序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい 作:ブ雨堰ド
ファウンタウンという場所、らしい。
何の話かって、ここ……なんかあった位相結界に足を踏み入れてみたら、結構でっかい街、っていうか国があったって話ね。
アダンの時に
どうやら巨大な魔晶石を核に発展した街らしく、住民は精霊とハーフ精霊、そして極少数のハーフリング族しかいないらしい。
それが常昼の国、ファウンタウン。
以前、魔鉱石というものについて軽くまとめたと思う。
魔物の体内で固形化した組織などに魔力が宿り、それが様々な性質を有することで、魔物にもその力が付与される。その固形化した組織こそが魔鉱石であると。
そして、魔物を通すことなく魔力を蓄えたものは、魔晶石になると。
どうやらそれは、正しかったけど、足りなかったらしい。
「魔力というのは、高圧環境下に置かれると、このように結晶化します」
教師の精霊の手元に発生した、竜の翼に風穴を開けられそうな魔力塊。それが超圧縮され……結晶化する。
散らばっていた魔力素が圧力の壁に当たって偶然整列したところから、みるみるうちに結晶へと。
そう、自然界に生成される魔晶石は結局塵やら魔物の死骸やら、何かしらを依代に成長しているものにすぎない。生物の体内で成長するか、洞窟や霊山といった自然物を生物に見立てて成長しているかの違いでしかないのである。
本当の魔晶石というのは、こうして、純然たる魔力の中、それが高圧環境下において魔力素自らが結晶化したものを言うのだと。
「せんせー、それちょーだい!」
「ぼくもぼくもー!」
「ダーメ。おやつの時間はまだでしょう? それに、これは先生の魔力だから、あんまり美味しくないのよ」
なんてほのぼの会話を聞きつつ、精霊界隈におけるブルーオーシャンとはなにかを考える。
ちなみに今の俺の肉体はハーフリング族だ。カズラ君のパーティーにいたハナカラ・リンヤン君を模倣している。魔力の質はそこまで変えなくていいっぽいので、腎臓までのコピーはしていない。肉体的にはアダンをマイナーチェンジした感じになるのかな。
正直こんな……精霊における幼児が習うような内容を聞いて「そうだったのか……」になっている俺が彼らの何を驚かせられるのか、って感じではあるんだが。
強いて言うなら、アダンの時に見極めた紫輝・涅月の魔力関連くらいか。
たとえばだけど、『王様』の言っていた『紫輝の愛し子』程じゃないのを除外すれば、大抵の生物は紫輝由来の魔力を使っている。
人間魔物虫竜問わず、だ。紫輝と対応する云々が無いって前に考察したけど、どっちかというと当たり前すぎて取り立てて無いって感じだったんだろうな。
そんな中で、たとえばアルジオ君とかリュオンとかはこの星……大地の魔力を使っている。いわゆる英雄って呼ばれているやつらだな。カズラ君は魔晶石加工ありきだから除外。
意外なところでいうとトムさんとかオーリア(仮)、ジュリアちゃんも大地由来だ。トムさんがどうかはわからないけど、人族の王族・貴族は大地由来、ということはあるのかもしれない。マルガナレちゃんは……アリエッタ家はただの名家だし、これには含まれない。
逆に魔族の王族・貴族・特殊個体魔族は全員涅月由来の魔力だ。書庫で見直したらそうだった。
これの意外処を出すと、連邦で出会った執事くん、ギルドマスターも涅月由来の魔力を持っている。俺に黒髪が多いのは除外な。髪色とか自由に変えられるし。
あとは、初代「──ですよね?」ことフィノ・ルンテーニくん、リチャード・スミスも若干涅月由来って感じがあった。大部分は紫輝なのに。……だから、アレクと同系統なんじゃないかな。事情は違うだろうけど。あとトラッドも入るか。
そういう視点で見ると、ここファウンタウンにある魔力はほぼほぼ紫輝由来だ。
世界を流れる魔力も基本紫輝由来だからさもありなんなんだけど、時折涅月由来……というか、涅月由来の魔力が混じっている精霊がいる。
「誰だ……なんだよ、落ちこぼれを笑いにきたのかよ」
「そう見える?」
「……おまえも、居場所が無いのか。……なら、そこにいてもいいけどさ」
たとえばこの子。全身の基本カラーは青っぽいんだけど、毛や爪なんかの末端に黒が出ている。
