序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
魔法大好き倶楽部こと、【マギスケイオス】。彼らは──。
「なーに遠く見てんのよノア。あたしらから逃げられると思ってるの?」
「そうだそうだ♪ 彼女がいたとか聞いたことなかったし♭」
……まぁこの流れからは逃げられんわな。これはまぁ先行投資だ。熱いものが喉元にある段階。
「ナタリアさん……でいいのよね?」
「歳、三つしか違わないから、ナタリアでいいですよ。親しみを込めてナーたんとかナーさんとかって呼ばれることも多いです」
「越竜に編入できるってことは、相当な実力者ってことだよな?」
「ナーちゃんの魔力整ってて綺麗~。さすがノアくんの彼女!」
それはどういう因果関係なの?
マー、ナタリーが人気なうちはあんまり俺に攻撃飛んでこないから助かるけど、目を離すとあること無い事言われそうで怖くはある。
レイナの視線はちょっと訝しみを含んでいるけどな。今までそういう素振り見せてこなかったから疑うのはわかる。
ちなみに越竜に編入できるってことは~のくだりはマジでその通りで、一年生からの下地無しで組み込めるって判断されたことになるから、相当上に見積もられる。その辺は大丈夫だろうけど、知識面……座学面がどれだけなのかは知らん。生き字引で頑張れ。
戸籍等々はヘンリーと協力して捏造したので相当な観察眼持ち……オンドウクラスの奴がいないと見抜けないと思う。あとはまぁ、教戒院卒が見れば「何やってんの」だし「18歳なわけねーじゃん」だし。その辺はナタリーの言いくるめ次第。
なお、彼女は『
以前『
「ナタリアさんはどういう戦闘スタイルなの?」
「基本は格闘ですけど、サブにコレを使います」
「それって……魔力銃?」
「はい」
百五十前のゼルパパムにて多数使われた魔力銃。カリアンといた時に結構苦しめられたやつね。
あれは結局あんまり進化をしなかった。単純な破壊力で言うと普通に魔力を撃ち出した方が火力が高いし、メンテナンスも面倒だし。
ただ、「相手の魔力に孔を空けて回復を阻害する」とか「生身の身体ではなく魔力を削る」という武器コンセプトは対竜戦闘において非常に有用であり、越竜学園にもなんらかのアクシデントで魔力が使えなくなった者、もしくは俺達みたいなサポート魔法使い用に幾らかの備えがあった。
フツーに戦うととんでもなく強いのは明白なので、魔法はほとんど縛った状態で、格闘(身体強化)と魔力銃で戦うってワケだ。縛りプレイだな。
「綺麗な魔力してるのに、活用しないの勿体なくない?」
「うーん、戦闘中に魔法式の美しさとか考えたくないって言うか」
「あ、わかる~。魔法を組み上げる時って心穏やかにしないと上手く発動しないから、激しく動く戦闘中とはあんまり噛み合わないよね~」
「そんなもんなの? ……あたしら魔法使わないからわかんないケド」
「どうなんだー♪ ノアー♪」
「僕の歌唱魔法も魔法式を使っているわけじゃないからなんとも。一番詳しいのはドレン君……なんだけど今いないんだよね。となると、ヨナスとかは?」
「はい? ぼく? ああ……うーん、リンドベリー家は常在戦場というか、日常生活の段階で何をしていても魔法が発動できるように、って習うから……噛み合わせが悪いって感じたことはないかもー」
「流石エリート……」
魔法式を落ち着いて考えないといけない、ってなんだろう。
確かに計算は必要だけど、あそこにこの角度でボール投げたらこの角度で跳ね返るよな、程度のものだぞ? 心穏やかにしないと上手く発動しないって……なんか無駄に難しいことしてないかそれ。
ナタリーも同じことを思ったのだろう。自分で言っておいてアドバイスするのは無理があるからと、俺に視線を投げかけてくる。
と言われましてもね。……次の幻術シミュレーターでこの子の脳内ちょろっと見てみるか?
