序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

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53.盤石の意志

 ロストランド、と呼ばれている地帯がある。

 ここは正確には国ではなく、どの国も権利を主張していない無主地だ。西をヴァグス公国に、北を明郷神権王政国、東をアパム多民族協約国に囲まれていて、戦争的価値でいえば非常に高い資源となり得る場所……であるのだが、誰も欲しがらない。どこも権利を主張しない。

 その理由は、非常に簡単である。

 小さな湾に面しているとはいえ、ほとんど内陸にあるにも関わらず、悪天候が通常の天気。濃い霧が出て、気が付けば方角を見失っていて、あと一歩踏み出していたら崖だった、ということがザラなほどにでこぼこした地形。

 大気中の無主魔力がこれっぽっちも存在せず、魔力に依存する魔物・植物が育たない悪地でありながら、ゴーストだけは常に生者を探して飛び回っているリスクリターンの見合わなさ。

 希少な魔鉱石が見つかるわけでもないし、ここでしか採れない何かがある、というわけでもない。だというのにゴーストの質は非常に高く、力試しと称してロストランドへ入っていったA級冒険者たちが、後日遺骸となって見つかった、という話はザラにある。

 秘境である。何の旨味もない、秘境。それがロストランドという場所であった。

 

「つまりぃー、これは流刑ってわけッスよ。ああ悲しいなぁ、私とパイセン、ヨハンナさんという人材価値がお上にはわからないかぁ~」

「わかっているから調査隊を組んだのだろう。メトン、そこ気を付けろ。地割れが起きている」

「うひゃ……。これ深さ何athlくらいッスかね」

「さてな。ロストランドの地割れに落ちると、永遠に落ち続ける、などという噂もあるが」

 

 そんなロストランドを渡り行く集団があった。

 ジェネスキャメルという背中にコブを持つ魔物に荷物を載せて歩く、三人の男女。

 ハインケル・"エイバス"・リガード。第五代魔王マグヴァル・テンタットラの懐刀とも呼ばれていた魔族であり、伐開の魔族でもある超エリートの青年だ。

 彼の隣をぶつくさ文句を言いながら歩くは少女メトン・"ゼヌジオ"・ナルツォニソラ。猫の魔族の中で、最も素早き者に与えられる勲章『パスト』を持つ、魔王国においても上から数えた方が早い戦闘力を持つ魔族。

 そんな二人の前を地図を見ながら歩いている女性はヨハンナ・"クリムバス"・ドルフィングラス。地質学と生物学、考古学などにおいて、それぞれの分野でスペシャリストになった、というとんでもない功績の持ち主。根っからの学者ではあるが、戦闘力も低くはない……彼女もまたエリートと呼ばれる存在である。

 

「地図によると……あ、あそこです! あそこの、左側が抉れている山! あそこに現地協力者がいるそうです!」

「……現地協力者、ねえ。どう思います、パイセン。なんでロストランドに現地協力者なんてものがいるのか、について」

「知らん。魔王様がいると言っていたからいるのだろう。何をやらかして隠れざるを得なくなったかは知らんがな」

「あーやっぱ、そういう考えスか」

 

 ロストランドはその土地の性質上、隠れ住むには適している。なんせどの国からも追手が来ない。追手の向かう選択肢にロストランドが無い。

 否、隠れ住むに適しているわけではない。隠れるのに適しているだけだ。なんせ──。

 

「ん、霧が晴れ──……は?」

 

 紫輝の光を遮るほどの濃い霧が晴れていく。ただしそれは、風が吹いたからとか、温かくなったから、とかではなく。

 三人の頭上にぬぅ、と現れるは……雷鳴のような音で喉を鳴らす、半透明の巨体。ただそれに、押しのけられたから、という理由で霧が退いただけ。

 

「竜……の、ゴースト!?」

「メトン、ヨハンナをジェネスキャメルに近付けろ。隠蔽結界によりやり過ごす」

「ッス!」

 

