序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
久しぶりの来客があるということで、妙にそわそわしている博士を宥め、ソファに座らせる。
凄い経歴と凄い功績を持っているくせに、いつもどこか自分に自信が無くて、そしてすぐ謝る。
少女……『助手』はそんな彼を……まぁ、基本的には、尊敬していた。
来客を知らせるベルの魔道具が鳴る。『助手』は家の中から外に声を届ける魔道具の前に座り、その対応をする。
「はい、いらっしゃいませ。ここはエカスベア魔導研究所です。お名前とご用件をお願いいたします」
「あ? あー。……メッテが来たってヘンリックのアホに伝えろ。それだけでいい」
「申し訳ございません、規則でして」
「ああ。……まぁそうか。そういうのは従うべきか。名前は、メッテだ。メッテ・イェルネ。同行者にキアステン・ゲーゼもいる。用件は……同窓会? なんだっけ?」
「近況報告会、でしょ。ボケるには流石にまだ早いわ、メッテ」
「ああそうそれそれ」
この研究所は、国土の小さいエリスフィア帝国において、限られた者にしか建設許可の発行されない「個人研究所」である。今この中にいる博士の頭脳がエリスフィア帝国にとってどれほど大切に扱われているのかなど、子供でも分かる話だ。
それを、こんな粗野な言葉遣いの女に──。
「メッテとキアステン、来たんだ。ブリジッ……じゃない、『助手』、ドアを開けてほしいな」
「……お友達、ですか?」
「そう。大事な大事な、友達だ」
博士の言葉が、だから嫌わないでくれると嬉しいな、というものも行間に含んでいると気付き、認識を改める『助手』。
だらしないし、集中すると周りが見えなくなるし、どこかおどおどしていて『助手』でもたまにイラっとする言動の彼だけど、なぜか人を見る目はある。だから彼の言う友達は、利用し合う仲などではなく、真に友達なのだろうから、と。
ため息を一つ挟んで、少女はドアを開けた。
そこに立っていたのは、エリスフィア帝国軍の将校を意味するワッペンをつけた、無数の傷跡を身体に持つ軍服の女性と、『助手』と同い年くらいの少女。
固まる『助手』。粗野な口調の女はどう考えたってこの将校さんで、そんな人が博士の友達なわけがないから。
何か調査でも入ったんじゃないかと博士へと振り向けば──。
「メッテ、キアステン! 久しぶりだ……会えてうれしいよ!」
「おう、テメェはいつまでたっても犬臭さが抜けねえな」
「酷い!? ……それと、キアステン。流石に僕ももうわかっているから、そんな怯えなくていいよ」
「……そうね。メッテにもそう言われたわ」
満開の笑み。そしてぶんぶんと振られるヒルウルフの尻尾を博士の背に幻視する『助手』。
……人の交友関係というのは、わからないものである。少女はそう結論付け、お茶を用意することにしたのだった。
***
お茶を出したあと、空気を読んだ『助手』の出ていった部屋に、三人はいた。
二十四歳のメッテ。二十二歳のヘンリック。そして。
「……別に、見た目が変わらないだけで、歳はちゃんと取っているわよ。……まぁ、その基準で行くと、三十歳とかになっちゃうんだけど」
「魔族ってのが見た目通りの年齢じゃねーのはもうよくわかってるよ」
「ちょ、溜めるとか余韻とか、ないの? そこは……こう、ヘンリックが神妙に切り出して、──キアステンは、魔族……なんだよね、みたいな」
もう! と両腕を振り下ろして憤慨する「あの頃のまま」なキアステンに、二人はケラケラ笑う。
「テメェがふつーに喋れるってわかった時もそーだっただろ。そういう感動系はあたしらにゃ無理無理。こいつも秘密とか無理だしな。すぐバラしやがる」
「流石に十年経てばちょっとくらいの処世術は覚えたけど……まぁ、まだ、そうだね。メッテが言わなかったら僕が言ってたと思う」
魔族。そう、魔族だ。
キアステンは──魔族だった。
けど、
なんにせよ。
「十年前……か。十年前の今日、僕たちは……
「ああ。……相変わらず
十年前、彼ら三人は