「戻りました。……おや、アークライトさん。クラスにはもう馴染んだようですね」
「ああ、ドレンくん。さっきはありがとうございます。教室の案内をしてくださって」
「いえいえ、当たり前のことをしたまでですから。……それに、ノアくんの善い人であるというのなら、僕は最大限の敬意を払いますよ」
「善い人って……ドレン、古くない?」
「そうですか? まぁ、そんな話は措いて擱きましょう。ナウラー先生が二限目を変更したいそうで、幻術訓練室に集合だそうですよ」
「ああそうなん? じゃあちゃっちゃと移動するか」
この流れは……さては。
想像通りだった。
「やっはろー! 初めましての子は初めまして! 他国のギルドで会ったことある子もちらほらいるね!」
「おー、流石最先端の越竜学園……。つかこれで十五歳だっけ? 時代の波を感じるなぁ……」
セイラとソーマ。二人がいて、……本気の武器を持っている。
奥の方ではクレーア先生が冒険者ギルドの人に何かを説明されているし、アルカ・エレンはいないまでも、教員どころか上級生までかなりのメンバーが集まっている。
「ハーフリングで槍使いの二人組……まさか、『竜殺し』と『竜の天敵』、セイソラーマ!?」
「あ、セイラちゃんだ。やっほー」
「やっほー!!」
「なに、知り合い?」
「連邦でちょっとねー。レイナは逆に会ったことないんだ?」
「……連邦に居た頃は、冒険者あんまり好きじゃなかったから」
ふーむ。
これは……俺とナタリーは入んない方が良い気がするけど。でもナタリーのテストではあるとは思うからなぁ。
「全員いるようであるな。……もうわかっている者もいるようであるが、改めて。こちら、S級冒険者パーティ『ウェルベリーミルクルートパフェ』の二人、セイラ・ミルクトウォッチ殿とソーマ・ルートボックス殿である。その二つ名、『竜殺し』と『竜の天敵』の名に恥じぬ、竜の討伐数は五百体を超える。公式記録でこれであるから、その実もっと多くの竜を倒しておられるのであろうが……」
……討伐数よりも遭遇率を真面目に検討した方が良いぞ。
既に一日一体のペース……というか世界全体を見たら一日五体は堅いペースで現れるようになっている魔竜。だから討伐数なんてものはこの先ずっと加速度的に跳ね上がっていくのだろう。
十年間で五百体、というのは見ようによっては少ないと感じられるくらい、毎日毎日竜が出ている。
とはいえそれはやっぱり世界全体の話であり、エリスフィア帝国が竜災に見舞われるのは300体/450日くらいのもので、その全てに同じ生徒が当たっている、ということもない。
つまり、二人だけが出くわしまくっているのは、なんらかの意図があるということに他ならない……と思うんだけど。
ナタリー曰く、そして俺調べでも……特にそういう意図のようなものは感じていないんだよな。この二人武芸は凄くても開発とか研究とかってタイプじゃないし、不要である者でもないだろうから……紫輝が狙ってきていると断定するには微妙だし。
ナタリーと俺で出した結論としては、セイラの持つ「面白そうなことセンサー」なるものが「竜災」の出す波長とベストマッチしていて、だからこの二人は竜災が起きている方向へ自ら足を運んでいる形になっているのかもしれない、という話。
ソーマも止めはするけど結局引き摺られてなぁなぁでセイラの行きたいとこいくからなぁ。さもありなん。
「……というわけで、これより入る幻術空間にて、まず対竜戦闘を80年組で行い、さらに同じ竜との戦闘をセイラ殿、ソーマ殿にやっていただく。その後フィードバックの時間になる。その後、セイラ殿、ソーマ殿と80組で手合わせである。無論試合にはならぬだろうから、対竜戦闘における気になった点を実戦形式で教えていただく形になるか」
「どの竜ですか? そういうことなら、少し武装整えたいんですけど」
「諸君らにとっては馴染み深いであろう、『フレイメユ・ティアス』である。ただし、あの時の奴が
瞬時にざわつく皆。
……『フレイメユ・ティアス』。その名の付けられた魔竜は、いつかの四体同時に現れた魔竜の一体の名。
俺が……レイナに焚きつけられて二重歌唱による広域治癒・暗示・バフを行った相手だ。
そんでもって……あの時はエヴァンジェリアーナがいた。あいつは「誰が担っても同じ」な役割しかやらなかったけど、それでも中継点が一人消えていることに変わりはない。