 応答と行動は一緒だ。返事の音が響き切る頃にはヨハンナを担いだメトンがジェネスキャメルの隣にいて。

 ハインケルの顔の左半分を覆う樹木。そこに埋め込まれた目が閉じられると同時、音もなく結界が形成される。その結界は瞬く間に周囲と同化し、魔力の気配すら漏れなくなった。

 

 竜のゴースト。それはきょろきょろとあたりを見回して……また音もなく去っていく。竜というだけでも厄介なのに、そこに非実体が加われば最悪だ。事を構えずに済んで良かったと安堵の溜め息を吐いた三人の──眼前で。

 

「っしゃァ! 今日こそは倒したるぞレイスキングドラゴン!!」

 

 その頭部に、霊体鉱石(ゴースタイト)で作られた……銛のようなものがぶっ刺さった。

 ぶっ刺したのは、というか銛を投げたのは、遥か高空にいる鎧のようなものを纏った犬の魔族。

 何かを足場にして空中に留まっているらしく、そしてどういう仕組みか、銛がゴーストから外れ、彼の手元へと戻った。

 

「アルスノー、もうちょい左に頼む!」

 

 何かを叫ぶ犬の魔族。その彼に対し、霊体咆哮(シュリーキング)が浴びせられる……寸前で、結界がその咆哮を遮る。

 

「あ、パイセン関わんない方が良いと思うんスけど」

「馬鹿言え、恐らくアレと、もう数人が現地協力者だ。助けるべきだろう」

 

 ハインケルが遠隔で結界を張ったのだ。ここまでしても尚、竜のゴーストも犬の魔族もハインケルたちに気付いていない。彼の結界技術の高さが伺える。

 

「うお、なんだ結界? なんかわからんがありがてえ! よぉし、んじゃ──本日二射目、刺し貫く朝の光(パリガハズス)!」

 

 銛の投擲。その様子に目を剥くはメトンだ。

 なんせ今の投擲による初速は、メトンの最高速度を超えるものであったのだから。

 パリガハズス。大通りの朝日のように、全てを覆い隠し、鋭く刺し貫くは銛の一刺。その一撃は、竜のゴーストの頭部を()()()()()()()()……。

 そのまま、竜のゴーストは、ぬぅ、と霧靄の中へと消えていく。首が無いとか、関係ない様子であった。

 

「ああー! また逃げられたァ!」

 

 喚き立てる青年に……ハインケルは、溜息を吐いて目的地を見る。

 今回の調査が上手くいくことを願って。

 

 

 ハインケルたちが辿り着いた場所にあったのは、調査キャンプという名に相応しいこぢんまりとした居住区だった。

 

「初めまして。ハインケル・"エイバス"・リガードです。第五代魔王マグヴァル・テンタットラ様の勅命により、ロストランドで観測された170athl級の影についてを調査しに参りました」

「はじめまして。儂はガルモス・タナモスという、二百年ほどを生きておる、時計の魔族じゃ。この調査キャンプにおける長老をしておる。はるばる、危険地帯を乗り越えて、よくぞ参った。まずは身体を休めると良い」

「ありがとうございます」

 

 隠れ住まざるを得なかった荒くれもの、というのを想像していただけに、物腰柔らかな老人に拍子を抜かれながら、ハインケルたちは宛がわれたスペースへ荷物を下ろす。

 辺り一帯には薄い結界──恐らく刻印式──が張られているようで、ゴーストはここに近寄ってはこられない様子だった。

 

 そのまま自分たちのテントの設営にもかかる。ジェネスキャメルに乗せていた荷物の半分はそういうものだ。

 

「思ったよか普通の人達ッスね。凶悪犯罪者とかだと十年二十年を経たって血の臭いが消せないものスけど、そんなことはない様子で」

「ああ。魔王様が頼れと言ってくる相手だ。俺達が偏見を持ちすぎていただけなのかもしれない」

「聞きました、二人とも。長老さんは時計の魔族で、お食事を作っている方は仮面の魔族、調査物の研究をしている方が夢妄の魔族、この辺りの土地の管理をしている方が伐開の魔族だそうですよ」