紫輝が昇っても明るくならない。永遠の夜の続く、子供だけを攫う異界。それは大人になりたくない子供達の恐れが作ったのだと……どこからともなく囁かれるようになったのだ。
救助におけるインフラが発達し、連れ去られたとしても最長一日で救助されるようになった今の子供達には伝わらないだろうが、あの世界で救助の来ない一年間を過ごした三人からしてみれば、そんなメルヘンな場所じゃ絶対ない、というのが正直な感想だが。
子供を忘れ、思い出した親は軍事にかまけていた自身を見つめ直し、より一層子供に愛を捧ぐようになった。そのことによる武力の低下が見られた……かに思いきや。
十五歳までの子供は
十年。それを経て、
「結局アイツは、誰だったのか。……調べ、ついたんだろ」
本題を切り出すメッテ。この若さでエリスフィア帝国軍准将にまで上り詰めた彼女の鋭い目には、隠しきれない怒りが浮かんでいる。
「うん。今から十三年前。つまり、
何枚かの羊皮紙を置いていくヘンリック。彼の今の肩書は、エカスベア魔導研究所所長。魔鉱石研究、魔道具研究の功績が讃えられ、皇帝より個人研究所を賜った、帝国の要人にして、上から数えた方が早いレベルの「頭脳」。
「とはいえ現れた当初は特に目立ったことはしなかったみたいでさ。これが捏造故なのか、本当に誰も覚えていなかったのかはわからないんだ、実際。聞き込みをしてみたけど、幼少の頃を知っているって人には出会えなかったから……外国の人って線もあるにはある……かな? でもだったらエリスフィアに来ないでゼルパパムに行くと思うから……」
「ヘンリック、続けて?」
「あ……ああ。ごめん。で……彼が現れてから、二年後。紫輝歴560年に、彼は
「あるよ。あるっつーか、もうちっと階級が低い時に使ったことがある。見覚えのある箱についたボタンを押すと、目の前にある『
異界から出たあと、三人はまず学をつけるための努力をした。
実は、親のいない子供であっても教育を受けられる制度がエリスフィアにはあったのだ。誰も知らない、誰も使っていなかったその制度を使い、三人は学生になって、それぞれの分野を勉強し……そういう努力を経て、今に至る。
キアステンだけは長く居すぎるとバレてしまうから、途中で学び舎からは姿を消したようであったが、それでも勉強は続けていた。
「話を戻すよ。それで、それを開発した彼は、作り方や使い方をエリスフィアじゅうに広めたあと、姿を消した。彼と研究上の付き合いを持っていた人が言うには、"異界の中からコッチ側に道を付けられないか研究する"って話していたらしい。その後すぐの失踪だったらしいから……多分」
「時系列を考えても、私達が遭遇した博士と同一人物なのは確定でしょうね」
「子供の頃からずっと戻れてねえって説は、それで否定されたわけだ。だが──」
そう。あの時は何もかもが突然だったから考えつかなかったし、知らないこともあったけれど。
「突然現れたってのは、……やっぱり、そういうことだと思うか?」
「うん。そもそも
テメェは皇帝の息子とも仲良くなったのかよ、とツッコミを入れようとしたメッテだけど、そういう雰囲気ではないので黙る。
言葉を継いだのは、ヘンリックではなくキアステン。
「実は
親がいない。同じ道を辿ってほしくない。
学会を追放されていないどころか歓迎されていた、なんて嘯きまで含めて、全部本当だ。全力を賭せば道を作れたこと含めて。
言っていない部分が無数にあっただけの、正直者。
「……でも、約束は守ってねェ。だな?」
「うん。僕、博士になったのに、会いにきてくれていないし……。二人のもとへは?」
「当然来てないわ。ちゃんと正直に生きているのに」
「コッチもだ。そりゃ、筋が通らねえよな?」
異界『
ただし、親のいない子供はその大人を認識できないらしい。あの頃毎日のように救助隊が来ていたと知って、けれど一度も彼らを見ていなかった三人はそう結論付けている。
でも、博士は大人の状態で一度外に出てきて、もう一度入った存在だ。それなら──みつけられる。
──まさか自身の腎臓を子供のものに作り替えて正規の手段で攫われた、なんて考えつくはずもない。
