序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

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幕間 - 紫輝歴680年浅紫の月某日 港湾国家ゼルパパム北東の島オルカヌヴィス-トルノ・ヴェスティア自然保護地区にて

 アルジオの懸念は半分ほど当たっていた。

 レスベンスト村──。

 港湾国家ゼルパパムは北西部、アスミカタ帝国、モゴイ丘陵、ロストランドに隣接して存在する地域オルカヌヴィス。その片田舎にあるのがレスベンスト村である。

 正直に言えば何も無い村だ。居住区と畑と畜産農場。それしかない。

 けれど、レスベンスト冒険隊にとっては大事な村だ。一番きつい時に、最も支えになってくれた村。そして初期メンバーの出立の地でもあるのだから。

 

 ……なのだけど。

 実はもう、アルジオたち以降、子供が生まれていないそうなのだ。

 だから、件の絵本は、それを大切に扱ってくれる旅の商人に売ってしまったと……もう、いつ、レスベンスト村が無くなってもいいように、と。

 悲しい話だけれど、仕方のないことだ。何よりレスベンスト冒険隊こそが海に出ていってしまったのだから、何も言えない。

 

 というわけで、村人の証言をもとにその旅の商人というのを探すことになった彼らだけれど。

 

「それじゃーわたしはこの辺でー」

「あ、そっか。レスベンスト村までって話だったもんな」

「はいー。カリアンが心配なのもありますけどー、このままアルカさんと一緒にいるとー、どうにも、やっぱり、重ねてしまう気がしてー」

「重ねてしまう?」

「似ても似つかないんですけどねー。あなたからは微かに波の音がしますからねー。……それじゃ、また」

 

 そう言って、彼女は帰った。なんと海の上を走って。

 同じような技を使うリチャードがいるから驚きはない彼らだけど、距離を考えたら結構あるから送っていくのに、というのが所感である。

 ちなみに既にケレン少年の似顔絵はオーレリアより渡されているから、ゼルパパムの裏社会での捜索は次第に行われることだろう。

 

 気を取り直して彼らはその商人の足取りを辿る。

 オルカヌヴィスのあちこちを探し回り、聞き込み、目撃情報を集め。

 

 そうしてようやく、それを見つけ出した。

 

 華爛胡崙とドアベルが鳴る。

 

 店内は、ぱっと見では由来のわからない無数の古物で溢れかえっていた。

 埃臭くはない。丁寧に手入れされているのだろう。

 中にはアルカやエレオノーラが目を引くような逸品もあって、だからエレオノーラは初めから商人モードに意識を切り替えた。レスベンスト冒険隊における交渉事や経理のあれそれは全てエレオノーラが担っている。

 

「ん……おお、大所帯だな。いらっしゃい」

「失礼しますわ。私達、レスベンスト冒険隊という者でして」

「へえ。有名人だな。あー、武器の類は置いてないけど、マジックアイテムなら幾つかあるぞ」

「品物自体はあとで見させていただきますわ。……此度は客としてきたわけではありませんの。ああいえ、買い取る、という意味では間違っていないのかもしれませんが……。オホン。その、とある本をレスベンスト村から購入したと聞いて、あなたを追いかけてきましたのよ」

「レスベンスト村……。ああ、そういうことか。ちょっと待ってな、バックヤードに置いてあるから」

 

 古物商であるらしいその店は、しかし、古物の年代感に反して年若い店主である。

 雇われ、という感じもしないから、真実ここはあの青年の店なのだろう。

 

「……気付きましたか、あなたたち」

「ああ。あの店主さん、結構できるな」

「非常に整った……魔力の質をしている」

「あ、人族もそういうのわかるんだー♪」

「昔は見えなかった。けど、そういうものがあると知って……見るための魔法を作った」

「へー? 魔法を自分で編めるのは才能だよー♪」

 

 そんな会話をしながら。

 レスベンスト冒険隊に同行しているメギス=ヘカトンは、多少の言葉を胸中に誤魔化す。

 彼は精霊だから、あの青年の奇妙な魔力がわかるのだ。

 

 ──洗練された紫輝の魔力に隠れて、涅月の気配がするねー? あれ、魔族っぽくもないけど……どういうことかなー♪

 