あと……あの戦いで死んだクラスメイトもいる。その後の戦いで死んだ奴もいる。
どうだろうな。……みんな強くなったさ。それは認めるけれど……。
「みんな、思い出すのつらかったら、僕一人……と、ナタリアだけでもいいけど、どうする?」
「ええっ、そんな、皆さんのトラウマを刺激するほどの相手が初戦なんですか? さすがノア、容赦がありませんね」
横合いから来た割と本気目の拳を"
「言葉にしないまま舐められるのも嫌だけど、ストレートに言われるとこんなムカつくんだ。知らなかった」
「っし──気合いれっぞ#」
「ノアくんがぼくらを舐めてるのは割といつも通りのことな気がするけど……今とあの時じゃ、息の合い方とかも違うし、いけるよね、みんな!」
ま、要らん挑発だったか。
「盛り上がっているところに水を差すようであるが、ノア・ヘドクイスト。きみは今回参加できぬ」
「えっ」
「前回の功労者は間違いなくノア・ヘドクイストである。総合的なダメージを言うのならば別の者の名が上がろうが、一度は地に伏した皆が再び力を得て勝利をもぎ取ったのは、間違いなくノア・ヘドクイストの力だ。……よって此度はそれを封じた上で乗り越えられるか、という試験をしたい」
「ということは、普段ノア君にやってもらっている恒常的な広域治癒ができないわけですから、怪我や疲労をより強く恐れなくてはなりませんね」
「良いじゃん良いじゃん! ノアいるとウチらバッファーの立つ瀬無いみたいなとこあるし、ノアいないと壊滅するような集まりってわけでもないっしょウチらさ!」
「だな♪ それに──そろそろ扉が開けそうなんだ♪ ノアの補助なしでやった方が……どこにドアノブがあるのか、わかりそうな気がするから♭」
ということらしい。
……まぁいいか。【マギスケイオス】についてを考える良い時間が作れた、ということで。
「ナタリア」
「はい、なんですか?」
「幻術空間では死んでも大丈夫だけど、死の痛みが消えるわけじゃないし、死んだことがフラッシュバックして一時的に戦えなくなっちゃう子がいるくらいにはリアルだから──
「ええ、わかっています。何よりこれ、編入試験のようなものでしょうし、ちゃんとやりますよ」
なら……高みの見物とさせていただこう。
さて、始まった幻術戦闘を観客モードで眺めながら、少し思案に耽る。
彼ら彼女ら、【マギスケイオス】。
メンバーは。
第一位、フラニー・ハニー・オーケストラ。『
第二位、リュディ・ミーリィ。旧名ドリルパイル・バンカーバンカー。『
第三位、エレン・"オーラ"・マイズライト。『
第四位、ザイカ・オンドウ。『
第五位、クイン・ジェック・カイン。『
第六位、重村鎖袋。『
第七位、湯島・ローズ。『
第八位、羽澤蛙。『
第九位、アルカ・ダヴィドウィッチ。『
第十位、銀・結糸。『
第十一位、ハクメイ。『
第十二位、『
……アルカ相手にも言ったけど、やっぱりこの世界で十二人は妙だ。
十二や六十といった数字はこの世界においては中途半端な数字である。四百五十、ないしはその約数が使われがちなこの世界で、十二て。……ってレベル。十以上の約数で唯一中途半端ながらも便利さで使われるのは十八だけだ。十二はまずあり得ない。俺的には一年が九か月って微妙じゃないか、って思うんだけど、450の約数だからな、この世界の人にとっては計算しやすいのだそうで。
となってくると、やはり【マギスケイオス】の創設者というものは、地球出身か……あるいは
まぁその辺はハニー老あたりを詰めないとわかんないだろうから今は良いにして。
ナタリーの言っていた、エレンが特別、っていうのは……どういう意味なんだろう。
重要といえば、確かにそうかもしれない。エステルト少年があそこまで生きてこられたのはエレンが手を引いてきたからだろうし、狂気を覚えながらも悪逆には走らなかったのもエレンがいたからだろう。アルカの心が壊れるまでいかなかったのもエレオノーラの功績で、レスベンスト冒険隊の情報面を担っていたのも彼女で……。
……ナタリー的な特別の意味はまだわからんが、コイツマジでとんでもない働き者なんだなぁ、って。
しかも……聞いた感じだけど、『収蔵』の魔法に関してはナタリー……ネイトアリスから『財宝』の席を譲りうける前から自分で開発していた魔法みたいだし。
真のマギスケイオスがどうのって話があったけど、『収蔵』が並べないで何が【マギスケイオス】なんだろう。混沌を乗り越える、とか言ってたっけ?