この誤解がどんな影響を及ぼすかについては……。
「実は、軍の方でちょっとした話が上がっていてな。テメェら、力貸せよ」
「勿論だ。今ばかりはエカスベア博士じゃなく、ただの魔鉱石ナードに戻るよ」
「じゃあ私は……えっとなんだったかしら、私の設定。……あ、そうそう、音楽好きの引っ込み思案少女」
「……お前、音楽好きってとこまでキャラだったのか?」
そんな話の笑い声に包まれて、明記されないものとなる。
***
そこには、三人の子供が集まっていた。
仮面をつけた少年。彼のあだ名は、『皇帝』。
刃のダメになった剣を持つ少年。彼のあだ名は、『剣士』。
小難しい顔で口をとがらせている少女。彼女のあだ名は、『助手』。
「機嫌直せって『助手』。そりゃ博士にも友達くらいいるだろー。それを、他の女が訪ねてきたからってぷんすかしてよ。そもそもオンナとしてなんか見られてねーってのに」
「うっさい! ……まぁ嫉妬しているのは認めるけど、オンナとしてとかじゃないし。……将校さんの方は良いけど、もう一人の子が……私と同い年くらいなのに、博士と友達で、あんなに楽しそうに笑いあってるのが……なんか」
「それをオンナとして嫉妬してるっていうんだろー。なぁ、『皇帝』」
「ええ……これは確実に嫉妬ですね。ずばり、エカスベア博士をその少女に盗られてしまうことを懸念している……」
「あんたが一番的外れだっての!」
彼らは全員、エカスベア博士に拾われた子供達、である。
家の無い子供。親のいない子供。彼らを拾い、言葉を教え、学校へ行かせる。「人材を取りこぼさないようにするための大切な事業」と言っている彼の見る目というのは、確かにあるのだろう。既に一人、ここで拾われ、学校へ行き、卒業した者が……皇帝府勤めにまでなっている。
普段は
だからこそ、『助手』は、この感情は。
「私の方が……ぜったい博士のことたくさん知ってるし!」
「これは嫉妬ですね。ええ。ええ」
「そろそろぶっ叩く!」
ぶっ叩かれるは『皇帝』。子供にしては丁寧な言葉遣いすぎることを揶揄されて、「将来は皇帝にでもなるんじゃない?」から来たあだ名の持ち主。
少女のチョップをさらりと躱すは『剣士』。冒険者になることを夢見て毎日毎日誰かの捨てた剣を振っている少年だ。
ワーギャー騒ぐ彼らは、誰もが「そろそろ博士に怒られちゃうかもな」なんて考えた──その瞬間。
黒い靄に、全身を包まれた。
「──っ、
「っ……。……大丈夫、落ち着いて。博士はそのために私達をあだ名呼びしていたんです。大丈夫、すぐに助けが来ます」
「おい……俺、二度目なんだけど。大人には早くなりたいってのによ……」
気付けば人っ子一人いない真っ黒な空間に。
けど、すでに
一、みだりにその場を動かないこと。救助隊は登録された場所を目印にやってくるから、動きまわると救助ができなくなります。
二、大きな声を出さないこと。
三、間違っても立ち向かおうとは思わないこと。危険だったら逃げてもいい。子供のいそうな家にさえ潜り込めれば、救助隊が必ず来ます。
三人にもエカスベア博士から「気を付けるべきこと」が教えられている。
だから、この場所を動かない。この、真っ黒で真っ暗で、いつもと変わらないはずの研究所を。
灯りが無いからか、かすかに湿っているように感じられる床。
息を殺して時を待つ三人。窓の外が黒い。暗いを超えて黒い。まるでそこにもこの部屋があるかのように、窓を通して色が変わっていない。
研究室のドアが開いた気がした。動いていないはずなのに、少しだけ開いているドアは、初めから開いていたのか。
床をゆっくりと擦るような音が聞こえてくる。足音、じゃない。魔物とも人ともつかない、湿った何かが這うような音。
ひゅう、と。誰かが息を吐いた。はずだ。こんなに近くで聞こえたその音に、周囲の音がぴたりと止んだ。
振り返る。そこには、誰もいない。おかしなことに、他の二人も振り返ってそこを見ている。音を出したのは自分ではないと言うかのように。
闇の中で、何かが動いた気配があった。その闇は、ひたひたと床を這い、撫でるように三人の肌へまとわりつく。
