序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
交戦許可が下りなかった……というか、俺達の後輩が実戦として相手取ることになったので、万一の保険としての待機組としてそれらを遠目で眺める。
サイズ感はニコラスの言った通り1.7athlほどの小さな魔竜で、魔竜らしく毒々しい色をしている。
翼の中腹当たりに爪が二本生えていて、飛膜には骨格が扇状に走っていることから、コウモリと同タイプの翼であると判断できる。つまり、腕や手みたいな使い方もすることはできるってわけだ。
足の爪と尾の先に毒があるというのは本当らしいが、この翼の爪にも毒があるな。気付いていないようだったら教えるくらいはするか。
趾足の対向指に毒を持つあたりはカモノハシを連想させるなぁ。……あれら……天の至泉の怪鳥ほど奇妙じゃないけど、割とキメラ寄りだったりするのかな。
十匹前後で来るとの話だったけど、今回は八匹。それが魔竜の周囲を飛び交い、対峙者たちに妨害を仕掛けている。
……ボスの取り巻き、という考え方は、まぁ理解はできる。
けど、実際の話をするなら、生物の取り巻きというのは結局のところ餌目当て……おこぼれ目当てがほとんどだ。単純な共生関係にある場合もあるが、アレは違うだろうし。
魔竜の主食はやっぱり人間であるから、魔竜が食い散らかしたあとのおこぼれが欲しくてついてきている……と考えるべきだけど。基本魔竜って噛んで飲んで噛んで飲んで、くらいのペースで対象を食べきるからおこぼれとか出ないんだよな。
……あるいは、不要と判断された者以外を……巻き込まれただけの者、魔竜が狙わないのに死に行った者を食うための掃除屋か。
──……ん。
「レイナ、今すぐ出られる?」
「いーけど、なに? まだ
周囲に助力を要請しなければならないとされる最大時間こと、三時間。確かにそこにはまだまだ満たないけれど。
「上空に魔力が集結しつつある。初戦で二体相手はキツいでしょ」
「ああじゃあ、こっちに墜とせばいいワケだ」
「そういうこと」
「……君達は、まったく。そういうことはすぐに上級生へ連絡すべきだろう。僕がしておくから、存分にやるといいよ」
「ありがとーマティアス。……んじゃ」
拳を握りしめるレイナ。その彼女に対し、二重歌唱による簡易六-六刻印を行う。
「"
瞬間、ものすごい速度で打ち出されるレイナ。誰の制止がかかることもない速度の突撃は、またまた直後、初の実戦中の彼らの上空に魔竜が出現することで正当化される。
鳴るはずの警報は鳴らなかった。……というか、上空すぎたんだ。警報の察知範囲外だった、ということ。
召喚と同じ疑似的な位相空間から出てくる魔竜と、同じところから出てくる
レイナはその、出切った魔竜の尾を掴み、ぐるんと振り回したかと思えば……その勢いを利用してこっちに投げ飛ばしてきた。
「うわぁ♪ 流石レイナ♭ 頭おかしい#」
「今回は僕も共犯だから、彼女を責めないであげてほしいかな」
「大丈夫ですよ。最初からあなたたちはセットです。──さて、ではいつも通り行きましょう。キュリオス隊、アバークロンビー隊は前に。魔竜のヘイト引き付ける、及び
この二年と少しの間で、ドレン君は指揮官の才能を芽生えさせた。
元から全体の見える子だったし、性にも合っているんだろうな。生き生きしているように見えるよ。
魔竜が目と鼻の先に叩きつけられる。すかさずニコラス、リッド、ベルガットくんが魔竜へと殺到し、その鱗を、竜皮をナイフで浅く斬りつけていく。
ニコラスのナイフは状態異常……とりわけ毒や弛緩を、リッドは再生を阻害する傷を、ベルガットくんのナイフにはそれら特殊な効果は付与されていないが、腕を上げようとしたら腕の付け根を、踏み出そうとしたら足の付け根を、という風に狙うため、ヘイトが高まりやすい。
彼ら三人が俺達の学年……778年入学組の最速・最巧戦力。特にリッドの速度は……普通に俺の認知を超えてくるからな。英雄の素質があると思われる。
それらをサポートするのが各隊の隊員だ。リッド以外は回避力に優れるというわけではないので、一撃でも貰ったら彼らを引き剥がし、中衛に控えるヒーラー部隊に接続する。
