序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
ロルフ・ヴェーバーは歯痒い思いをしていた。
数日前から連邦内の
ダンジョンと呼ばれるモノの中へは、原則、士官学生は入ることができない。ギルドに登録している冒険者……それもある程度ランクが上位の冒険者でなければ入ってはいけない、とされている場所だ。
多少の憧れや興味を含みつつも、まぁ、それは良かったのだ。知らないモノへは大した興味も抱けない。普段はいがみ合っているハーゲン・アンシュッツの兄がダンジョンで行方不明になったとか、それをS級冒険者が救出したとか、「背の高い塀の向こうで起きていること」に近いそれについては、まぁ、良かった。
けど。
「ハーゲンも、ハウルも……帰ってこねーな」
「うん……。さっきから軍人が出入りしていて物々しいし、何かあったんだろうけど……大丈夫かな、二人とも」
「……心配よね。アンシュッツくんも、ハーミッドくんも……無事だといいけれど」
どこまで言ってもロルフたちは子供である。
それも、軍人を親に持たない子供だ。軍の行動に首を突っ込むような真似はできない。
でもそれは、ハウルだって同じだったはずなのに。
「……っぱ、すげーやつだったんだな、ハウルのやつ」
「僕のお爺さんも……肺の瀛毒で亡くなったんだ。それを治療できる薬を作る、なんて……僕らじゃ敵わないのは当たり前だったと思うよ」
「そういうことじゃねーよ。おれだったら……軍人にあれだけ囲まれて、しどろもどろにならねー自信が無い。いつも通りのパフォーマンスを発揮できるとは思えねー」
「そう、ね。……自分の得意分野を……誰かのために役立てるように話す、なんて……難しいことだと思う」
ハウルは軍人に、瀛毒のアプローチを詳しく教えてほしい、という理由で連れていかれている。子供達はそこまでしか知らないが、それがとてつもないことであると、彼らは知っている。
そしてハーゲンもだ。普段は彼らと同じ学生をしている彼であるが、今はアンシュッツ曹長として任務に当たっている。
違うのだ。ロルフとは、ギュンターとは、ミアとは。
彼らは……子供ではないのだと。
「……おれたちになにか、できることは……ねーのかな」
「ありますわよ」
流石にビクっとする三人。振り向けばそこにいたのは、大那・ジュリだった。隣には執事のクラウスもいる。
咄嗟にミアの前に立ち、手を広げるロルフとギュンター。
ハウルとの一件から大那・ジュリが悪意一辺倒の存在ではないことはロルフも知っている。だが、その後も何度かキツい言い回しでミアを窘めているシーンに遭遇したことがあるのだ。
ミアはただひたすらに謝るばかりで……その噛み合いの無い諍いは、酷く苦しいものだったのだ。
「待って、二人とも。……実は、その、ジュリさんとは……仲直りをしたの。だから……ありがとう」
「そ、そうなのか? じゃあ……大丈夫、か」
「ええ、お騒がせしましたわ。とはいえドランシア軍士官学校においては女生徒一人、男子生徒三人の組み合わせが習わしですの。だから、私という外敵が無力化されても、今後もちゃんと彼女を守っていてあげてくださいまし」
「外敵って。……あんた……じゃねえ、先輩は敵っていうか、進路が重なっちゃっただけの味方だろ」
「……ま、なんでもいいですけれど。それでは、クラウス」
「はい。皆さま、こちらへ」
仲良くなったというのなら、ロルフに言うことは無い。ギュンターも口を挟む気はない様子だった。
余談であるが、既にミアの「あれそれ」は完全に解除されている。そのためロルフもギュンターもミアに首ったけ、ということはないのだが、持ち前の正義感や優しさが彼らを騎士へと駆り出させている次第だ。
三人は、大那・ジュリの後を追う……。