「ええ……? 特殊魔族の見本市でもやってるんスか……?」

「俺以外の伐開の魔族に会うのは久方振りだな」

 

 特殊魔族。特殊個体魔族などという呼ばれ方をする、「遥か昔にいたとされる"動物"が元になっていない魔族たち」を差す呼称であり、王族や貴族と並んで高い潜在能力と特異な能力を持っていることが特徴に挙げられる。

 ただし、ヨハンナの興奮はそれだけの話ではなかったらしく。

 

「そして……武具や防具を作っている方は、な、なんと、『涅月の血属(ノクスルーナ・ブラッド)』らしくて!」

「本気で言ってるッスか? 実物見たことないんスけど」

「ほう。一生をかけても出会える可能性は無いに等しいとされている純血種か。ここの調査が最重要事項であるが、ここの者たちと話すだけでも様々な成果が得られそうだな」

 

 そんな風に盛り上がっている三人のもとへ近付いてくる影があった。

 

「よ! お前さんらだろ、さっき手伝ってくれたの」

 

 犬の魔族の青年である。彼の後ろには、弓を持った栗鼠の魔族の女性がいる。

 

「ああ。ハインケルという。マグヴァル・テンタットラ様の勅命でここの調査に来た」

「俺はデッラッダっつーんだ。よろしくな!」

「え。……犬の魔族でデッラッダ、って……闘技王デッラッダ……ッスか?」

「ちょ、うわ、嬉し恥ずかしなんだが!? そんな昔の名前よく知ってたな! 猫の嬢ちゃん、名前は?」

「メトン、ッスけど。あ、彼女さん睨まないで。そういう気欠片も無いんで」

「に、睨んでいるわけじゃなく! ご、ごめんなさい、わたし、遠視で……あと彼女ではないです……」

「こいつの名前はアルスノー。アルスノー・レーナターリヤ。姓の方なら聞いたことあるんじゃないか。俺の二つ名を知ってんなら」

「あ、知ってるッス! 王弓レーナターリヤッスよね。15kathl先にいるマーダーカリシダエすら矢で仕留められるっていう、弓兵界の伝説ッスよね?」

「おう、それそれ。ちなみに15じゃなく20な。な、アルスノー!」

「恥ずかしいからやめてよ、もう……」

 

 大盛り上がりであるが、ハインケルとヨハンナはついていけていない。

 ただ、闘技という言葉から連想されるのは、旧都ディフォニアにある『国営闘技場』だ。紫輝歴から続く長い歴史を持つ闘技場であり、闘士たちがそこで日々互いの強さを比べ合っているという。

 犬の魔族や猫の魔族、熊の魔族などが主な参加者・観客であるため、伐開の魔族であるハインケル、蝙蝠の魔族であるヨハンナには馴染みの無い文化であった。

 

 話がはずんでいるところを遮るのも悪いため、ハインケルとヨハンナはこそこそとキャンプを準備する。

 設営が終わる頃にはようやく話の種も尽きたようで、事態に気付いたメトンが彼女には珍しく平謝りする、といった珍事も起きたが、到着一日目はそのまま何事もなく夜になり、食事が出されることになる。

 

「……美味いな」

 

 調査キャンプの皆で囲む食事。ロストランドという悪環境である以上、味がどれほど劣悪であっても、今後の関係性を考えれば美味いと言った方が良いだろう、というような打算を突き抜けて感じる美味。

 これならば魔王国内で食べたとしても同じ感想が出るし、ストレイルも出せる。ハインケルの感想はそんなところだった。

 

「ホントっスね……美味しい。元気の出る味ッス」

「けど、これお肉ですか? なんの、というのは聞いても良いのでしょうか」

 

 ヨハンナが問いを掛けたのは、一見して魔族であるとわからない女性。仮面の魔族とはそういうものである、というのを知らなければ、人族かとも疑ってしまうほど魔族の気配が無い。