中衛には俺よりも回復量の厚いヒーラーが揃っていて、前衛組はそこで回復する。リッドは……あいつが重い一撃をもらったところはvsエヴァンジェリアーナ以外で見たことがないので大丈夫だろうという信頼があるけど、食らったら食らったで回避じゃない普通のタンク組が控えているので前衛は維持され続ける。
中衛の魔法部隊、両手剣など鈍重な武器部隊はその外側からチクチク攻撃する。チクチクといっても全員武具加工持ちなので火力は相当だ。
俺という固定広域治癒バフ砲台を移動させたり活用したりするのがヘドクイスト隊で、メイン火力は後衛の俺じゃない方の部隊。ヨナス・リンドベリー君率いるリンドベリー隊。
「みんな、じゃあ、いくよーっ! ──『
アルカがたまにやっている、魔力に直接命令を打ち込む、という方法での魔法起動。
ヨナスくん……リンドベリー家はその系統を正統進化させてきた家柄だそうで、属性魔法界隈においてはかなりの家格なんだとか。俺達はどうしても刻印魔法に寄っちゃうけど、属性魔法の方がポピュラーだからねこの世界ね。
人族の属性魔法使いの中では最も精霊に近しい魔法を使う流派でもあるらしく、その魔法の火力は一級品。結構長めの詠唱を要するものの、カノンの砲撃魔法やヴィクニの魔法にも匹敵する火力がポンと出せるのは正直ありがたい。
なお、『末葉の柄』というのはリンドベリー家の当主がずーっと昔から受け継いできた称号だとかで、それを持っている時点で次期当主決定なんだと。次期当主がこんな危ない学園に通っていていいのかね。
さて、その長い長い様式決定詠唱から放たれるは、火属性+炎属性という「これでもか」を詰め込んだ特大火力。
リンドベリー隊の他の隊員はヨナスくんの魔法にバフをかける役割を持っていて、その増幅率はなんと通常の320倍。魔導兵器の一撃にさえ匹敵する火力である。
一瞬、周囲が真白に照らし出されたかと思えば──直後、耳を劈く轟音と共に、魔竜の悉くが焼き滅ぼされる。
ちなみにフレンドリーファイアは無い。事前にヨナスくんと打ち合わせをしているから、彼の魔力だけが避けるパターン、みたいなものを歌唱魔法に乗せていて、そのバフを受け取っている者はヨナスくんの魔法の効果対象にならない。……ならないだけで熱された大気なんかの二次被害は普通に受けるから、みんな一瞬で退避するんだけど。
立ち昇り、暗雲を貫く白烙の柱は──しかし。
「再生兆候! 第二波準備してください!」
「二発目装填準備まであと七分くらいかかるよぉー! その間頼んだみんなーっ!」
流石にこの威力を連続で出されたらとんでもないことだからな。それでも再装填にたった七分で良いのはすごいんだけど。
最も総弾数で言えば一日に四発が限界だそうで、今はどうにかこうにかそれを増やしたり、あるいは魔法の効率化が図れないか勉強中だそうな。
さてこのままいつも通りに続けよう、としたあたりで、遠くでビーッと笛が鳴る。
この音は。
「継続戦闘不可能と見ます! 78組は、即座に救援をお願いします!」
「──ノアくん! 砂塔さんには既に先行してもらっています! 君もあちらの援護に行ってください!」
「承知したけど、僕とレイナがいないからって死人を出したりしないでね?」
「いつまでもお前達頼りってわけじゃないよ♪ 早く行け♭ 行かないのなら──こうだ♪」
首元と、腰のあたりの布ががっちりつかまれて。
背負うように──投げられる。ただし行先は地面ではなく水平方向。
うーんともすればこれは同期殺し。なんという見事な暗殺だ。アヨーッ。
ただまぁ、俺もレイナも勝手はわかっている。考えることがあるとすれば……死屍累々になっている80組……780年入学組か。
初戦はなー。本物とほぼ変わらないシミュレーターで毎日のように訓練をしているとはいえ、それでも回を重ねるごとに余裕というものが出てくる。つまり、死んでも先があるという余裕が。
けど、当然、実戦にそれはなく。
その恐怖や肌感は伝播する。一人が崩れたら終わり、みたいなところあるよ、vs竜は。
身体を慣性に任せながら仰向けになり、足を組んで後頭部に手を回せば──上空から落ちてきたレイナが、俺の頭をむんずと掴む。
「上は任せた。貫通力バフ頂戴。あんたの魔力は受け入れるように設定してあるから」
「はいはい。下側全部君一人でやる気? 大丈夫?」
「ハ──」