大那の屋敷。そこには、数人の学生……上級生たちが集まっていた。
「ジュリ、どこへ行っていたの?」
「彼女たちを探していたのですわ、ヘレナお姉様」
大那・ジュリが三人を紹介する。中には顔見知りがいたり、凍城・ミアに関する「あれそれ」を知っている者もいたけれど、その上でジュリが呼んだのだと理解もできている様子だった。
上級生らの囲んでいるテーブルの上には、ドランシア領の地図が広げられている。地図には幾つかのバツ印が描かれているようだった。
「これは……」
「異装の魔法使いの目撃例だ。ああその前に。いいか、後輩ども。俺達はあくまで民間人であり、軍属じゃない。そのため、指名手配犯を過度に刺激したり、軍の作戦行動範囲をうろちょろするのは褒められた行為とは言えない。つうか、妨害をしちまう可能性もあるし、折角追い詰めたのに俺達が居て高い威力の魔法を使えない、みたいなことになりかねない」
「だからまず、学生服を脱がないこと。その上に鎧や防刃ベストを着ないこと。これから行うことの中で、軍人が私達を一目で学生と見抜けるようにしなければならないわ」
「というのを頭に入れろ。わかったな?」
頷く三人。今言葉を発したのは、最上級生の二人だ。大那・ヘレナとトールマン・シュテルンハイム。
この二人がこの場を仕切っているらしかった。
「今軍は、街中で発生する
「今の状況で、軍人以外が街中で魔法を使っていたら、それだけで怪しいと言えるわ。けど、刺激してしまえば逃がしてしまうかもしれないし、返り討ちにあって……人質だとか、余計な二次被害が起きかねない。よって私達のすべきは、できる限り遠方からこれを発見し、軍人に伝えること。皆がそれぞれに伝えてしまっては混乱が起きるだけだから、上級生に報告を入れて、それを報告する、という形にするのよ」
「んで、それに使うのがこの地図だ。街中に潜んでいる以上、どっかに拠点を持っていると考えられる。そこがどこなのかを突き止めたい」
改めて三人が地図を見れば、バツ印は路地裏や大きな建物の影など、一定の法則の場所に集中しているように見える。
……それを見て、凍城・ミアがハッと息を呑む。
「ここ……旅の商人を名乗る人が、露店をしていた場所、だと思います。ここも……」
「ほー、そりゃ……有益な情報かもしれねえな。そうか、旅商人は確かに……他、そういう旅商人を見たってやつがいたら教えてくれ。品出しの関係上、そういうのは拠点から近い場所でやっている可能性が高い!」
彼女に「幸運のお香」を齎したあの旅商人。
もし、あれが……今連邦を脅かしている者達のメンバーであるのなら。……あのお香も、なにか、害のあるものだったのかもしれない。
買い足さなくて良かったと、ミアは安堵の息を漏らす。
「っし、んじゃまた見回りいくか。上級生一人と下級生のユニット一つが好ましい。大那妹、そっちの下級生ユニットは任せていいか?」
「ええ、構いませんわ。一人足りませんけど、クラウスがいますし。お姉様、クラウスは借り受けたままでいいのですわよね」
「存分に使ってあげなさい」
「……はぁ。だと思いましたよ」
執事クラウス。大那・ジュリや大那・ヘレナの周囲で見かけることのある男性であるが、その出自を知る者は大那の人間以外いない。
……当然の顔をして士官学校にまで不法侵入を果たしている件については……誰かが咎めるのが先か、大那・ジュリが卒業するのが先か、である。
***
V・D連邦首都、ロノ・ハキテス。
ロノ・ホグリシア城に設置された、連邦軍司令室。
そこに彼はいた。
「……」
シュエン・K・ノイアー。
連邦軍元帥位にして参謀総長を務める、あらゆる意味でこの国のトップと言える男だ。
彼が手にしているのは、機密の判の押されたとある資料。
