序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
第一声は。
「え、うわ。……ザイカおじさんはエリスフィア出身って言ってたからわからないでもないけど……カインがいるのは驚きというか、ザミザイフェスから出てきてるのが意外っていうか」
「竜災でカジノが立ちいかなくなっちまったからな。仕方ねえからカジノで稼いだ金をライのやつにつぎ込んで、カジノを覆う対竜結界でも作ってもらおうかってアイデアさ。そしたらあいつ、どこにもいねぇと来た。普段は引きこもりで集会所に行きゃ大抵会える奴だってのに、なんでこういう時だけいねえんだよ」
「やめてくださいます? その行動、私と被っていますわ」
「『財宝』と『業運』はどうしても切り離せない仲にありますからねえ」
という感じの反応になれば、当然。
「アルカってダヴィド先生のことだったんだ。……アルカ・ダヴィド先生。……ん、なんか聞き覚えあるような」
「わー! わー!!」
「なんだ、言ってねえのか? こいつはゼルパパムが輩出した英雄譚『レスベンスト冒険隊』、及びそのモデルになったレスベンスト冒険隊で『船長』って呼ばれてたチビだよ。──おっと待てアルカ。なんだその凄まじく鋭利な槍みてぇなモンは。そんなもんおじさんに投擲すると運悪くザイカに当たっちまうかもしれねぇぞ」
「え♪ 超有名人じゃんか♭ ……けどあれって百五十年くらい前の話だったような#」
「私は危険を察して華麗に退避をしていますから、どうぞ」
という感じで、全てがバレた。とある事情で時が止まっている、なんてことまで話させられたアルカである。
とはいえ皆気味悪がったりしない。まぁ魔族も多いし、ハーフリング族やオーガ族も人族よりそこそこ長く生きるしな。
エリスフィア帝国は医療が発展しつつあるので平均寿命も他国よりかは長い。竜災で全体が縮まっているとも言う。
越竜学園に案内された二人の中年、ザイカ・オンドウとクイン・ジェック・カイン。
ゲストの名札をつけて学園内に入り込み、特になんの障害もなくエレオノーラとアルカに辿り着いた、って次第。
──しかし俺は、ここで一つのミスを犯した。
「つかよ、アルカ。このガキなんだよ。お前の弟子か?」
「え? 違うよ、生徒の子。弟子……っていうか、私は以前ちゃんとこの子に負けたから、私が学ぶ側カモ……」
「ハッ、まぁそりゃそうか。竜相手にあそこまでできるんだ、【マギスケイオス】程度に学ぶことなんざ一つも無いわな」
「視認・確認できる限りで二千万近い刻印を自在に操っていましたしねぇ。次の『最小限』、いえ『全開』の席までありそうです」
「……あれ? ノアくん……前に私達にした説明の時さ」
「ええ。私達と戦った時の事は、あくまでアルカが相手だからできたことで、竜相手にはできない。そう話していましたわね」
やっべ。
……良い「──ですよね?」明けで調子乗ってただけって……いやマジで、だってその後全身脱力するレベルの魔力効率なんだって一応証明したじゃん! いやつか、たまたま見てた二人が……重村鎖袋とかリュディみたいな明らかに異質な感じのしない平凡そうな中年二人が【マギスケイオス】の一員だとか思わないじゃん!!
っていうか、うわ! この二人……俺の養殖「──ですよね?」よりも上質な天然「──ですよね?」をかっ食らいまくってそうなポテンシャルしてない??
「いや、僕だけじゃ魔竜を倒し切れなかったし。実際に削ったのはリッドとレイナだし……」
「何言ってんだ♪ ボクらがやったのは大詰めだけだ#」
「そうよ。それにあんたが言ったんでしょ。私達は遅すぎて取り分が無くなってる、って。あんたが全部やっちゃうから、って」
ぐ、ぐぁあああ!
身から出た錆という言葉がこれほどしっくりくる状況も無いというか。
ま──マズい。主にアルカとエレオノーラから視線がマズい!