幻覚だ。こんな挙動をする
天井が──ミシ、と。音を立てて軋んだ。
まるでこの部屋が、外を徘徊する黒と呼応しているかのように。
剣の柄を握りしめる音がする。いつの間にか掴んでいた自身の肩に、食い込む爪に、子供達はようやく気が付いた。
であれば最初の音は、なにか。
「ア──そ、ボ?」
声は──背後から。
「はい光の魔鉱石ドーン!!」
窓が開き、スケルトンかと見紛うほどに痩せこけた男が顔を出す。そのことへの悲鳴を上げようとしたのも束の間、男の投げた光る石が、今しがた
「な……な……」
「キミたち知識が古イヨ。一年前くらいから
変な喋り方の、おかしなしゃくりの、スケルトンかと思うほどに痩せぎすの男。
窓から顔を出すその男と……腰を抜かしてしまった『助手』、『皇帝』の前に、『剣士』の少年が立つ。
二人を守るように、敵に立ち向かうように。
「オット、ボクは敵じゃない……っていうのは信じてもらえなそうダネ。ケド、そうも言ってられない状況なンダ。早くしなイト──」
軋む音が上がる。天井。気のせいじゃない。
いや。
ミシ、ミシと……音を立てて。
天井に罅が入っていっているような。
「っ……おっさん! この二人腰が抜けてる! 窓壊していいから担いでくれ!」
「イイネ、キミは肝が据わってル。経験者カナ?」
「んなこと良いから、早く!」
窓を割る男。しかし、音の方が早かった。
天井を砕いて──エルド・エレファントも真っ青な黒い足が降ってきた。
二人は、『皇帝』と『助手』は、それに押しつぶされて──。
「はい光の魔鉱石もう一個ドーン!」
押しつぶされ、なかった。
足が雲散霧消したからだ。
「これいつまでも使えないカラ! ヨイショ、担ぐよ! おっと掛け声が逆になった気がするゾウ! エレファントだけにネ!!!」
「担ぐぞ、『助手』。あとで文句言うなよ!」
くだらないことを言っている男なんかガン無視で『助手』を担ぐ『剣士』。『皇帝』はその男が持ち上げて──走り出す。
研究所の外へ転がり出た『剣士』は、その光景を見て絶望の声を漏らした。
黒、黒黒、黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒──。
視界を埋め尽くす
もはや建造物より
「んだよ、これ……。前来た時はこんなんじゃなかったぞ!?」
「なにがあったのかはサッパリだケド、ここ一年で増殖したし強くなったンダ。好戦的にもなっタネ。さて、彼らについてはまぁあとで話すとして、少年。その子を抱えたまま、まだ走れるカイ?」
「当然! 足が折れたって離さねえ! おっさんも『皇帝』のこと頼んだぞ!」
「『皇帝』? ニールス君の……息子?」
「ただのあだ名だよ!」
でも、と、『剣士』は言葉を詰まらせる。
こんな状況で、どこへ逃げればいいのか。建物さえも破壊してくる化け物相手に。
「とりあえずボクの家に行こう。そんじょそこらのセーフティエリアと一緒にしないでクレ。安全神話はこの十一年、一度だって崩れてないんだカラ」
呑気に。でも──聞いたものを安心させるほど、自信満々に。
それはありがたいことだった。子供というのは、大人の不安をダイレクトに感じ取る。だから、大人が大丈夫だと、心の底から言うのなら。
「大丈夫……なんだな。信じるぞ」
「任せテヨ。さすがにそろそろボクよりこの世界に詳しい人はいなくなってきた頃だと思うかラネ」
鼻歌交じりのその背中に、『剣士』はついていくことを決めたのだった。
***
言うなれば、2だな、と。
ええ、思いましたよ。俺もね。この道は長いので。
「本当に……
「さすがにそこまでじゃあナイ。光の魔鉱石の発する光と同成分の結界で周囲を覆っているだケサ。この家だけじゃなく、半径70athlの球体範囲に奴らは入り込めなイヨ」
「結界……ですか。球形の結界というのは、初めて見ますが……」
多少広くなった家と、設置したセーフティエリア。さらに各セーフティエリアに繋がるショートカットも作った強化版の家。1の頃には無かったファストトラベル機能ってやつだな!