 

「モリスデル。ロストランド固有種の、数少ない生身を持つ魔物よ」

「メトンの方は、狩りとか興味あるか? あるなら今度連れていってやるよ。自分が食ってるものの正体くらい知っておきたいだろ?」

「ロストランドに固有種がいるんスか? 山や河川で遮られているわけでもない土地に、どうして……」

「魔紋岩地帯っぽいですからねー、この辺りは。崩れやすく風化しやすい土壌には特有の種が現れるんですよ。デッラッダさん、その狩り、地質調査についていくことって可能ですか?」

「勿論さ。自分の身が自分で守れるなら誰だって大歓迎だよ」

 

 ハインケルたちはまだロストランドについてを何も知らない。

 先達に学ぶ必要がある。これでもか、というほどに。

 

 にしても、と。

 ハインケルはその少年をちらっと見る。

 仮面の魔族と同じく、ぱっと見、魔族であるとはわからない姿。真っ黒な髪と真っ黒な瞳。尖った耳が、一応、人族との境界線か。

 

「気になるのかい、ボクのことが。お兄さん」

「む。……すまない、気に障ったか」

「いやいや、慣れているよ、そういう目で見られることは。『涅月の血属(ノクスルーナ・ブラッド)』だ、なんせ。珍しいを通り越して珍獣のそれと同じだろうからね、認識は」

 

 少し特徴的な訛りのある喋り方だった。地方の判別できない、かなり田舎だろう場所の訛り。

 人数の少ない魔族であれば、そういうこともあるのだろうと、ハインケルは勝手に結論付ける。

 

「確か、武器を作っているのだったか」

「そうだよ。ああそうだ、明日にでも顔を出してよ。作ってあげるからさ、ロストランドで生きていくための装備を。サイズ、測りたいんだ」

「それは助かる。明日、赴かせてもらおう」

 

 住民たちと交流を図るハインケルらの様子を、ニコニコと眺めるは長老タナモス。

 こうして一日目の夜は過ぎていった。

 

 

 さて、翌日である。

 ロビンという名であるらしい『涅月の血属(ノクスルーナ・ブラッド)』の少年の武具屋に赴き、サイズを測ってもらっている間、三人はここへ来た目的を再確認することにした。

 

「ロストランドで確認された、170athl級の巨影。明郷神権王政国との空中輸送交易時に目視されたもので、空泳船の影ではないことが確認されたこと、一人の見間違いではなくその場にいた全員が見ていることなどから、俺達はこれの正体を突き止めるためにここへ来た」

「見間違いであってほしいッスけどねえ。ああでもそれだと私達が帰れないスか」

「ロストランドはそこまで広くないですから、くまなく探して、そんな影は存在し得ない、って結論付けてしまえば帰れますけど……多分見間違いではないですよ。さっき巨大な足跡のようなものがありましたし」

「だとして、170athl級というのは生物としてあり得るんスか? そもそも」

 

 たとえば、ハインケルの身長が1.05athlである。伐開の魔族であることを加味すれば平均的な身長であるが、0.87athlしかないメトンからすれば結構な身長だ。

 それの、約162倍。メトンが見上げて首が痛くなる高さの図体を持っている。いや、そんな生物が果たして存在し得るのか。

 

「陸上魔物で最大のものは、紫輝歴110年に発生したアフト・マガナですね。全長76.2athlの超巨大ワーム。人族の国をまるまる一つ飲み込んだあと、自重に耐えきれずに千切れ、死したそうです」

「でかすぎでしょ……。けどオツムはダメダメなんスね」

「海中生物で最大のものは、紫輝歴402年から499年の間に亘って存在したとされるデプス・ロイヤル。魔族洋にあった、船乗りたちの間では背骨島の愛称で親しまれていた、観光スポットでもあった岩礁が、一匹の魔物の剣状背骨突起物であった、というのは有名な話です。これの全長は92athl」