そこに書かれている内容は──。
「残っている記録、人々の記憶、その実力から考えて……この国で出生した子供であるとは考え難い、ね」
ハウル・ハーシェル。
五年前から連邦各所に出没し、各地の諸問題を解決しては、名乗ることなく姿を消し続けた……長らく謎の少年とされ続けてきた存在。
瀛毒に対する画期的な治療薬の開発で一躍有名人となり、一度は自らの薬局を持ったが……経営不振であった様子はないのに、店を畳み、気付けば新興財閥の養子となって士官学生になっていた。
生徒としては成績優秀、素行も非常に良好であり、功績も相俟って軍隊入りが心待ちにされている……が。
それはそれとして、連邦軍特殊情報局の調べによれば、あの少年が連邦人である可能性は非常に低い、ということだ。
だというのに、戸籍は連邦人になっている。そう連邦政府は記録している。……記録を書いた者が見つからないままに。
捏造。あの少年のすべてが嘘偽りである可能性は……非常に高いと言えた。
「どうすっかなァ。……あそこまで国に尽くしてくれているガキが……なんでまた」
そうなってくると、彼を養子にとった
突如として現れたこの新興財閥であるが、取引記録も各種手続きもしっかりしている。どれだけ調べても埃は出てこない。
ただ、いつ運貴名の代表がハウル・ハーシェルに接触し、養子に取るほど仲良くなったのか、についてはわからないままだ。まるで出会い頭に養子縁組を持ち出し、少年が飲んだ、というくらいには唐突。
けれど……もし
「となりゃ……心苦しくはあるが……」
事件解決の瞬間に、処断してしまうべきだ。
これほどの捏造能力を有する個人、ないしは組織が連邦に入り込んでいる、というのは由々しき事態である。利となっているうちに、
問題はS級パーティー『薔薇の棘』の存在か。
流石に他国で結成された冒険者パーティーまでを捏造することは難しいとシュエンは読んでいる。あれらは本当に居合わせただけの人材だ。ギルドの人間であるから手が出しづらいというのもあるが。
シュエンがさらっと見た感じ、『薔薇の棘』はハウル少年に入れ込んでいる、というように感じられた。生半可な流れ弾では守られてしまう可能性が高い。
ならば……厄ネタと厄ネタは、相殺させてしまうのがベストだ。
心苦しかろうと、なんだろうと。
そうでなければ守れないものがあるというのなら──いくらだって。
彼は、筆を取る──。
シュエンが本作戦の天幕へと戻ると、それなりの進展が報告されていた。
「民間人の助けがあって、奴らの拠点が割れた、ね。……やっぱ強い国だよ、連邦は」
「ですな。これより軍は同時に各拠点へと攻め込み、奴らを一網打尽にするつもりです。そうすれば……この
旧ドランシア軍の魔法使いたちを捕縛しさえすれば終わりだ。
ようやく安心できる……という顔になりかけた軍人たちの耳に、鋭い報告の声が突き刺さる。
「報告します! 見張りを立てていた敵拠点にて大規模な動きがあったもよう! 包囲網を突破し、
「なんっ……どういうことであるか。
「……マズいな。パウル、全隊に言って聞かせろ。絶対にあそこへ魔法を打ち込むな、と」
「まさか……」
「ああ、そのまさかだ」
理解したのだろう、『薔薇の棘』、ハウル少年も顔を厳しいものにしている。
「シュナイツファー少将!」
「はい。先行します」
天幕を出ていくシュナイツファー少将。その後ろ姿を固唾を飲んで見守る天幕の面々。
しばらくして、彼が戻ってくる。
「大変なことになりました。……確認できた限り、旧ドランシア軍と思しき魔法使い十数名が、
「立てこもり……。……非常食の保存庫を狙ったのは最初からそのつもりであったか」
「らしいな。闇の魔晶石には封印を施してあるからそうそうおかしなことにはならねえだろうが……」