ブリーフィングルーム、寝室、リビングルーム、研究所といった基本機能はそのままに、さらにバスルーム、栽培室、書室まで作った。
バスルームではお風呂が楽しめる。水の魔鉱石を使ったシャワーや浴槽で日々の疲れをリフレッシュ!
栽培室では採取物の中で、栽培可能だったものが栽培されている。これらは武器の強化や便利道具を作るのに使われるぞ!
書室にはこの十年で書き留めた
「あんた……何者なんだ? 『
「それ最近よく聞くネ。『
「──まさか、エカスベア博士がよく言ってる……博士の博士? 子供の頃、たくさんのことを教わったっていう……!」
……これは一応変則「──ですよね?」だったな。強キャラじゃなく主人公パーティが言う「──ですよね?」だし、言葉から推察するに身内からのものだからカウントはしないけど。いや別に今までのやつをカウントしてたかっつーと怪しいけど。
「エカスベア博士というノガ、ヘンリックのことナラ、そうダネ」
「そうだよ! 俺達、エカスベア博士に拾われた子供たちでさ! ……うわ、これは、早く帰って教えてあげなきゃ……っていうか、救助隊と一緒に帰ろうぜ! 博士、喜ぶぞ!」
おお。類友というかなんというか、また良い子を集めているんだな、ヘンリックは。
んー。けど。
「そうだナァ。この
「え……解決、できる……んですか?」
少女が問うてくる。
ふふーふ、万能魔法のせいで諸問題の答えの粗方がわかっちゃった俺が、なんで十年もここに居続けたのか、お分かりでないようだな。
今回は子供が関わっている案件だし、なんか解決できそうだったから、せっかくだから根本から消し去ってやろうと思って「──ですよね?」待機ついでに解決策を構築しているのだよ!!
ちなみにここ十年で主人公パーティと思しき少年少女はたくさん入ってきた。だいたいすぐに救助されたから俺の出る幕とか無かったけど。
でもキてます。ここ十年でいちばんキてます。俺の勘センサーさんがここだと囁いています。
こーれは解決編。そしてスーパー「──ですよね?」チャンス!!
「できルヨ。けどそれニハ、今栽培室で育ててイル"或る植物"の生育が必要デネ。それを待って、異界の発生源を消して、そうすればエリスフィア帝国もこのおかしな異変とはおさらば、って感ジダ」
「それが本当のことなら……とんでもない偉業、ですよ。皇帝府の誰もが日夜頭を悩ませていることなのに……」
「というわケデ、ボクの帰る帰らないはそこまで気にしないでクレ。キミたちは救助隊に救助されるといイヨ。ボクのことをヘンリックに話すのは別に止めないカラ、好きにしてクレ」
つーか、そうか、十年だもんな。
ヘンリック……子育てしてんのか。拾われらしいから、結婚とかはまだなのかな? もししてたら、やっぱメッテか。メッテはどうなってんだろうなー。子供の成長は早いからなー。
キアステンは……多分まぁ、十中八九魔族だから、まだ子供かもしんないけど。あの子もなんか職に就いたのかな。つか……俺もちょっと老けておくべきか? 魔族を疑われると面倒だし、この子らにはわからないレベルで老けておくか。
「それ、ってさ。おっさん」
「博士と呼んでほしいケド、ヘンリックと混ざるカ。うーん、教授……はダメだし……まぁおっさんでもおじさんでもイッカ。……あ、で。ナニカナ」
「その、『
「『剣士』、何を言っているのですか」
お。……なるほど?