「……廊下で何を騒いでいるんだい」
「ん、あ、ヘンリー。なんか久しぶり? 気のせい?」
「一週間ぶりくらいで大げさな……。宇宙ステーションの強化が粗方終わったから帰ってきたんだよ。……それで、何の騒ぎ?」
「おや、ヘンリー。あなたならばすべてを把握しているものかと」
「そこの人とノアがいなければ把握できたよ。ノアが僕の視線を弾くのはもう慣れたからいいにしても、そっちの人はたまたま、運よく、僕から見られない、を常時続けているから……」
そこの人、と言われているのは……当然にクイン・ジェック・カイン。
そして。
「おお……。……話には聞いていましたが、本当にエカスベア博士とそっくりですね」
「……きょうびそれも聞かなくなったけど。……君は、……『皇帝』、という人だっけ?」
「ええ、初めまして。約二百年前のエリスフィアでヘンリック・エカスベア魔導博士に拾われ、彼の姓を譲り受けた、アーウィング・エカスベアという者です。今はザイカ・オンドウとして活動しておりますが、エカスベア博士への恩義を忘れたことはありません」
「僕に言われてもね……。……そっちの人も、【マギスケイオス】か。魔法の感じからして、『業運』さん」
「ああ、そうだ。『業運』、クイン・ジェック・カイン。昔から監視っつーモンが苦手でな。あんたからの視線はすまねえがこれからも弾かせてもらう」
「いいよ、もう変則処理にしたから。……それで、まぁ、用向きが僕にあるわけでもなさそうだから、とりあえずノアに来てもらいたいんだけど……」
おっと。何か俺に用事か。
しかしナイスだ。これで有耶無耶に──。
「ヘンリー視点でさ、今のノア君と対等に戦えそうな人って誰?」
「……戦える、っていうのは、戦闘に限った話? それなら彼は、あくまで学生なわけだし、ダヴィド先生にもエレン理事長にも勝てな──」
「そう。ちなみに私は負けちゃった」
「なんだ……そこまで明かしているのか。だったら、……対等に戦える人なんていないでしょ。精霊王とかその辺が苦戦してようやくくらいだと思うけど……。ああ、あと、最近転入してきたナタリアさんかな」
「成程。……ノア君、私からもちょーっとお話あるなー?」
「さて、久方ぶりに尋問魔法の起動準備を……」
……だよね。君の性格ならそう言うよね。最初気を遣おうとしてくれてありがとうね。
「なんか物騒な先生ズはおいといて、ナタリアがそんなに強いんですか? この前の幻戦でソーマさんに負けてたのに」
「セーブにセーブを重ねているからでしょ、それは。とはいえダヴィド先生もエレン理事長もそれは同じな感じはするけれど。二人とも全力の全力はまだ出していない感じがあるし……【マギスケイオス】自体、魔導の探求集団であって戦闘集団ではないとか嘯いているけど、実際に戦闘になったら自分が一番強いとか思ってそうだよね」
「刺さるなぁオイ」
「私は本当に非戦闘員ですが、ジェックは戦闘行けますよ。これはマル秘情報」
「そうそう、僕の戦闘技術も魔法も大体ナタリアに習ったからね! 詳しいことはナタリアに聞いて! じゃあ行こうかヘンリー話し合いをしようするためにそうしようですよするさらにそれでも!」
「……ああ、やっぱり……わかってたけど、母国語じゃないんだね」
はい、シーン切り替えシーン切り替え!