主属性は水、副属性が風、だから闇要素は欠片もないんだけど、黒い。闇属性の精霊の黒はダークネイビーって感じで、ちょっと青いから、別物であるとわかる。
こういう子には涅月由来の魔力が混じってしまっている。どうして混じってしまったのかはわからないが、多分これを取り除いてやれば、この子は落ちこぼれではなくなる。
涅月と紫輝の魔力は互いを嫌い合う。決して混ざろうともしない。反発こそしないんだけど、磁石の同極みたいに互いを弾き合うんだ。
ああ、磁石で思い出したけど、この世界磁力が無いっぽいね。東西南北はあるくせに方位磁石がない。
だから電力系統の技術の一切が発展しない。まぁ電池くらいは作られるかもしらんが、そこから先が無い。……じゃあ光はなんなんだよ、って話になるんだけど、ここで『博士の博士』の時にした「魔力は光を発する」という話が生きてくる。もう少し言うと、「そもそも魔力は磁力の代替である」という可能性が高いと思う。
ざっと測ってみた感じだと、この世界に太陽風やら放射線やらというものが無いっぽいんだよな。だからこれも『博士の博士』の時に話した話、「光の魔鉱石から本当に紫外線レベルの光が出ていたら目が潰れているだろうから、そういう振る舞いをするものが出ている」が関連してくるんだけど、多分魔力波も超高周波になればエックス線やガンマ線みたいな振る舞いはするけれど、人体に害はないんじゃないかな、って。
そういう意味では魔力を電力に見立てた技術は発展するだろう。それこそ
ちなみに雷君は磁力関係ないので普通にいる。というか電場はあるからな特になんでもなく。
……話が逸れすぎた。
で、そう。涅月と紫輝の魔力は互いに混じり合わないので、体内に双方の魔力があると、上手く魔力を練り上げることができないんだ。
ハーフ魔族やクォーター魔族というのは結構いるっぽいのに、『紫輝の愛し子』が中々現れないのは多分これが理由。自分の中で折り合いをつける術を見つけた子たちは、フィノくんやリチャードらのように特殊な戦闘スキルを獲得しているけれど、それができないとこの精霊みたいに腐るしかなくなる。
んでそのさらに先の扉を開いたのが『紫輝の愛し子』なんだろうな。前者は紫輝/涅月の魔力を
「ああいた! シュラウンくん、またこんなところに……あら? こっちの子は……」
「……んだよ。俺を笑い者にしにきたのかよ」
「そんなわけないでしょー? それに、そもそもそんなことする子いないってば。……で、キミ。こんなところでどうしたの? ハーフリング、よね? お母さんは?」
この子、シュラウン、って言うのか。
へー。……たかだか一字違いの縁だけど……袖振り合うも他生の縁さんがまた顔を出してきた感じか?
「いないよ。お父さんも、お母さんも、いない」
「そう……。おうちはどこにあるの?」
「無いよ。魔力結合崩壊にのまれて、きえちゃった」
ここファウンタウンは高圧環境下の魔力が魔晶石化してできたところに植物やら土やらがへばりついて形成された土地である。
土地の内部には隅々まで魔晶石の魔力が行き渡っているのだが、時折その結合が甘くなって、崩壊することがある。外縁部であればその頻度は高くなる。
「ルーティア先生、今のはなし、ぜんぶわすれろ。こいつ、俺の……弟だ。ハーフリングでもねえ。精霊だ。だから、俺と同じクラスに入れてくれ。家も、俺と同じだから」
「シュラウンくん、それは……」
「……誰にも必要とされない感覚は、俺がいちばんわかる。……いいだろ、おまえ、俺の弟だ。名前、なんていうんだ?」
あー、マズったな。良い子だった。
華麗に涅月由来の魔力を取り除いてのブルーオーシャン戦略で行こうとしたんだけど……これ断るのは流石に人じゃねーだろ。
「クィロー」
「そうか。じゃあおまえは今日から、クィロー・ゼンノーティだ。俺、シュラウン・ゼンノーティの弟だよ」
──霊質に干渉された?
……ん、なんだこの子。ただの精霊の少年じゃない、のか? 霊質の変化ができなくなった。強い力で固められている感じだ。
しかもゼンノーティ。……ナタリーの存在からしてゼンノーティ一族っていうのは魔族の一族だと思っていたけど……まさか精霊の一族なのか?