レイナは俺を魔竜の上に向かって投げながら、飛んでいく俺に「親指で首を切ってそのままサムズダウン」をやる。嫌な異世界共通言語だね。
「いちいち嘗めんなつってんの──そろそろ追いついてやるんだからさ!」
「いいね、高い目標を持つのは良いことだよ、
「言ってろっての!」
一瞬腰だめに拳を構えたレイナが、彼女のいた地面に亀裂を残すほどの爆発力と共に魔竜へ突っ込む。
アンシュッツ流対非実体拳法『夕立木立』、牙槌・殻砕き……だったかな。対象に自分の魔力を通して魔法抵抗の甘い部分を意図的に作り出し、貫通力を高めた一撃をお見舞い。さらにその一撃は衝撃と魔力がそれぞれ別方向に逃げるから、魔竜からしたら体内に突然トゲトゲの球体が発生した、みたいな痛みと消耗を負う。
さらにレイナはその範囲を絞り、魔竜の両脚への二連撃へと昇華。食らえばしばらく足が使えなくなるほどの……立っているだけで痛いってレベルの負傷状態になるらしい。
そしてそうなれば魔竜は当然空へ逃げる。飛べるのだから。
背後から俺の頭蓋を貫かんと迫る
「
翼の付け根の筋肉へ向けた錯覚疲労、内耳の奥の半規管に混乱を与え、平衡感覚を狂わせる。
レイナによって足裏の圧力センサーがおかしくなったばかりだからな。こうすれば……。
「──!!?」
咆哮を上げ、飛び立とうとしてそれが叶わず、ごろんとひっくり返る魔竜。……ついでに周囲の
そして俺は、更なるやるべきことをする。
「
広域暗示。広域バフ。
心の折れかけた少年少女を再び奮い立たせるための欺瞞。
ふわりと降り立つは、レイナの背後。
「お優しいことよね、ヘドクイストサマは」
「一人でも、拳闘士でも、竜程度どうってことないと示しに行った君ほどじゃあないさ」
「ハッ。でもこっからさきはこの子たちの問題だから」
「わかってるよ。その上で言う。もう大丈夫だよ」
オオ──ッ! と、雄叫びが上がる。瓦礫の中に沈んでいた大柄な男子だ。
涙まで流しかけていたはずの彼は、その手に加工された武具をしっかり握りしめ、恐らく相棒か、仲のいい子たちなのだろうクラスメイトの名を呼ぶ。呼びかける。
反対側、弓を持った優男風味の青年が、その額に当てていた手を下ろし、魔竜の姿を正眼に捉えた。
他、少女が、少年が、彼らとは年代の違う者が……それぞれ、息を吹き返したかのように立ち上がり、その目に闘志を宿らせていく。
「さすがぁ」
「といっても再び立ち上がった程度じゃどうにもならないのが魔竜だ。つまり」
「もう少し付き合え、ってことでしょ。折角だし、ちょっとやってみたかったことをやるから、失敗したらあんたがフォローしてよ」
「一撃で死なない限りは助けるけど、一撃で死んだらサポート適用外だよ」
「二撃ならいいってワケね」
そういう意味ではないけれど。
魔竜が立ち上がる。飛べもしない、平衡感覚もぐちゃぐちゃで、身体が痛い……のだとしても。
だとしても、彼らは魔竜だ。人類の捕食者である。
その、誇りを、プライドを、矜持を──要するに「生物としての格」を教えるために。
不遜にも己の前に立ちはだかる彼女に……レイナに、その腕を振り下ろした。単純ながら最強の一撃。ブレスと並んで高い破壊力を持つその一撃は。
がぅん、という、曲がりなりにも生物同士がぶつかって出していい音ではない音と共に、止まる。
動かない。完全に──止まっている。
「──なぁんだ、案外、軽いのね、ソレ」
止めたのは当然彼女だ。笑みを作り牙を剥くレイナが、その左腕の一本で、魔竜の右腕、その振り下ろしを止めている。
折れている様子もなく。肌の裂けた様子さえない彼女に……無意識に、だろう。
一歩、魔竜が、たじろぐように後退した。
「──あんたたち! 機会を窺ってるとかなら、この先ベストタイミングなんて一切訪れないから、とっととやんなって! 早くしないと全部あたしが食っちゃうけど、いいの?」
「ハ、甞めんなよパイセン! こいつは、オレたちの獲物だっつーの!」
「ばか、ヤン、先行するな! ああもう……作戦名、なし! 各自好きにやれ! 何をやってもいいから、勝て! 僕らはそのために越竜に来たんだ!!」
「杖が折れた魔法使いは、習った通り、己の腕を杖に見立ててください! それで少しは元の感覚が戻ると思います!!」
へえ。やっぱり優しいじゃん。
こっから先は彼らの問題じゃなかったのか?