***
半ば強引に学園長室へ来て、一息。
「別に、そんなに隠すことでも無いと思うけどな……。君の強さはもう大抵の人間に知れ渡っているわけだし」
「今回の僕はあくまでヒーラー兼バッファーでいたいの。さっきの魔竜退治はちょっと張り切っちゃっただけ」
「……キロスから帰ってきたあと、妙にイライラしながら対竜学園に行って、室内運動場の準備室で一瞬目を瞑って、次に目を開けたらとんでもなくご機嫌になっていて、そのまま流れるように魔竜退治をして……。推測するに、あの目を瞑った瞬間に時間渡航をしたとかなんだろうけど……傍から見るととんでもない情緒不安定に見えるよ、君」
「君に言われたくはないかな……」
情緒不安定代表がなにを言うか。
「……そんな話は、いいや。それより見てほしいものがある」
なんて言いながらヘンリーが取り出したるは、かなり厳重な封印がほどこされたポッドのようなもの。
その中にいるのは……天の至泉で見た、猿の頭にコウモリの翼を持つキメラ。
「宇宙ステーション建設から今日の昼頃までで、三体の使い魔……この珍妙な生物が宇宙ステーション周辺を探りにきていた。一般的にはキメラというんだろうけど、これはちょっと違うっぽくて。生まれた瞬間からこの形だし、それを産み落としたのは人間であるらしいんだ」
「人間? いやまぁ汪が人間なのはそうだろうけど」
「そうじゃなくて。……その一部始終をアウトプットしたから、読み込んでみて」
記憶のデータを貰う。
それをインプット魔法で取り込むと。
深夜、草木も寝静まった頃合いに、その冒険者二人の姿があった。
酒を飲んだあとなのか、上機嫌そうな顔で星空を眺めているその二人は、しかし、次の瞬間何かがのどに詰まったかのように苦しみ出し……二分とかからないうちにその口から件のキメラを産み落とし、絶命した。
というもの。なんというB級サスペンス。B級ホラーだ。
「これは使い魔三体の内の二体が生まれることろだ。もう一体も別の冒険者から生まれていた。使い魔は生後一秒としない内に宇宙ステーションを目指し、その周囲をぐるぐると回る、という行為をしていて……退治をしてみてからわかったことだけど、そいつらはほとんど目が見えていない。ただ魔力素の波動を固定振動値として感じ取れるみたいで、それによって宇宙ステーションの内部を読み取っていたらしい。脳内にあるのは生物用の知能構造というよりは、情報の圧縮機構。恐らくはこれを持ち帰るための」
「いや、遠隔で情報を発信するための機構だろうね。結界術の応用だ。遠隔で結界を作り上げ、そこに情報を文字や画像、あるいは立体構造として吐き出す。自由意志やその他の機能が無い代わりにそれだけに特化した構造。強化情報も含めて宇宙ステーションの設計情報の全てが汪に接収されていると思った方が良い」
……この内部診断は確実にローレンスの技術だ。確かにあれは魔導医学会に発表してあったから、真似しようと思えばできる。できるやつがいないだけで。
寄生血液が『恵蓼剤』に似ていることもそうだけど、やっぱりあいつは俺の発見やら何やらを全て有効活用していると見るべきか? 時代が前後するから、あっちがオリジナルだと言われたらお手上げだが。
だとすると……無事なのはクィローの時にやった魔晶石刻印くらいかもしれない。大抵の技術は発表している。遠隔結界もハウルの時にやった奴でできると思われていただろうし。……いや、というか、遠隔で結界やコンストラクトを使役するあのやり方は……。旧ドランシア軍のテロも、汪か?
「人間の体から使い魔が出てきた仕組みは、どういうものだと思う?」
「やり方はいくらでもあると思うよ。汪が前に使っていた寄生血液は、常日頃から感染者の周囲にいる子たちが、いつ感染したのかわからない、なんて言うほどに潜伏及び感染経路のカムフラージュに長けていた。それでいながら対象の細胞に己を似せて擬態しながら対象を食い破る悪辣なものでね、激痛を漏ららすことも一切気付かせないようにすることも意のままって感じだった」
「……アルカから聞いたことがある。確か……『
「"いえ、それは罹患した個体を指す言葉であって、寄生血液の名ではありませんね"」
封印の中で、強化に似た構築式が組み上がる。
……これは。
「"『先見』という魔法使いの使っていた魔法を模倣してみましたが、しっかり機能しているようで何より。とはいえ時間が限られているので軽く紹介をば。この寄生血液の正式名称は『
立体映像のように現れる汪溢桔。ペラペラと回る口からは、鬱陶しいことにしっかりとしたハウルへのリスペクトが感じられる。
