅー!」

「だとしてもまだまだ子供じゃないさ。あたしだってそのくらいの年の頃は、大人と対等な会話をしたくてあることないこと言ってみたものだよ」

 

 ……おっと。

 なる、ほど?

 

「すまない、礼を欠く話題だったな」

「なにがだい? ……ああ、女性に年齢を、みたいな話かい? やだなぁ、よしとくれよ。あたしはもうそろ六千を数えるんだ、流石にその辺は気にしてないよ」

「ろっ……」

 

 やっぱりか。

 ……ここは多分、文明のリセットがされないんだろうな。ユランや『災晶』ですら辿り着けないような場所にあるから。

 だから、時の円環が回り続けるままに、恐らく外的要因……魔物なんかの攻撃で死ぬとかしない限り、半永久的な寿命を生き続ける。

 それがエルフってやつなんだろう。

 

「それで言えばワンデラーは見た目じゃ歳がわからないね。魔力は若々しいけど……」

「……この村の最高齢は幾つだ」

「最高齢は、ピアロ爺さんさ。村長で長老でね、確か歳は……八十万とちょっととかじゃなかったかい?」

「はちじゅっ!?」

「ああ、そんなものか。……まぁ、それよりは年上だよ。特に敬いとかは不要だが」

「本当かい? だとしたら随分若作りなんだねぇ」

「外界には肉体の年齢を……老いを止める技術があるんだ。誰でもが使えるわけじゃないが」

「そりゃ、女衆の前でその話すんじゃないよ? 若作り若作りってうるさいんだから」

「ははっ、この村に若作りが必要そうなやつはまだいなそうだったけどな」

「あんたから見りゃそりゃ誰だってそうだろうねぇ」

 

 あるいはその爺さんが、最初のエルフ、ということもあるかもな。

 BBの名付けが行われた時の頃の……もしくはそのもっと前の。

 話を聞いてみたい相手が増えたか。大望や目的に関係ない趣味レベルの興味だが。

 

「外界の人族が何年生きるのかを知っているか?」

「いや、知らないね。一万とかそこらかい?」

「たったの五十年だ」

「……生まれてすぐに死ぬってことかい?」

「まぁ、それくらいの感覚だな。で、銀・結糸はそういう常識の中で生まれてきた突然変異でな。419歳はお婆ちゃんだ、という認識が本人にあるんだよ」

「そりゃまた、難儀だね。この村にいたら子供扱いされるというか、実際子供だよ。最年少でも710歳だからねぇ」

 

 ほう。710歳。

 ……今が紫輝歴480年で、前回の災厄が当然涅月歴770年。……災厄に干渉されないはずのこの地に、そこまでぴったりな年齢の子供がいる、とは。

 

「別にお婆ちゃんの認識なんてないしー! 子供扱いされるなら嬉しいしー!」

「そうか、じゃあちやほやされてこい。そのまま帰ってこなくてもいいぞ」

「ちやほやはされたいけど、キミの隣の方が絶対面白いからヤだ!」

 

 なんかマジで幼児退行してないか。

 ハザを見れば……それはもう微笑ましいものを見る目だ。実際六千歳にしたら419歳なんてようやくはいはいしたくらいの年齢感だろうしなぁ。

 

「ああ、なら……そうだな、この村での生き方、特にさっきの根の界の三黙則や、根の界に対抗するための手段なんかは習っておけ。別に今から何をしようってわけでもない、話を聞くだけだからな。後でちゃんと共有してやるから」

「……むー。体よくあしらわれた気がする」

適材適所ってやつだよ(最年少の話を聞いてきてくれ)。そら、行った行った」

「ぬっ。……はーい。大人しく従いマース」

 

 精神が子供に依ってんなら扱いは容易い。

 仕事を与えてやればいいだけだからな。

 

 ……それに、ああして内側に入り込んでこそ知れることもあるだろうし。

 

「すまん、時間を取った。話を聞かせてくれ」

「いや、いいけどね。……あの子とはいつ頃知り合ったんだい?」

「そんなに昔じゃない。あいつが人族の子として生まれて、食い違う特徴から捨てられてすぐだから、四百十年と少しくらい前だろう」

「ああ……大変な思いをしてきたんだろうねえ。同胞としてはなんてひどいことを、とは思うけれど、私達の特徴は人族のそれとは大きく違う。親の気持ちも……少しはわかっちまうよ」

「幸いにしてアイツには復讐心のようなものが無かったからな。そのまま拾い上げてそのまま旅をしている。それだけだ」

 

 大分勝手に盛ったが、なんとか合わせるだろう。

 アスミカタで用心棒ができたくらいだ。多少のエチュードは得意でいてもらわないと。

 

「可愛がりたければあとで存分にしてやればいい。口ではなんとでも言うが、本心は嬉しいはずだ。生憎と俺はそういう可愛がりという方面の優しさを持ち合わせていないからな」