「うーん流石ナーたん。余裕があるねー」
「やっぱあいつ入れちゃダメっすよテンタットラさん……。まぁ比肩し得るレベルのとんでもねー子一人いるっすけど……」
「おお、誰であるか?」
「えーと……アストリッド、って子ですね。踏み込みからの加速度が……言っちゃ悪いけど、他の子の比じゃない。アレ、オレたちでも手こずるかもしれない」
「攻撃をもう少し重くするか、魔法剣を織り込めたら、って感じだねー。わ、またスピードアップした。私と同じでノればノるほどパワーアップしていくタイプかー」
役割で考えてみるか? あとそう、安全を行使する者の諱だったり当然を行使する者の諱だったりしたよな。
円形に配置するなら……十二角形。十二角形といえば
うーん、考えれば考える程この世界で十二人な理由がわからん。
もう直接聞くか? なんか「私は怪物になってしまった……」みたいにアルカ言ってたし、聞けば教えてくれそうではあるが。
「うお、強烈……」
「砂塔レイナちゃん、だっけ? すごいパンチだねー。幻術特効でもあるのかな、ちょっと空間編成に揺らぎが出てるけど、大丈夫そ?」
「クレーア先生も砂塔に合わせて進化しているので、問題ないのである」
「そんでもって……おお。リンドベリーの魔法は昔も見たけど、派手だなー」
「昔? 誰か見たっけ?」
「ほら、ワイズ・リンドベリーっていただろ。属性三連装填とかの」
「……? ソーマはやっぱり記憶力いいね!」
「お前……絶対その覚えてない発言あの子の前でするなよ……」
つかハニー老のあの精霊の方にも話を聞きたいんだよなー。どうやってか知らんけど生きてるっぽいし。精霊だって寿命無限じゃねーのにさ。
「アークライトは学園長推薦で編入してくるだけあって、非常に優れた動きをするであるな」
「あー……まぁ、詳細は言えないっすけど、オレたちとも肩を並べて戦ってたくらいなんで……」
「総合力で言えばナーたんの方が強いかも?」
「そこまでなのであるか? だとすれば確かに、子供達の試験にはならなかったかもしれないであるな……」
……ようやく全体を見る。
ちょっと心配したけど、全く問題ないっぽいな。……軸となっている四人、レイナ、リッド、ドレンくん、ヨナスくんが機能していれば、の話だが。
それに……一度斃したことのある相手だから「知っている以上のことはしてこない」みたいな微かな慢心も見える。
「ナウラー先生。これじゃあ試練にならないので、ちょっと弄っていいですか?」
「む。どういうことであるか、ノア・ヘドクイスト」
「僕も幻術もどきが使えるんで、クレーア先生の幻術に割り込みができるんですよ。──少なくとも、たとえ一度見たことがある竜だからと……こんなにも大勢に見られている場で、しかも対竜戦で余裕を見せるような子たちとは、今後やっていける気がしないじゃないですか」
「ふむ。……クレーア先生、ノア・ヘドクイストが魔竜の幻術に手を加えたいそうだが、受け入れることはできるであるか? ……そうか、うむ、頑張ってくれたまえ。……許可が出たであるぞ、ノア・ヘドクイスト」
「ありがとうございます。……それに、この程度の魔竜じゃ、二人は多分ものの数秒で倒してしまうだろうから──二人にも楽しんでほしいし」
歌唱。それにより、クレーア先生の記憶領域に幾つかのパラメータを流し込む。
ついでにツェルニで幻術を使っていた時の「感覚のコツ」も流し込んでおく。不要だと思ったら夢幻にでも捨ててくれたらいいからさ。
──咆哮が上がった。
魔竜、『フレイメユ・ティアス』が……その身をぶるりと震わせて、その表皮に、ぱきぱきと乾いた音を弾かせ始める。