「レイナ」
「なによ」
「右脚。折れてるでしょ?」
「……なんでわかるのよ」
彼女のやってみたかったこと。それは、こういうことなんだろう。
「武術にはよくあるよね。衝撃を逃がす防御術。レイナのそれは多分、本来は受け止めた時多少下がったりなんだりするものだけど、君はアピールの為にやらなかった。結果全衝撃が右脚に集約してポッキリ。どうかな、この推理」
「……正解。ま、必要な見栄だったでしょ」
「効果覿面だね」
これでもう、彼らは大丈夫だろう。今回だけじゃなく、この先も。
しっかしこの世界の子供達はなんというか、かっこつけたがりだよねぇ、君も含めてさ。
そうして無事、80組の初戦は勝利に終わったのだった。
さて、意外……でもなんでもないんだけど、まだエレオノーラとは会えていない。ドレンくん曰く最近かなり忙しいのだそうで、やはり前回の総決戦で色々やることあるんだろうなって。
別に確認を取りたいだけだから急ぐ話でもなし、とりあえずそっちは放置。
二週間分の遅れを取り戻す……みたいなことは俺にはあんまり関係ない。多少生徒間での戦闘時の取り決めが変わっていたくらいで、それもヒアリングでなんとかなった。
778年入学組の対竜戦闘勝率はそろそろ90%の大台を迎える。初年度の数戦が最後にまで響くのはちょっとモチベ的によろしくないから、一年ごとの勝率に変えた方が良い気もするね。みんなあの頃とは別人だろうし。
そんなことを考えながら、途中から現れたことで恐らく確認されていないだろう
……正直竜よりは薄味。というか俺が美味しく感じているのって多分魔力の方なんだよなー。普通の魔力も精霊は味を感じているようで、俺はそこまで行かないんだけど、竜の魔力は美味に感じるっぽくて。
とはいえ、じゃあたとえば魔力の塊である魔鉱石が美味しいかって言ったら微妙なわけで。
美食への道を突き進む気は正直無い。……が、美味いものを食べられるんならそれに越したことはないのも事実。
アスミカタ帝国に行って瓜良の子孫とかに「蛟の調理法を考えてほしい」とか言ってみるかぁ? ……流石に気が触れていると思われるに終わりだな。
しばらくは生で食うか。
ちなみに毒は結構あったので、普通の人間が食うには向かないねコレは。
さて、目下俺がしたいことと言えばそう、ナタリーの捜索である。
要らん時に居て、居てほしい時に居ないやつ。……全く同じ評価を俺も受けそうだからあんまり言えんけど、あいつが最終的にどうなったのかを誰も知らない。
そもそも災厄竜程度にやられるやつなのか。涅月が墜ちてきた程度でどうにかなるやつなのか。
そしてそれらが無くなった未来の今、あいつはどこで何をしているのか。
餅は餅屋、ではあるか。
翌日。
「人探し、ですか? はい、承っていますよ」
というわけで、やってきましたエリスフィア帝国冒険者ギルド。
冒険者総数226名という結構な数を擁するエリスフィア帝国のギルドは、ここ首都エリスフィア以外にも各県に一つずつ、計十個の支部が置かれている。……が、首都以外に赴くことはないのであんまり覚えなくていい情報だろう。
受付のおねーさんに一応の人相書きと、最後に名乗っていたらしいナタリア・アークライトの名前を添える。……人相書きはナタリーとソレイラを足して二で割った感じにしただけだから、多分違う顔だろうな。
依頼をギルドに置いてもらう期間の契約金である五万ストレイルを払う。これは冒険者に対する依頼料とは別で、こちらの定めた期間内に誰も依頼を受けてくれなければ、四万五千ストレイルが返還される。五千ストレイルは手数料ね。
依頼が受けられると、冒険者と依頼主間での交渉・折衝──問題が起きた時の仲裁金など──でその五万ストレイルから色々差っ引かれる仕組みだが、余程酷い場合は上乗せで取られることも。冒険者への依頼料も馬鹿にならないので、ギルドへの依頼というのは結構な買い物だったりする。つまり草むしりとか人探しなんかは本来自分でやれスタイルってわけ。
エリスフィアは物価が高めだから、余計にこの辺高いんだよねー。
「少しの間、待合で待っていても構いませんか?」
「構いませんが、依頼が張り出されてから受注までの平均所要時間は2.5日ほどで、人探しともなると中々受けられないことがままあることをご了承くださいね」
「はい、ありがとうございます」
だろうねー。
魔物の素材が欲しいとか、ここからそこまでの道行きの護衛をしてほしい、とかなら冒険者側も期限を定めやすい。彼らだって常に根無し草なわけじゃない、予定を持っている人間だ。
人探しなんて見つかるか見つからないかが半々くらいな依頼、見つからなかった場合も一応報酬は多少支払われるとはいえ、やっぱり依頼失敗の文字がつくのは彼らも避けたいからね。
エリスフィア帝国は広いし、この依頼を受けたがる冒険者なんて滅多にいないのである。
「おお、なんという超幸運! めっちゃハッピー! 私達が入ってきたタイミングで張り出された依頼があるみたい! ソーマ、あれ受けよう!」
「絶対何かある……。ギルドがオレたちに受けさせるためにわざとそうしたに違いない……今か今かと待機してたんだ……」
……聞き覚えのある声。
きゃぴきゃぴしてて、超ポジティブな少女……というかハーフリング族なので普通に良い大人な女性と、それに腕を引っ張られて引き摺られてきたどんより顔の、同じくハーフリング族の男性。
うーん、知り合い引き寄せセンサーみたいなの絶対あるよね。波とか磁力代替の魔力とかその辺関係してない?