「いえ、それが……恐らく闇属性の障壁……結界と呼んでいいかわからないものが
その言葉に全員で天幕を出て、遠方から鉄櫃宮を視認すれば。
正しく、半透明の真っ黒な球体が……そこに形成されていた。
「……確かに。あれと似たような……魔鉱石をコアとした結界を見たことがあるわ。あれよりも小さかったし、密度もそこまでではなかったけれど」
「少将さん、周囲の軍人をもっと下がらせて。住民も、あと二ブロックは避難させないと危険だ」
「そうだな。あの結界の作りは、内側から外側へ攻撃可能なものだろう。こちらからは何も見えんというのに、あちらからは精確な魔法が飛んでくる……という事態になりかねん」
「助言、ありがたい。中将、私は現場の指揮に入ります」
「ああ、任せた」
事態が動いていく。
天幕内部へと戻り、作戦会議へ移行する。
「魔晶石の位置が割れた理由がわからない。街中に散布された
「……内通者、ということであるか」
「身内を疑うのはつらいと思うけど、そう。各拠点に包囲網を敷いて、突入する、という作戦の直前にこれが決行されたあたり、結構な地位にいる可能性もある。……そして、それらの捜索が後回しでよくなるくらいには、魔晶石を奪われたのがマズいね」
ハウル・ハーシェルが先の結界を展開する。連邦全体を俯瞰する図を作り出し、鉄櫃宮の位置に赤いバツ印を入れた。
「元帥さん。闇の魔晶石の大きさは?」
「……長さ36cathl、重さ31atms、108,000クレリトの超特大サイズさ」
「な……そんなものが……」
「とんでもない代物じゃない!? そんな魔晶石、存在できるの!?」
「僕も信じられないけれど、元帥さんが嘘を吐く理由が無いからね。……つまり、少なく見積もって推定蓄積魔力は7,000,000Etrhだ。……最大威力で暴走した場合、エリスフィア帝国を地図から消し飛ばせるくらいの威力はあるね」
言葉が出ない、という様子の面々。
ハウル少年の描く結界内で、ロノ・ハキテスも、ドランシア領も、すべてを巻き込んで……魔王国、ガルズ王国、エリスフィア帝国、仙実国を穿つ巨円が作り出される。
「旧ドランシア軍が……躍起にならない可能性は、どれくらいあるかな」
「どういうことであるか」
「国を人質にしているようなものなんですよ、今。何か要求をしてきてもおかしくないのに、それをしていない。つまり敵の目的は、この国の破壊そのものである可能性が高い」
「……!」
「封印が厄介であればあるほど彼らは焦る。焦って……力技を行使しようとする。それが闇の魔晶石の暴走に繋がったら一発でアウトだ。そして……彼らが自身の命を厭わない精神状態にあるとしたら、それを最終手段としているやもしれない」
この状況がどれほど危険であるか、ここにいるすべての者が把握したことだろう。
その上で、諦めない者達もいる。
「結界は、どうかしら。あそこ全体を包む結界を作って、魔力の奔騰をその中だけで抑えれば」
「エリスフィア帝国を吹き飛ばすレベルの威力を封じ込められる結界術師がどこにいるんさね。【マギスケイオス】の『
「それこそ……異界へ飛ばす、というのは? 『
「どうやって作る。製法でも知っているのか、ゲーゼ」
「知らないけど……バリムケラスお兄ちゃんも、ハウルくんも、ローズだって、頭良いんだから、何か思いつくんじゃ」
「期待は嬉しいけど、『
冒険者が。
「中将、予想被害範囲にいる者達をできるかぎり避難させましょう。他国に対しても警告を出さなければ」
「そう、であるな。すぐに手配せよ。可能な限りを逃がせ」
軍人が。
ああ……けれど、中でもやはり
「……いや、そうだ。……『
「え、ええ。知っているわ。使うこともできる」