そんでもって皆に対し、「これは幻術だ」という感覚に封をして、臨場感や没入感が五感を埋めるようなあんじをかける。
「ッ──前衛組、退避してください!! 脱皮します!!」
「そんな──こいつ、前は脱皮なんて──ガ!?」
回避タンクの一人、ベルガットくんがその長い尾にぶち当てられてぶっ飛んでいく。……いや、途中で救護班がその身を掴み、即座に治癒魔法を施し始めたみたいだけど……。
脱皮……それをすることで、ただでさえ再生する魔竜が、一層強く、一層固くなる。
それが、べりべりと、べりべりと……呆けて眺めている間に、十回以上。
「ドレン! こいつ、放っておくと強くなるタイプだ! 攻撃指示を!」
「リンドベリー隊、魔法を氷結系から火炎系にチェンジで! スカルドラ隊、敵のヘイトコントロールをお願いします! レイナは──」
ズガンと、掘削機みたいな音が鳴り響いた。
音の主は勿論レイナ。彼女はその拳一つで『フレイメユ・ティアス』の前足振り下ろしを止めている。
「ドレン、焦りすぎ。リッドももうちょい落ち着いてね。──大丈夫。変な余裕は持つべきじゃないけど、焦らなくていい。倒せる。私達は……二度、同じことを繰り返さないために、力をつけてきたんだから」
言葉に……一瞬だけ深呼吸をする皆。
……パニックにはならない、か。
「へぇ~? あの子、このクラスの精神的支柱、ってやつなんだ」
「みたいだな。……そんでもって、何があっても折れてやるもんか、って目をしてる。これは、後の手合わせも手こずりそうだ」
「しかし……ノア・ヘドクイスト。どのような魔竜の数値を入れたらああなるのであるか?」
「征武乱禍の大蛇、ってやつです。アスミカタに現れたっていう三つ首六つ足の魔竜。再生力と成長速度がとんでもなかったらしいので」
……そういえば、アスミカタで思い出したけど、【マギスケイオス】のその称号は割とポンポン変わるものっぽいんだよな。
羽澤は前は『
つまりそれが……「数合わせ」ってことなんかなぁ。どうでもいい、どうなってもいいというか。
ふーむ。『不死』『蓋然』『最小限』の役割ではなく本人側に着目すると……「なんでもできる」のが条件だったりする? エレオノーラもなんでもできる寄りだけど、あいつは不死が無理だし……。
「マズいな。そろそろ飛ぶぞ、アレ」
「高くまで飛行する魔竜との交戦経験は少ないであるが、無いというわけではないので、ご安心ください」
「飛んでると厄介だけど、最近は
あるいは、『先見』の方のオンドウは……【真のマギスケイオス】に近かったりするのかな。
「っ──ブレスが来ます! リッド君、退避を──」
「……ごめん、ドレン。その命令……聞けない」
どくんと、激しい鼓動の音が聞こえた、気がした。
吐き出される氷のブレス。当たればたちまち凍り付いて砕けてしまいかねないそれ。
それが降り注いで。
「──♪」
タン、タン、タン、と。リズムよく。
その足音が響く。
「うそ……」
「んなっ……」
「なんと!」
こいつらでも流石に驚くか。
だってブレスを足場に駆け上っていっているんだから。
「……かつて、アスミカタ帝国に存在したという、侍の忍者──御庭番。その末番にして、最も強き御庭番として恐れられた男、『山津波』の痣火。彼は足の下の魔力を固めることで、自在に宙を駆け、走ったとされていますが……コツを聞いたわけでもないでしょうに。英雄の原石……いいえ、流石は、になるのでしょうね。『鎌鼬』の異名を取った超速の嬰児、ガルズ王国冒険者ギルドにおいて、最年少A級冒険者として記録の残されている──アストリッド・スカルドラさん。そうでしょう?」
あーっ!!