「人探しだって! ナタリア・アークライト……? え、これゼッタイナタリーじゃない? 顔の感じとかほら、え、ていうか絵めっちゃ上手! すごーい私も描いてもらいたい!」
「ナタリー……うう、嫌な思い出しかない……疲れが取れる飴を開発したって聞いて食ってみたら一定時間身体が宙に浮き続ける飴だったこととか忘れない……」
実力はある……んだけどなぁ。この二人、凸凹コンビというかさ。
扱いには正直困る……が、まぁ知り合いの方が探しやすくはあるか。
「ラナさーん! セイソラーマがこの依頼受けまーす!」
「セイラさん、ソーマさん、お久しぶりです。そして、でしたらすぐそこの待合に依頼主の少年がいらっしゃるので、お話を聞いてください」
「はーいありがとー!」
「少年……? ナタリーを探してて……五万ストレイルをポンと出せる少年とか、嫌な予感しかしない……」
大丈夫大丈夫今回はただ探してほしいだけだから。
ということで、俺のいる席にやってくる二人。
「いたいた! もしかしないでもキミ!? だよね、依頼主くんってキミであってる!?」
「あ、はい。人探しの依頼なら、僕で──」
「ね、ナタリーは探してあげるから、ついでに私のこと絵に描いて! ストレイルは勿論払うから!」
「ナタリー……? 僕が探してほしいのは、ナタリア・アークライト、という人で」
「それナタリーの偽名だから! ね、ね、知り合いなんだー私達。だからゼッタイ見つけられる! る! だから描いてほしいんだ! 私と、あとソーマもお願い!」
「いやオレはいいっていうか、依頼主さん引いてるから……抑えろ、少し」
「あ……ごめん、びっくりした? ごめんね、私距離感とかわかんなくてさ!」
それでよくやってこれたな。
まぁ……悪い奴じゃないのは事実だしなぁ。
「えっと、まず、初めまして。ノア・ヘドクイストって言います」
「はじめまして! よろしく、私はセイラ・ミルクトウォッチ! ハーフリング族だから、見た目よりは年寄りかも? かもね!」
「はじめまして。オレは、ソーマ・ルートボックスです。……コイツ、常にこのノリだけど、仕事はできるんで……安心してください」
エチェロエグズル教戒院においては、『サイクロン』と『最苦労人』の名で通ったコンビである。
次から次へと騒ぎを巻き起こすセイラと、その事態収拾に動き続けるソーマ。ただ、ソーマがやらかした時は静かに寄り添えるタイプの子であり、二人は恋仲でもある、と。
「二人の絵を描いたら、ナタリアさんを必ず見つけてくれる?」
「もち! まかせ! て!」
「そんな安請け合いしない方が良いと思うけどな……あ、いや、絵を描いてもらうことを安く見ているわけではなく……」
では、お世話になるとしよう。
おまけ
魔法威力の計算式は、
Pwr = (Spl * Buf) * (Dst * Eqp) * Dbf / Rst * athl
Pwr:魔法威力
Spl:事象成果式(魔力流束と同値)
Dst:魔力密度
Buf:励起倍率
Eqp:装具同調
Dbf:阻害損率
Rst:魔力浸透抵抗
athl:魔力波長距離