弟になれたのは……僥倖、か? ちょいと調べさせてもらうか。
「もう……そういうところ、尊敬するけれど。……お母さんには、自分で説明できるのね?」
「ああ。できる。兄は、弟を守るんだ」
さぁて突然のゼンノーティだが、鬼が出るか蛇が出るか……。
大変ためになった授業を終え、シュラウン君と共に帰宅する。
帰る先は……とても一族が住んでいるとは思えない、樹上集合住宅。
「かえりみち、覚えたか? 覚えてなかったら、何回でもいっしょに帰ってやるからな」
「……うん。お願い、お兄ちゃん」
霊質を見る。……目立った霊質の住民無し。「大怪盗」とか「死体アーティスト」はやっぱり特異点だよあのアパート。
ただ……いや精霊だから当たり前なんだけど、とんでもねー魔力の塊だ。この集合住宅だけで先日の闇の魔晶石に匹敵するレベルのものがあるぞ。
やっぱ精霊はやべーんだなって。
巨大な樹の上にあるツリーハウスが集合住宅になっている感じで、ゼンノーティ家は集合住宅を正面から見た時の一番左側三階。
そう、ゼンノーティ家。……多分というかほぼ確実に、他の部屋は全然別の精霊一家っぽい。
一族じゃない……とはいえ、ここが本流だとは思うんだけどな。だって精霊って他の種族から生まれないし。
木製の扉が開く。……今ほぼ無意識の魔力干渉をしたな。感覚器官も日常生活も全部魔力かよえげつねー。
「あら、おかえり」
「……ただいま、母さん」
そして──うわー。感情ゼロ。霊質から繋がる感情の線が一切シュラウン君へ向いていない……とんでもない「おかえり」だ。
あ? けど……「心配」、「安心」、「疑念」が霊質に表出している。……もしかして感情表現下手子さんか?
「その子は、なにかしら」
「……今日から俺の弟にする」
「なんですって?」
「母さんがダメって言ったって、今回は聞かねえ! こいつは俺の弟だ!」
霊質は、「心配」「嬉しい」「感慨深い」「心配」「疑念」「不安」なんかが現れたり消えたり。
これだけ見ると普通のお母さんだけど……。
「何を言っているのかさっぱりだわ。あなたを育てるだけでも大変なのに、これ以上私達に負担をかけようっていうの?」
「……そうだ! いや、俺が……負担なら、俺は、この家を出ていったって……」
あーあーあーあー。どっちも言う気の無いこと言って、もー、素直じゃない奴らってなんでこう拗れるんだ。
はいはい、邪法だ外道だと後からどんだけ罵ってくださっても結構ですけどね。俺は俺の満足のためにこれをさせてもらいますよ!
──感情の線を無理矢理に繋げる。
「まぁ、そんなことを言うなん……て……? ……なにかしら」
「んだよ、俺は……。……? ……なんだこれ。……あったかい?」
あー精霊だから霊質の変化に敏感なんか?
知らん知らん! お互いの気持ち全部ダイレクトに伝われ!
「……ごめんなさい。言い過ぎたわ。……いつもいつも……言い過ぎているの」
「あ、いや、俺こそ……ちゃんとした説明もなしに……先生に、説明できるって……胸張ったのに」
「その……お話聞かせてくれるかしら、シュラウン。その子とは、どこで出会ったの?」
「学校で……魔力結合ほうかいで、親も、家も、無いって……」
「それで……どうして連れてきたの?」
「居場所が無いのは……寂しいって、俺は、わかるから。……なんか、こいつ見てると、俺の方が胸、痛くて……だから」
よーし。流石にこっから拗れるこたないだろ。
いや、父親も言葉にするの下手マンの可能性あるな。ゼンノーティなら自分の生き方変えられねえ不器用さんだろうし。
父親もやーっぱりそんな感じだったので、無理矢理繋げた。洗脳じゃないかとか。マインドコントロールですか、とか。
ええ、ええ、そうですよ。マインドコントロール自体はなんなら昔からやってたしねカノンの時とかさ!
偽物の幸せ家族でいいじゃない! とりあえず俺の満足で作りました幸せ家族!!