「だってよ、こんな機会二度とないぜ!? 俺は……冒険者になって、名を馳せる夢がある。『
「あ、遊びじゃないのよ。危ないことだから、そんな……」
「遊びじゃないのはわかってる。死ぬ危険があるって、それも理解してる。でも、夢なんだ。一度抱いちまったから、もう変えられない大望なんだよ。寄り道もできない、何かを達成しても満足できない、ずっとずっと突き進んできた夢なんだ。俺はこれを、自信にしたい」
まっすぐな言葉。そして……夢を抱くということの意味を知っている言葉。
「なぁ、ダメかな。子供にうろちょろされたら邪魔だってのも理解してる。大人しくする……かは、約束できねえけど、必ず役に立つからさ! 俺だってエリスフィアを救いたい!」
「……あの、私からもお願いできませんか」
「ちょ、『皇帝』まで」
「『皇帝』っていうの、ただのあだ名なんですけど……ずっとずっと思っていたんです。私には、この名に見合うだけの、何かができるのか、って。学校へ行くのは楽しいですし、何かを学ぶことも同じ。エカスベア博士のように研究職になるのも良いなって思っています。……でも、心の奥底で……夢を見る馬鹿な自分が叫ぶんです。お前にはやりたいことがあるはずだ、って。……それがなんのかは、わからない……わかっていない、のですが」
ふぅん。
マルガナレちゃんもそうだったけど、才能の自覚を本能でする子供は本当にいるのかもなぁ。
「仲間外れにするようですが、本当に危ないことですから、『助手』、あなたは救助されても──」
「ふん! されるわけないでしょ! 男の子二人の面倒を見てあげてね、ってエカスベア博士に頼まれてるのは私なんだから! ……ただ、あんたたち勝手に話を進めてるけど、この人良いって言ってないから! まずは承諾を貰ってからにしなさいよ!」
ツンツンだけどしっかりものタイプか。キアステンを思い出すな。彼女は負い目がある分どこか気が引けている感じだったけど、この子には無いっぽい。そこが違いか。
「ウーン。……幾つか約束できるナラ、いいよ」
「おう、なんだ?」
「まず、無茶をしないコト。ボク、血を見るのがダイッキライなンダ。ある程度は治癒魔法で治してあげられるけど、まず怪我をしないでほシイ」
「……言われていますよ『剣士』」
「お、おう! 任せろ! 真の冒険者は敵の攻撃をかわし切って防御しきるものだからな!」
「あとは、ボクの言うことはちゃんと聞いテネ。けっこう細かいこと言うかもだケド」
「はい。私がちゃあんと馬鹿二人に言い聞かせます」
……ああ、あと。
「キミたちの心が折れて、もう無理だってボクが判断しタラ、問答無用で送り返すカラ。弱音を吐くな、って話じゃなイヨ。隠しても、我慢しても、見抜けるかラネ」
「それは、こちらからお願いすべきこと、ですね。……エカスベア博士が慕うだけあって、良い人のようだ。安心しました」
「ぶっちゃけ初対面のボクについていこうとするキミたちは危ういとしか言えないんだケド。……マー、以上が守れるのナラ、いいヨ」
「じゃあ、今日から、よろしくお願いします!」
律義にも頭を下げてくる、『剣士』というあだ名の少年。それに倣って二人も頭を下げた。
……礼儀正しい子供は好きダヨ。最初から、ね。
「……けど、そうなると、おっさんとかおじさん呼びは失礼じゃない? ……『博士の博士』でどうかしら」
「ちょっと長いけど、良いかも。わかりやすいし」
「『博士の博士』、改めてよろしくお願いします!」
律義というか、丁寧というか。
君達あれだね。……コンプライアンスを気にした……いや、ユーザビリティを気にした感じだね。
言っても伝わらないから言わないけど。
「それじゃア、計画についてを話ソウ。計画名は、『
それじゃあ、さっさと……子供時代を終わらせないとな。