「それなら、あの障壁を……魔晶石を刺激することなく穴を開けられる。突入して最速で旧ドランシア軍を制圧すれば……仮に臨界状態になっていたとしても、僕が魔晶石を再封印できる」
「危険すぎる!!」
怒った声を出したのは、アンシュッツ大佐だった。
「ならん! それは、きみ、自ら命を投げ捨てると言っているようなものだぞ!」
「じゃああなたが守ってくれたらいい。旧ドランシア軍は結局正面切って連邦軍と戦うことのできなかった
「そういう問題ではない! いや、問答すら無駄だ。今はなんとしてでも逃げろ、少年。子供がいていい場所じゃない。負担をかけるとか、協力者だから仕方がないとか、ああ、私が間違っていた。私は……私の守りたかった子供の未来とは、そういうことではない!」
憤怒の表情を見せる大佐に。
……ハウル少年は、どこか、安心したような溜息を吐いて……
「っ!」
「元帥さんなら、倫理観を捨てて、作戦の成功率を取れるでしょ」
「……お前、それがどういう意味を持つか、わかっていて聞いてんだな?」
「元帥!」
「黙ってな、アンシュッツ」
口に溜まった生唾を飲むシュエン。
いつの間にかカラカラになっていた喉を通っていく唾液が……眼前の少年についてを、改めて認識させてくる。
「
「……おい、テメェ、ホントにガキか? 俺より年上の爺さんじゃああるまいな」
「ジジ臭い、って? 酷いな、最近誰からも言われるよ」
見抜かれている。すべて。
であれば、ここから先は小細工無しだ。
シュエンは……牙を剥くように笑う。
「精鋭部隊が必要だ。坊主と、まぁ、俺か?」
「元帥、それは流石に……」
「んだよパウル。こんなガキが命張って連邦救おうとしてんだぞ。ジジイが命賭けねえ理由がどこにある」
「そうか。ならばオレも行こう」
何がならば、だったのか。
フードを被った少年がシュエンに並ぶ。
「S級冒険者パーティー『薔薇の棘』は今日で解散でもいい。世話になったな、ゲーゼ、ローズ」
「なーに馬鹿言ってんだい。アタシも行くよ。どうせ逃げたってどうにもならない距離だしね」
「『付与式結界道』を使うのは私なんだし、そこまで近いとどうせ逃げられないわ。だから、『薔薇の棘』はそのまま参加ってことで」
黒髪の少女が。痣のある少女が。
「……揃いも揃って、馬鹿ばかりなのか?」
「オウ言うじゃねえか大佐のクセに」
「元帥にあがるためにはバカにならないといけないのであれば、私は万年大佐で構いません。……愛する息子と妻に別れを告げてきます。勝手に行かないように!」
怒りが抑えられない、という表情で天幕を出ていくアンシュッツ大佐。
他、今なお前線に出ることのある軍人たちは皆、自身の武器のメンテナンスをしていく。
「臨界状態にあっても僕が止める、って言ったつもりだったんですけど、なんで皆さん死にに行くみたいな話してるんですか?」
「……ほう。敵地に少数精鋭で入り込み、魔晶石を止める。そこに犠牲が欠片も出ないと、そう思うのであるか?」
「当然じゃないですか。ローズさんもいますし、僕もいます。僕は薬剤師ですけど、治癒魔法は使えるんですよ。──死人なんか出すわけがない」
「確かにねぇ。腕の一本や二本なら縫い付けてでも治してやるから、覚悟しときな」
──無論。シュエンとて、『最後の保険』くらいは用意してあるが。
それはおくびにも出さず、そうして……作戦決行の時間となった。
ひと気が無くなった街中。その奥に鎮座する漆黒の球体を前に、少女が手を翳す。
「いくわよ。──『
球体に、人一人が通れるくらいの穴が開く。
「な──」
「声を出すな」
最も近い場所で見張りを行っていた者の顔がフードの少年により握り潰され、捨てられた。
続々と障壁入りするV・D軍。予め決めていた通り、正門組と裏門組、外壁侵入組に分かれ、突入していく。
作戦名『
決死の作戦は、音もなく始まったのである。