まぁ親御さん二人も見るからに異物混じってる息子をどう扱えばいいかわかんなかったっぽいんだよね。
精霊というのは基本「誰かから生まれる」っていうよりは、「発生する」ものらしい。
親となる精霊が二人……男女だろうが男男だろうが女女だろうが関係なく二人いて、その二人の愛情がピークになると新たな精霊がそこに発生する。これ多分それこそ感情の線の話な気がするけれど、シュラウン君と親の間には何も発生していないから、派生精霊とでは出来ない、みたいなのがあるのかもしれない。
そういう発生原因だから、普通は親が持っていない属性を持っては発生しないと。母親が水の精霊、父親が風の精霊なシュラウン君に、闇属性も涅月由来の魔力も混ざるはずが無いから……本当に自分たちの間で発生した精霊なのかすらわかんなくて、こういう感じになっていた、と。
シュラウン君側も同じ。確かにこの二人から派生して発生したはずなのに、自分が明らかに違うし、魔力も上手に練ることができないから、縁が感じ取れない。
そこで俺が感情の線を繋げたことで、シュラウン君が自分たちの全てを受け継いで発生している。ってことが伝わったみたいなのだ。感情の線が繋がって心が温かくなったから、っていうよりかは、その確信が持てたから愛情が注げるようになった、って感じ。シュラウン君側も同じね。
マインドコントロールというか詰まって栓になっていたものを取り除いたというか。
……ということがあって、俺は晴れてゼンノーティ家に迎え入れられた。
まぁ……なんだ。仲直りのきっかけになってくれた、っていう、あながち勘違いでもないものを俺に感じているらしく。
でも折角仲直りした家族に俺いるの流石に不純物すぎないか、ってことで、悲しみを発生させずに良い感じに雲隠れする方法を模索中。一番は家族が見つかったのケースだけど、精霊だからコンストラクトとか見抜いてくるだろうし、本当の家族なんていないし……っていう。
あとはまぁ彼……シュラウン君がファウンタウンを出ていく時に便乗する作戦だけど、精霊の寿命考えるとそれって数千年後の可能性あるよねって。確か『庭師』の……ニツァ=ハルティヤだったか。あの子が千歳だったはず……だから、五百年ちょいとかで旅に出てくれたら最高なんだけど。
それまでは、魔力についての勉強をするか。……「──ですよね?」どこ行ったって思われたとは思うのですが、精霊の幼等部向け授業レベル高すぎて「──ですよね?」の域に達せるとは思えないんだよホント。ブルーオーシャンは俺が入り込める隙があって初めて成立するものでさ。
ちなみにシュラウン君の涅月由来の魔力を取り出す件についてだけど……やっていいことなのかどうか、って部分で悩み中。それをしないと彼は一生落ちこぼれだけど、とりあえず親から愛されたんだし良くね? みたいなさ。精霊の中身弄るの割と怖いし。
あーでもあの子、レスベンスト冒険隊のユリウス君とか、多分あのクォーター精霊なんだよね。怪我治してる時に気付いたけど。あの感覚を思い出してやればできなくはない……けど、やっぱりうーん。人体実験みたいになっちゃって好かんしなー。
とかなんとかうだうだ考えながら、特別に通わせてもらえることになった精霊学校に通うこと五日目。
「クィロー、あれ……なんだ?」
「……なんだろうね。良いものには見えないけれど」
今日も今日とて勉強勉強! と意気込んでいた俺の目に映ったのは、ファウンタウン上空で発生しつつある……超巨大な結晶。
魔晶石じゃない。それよりももっと暴力的な地属性の魔力を感じる。
「みんな! ──よく聞いて。騒がずに、法霊院に行くのよ。ここは……危険だから」
教師が神妙な面持ちでそう言う。
精霊に危害を及ぼせる存在がいるとは思えんから、災厄的なものか?
そういえば今、外の暦で言うと、涅月歴770年なんだよな。予言者が災厄を予言した年であり、教戒院にいた頃はよく聞いた……災厄の年。
記録という記録がすべてここで一度断絶する。残っているのは壁画や石板レベルのものだけで、そこを隔てた前後の文明は崩壊する。
災厄竜ユラン。それがすべてを食い尽くすから……らしい。あれだけ各時代の存在が集まるエチェロエグズル教戒院でさえ、誰一人として目視したやつのいなかった災厄竜。何かの比喩なのではないかと言われていたそれだけど……。
結晶に光が蓄えられる。
あれは……ブレス? いつか見た魔竜のそれに、よく似ている。
「──安心せよ!!」
声が響き、巨大な結界が構築される。
声の主は……上空にいる、一人の老精霊。莫大な魔力が発されている。その他、多くの精霊が上空にいるな。
守る気か。
「クィロー! ここは危険だから」