「いやあ、あんたあってこそのあのリラックスだろうさ。全幅の信頼があるからあそこまで自由気ままにあれる。あんたは余程頼りになる相手で、その根底の優しさをあの子はちゃんと感じ取っているんだろうよ」

「だと良いがな」

 

 という関係性で固めよう。一度相手が「そうなんだろうな」と推測した通りである方が色々動きやすいからな。

 

「んじゃ、今起きている問題の方をパパっと解決してもらって、オールトヴァルト村なりの外のお客人歓迎会でも開こうかね」

「ああ、そういうのは手放しで喜ぶと思うぞ。基本宴が好きだからな、あいつは」

「つまり生粋のエルフってわけだ。……そいじゃ、ちょいとついてきな。村の中で話すと快くない顔をする奴がいるんでね」

「なんだ、一枚岩ではないという話か?」

「ってよりかは、口は禍の元、みたいな話さ。村の中で禍の話をするとそれを呼び込みかねない、みたいな」

「あー。理解した。ついていこう」

 

 ジンクスで嫌がる人いるよね。わかる。

 そうでなくとも日常的に暗い話題嫌な人もいるわなー。

 

 

 して……追従した先にあったのは、小さなお堂のような場所。

 寺とか神社って感じはしないけど、軽く結界は張ってあったから……境内ではあるのかもしれない。

 

 お堂の中へと入れば、一気に静謐な空気になった。厳かとは違う。切り離された、って感じ。

 恐らく起点は天井付近にあるあのマーク。歪で奇怪な太極図……だろうか。

 

「結界をすり抜けるのが上手だね。外でもマクマリに呑まれちゃいなかったし、年の功ってやつかい?」

「そうだな。とりわけ得意であるというのもあるが。……この結界の中であれば()()()()()()()()を言っても赦される、という次第か?」

「その通り。妖怪の目が向かないからね、ここは」

 

 妖怪。……察するに。

 

「超自然的な概念……その中でも意思を持つ者達。ネノカイ様、というのは敬っていう場合のそれで、実際のところは妖怪である。そんな感じか」

「良い理解だけど、少し違う。(ワザワ)いの起こる(ミチ)。それそのものを妖怪と呼ぶ。(ミチ)とは人と人とが行き交い縁の満ちる場所の意味であり、そして妖いとは自然の力の業(ワザ)影響を及ぼす(這ヒ)という意味。即ち業這(ワザワ)いの()ちる場所……もう少し簡単に言えば、自然の手の届く場所、目の届く場所全てが妖怪であり、事象もまた妖怪であり、アンタの言う通り意思もまた妖怪であるってわけさ」

 

 事象の名前。……ああ、用法が違うって話か。

 妖怪が出たぞ、っていうよりは妖怪が起こったぞ、って感じ。嵐とは気候の名前なれど、単一の生物を示すものではない、みたいなね。

 なんとも径怪(ミチミチ)した話だことで。

 

「だから、実際のところ妖怪である、というのは微妙だ。実際のところもなにも、って話だから」

「大丈夫だ、理解した。……改めて、何で困っているのかを聞かせてくれ」

 

 さて、ハザ曰く。

 

「最近の妖怪……とりわけ自然の触覚たちの様子がおかしくてね。確かに根の界の三黙則はあるが、ああもやたらめったら他者を引き摺り込もうとする存在ではない……なかったんだ。それが最近になって、手当たり次第に……と感じる」

「被害が増えている、ということか?」

「いや、私達はあれらとの付き合い方を理解しているから、そんなことはないんだけどね。ただ……わかっていることを見越してさらに強くしてきているというか。今は被害も無いけれど、いずれは、と考えられなくもない。人的被害はそんなとこだけど、作物やら何やらは食い荒らされたみたいにして()()()()()()いることも少なくないから、恐ろしくてね」

 

 ……ふむ。既視感。

 

「妖怪に飲み込まれた者はどうなる? 自然と一体化するのか?」

「そうさ。エルフは自然とそう変わらない構造をしているからね、とけてほどけて、何も残らなくなるとされているよ」

「つまり、()()()()()()()()?」

「いや、流石にそうはならな……。……待て、私今……()()()()()()()()()かい?」

「ああ、言った」

 

 六千年。いや、八十万歳が当然の顔をして存在する村で、されている。

 まるで伝え聞いたことかのように。まるでその現象に出会ったことが無いかのように。

 

 ハザは己の口元に手をやって、信じられないことを垣間見た、とでもいうかのようにその顔を蒼褪めさせる。

 

「神隠し。……いや、物隠しというべきだな。神に無駄な冤罪をかけるくらいなら」

 

 天狗隠しでもいいが、ワンチャン天狗いるかもしらんし。

 

「記憶を……辿っているけれど。不自然な穴は空いていないように感じる。……でも、それさえも、というのなら」

「大いにあり得るだろう。まあ安心しろ。外界でも似たような事例が起きたことはあった。その時も俺が解決している」

「本当かい? そりゃ……渡りに船ってやつだね」

 

 無論未来での話にはなるが、ここまで外部と接触の無い村ならばいいだろう。

 どの事件かの名言もしていないしな。

 

 心当たり、というか、既視感はずっとあったんだ。マージャンルは違うかもしれんが、和ホラーにマイナーチェンジした、って感じかね。

 時系列的にはこっちが先なんだろうが……あるいはこれがモデルケースのこともあるか?