「"あ、私は『先見』さんみたいに質問をさえも予測しての受け答えとかできないのでこのまま続けさせてもらいます。私達……そうですね、敢えて名をつけるのなら、定道勢力に関してですが、現状はそのままを予定しております。あなた方が行おうとしている天体の挿げ替えというげに恐ろしきことを止める理由も手立てもありませんので、それは勝手にやってもらうとして、やはり私達の欲するところは竜とゴーストを操る力の方。あの楔の少女の体組織で作ったキメラ、何体か作ってみたのですが、同じ能力の獲得に至らないどころか知能の獲得もできなくて。雑に殺処分するのは勿体ないので最後の活用として一度最小単位にまで圧縮し、『蝎客蟲』としての外殻を刻み込んで魔物へ罹患させ、それを討伐した冒険者がエリスフィアで、という具合になるようにしておきました。処分代行誠にありがとうございます。……こんなところでしょうかね? あ、定道様、何か言いたいことはありますか?"」
立体映像から汪がはけ、定道が映る。
「"ここに話しかければよいのか? ……ふむ。まずは、謝罪を。余は罪なき者を手にかけるつもりはない。冒険者三人の犠牲を笑って嚥下できるわけではないのだ。その旨、汪へは強く言っておく。聞いてくれるかはわからぬが。そして、汪も言っていたが、やはり余らの方針は変わらぬ。そなたらが如何なる技法を以て試練を課す存在をどうにかしようとも、知識獲得の……なんだったか、ぼとるねっく? の解消は必要であると考える。とはいえ結果的に汪の放った使い魔が、そなたらの行いの妨げとなってしまったのは事実だ。これについても重ねて謝罪をさせていただく。余らは別々のやり方ではあれど、世界を救わんとする同士であると認識している。ゆえに、此度無理矢理にもそちらの情報を頂いてしまった手前、こちらが掴んでいる最新の情報を提出すべきであると判断した。即ち緑月の動向である。かつての空にありし、そして空の奪還を企てる緑月は、何らかの手段によって徐々に力をつけつつあることがわかった。なんらかの手段、というのは余らでも把握しきれておらぬが、それによって緑月は涅月と正面衝突を行い、その座を奪還しようとしているという。……だからどうせよ、とか、ここはひとまず一時休戦で、とか、余から言うことはできぬが、この情報がそなたらの助けになることを願う。以上だ"」
というところで立体映像が切れた。
……ふむ。
「まず考えるべきは、一切意味をなさなかったこの厳重な封印の方だね」
「……おかしな気分だ。少し……嬉しい自分がいる」
「嬉しい?」
「この封印は、僕の知る限りの封印に関する天才の知識を結集して作ったもの。位相空間レベルで断絶された内外は君の魔法でさえ貫けないものである自信があった。……けど、内側から……既に死したキメラに封入されていた細胞片が、自己に自己を書き足す、という形で強化付与を行い、それによって内から外への抜け穴を強制的に作りあげ、そこから幻術を飛ばす、だなんて。……すごい。僕からは一生かかっても出なかった発想だ。……僕と同じ時代に、天才が……まだいたんだ」
……ああ、じゃあその技術は『博士』産だな。
本来手出しのできない空間へ強制的にラベリングして孔を作るとか。……つくづく使ってくれるねェ。
「僕がその場で組み上げた封印を……どの封印が、どれだけの規模が組まれるかを事前に想定し、確実に通すことのできる遅延型時限式強化付与を行う。……以前全力を出した時も思ったけど……どうやら僕は、己の
「良い好敵手が見つかったのは喜ばしいけれど、言われた内容についてはどうなんだい」
「どうって……こっちはこっちで、そっちはそっちでやりましょう。粗相をした分の情報は渡しますからどうか悪く思わないでください、というものでしょ。別に……何を気にしろって」
「緑月のこととかさ」
「そっちはもうとっくに憂慮事項に入れてあるよ。……定道という人からは、惹かれるものを感じなかったから……失礼な言葉になってしまうけれど、流石にそれだけじゃあ釣り合いはとれない。けど、汪溢桔の実力の一端を間近で見ることができたことだけで充分だ。僕にとっての報酬はそれでいい。……というか、君自身緑月のことは知っていて動いているんでしょ。だから前ほど紫輝の挿げ替えに精力的じゃないし……天体を挿げ替えるだけじゃダメだったとかそういうことがわかって、さらにその先で天体同士の諍いがあることを知ったとかで……これ以上強く関わるべきか、僕らこの世界の生き物がどうにかすることに賭けるか、ずっと迷ってる。そんな感じだよね」
見抜かれてーラ。流石と言っておくが。
「……宇宙ステーションや紫輝の挿げ替えは、僕ありきの話だったでしょ。その僕が揺れていると知って……何か思わないのかい」