「詳細な記録が残っている割に、死骸などが見つかっていないアレか。しかしヨハンナ、お前が言うということは、本当にいた生物なのだな」

「はい。後で説明しますが、証拠がいくつかあって。……そして、空中最大はやはり竜ですね。紫輝歴770年に発生した災厄竜ユラン。全長62.9athlの超巨大個体です。前者二つに比べると劣りますが、飛行生物であると考えるととんでもない脅威であると言えるでしょう」

 

 頭の痛くなる数字ばかり並んでいるが、本題の目的はこれらよりも大きい。

 

「ユランに関しては、災厄の比喩だとしている学者も多かったがな。あれも死体は見つかっていないのだろう?」

「はい。文献もほとんどが消失しています。ユランが食べ尽くしてしまったせいだ、とする説が多くありますが、本当に存在したのかは正直わかりません。これを除外すると、灰雨竜アルティマでしょうね。全長43.2athlの、これも巨体の竜です」

「……正直10athl超えたあたりからどーやって倒せばいいのかわかんないんスけど」

「別に、デカいだけで生物であることに変わりはないだろう。どこかで脈打つ心臓を突き刺せば終わりだ」

 

 総じて言えることがあるとすれば──この調査が早く終わることなど無いだろう、ということだ。

 巨影の討伐こそ任務には含まれていないが、逃げ出すにも一苦労だろう。

 

 そうやって、これからの予定についてをあーでもないこーでもないと三人が話していると、サイズが測り終わったのだろう、ロビン少年が何かを持って近付いてくる。

 

「終わったかい、お話は」

「いや、まだだが、用向きがあるのなら聞こう」

「とりあえず簡易のものだけど用意できたから、武器。嬉しいな、使ってくれると」

 

 言って彼が取り出すは、ナイフと杖二本。

 

「お、ありがたいッスね。……なんかの骨で作ったナイフッスか? ひゃあ軽い……割に、切れ味が、うわ」

 

 早速ナイフを手に取り、転がっていた石を両断するメトン。

 それは破砕の音すら漏らさずに斬れる。あり得ないことだ。

 

「この杖は……結界系の魔力効率を上げているのか。……ほう。手に……馴染むな」

「長いからね、伐開の魔族とは付き合いが。知っているよ、馴染む材質、君達の手に。許してくれるかな、僕のオリジナルだけど、反対にお姉さんのは」

「いえいえ、とっても使いやすそうな杖で……しかもこれ、刻印が刻まれていますよね。魔法の威力向上もそうですけど、『意識分散』や『隠密』まで!」

「命取りだからね、露見するのは、近接戦闘ができない魔族にとって自分の位置が」

 

 それと、と。

 彼がポケットから取り出すは、簡素な耳飾り。透明な鉱石が括りつけられているものだ。

 

「模倣物だよ、通信水晶の、音の魔鉱石で作ったんだ」

「え、すごくないスかそれ。通信水晶って、魔王様が使うやつッスよね。それの小型版って……普通に魔王国にも欲しい技術ッスけど」

「それは難しいかも、成り立たないから、一切無い特殊な環境でしか、大気中に魔力が、ロストランドの」

「ああ……国内で使ったら雑音だらけになりそうだな」

「作るから、防具は今から。大人しくしておいて、今日のところは」

「ありがとうございます、ロビンくん」

 

 成程、ロストランドで生きていくための装備とはこういうことか、というのを思い知らされる。

 そして……ここまでの装備が無ければ、太刀打ちできない脅威が潜んでいる、ということだ。

 

「忠告をありがたく受け取ろう。……そうだな、各自解散して情報収集の日にするか。キャンプの結界範囲からは出ないよう注意しろ」

「はいッス! んじゃ私はデッラッダさんたちに話聞いてくるッスね」

「それなら私は、昨日お話できなかった方たちのところへ行ってきます」

 

 ……こうして進んでいく。

 ロストランド調査隊……ハインケルの人生で、最も苦しく、最もやりがいのある仕事だった、と彼の語る挑戦が、今始まろうとしていた。

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