序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

62 / 100
60.ED6 - 結末へ至るスリーカウント

 そこから五十年くらいが経った。

 精霊ってさ、肉体的疲労が無いんだよ。だから時間を上手く感じられなくて、時が過ぎ去っていく。

 そんでもってジャネーの法則があるから、多分老齢の精霊ほどそれをより強く感じるんだろうな。

 

 イリアちゃんたちもそれは変わらないらしく、年数を追うにつれ、俺の店へ訪れる頻度も減り、仲間を新しく作ることもなく……。

 

 これはどうなんだろうな……。いや俺は精霊の時間感覚にはならないから余計に感じることなのかもしれんけどさ……。

 望み薄というレベルではないような。

 

「ペイトランさん、コンフェイトちょーだい」

「はい、ひとり一袋でいいですか?」

「そ!」

 

 五十年を経て俺は、調整体屋……の傍らで、こういう事業も行っている。

 コンフェイト。金平糖をよりキャンディに近付けたもの……というかこっちが源流というか。精霊用なので、つまり魔力結晶体だ。括りとしては『災晶』と同様の物体である。規模を見るとかなーりちっちゃいけどね。

 これを精霊が摂取するとあら不思議。体内の魔力が勝手に整えられて、不要な魔力を大気中に排出することができるのです。

 ……という完全な効果だったら調整体屋は畳んで良かったんだけどね。これはもっと幼い精霊用のキャンディかなー。自分と世界の境界線が曖昧な幼い・若い精霊が舐めると、結晶の中にある極めて純粋な魔力が体内に少しだけ溢れ出て、結果最も適合していない魔力を少しだけ押し出す、みたいな効果。

 あくまで適合していないと思しき魔力を押し出すに過ぎないから、そこまで大した効果はつけられない。危ないからね、あんまり強いと。あと特におかしくない精霊が食べると自分の魔力が押し出されちゃってお腹空くと思う。

 

 これが気休めでしかないとわかっているから、常連さんはやっぱり整体の方をやっていくね。

 

 そんな……これからどーしっかなー、となっているタイミングだった。

 

「──『調整体屋』ペイトラン。優れた魔力操作技術と魔力感知術を用い、数多の精霊の悩みの種であった体内魔力循環問題を解決してきた魔力に関するスペシャリスト……。しかしその正体は、精霊におけるコアの隠匿、強化、再生といった本源操作に関する技術で二百余年前に名を馳せた、本源学会唯一の外界出身精霊ペイトラン=アスクリプス。──ですよね?」

 

 ん──!?

 なんだそのほぼ完璧な「──ですよね?」は!! いやでも主人公パーティ……って。

 

「ペイトランさん、そんなすごい人だったの……?」

「爺さん連中が足繁く通ってる整体師さんってだけじゃなかったんだな……」

 

 いるー!? じゃあ条件完璧だけどー!?

 でも突然すぎだよ心の準備ゼロだよー!

 

「──これはこれは、イリアさん。お久しぶりですね。……その様子ですと、二つの魔力の切り替えは上手くいっているようですね」

「無視した!? うそ!? どんな話をしても、"はい、そうしましょうか"、"はい、いいですよ"って返事をしてくれるペイトランさんが!?」

「ザイラ、単純に失礼だから、まず自己紹介しなよ」

 

 すまん心の準備ゼロすぎてスルーするしかなかった。君が悪いみたいになってごめんな俺が悪いんだ全部。

 

「確かに、不躾でしたね。私の名前はザイラ=マルスクリアス。初めまして、ペイトランさん。私は……あなたの……いえ、本源学会により発行されているコア修復バッジにより命を救われた一人なのです」

「ああ……そういうことでしたか。僕を学会に引き戻すつもりなのかと思って冷たくしてしまいましたが、勘違いだったようですね。申し訳ありません」

 

 俺が予め打ち立てていた偉業。それが『コア修復バッジ』である。『コア修復パッチ』ではない。

 バッジのように精霊の外皮……体表に貼り付けることで、コアの修復ができる、という精霊専用の薬みたいなもの。

 精霊……というか非実体系の魔物にも言えることなんだけど、彼らのコアは基本剥き出しである。これを砕かれるとどれほど高位の精霊でも死ぬ。そういわれるレベルの弱点。霊質なんかよりそっちの方が恥ずかしいんじゃなかろうかと思うんだけど、その辺は気にならんらしい。

 精霊の身体というのが超密度の魔力且つ超威力の魔法のようなもののため、普段は傷つけられることが無い……んだけど、自分と合わない魔力環境下に長くいたり、大気汚染──通称瘴気──のある場所なんかに居続けると、自身でも知らぬ間にコアがダメージを受けていることがある。