「すまない、待たせたな。探してる本はこれで合っているか?」

 

 と、青年がバックヤードから戻ってくる。

 その手に握られていたのは、確かにアルジオとヴィクニの記憶にある本だった。けれど。

 

「……なんかめっちゃ綺麗になってないか?」

「紙が、新品みたいになってる。……それとも新品?」

「いや、色々探したけど新しいのは出てなかったから、おれがちょちょっと修復したんだよ。そのせいで古物としての価値は無くなったからな、店頭には置いてなかったのさ」

「本の修復ができるの?」

「ああ、色々道具はいるけど、できるよ」

 

 へえ、なんて純粋に受け取っている少年少女らとは打って変わって、大人組……アルカとエレオノーラ、リチャード、ついでにメギスは少々懐疑的だ。

 だって目の前の本は新品同然だった。修復といったって、ここまでできるものではないことを知っているから。

 

「『復元師(ケリュニーワ)の見せるささやかな夢』。お代は要らないよ。これは商品じゃないからね」

「えっ」

「……お代は要らないって……修繕費だけでも結構な額が飛ぶでしょうに」

 

 だからこそ驚いた。新品同然にまで修繕したからと、法外な値段を吹っ掛けられると思っていたから。

 けれど青年は、それを無料で明け渡すという。

 

「んー、飛んだのは多少の道具と素材と、あとはおれの魔力だしなぁ。元々この本を買ったのだって、遺した奴に縁があったからでしかなくてさ。つーかレスベンスト冒険隊っていえばゼルパパムの英雄だろ。そんな相手の故郷で買い取った本を渡すのに改めてストレイルを取るだなんて、そんな恩知らずなことはできないよ」

「いえ、労働には正確な対価が支払われるべきですわ」

「どうしても払いたいっていうんなら貰うけど、じゃあ、100ストレイルとかでどう?」

「十万ストレイル。それ以下には譲りませんわ」

 

 毅然とした態度でエレオノーラが言えば、青年は驚いた顔をする。

 そうだろう。わざわざストレイルを払いたいというだけでも奇特なのに、十万ストレイルなんて大金。

 

「……"余計なこと"と同じ値段か。ふぅん。……これは何かの示しなのかな、爺さん」

「爺さん?」

「ああいや、こっちの話。……じゃあ、こうしよう。今丁度依頼があるんだよ。ゼルパパムを出た後、他国の冒険者ギルドに依頼しようと思っていたものが。それをレスベンスト冒険隊にやってもらう。その報酬がこの本、ってのはどうだ?」

 

 上手い。だってそういえば、いくら成長したといってもまだまだ子供な冒険隊は。

 

「おお、それ、凄く良いな。……実はさ、もうすぐでゼルパパムに初の冒険者ギルドができるんだよ。もうすぐでレスベンスト冒険隊も本当に冒険者パーティになる。……その初めの、というか、結成前に受けた依頼、っていうのは、なんだかわくわくする」

「依頼を成し遂げたあとなら無償でもらっても罪悪感が無いからね。良い案だと思うよ」

「エレオノーラ。ここは折れ時だと思いますよ」

「……はあ。あくまで十万ストレイルは受け取らないと。……わかりましたわ。アルジオが良いと言うのなら、その方面で手を打ちましょう」

「思い切りが良いのはいいけど、依頼内容を聞いてから判断した方が良いと思うぜ。どうするよこれで……竜を討伐してこい、とかだったら」

「もう何回か倒しているからヘーキだよ!」

 

 アルジオが胸を張って言えば、青年はその頬を引きつらせた。

 正しいリアクションだけど、レスベンスト冒険隊に常識など通用しないのである。

 

「そっか。じゃあ、依頼内容を話すぜ」

 

 古物商の青年。彼の出した依頼。それは──。

 

 

 トルノ・ヴェスティア自然保護地区。

 ゼルパパムの南側に広がる広大な森林地区であり、涅月歴の頃から一切人の手の入らぬ大自然の広がっている場所でもある。

 キロスやハンラムに時折魔物が逃げ出して被害を齎すことはあるけれど、その中で採れる様々な魔植物は欠かせぬほどに貴重な資源であり、この場所をどうにかしようとする動きは有史以来一度も出てきていないという。