「……お兄ちゃんは先に行ってて。……あ、そうだ。──これ、貰うよ」
「え?」
この後に起きそうなことを考え、あれだけ悩んでいたことを実行する。
シュラウン君の中にある涅月由来の魔力。それを抜き取ったのだ。魔力マニピュレータで魔晶石の中身弄るのと同じだからな要領は。
「な──」
「ルーティア先生! お兄ちゃんを、お願いします」
「どういう……。……その手にあるものは……なに? あなたは……何者なの?」
「さぁ。数秒前まで、シュラウン・ゼンノーティの弟だった子供ですよ。今は……そうだな。まぁ」
シュラウン君から奪った涅月の魔力を──のみ込む。
そして、体内でそれを解析し、全身に適用。これで『
ええい面倒臭い。未だ俺を縛ってきているゼンノーティの霊質も、すまんが
「……!」
「さしずめ、涅月の精霊……でしょうかね」
ハーフリングの肉体を削除し、俺自身に涅月の魔力を纏わせれば完成さ。この状態の俺に霊質なんぞ無い。
「ま──待て、待ってくれ、クィロー! おまえのおかげで、俺達家族は!」
「僕のせいで不幸になりかけていたんだよ、元お兄ちゃん。それを、元の形に戻したにすぎない。──忘れるといい。こんなことは、初めからあり得なかったのさ」
とだけ言って、飛び上がる。振り返らずに空へ。
いやだって、ブレスに対して張っているこの結界、あんまりにも脆くてさ。そのまま老精霊たち消し飛びそうだったから……お力添えをね。
あるいは彼らは、ここで死ぬべき定めにあったのやもしれないが──俺の目の前に躍り出たのが運の尽きさ。
ブレスによって砕け散る結界。その軌道上に体をねじ込んで、魔力塊をクラックする。
「!?」
「なんじゃ──子供!?」
「異質な力を感じます! 長老!!」
前も述べたけど、複雑な構造式の魔法を治癒魔法に変換できるんだから、純粋な暴力のブレスにそれが当てはめられないわけないんだよね。
問題があるとしたら量か。おいおいこのブレス、尽きるってことを知らないのか?
……大地由来の魔力、なんだな。この結晶の魔力は。
即ち災厄竜の魔力と捉えていいのかね。
「──援護せよ!! あの子供は味方だ! この状況、それ以外考えられまい!!」
「長老──確かにそうですね! 魔力の押し合いに参加します!」
「押し合いに勝てそうにない者は、魔法であの魔力を削れ!」
……ふん。
それが
さぁ──前はツンデレ紫輝ちゃんに触ってぶん殴られたからな。
お前はどうだよ、涅月。
「む、ぉ──なんじゃ、あの黒は──
「常昼の精霊界にあるまじき規模の……圧倒的な、夜の気配……!」
おお。紫輝と違って、全然じゃじゃ馬じゃない。むしろかなり協力的に感じる。意思があるのかは知らんけど。
はー、成程。でもこれなら確かに『
よーしこのまま押し返してや──ん?
「さらに二つの『災晶』を確認! 魔力矢が番えられています!!」
「三つです!! 反対方向にも『災晶』を確認!!」
……なんとしてでもこの地を消し去ってやる、みたいな意思を感じる。
これ、抵抗すればするほど強くなるタイプか?
だったら。
「お爺さん。精霊の、一番偉い精霊で合ってる?」
「む──そうじゃ! ぬ、いかん! よそ見をしていると、消されてしまう!」
「じゃあ、選んで。このままアレにここを砕かれて全員消し飛ばされるのと、精霊たち全員を外に逃がして外に希望を見出すの。どっちかに一つ」
「なんじゃと……それは」
「多少の時間は稼いであげる。──でも、永遠は無理。理解はできるよね?」
理解する。
これがゼンノーティ一族の始まりだろうな、と。
恐らくこの世界は……何度も何度も、これを繰り返している。……というより、この世界の時間とは、
──身体を薄く薄く分解し、それで以てファウンタウンを覆う。
常昼の街に夜を落とす。空間的な逃げ道は作りつつ、『災晶』というらしいこいつのブレスを通さないタマゴの殻のようなものを作り上げる。
これでもう、内側からも外側からも干渉できない。精霊たちが位相結界の外へ出る以外の道は封じさせてもらった。
「……知っているかい『災晶』くん。結界というのは、結界に使う文字を結界と認識することで、文字が乱されない限り、つまり半永久的に存在する結界を構築することができる」
四つから五つへ。五つから九つへ。九つから二十六へ。
よくわからん法則で増えていく『災晶』と、そこから放たれるブレスに──笑みを浮かべて。
「けど、もう一つ、結界を永遠に保たせる方法がある。それがなにか、わかるかい」
自らに直撃したブレスを……
「結界術師が永遠に生きればいいのさ。結界の側で、目的が果たされるまで、永遠に」
さぁ、我慢比べといこうじゃねえか、災厄竜さんよ。
俺は永遠だって待っていられるけど──あんたはどうだい?