こいつ、……ボソっと言ったからあんまり多くには聞こえてないし、何よりリッドにも聞こえてないっぽいけど……やっぱりやりやがった!
それ! 俺! 俺の目的!!
「であればこの編入試験、彼以上を見せないといけなかったりして。……とりあえず、追いついてみましょうか?」
前はしてこなかった飛行。それをして、天空よりブレスを吐いている魔竜の、鼻っ柱。
それを、拳と短剣が殴って叩き切る。
「──♪」
「蹴り飛ばしますよ。アストリッドさん、ブレスじゃないところにも魔力はあります。それを忘れないように」
魔竜の巨体が、華奢と言わざるを得ないナタリーの左足によって蹴っ飛ばされる。
その後を追いかけるリッド。当然のように空を蹴って加速し、追いつき──その肉も骨も細切れにしていく。
そしてそのまま突っ切って──着地、した。
「……大丈夫、リッド」
「……ううん。魔力切れだ♪ ……でも、今までで……一番楽しかった♭」
アレは完全に成ったな。
あとは魔力効率とかの小さなところを詰めていけば、英雄だ。
その後。
レイナとナタリー、復帰したベルガットくんの頑張りやヨナスくんの魔法にて、強化版『フレイメユ・ティアス』は沈む。
余裕、慢心、焦りを失くし……ちゃんと「いつも以上」が出せたらしい。
さて、次の演目、セイラとソーマによる竜退治、は。
俺が頑張ってみんなに灯した「自信の蝋燭の火」を噴き消しちゃうんじゃないかってレベルの秒殺である。一応強化したんだけどな……。
鋭い連撃のセイラと、嫌らしく的確なソーマの攻撃。魔竜の弱点の一つである体内の魔晶石を適当にやって見つける、という離れ業でフィニッシュを決めた。どこを参考にしろというのか。
残るは手合わせの時間のみ。
俺とナタリーは抜けてようかな、ってナウラー先生に相談したんだけど、込みが良いんだと。
なんで。
「手合わせ、とか。……何年ぶりだろうね、ナーたん!」
「教戒院ぶりなのは間違いないですねぇ」
「他の子らには悪いスけど、ナタリー……ナタリアと……あとアストリッドくん相手にオレたちも手加減とかしてらんないんで、全力でいかせてもらうッス」
ソーマがそう言えば、反応するのは勿論彼女だ。
「成程、確かに天地の開きがあるとはいえ……そういう手合いか。あたし、ソーマさん狙うから」
「油断するなよ♪ レイナ♭」
「僕はどうしようか、ドレンくん」
「対人戦の経験値が少ないので何とも言えませんが……件の魔法は使わない、のですよね?」
「まぁね」
彼は当然のようにアルカvs俺の戦いを見ているわけで、本当は歌唱魔法以外にもできる、ということを知っているわけだけど、事情があるとわかっているのか何も話さないでいてくれている。
なんでそれに乗っかる。
「では、いつも通り中衛と遊撃を。ヨナスくん、対人戦闘における魔法のどれがいいのかについては、君に任せます!」
「しょーち!」
では──どれほど成長したのか、見てみようか。