 密猟問題や犯罪者の温床になりやすいという問題はあれど、ゼルパパムから正式に採取許可証を取れば一般人でも入ることができ、一種の腕試しの場としての側面もあるとか。

 

 冒険隊もまたこの依頼のために許可証を取り、こうして保護地区に来たわけだけれど。

 

「でけー樹……」

「保護地区は用事がないと来ないから、来るたびに驚くのよね。……けどここ、これだけの密林なのに……湿気が少ないのはどうしてなのかしら」

「ああ……ヴェスティアの上空には風の魔力帯雲があってね。局所的に"陸地から海へ風が吹く"って気候になってるんだよね。だから海風が入ってこなくてこんなに乾いてるの。とはいえ雨が降ると一瞬で高湿度になるから、晴れている内に片付けちゃいたいかな?」

「ですわね。じめじめすると動き難くなりますし、とっとと終わらせてしまいましょう」

 

 保護地区の樹木は平均して50.5athlはある。それが密集しているのだから、その威圧感たるや、である。

 また、足元にはリチャードの身長くらいある草花が伸びていて、中には棘や毒のあるものも存在する。鬱蒼と、という言葉を体現するその森を前に。

 

「久しぶりの未知なる秘境ってやつだ。みんな、心してかかるぞ!」

「応!」

 

 意気揚々と、侵入を果たす──。

 

 二十五分後。

 

「レベッカ! 四体追加!」

「あのねえ、いつも言ってるけどわたしは弓兵! 基本多対一はできないってのに──」

「──裂空喰(ラクバク)鳳千核(ホストラ)軽風息(ガルブレイス)

「炎属性が使えないのが面倒ですわね……。──水乱穏(スローン)

「アルカ、後方上空に二枚足場お願いします」

「はいはーいっと」

 

 乱舞だった。

 舞うように、踊るように。

 四方八方から襲い来る魔物を処理して処理して処理して処理して……。

 地中から、樹上から、遠く離れた木々の隙間から、真正面から。

 とんでもない量の命の奪い合いがこの一か所で行われ続けている。

 

「わー。いつもこんな感じなのー?」

「そんなことはないんだけどね。今日は特別凄いかも」

「何に惹かれてきているのかなー? ボクじゃないっぽいんだよねー♭」

「別の何かがあるのかな? あ、"愛おしき契りの簒奪(パリアイロ)"

 

 中空に走る文字が一瞬にして炎を形作り、迫ってきていた魔物を燃やし、そして一瞬にして鎮火する。

 放出する属性魔法として火や炎属性はご法度だが、刻印魔法は対象を限定できる。だからその辺りを気にする必要が無いのだ。

 

「しかしこれは、キリがありませんね!」

「そうね……みんな、依頼の品は頭に入ってるわよね?」

「覚えてる」

「問題ないよっ!」

 

 レベッカが言いたいこと。それが何か、皆は一瞬で理解した。

 

「とりあえずの刻限は……そうね、夕方の二十時頃でどうかしら!」

「賛成! んじゃ──散開!!」

 

 散開する。

 全員が全員、別々の方向へ。メギスはユリウスの方についていこうとしたけれど、結局一番近くにいたアルカを選んだ。

 

 魔物は──明らかに、明確な意思を持って、レベッカを追う。

 

「あれ、大丈夫なのー? 散開を無しにしてレベッカちゃんを応援しに行った方が良いんじゃないー?」

「大丈夫、レベッカは身軽だし、何より危ないからね」

「危ないならなおさら──」

 

 "手桶で財貨を覆う(マガクニ)""風の便りを感じて(ユリアニアス)"が瞬時に描かれ、アルカとメギスが隠蔽結界に包まれる。

 直後、周囲から結界を貫通する規模の爆発音が響き渡った。

 

「えっ……と?」

「散開した時点で、周囲にいる存在は全て敵が確定した。昔はみんなで戦って初めてレスベンスト冒険隊だったんだけどねー。私達も色々あって、個々が個々に強くなりすぎて……本気で戦うなら孤立無援が一番になっちゃったんだ。──周囲、敵しかいないのならば、その全てを殺せば解決。これが今のレスベンスト冒険隊の本気」

「……魔晶石武器みたいな戦い方するんだねー♪」

「あー、言い得て妙かも」

 