 しっかし……つくづく実感するけれど、本当に厄介だよ、記憶に関する問題は。

 

 ……にしても、些か無用心と言わざるを得ない。唐突に現れた外部の存在が、ここにはこれこれこういう問題が起きていると提唱し、さらには私にそれらの解決能力があると言ってくるとか……フツーに考えたら大ペテン師を疑うヤツだぞ。同じエルフだからと油断しているのか、八十万年もの間、悪意ある存在が欠片も入ってこなかったか。

 もしくは……悪意や善意を感知できる器官を有しているか、だな。

 

「とはいえだ。忘れられたものについてはどうとでもなるやもしれんが、根本原因の解決には至らない。しばらく調べる必要があるだろうな」

「衣食住なら任せなよ。千年だって二千年だって養ってやるさ」

「十日も過ぎればこちらから働き口を探してしまいそうなものだがな。……して、ハザ。すぐに二、三確認を取りたい。構わないか?」

「勿論さ」

 

 まず。

 

「具体的な日付を覚えているか? 妖怪が活発になった……どうにも妙な動きをすると感じた日を」

「四十日かそこいらさ。ひと月は経ってないはずだよ」

「その近辺、前後で、妖怪関係以外で何か変わったことや、あるいはめでたい事などはなかったか?」

「変わったことはなかったけど、お祝い事ならあったよ。さっき話した最年少の子の誕生日さ」

 

 ほう。

 ……俺達が来ることを見越し、なんらかの手段で過去の己の「丁度いいタイミング」に対して書き込みを行った、とかは充分にありそうだな。

 留意しておこう。

 

「次、様子のおかしい妖怪はどの種が多い? 水に関連するとか、山に関連するとか」

「それで言うと、明らかにミクマリが多いね。マクマリはそこまで多くはないよ」

 

 ミクマリ。水配り(ミクマリ)神か。ああ、マクマリは魔配り(マクマリ)な。

 天候や河川、海関係の神がおかしくなっている。……とすると、『長い尾を持つ角狗(ロングホーン・ロングテール)』の水域に何かが起きている可能性もありけり。コンストラクトを飛ばして探らせるか。

 

「ちなみにこのお堂に正式名称はあるか? ハザの持ち家というわけではないのだろう?」

「ああ、ここはテイア拝堂というんだ。オールトヴァルト村のあちこちに小さなものがあって、一番大きいのがここ。そんであんたの見立て通り、ここの持ち主は私じゃなくて、とある兄妹さね」

 

 テイア。……それが緑月の名前か。

 赭地(アロクトン)緑月(テイア)、紫輝ね。

 やっぱりアイツぜーったい名前あるじゃんな。

 

「兄妹というのは、何か特別な存在か」

魈覡(しょうげき)って役職に就いている兄と、巫和(かむなぎ)の妹。この村じゃあ重要な役職だけど、特別な存在かって言ったらそうでもない。普通の兄妹さね」

「ここに住んでいるのか?」

「いや、住処は普通に家があるよ」

 

 成程成程。……それで。

 

「最後に。ここの拝堂の紋章についてを教えてほしい。この図の意味を知っているか?」

「双象均環のことかい? これは紫輝、緑月と、赭地のそれぞれの関係を表しているのさ。本来はこういう色味があるものでね」

 

 と言いながら、ハウルの時にやったみたいな魔力による空間投影を行うハザ。

 それにより着色された魔力が正しい色味を示してくれた。

 

【挿絵表示】

 

 

「赭地の上に浮かぶ紫輝と緑月。紫輝は地を照らし、緑月は地に影を落とす。三つが混ざりあうことはなく、彼らの発する魔力は波を作り、皺を作り、霊脈と姿を変えて隅々まで行き渡る」

 

 ……待てよ?

 だとすれば……キロスがそこで、オールトヴァルト村がここで、……だから。

 

「……ん、ありがとう、ハザ。聞きたいことはとりあえず以上だ。俺は少し調査をしてこようと思う」

「笠はいるかい?」

「大丈夫、俺は飲み込まれないから。……銀を頼んだよ」

「ははっ、任せときな!」

 

 さて。

 じゃけん、快適な「──ですよね?」のために、よーわからん妖怪出る圏でられん件を解決しておきますかねー。

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