「僕になんて言ってほしいのかはよくわからないけど、君が他の誰よりも人間らしいことなんか知っているよ。だから紫輝と会話しない方が良いって忠告したんだし。……無視された上にちゃんと殺しづらくなってて溜め息しか出ないけど。……ただ、そういう非効率的な部分が君を人間たらしめている部分だと思うから、そこを変えようとは思わない。そういう揺らぎのある人物だ、って認識しておくだけでいい。……そこが矯正されたが最後、君が効率だけを取る怪物になれば……この世界そのものを一度消去して、魔力周りだけを除外した世界を再生成する、くらいのことはしてきそうだし」
む。……し、シナイヨ。それが一番簡単だとは思っているけど……それじゃあ意味が無い。
それなら自分の世界を作って遊んでいればいい。そうすれば憂慮する事態なんか一つも起きないんだから、安全で楽しい。
困ったり悩んだりするから楽しいんだ。そういう意味で、多大なる悩みを与えてくれるこの世界と今の立ち位置は非常に好ましい。
少なくとも世界を救ってとか泣いている子を救ってあげて、みたいなことを頼まれるよりは、ずっと。
「確かに君ありきの話だった。君がいないと僕らじゃ紫輝の挿げ替えなんてできない。……けど、宇宙に観測基地を建てるという行いは、どうして今まで考えつかなかったのかと思うほどに有益なことばかりだった。無重力という未知の体験。無酸素という絶死の空間。星海の漆黒に吸い込まれるような恐怖心と、天にて輝く紫輝がどれほど巨大なものであるかの実感。挙げたら暇がないほどに無数の未知が広がっていて……。宇宙ステーションを強化しながら過ごしたこの一週間は、僕が生まれてからの三十四年の中で、最も濃厚な一週間であったと言える」
「最大の目的には使えなくなったけど、有益だったからよかった、とでも?」
「そうだよ。そして、そうであるからこそ、新しくできるようになったことが幾つもある。たとえば、今の僕は事前に準備をすれば、ひと月ほどであれば、生身で宇宙空間に滞在できる。宇宙の方が魔力が濃いから、それを利用する方法がたくさんある。『武笠歳旦』の技術で魔力晶化を行えば方向転換や咄嗟の戦闘行動もできるしね」
「それは……すごいけど、主題からは逸れたままだ」
「僕は自身を結集と継ぎ接ぎに長けた存在であると評価している。過去の天才の技術は……まだまだたくさん学びはあるだろうけど、必要そうな分野のものは粗方吸い尽くした。そう思っていた。そして僕は、ゼロからイチを創り出すことのできない存在だとずぅっと思っていた。……けれど、天才の誰しもが踏み出していない分野であれば、それができるし、そして……いつになるかはわからないけど、こんなにも近くにお手本がいるのなら、必ず辿り着ける」
「僕じゃなく君が挿げ替えを行う、って?」
「それでもいいし、それ以外の方法を思いついても良い。紫輝から課される試練に付き合ってやる必要はない、という考えは今でも賛成だけど、ここまで暴力的な手段を取る必要があるのかどうか、というのは疑問視する方向にある。君の快不快を考えるのならば、そして君が好ましい手段を取るのなら、僕という存在が力をつけ、紫輝という天体と対話するに至るまで行けばいい。あるいは君や紫輝はこれを傲り高ぶりだと捉えるかもしれない。何でもできる気になった人間の最も愚かな所だと見限るのかもしれない。──だから、有言実行する形で君達を見返していくつもりだ」
……ヘンリー・エカスベア。
果たしてその輝きは、太陽に翼を焼かれて地に墜つ凡夫か、傲慢を力へと変え、誰も届かなかった天へと歩み入り、光を抱いてなお無傷で立つか。
「じゃあ、僕はもうお払い箱かな」
「君はお手本なんだから、お払い箱にするわけがないでしょ。……それに、いずれ
「恐ろしい三者面談もあったものだね」
「記憶の書き換えはされているけど、僕は自身の生徒に紫輝の天使がいたという記録だけは持っているから、授業参観で偶さか出会った父母と会話をする、と言う方が合っているかも」
「ははあ、じゃあ僕とアンドリアミアフィナイラロカが生徒でないといけないわけだから……少なくとも僕の卒業までの八年で有言実行をしてもらわないといけなくなるね」
「とりあえず僕が死ぬまではここにいてくれると聞いた覚えがあるけど……まぁ、良いタイムリミットだ。性能限界を超えて性能の拡張もしていきたくなる」
今までのヘンリーならともかく、今のヘンリーのことは、恐らく銀あたりが大好物に思うだろうなぁ。
人間賛歌の方向性。さて、吉と出るか凶と出るか。
……それと、忘れるところだったけど、定道勢力なる奴らは果たして何を企てているのか。
いいじゃん、現代。まだまだ楽しそうだよ。