 メギスのパーティのリーダー、カズラ・リアナも似たようなことを言っていた。

 魔晶石武器を本気で使うなら、周囲に仲間がいない方が良い、と。それほどの火力が出るから、と。

 

 レスベンスト冒険隊は、個人でそれができるというわけだ。

 

「さ、みんながここを焦土にする前に、見つけるべきものを見つけちゃおっか」

「そうだねー♪ 恐ろしいねー♭」

「それじゃ──始めるよ。『最小限(シンプレクス)』」

 

 周囲。成人男性三人分くらいの直径を持つ魔法陣の球体が編み上げられる。

 目が痛くなるほどに文字の敷き詰められたそれは、ぐるりと回転したかと思えば、アルカの手元に鍵のようなものを滲ませた。

 

"導かれるままに(アウノフ)"……結界鍵・道標」

 

 それを手に取った彼女がそのまま空間に鍵を差し込めば、差し込まれた箇所から幾重もの光条が伸びて、その波及はゆっくりと自然保護地区全体へ広がっていく。

 

「……え。すごーい♪ けどこれ……理の魔法に似てるねー?」

「理の魔法?」

「精霊の中でも限られた才能を持ってる精霊しか使えない魔法ー♪ 世界の理を書き換え、自分好みの法則(ルール)にしちゃう、個人的な好悪では使用の禁止されている魔法だねー♪」

 

 言いながらメギスは、その手に真っ白な球体を生成する。

 今回息を呑むのはアルカだ。だってそれは、色こそ違えど、とても見覚えのあるものだったから。

 

「……それ、教授の」

「教授ー?」

「……私の知っている人が、それを使ったところを見たことがあって。……でも、実行プロセスは違うかもしれない。それからはあんまり……魔力を感じないし、色も違うから」

「そりゃねー。ボクは才能無し側の精霊だから、形だけしか真似られないんだー。本来のこれは、もっと圧倒的な魔力が乗っかっているはずだよー」

「魔力が乗っていたら……黒く変色する?」

「ボクの知る限りじゃしないかなー? けど、高密度無圧縮且つ均等に保たれた魔力は自然と球体を取るものだからねー。キミの知っているそれも、似たような原理なのは間違いないんじゃないかなー」

 

 理を書き換える魔法。もしあれがそうなのであれば、やはりあれは、単なる「人探し」の魔法ではなく、何か別の意味があったのではないか、と。そう考えてしまうアルカ。

 たびたびエレオノーラに「あまり霊聖視するのはよしなさいな」とは言われているけれど、それでもやはり、まだ引き摺っている。

 モーガン・カルストラ。アルカにとって大切な教授。

 

 ……そんなところで、魔法が目当てのものを見つけたという反応を返してくる。だからアルカとメギスはその場所へ向かい、恙なく、そして無事、お目当てのものを回収するのだった。

 もし驚くべきことを追記しておくのならば。

 お目当てのものが、トルノ・ヴェスティア自然保護地区の外にあった。ということだろう──。

 

 

 というわけで。

 大量の素材と依頼の品……"独活の大獏"の毛を手に入れ、古物商へと戻ってきた冒険隊。

 その納品の早さに驚かれた上で、見事報酬を手に入れることができた。

 

 これで一件落着だ。さぁ、帰って安全地帯に戻ろう。そうしようそうしよう。

 

「──ちょっと雑じゃない?」

 

 砕かれる。夢幻の世界が、すべて。

 そうだ。まだ密林の中にいる。帰っていない。そも、依頼の品はそんなよくわからない魔物の毛なんかではない。

 

"仮初の結末(キネシク)"なんて珍しい刻印を使うものだから、ちょっと興味があって流していたけれど……どうにも覚えのあるやり口なんだよね」

 

 否、やはり気のせいだろう。

 ここはもう安全だ。そう気を張り詰める必要は──。

 

"刻まれた言葉を刻んで消した(ルグゼンルグ)"

 

 ──今度こそ、すべての夢幻が砕かれた。

 発された言葉の一つ。"刻まれた言葉を刻んで消した(ルグゼンルグ)"……対刻印魔法において誰しもが習う刻印打破。浄化を意味するその古代魔族語は、こういった幻術系の刻印に対して比類なき効果を発揮する。

 

 精霊も、英雄も、ひとくたに飲み込んでいたはずの夢幻。

 魔物さえも騙し、あの弓兵の少女の体内に残る「残り香」を本物のように見せかけていた夢幻(ゆめまぼろし)が打ち砕かれた。

 

 それにより、散らばっていた者達が瞬時に戻ってくる。

 

「このやり方……覚えがありますわね」

「うわ、二度も引っかかるとか……無いわー」

「やけにうざったい攻撃ばっかだと思ったら幻術かよ! くそ、しかもこのやり口はあんときの魔族……は、けど、殺したよなおれたち」

「ええ、鏖殺しました。……ということはつまり、そういう種族なのでしょうね」

 

 夢幻。幻惑に長けた種族の魔族。

 即ち、夢妄の魔族。

 

「……アルカ。確か、あなたが学生時代に見たという魔族は、伐開の魔族……なのでしたわよね」

「あ、うん。ゼルパパム洋全域に汚染とか毒とかの刻印の入った極小のチップを流そうとしてたんだよね。……確か、『偽月の血因(ファルスルーナ・ブラッドチップ)』だったかな。魔王がやろうとしてた、ゼルパパムの弱体化計画の一端」

「その次に夢妄の魔族が私達を分断し、各個撃破しにきて……でしたわね」

 

 モーガン・カルストラの止めたあの計画は、そんな概要だったはずだ。

 だからこそ彼は魔王に目を付けられたのだから。

 

「特殊個体魔族……人族の国へ入り込んで、一体何をしようとしていますの?」

「それよりボクはー、あの古物商のおにーさんが依頼した場所に魔族がいて、こういうことを仕掛けてきた、って方が気になるかなー♪」

 

 話し合いの背景で、無慈悲なる矢が飛ぶ。

 レベッカの射撃。そのたった一射で、夢妄の魔族の一生は鎖された。

 

「それは……流石に疑いすぎ。偶然だと思う」

「そうかなー♪ そっちのおにーさんは気付いているよねー?」

「……はい。精霊のあなたが言うのなら……私の感じたことは、気のせいではないのでしょう」

 

 なんだなんだと集まる注目に、メギスはリチャードへそれを促した。

 

「……恐らくですが。あの古物商の青年は……ハーフ、ないしはクォーター魔族であると推察できます。滑らかな魔力の内側に、涅月の気配を感じたので」

「歴代の魔王がどうだったとかはボク、よく覚えてないんだけどねー♪ ……今の魔王は、暗殺もだまし討ちもなんでもござれの、一番油断しちゃいけない魔王だよ。依頼は達成するにしても、油断しない方が良いと思うなーボク」

 

 一瞬、ほんの一瞬複雑そうな顔になるエレオノーラだったけど、幸い誰も彼女を見ていなかった。

 

「んー、あいつ悪い奴には思えないけどな。……ま、とりあえず依頼の続きをしようぜ。あの魔物大暴走(スタンピード)も幻術のせいっぽいし、あとは落ち着いて採取できるだろ」

「軽いねー。……どれほど危機的な状況に陥っても、なんとかできるって自信の表れかー」

 

 そんなことはない。

 あの件以降、アルジオは色々成長している。

 けれど、その上で大丈夫だと……その直感が判断したのならば。

 

「探るのとか、面倒。直接聞けばいい」

「そうだね。僕たちはそうやってきたんだから、これからもそれでいいさ」

「本当に何か企んでいたならゼルパパムじゃ商売できなくなるだけよ。……わたしたちが何をするより前に、勝手に動くと思うから、彼ら」

「こうしてまーたカリアンの胃痛案件が増えるのですわね……」

 

 メギスは悟る。

 このパーティは『深炎の牙』とはまるで違う、と。

 

 真なる強者……捕食者。

 

「キミたちが良いならいいよー。じゃあ、探索を続けよっかー」

「おう、けどありがとな、メギスさん。おれたちのためを想って言ってくれたんだもんな」

「さー♪ どうだろうねー♭」

 

 そんな感じで。

 この後、二時間ほど探し回って──無事、その逸品を見つける彼らであった、とか。

 

 幕間の物語はまだまだ続く──。

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