 これによる減衰からの死亡ってケースが精霊には多かったようで。特に旅をする精霊や人族の国にいる精霊はこうなりがちであったようで。

 非実体のコアがなんなのか、というのは既に何度も出てきている通りだ。つまり、魔鉱石や魔力結晶体などの魔力構造体全般。精霊のはぶっちゃけちっちゃい魔晶石と言っていいくらいではあるけど、そんな感じのもの。

 災厄くん……というか『災晶』くん相手にも言いましたけどね。さすがに亜種でも魔鉱石ならお手のモンっすよ。言った覚えないけど。

 それについての修復方法って実は今まで無かったんだって。魔力充填はできるけど、魔鉱石そのものを修復する、という行為は無理に近いことだとされていた。

 けど、武具加工とは別口の技術で、且つ俺が実際に立ち会わなくてもオートでできるものじゃね? って気付きを得て、バッジの形にして作り上げてみたらできちゃって。

 本源学会というのはこのコアに関してを研究している学会であり、元ファウンタウンから存在した歴史ある学会。そこに現れたる超新星って感じにこの『コア修復バッジ』を提唱したわけね。

 

 身に着けた精霊の魔力を検知し、その魔力に合わせて変質し、段々と精霊の体内に引き摺り込まれていって、コアを覆って足りない場所・異常のある箇所にとって代わる……未来で作る瀛毒の治療薬に似た効果を発揮する薬。

 この「代替する薬」をひっくるめて恵蓼剤と呼んでいる。これは恵蓼シールだけど。バッジだが??

 

「ペイトランさん、ザイラは私と同じなの。だからペイトランさんの施術を受けたら……あ、その、整体じゃ無い方を受けたら……彼女も二つの魔力を同時に扱えるようになるかな、って」

 

 ……女性だったのね。ありがとうね。

 いや、精霊はマジで雌雄わからんのよ。声も見た目も中性的だし、精霊たちも自身の雌雄とかあんまり気にしてないし。

 俺も別に常に霊質や魔力の質を見ている、ってわけでもないから余計にわからん。

 

「視ても?」

「はい。お願いします」

 

 最近はこうやって許可を取ってから霊質を見ることが多い。なんだか直接言われた気もするんだけど、記録に無いんだよな。「初対面で霊質を見るのやめたほうがいいです」みたいな言葉。書庫に記録されていない。

 けど、そういう風潮っぽかったから倣うことにした。郷に入っては郷に従ナントカ。

 

 さて、ザイラ=マルスクリアス(心変わり)ちゃんの中身は──……と。

 ……。

 

 ……んー。

 

「──孤灯胞(アクセル)

「!」

 

 突然魔法を使った俺に驚き、バックステップするザイラちゃんと……一切動かないイリアちゃんたち。

 その異常さに気付いたのだろう、ザイラちゃんが周囲を見渡せば……ファウンタウンの様々な場所にある魔力胞が一切の動きを見せていないことに気付くことができるだろう。

 否。これは、時が──止まっているのだ、と。

 

「嘘、時間を操る魔法……!?」

「そこまでのことはしていませんよ。これは夢妄の魔族が行う夢渡りに近い現象です。その証拠にほら、僕の目の前にはまだあなたがいます」

「……!」

 

 時間が止まっている、わけではない。

 加速した時間の中に自意識を持ってくる魔法である。走馬灯を強制的に引き起こす魔法でもいい。

 

「やめにしませんか、ザイラさん。復讐自体は別に否定しませんがね。無関係の精霊を巻き込んでの、というところがいただけません」

「な……」

「僕、こういうの基本止めずにスルーするんですけどね。愛憎にも悲喜こもごもにも興味が無いし、復讐を無意味だとも思わないし。知的生命体である以上恨みつらみは必ず発生し、愛情があるからこそ憎悪が発生する。そこに一切の疑念も憤怒もありません。ただ……やり方が流石に無差別すぎませんか」

 

 なんで霊質を見せたのかわからんレベルだ。

 こんなに抱えていて、よく腹の内を明かす気になったな。それともそこまでは読み取られない自信でもあったか? まぁ確かになんかプロテクトみたいなのあったけど、あんなんじゃ防げるモンも防げないよ。

 

「なにを……知ったような、口を……」

「──この地。新ファウンタウンと名乗っているこの国が位相結界の中から出てくる前からこの土地に住んでいた、先住民族。……なるほど、結構強引にここの権利を分捕ったんですねぇ法霊院は。……いえ、魔族排斥派の……ああ、あの声の大きい幼稚なお婆さんですか、主犯は。なるほど? であればトップと話をつけてみてはいかがでしょうか。あのお爺さん、結構融通利きますよ」

 

 ザイラ=マルスクリアス。

 中身を見てみれば、復讐だの自爆だの、全身の感情の線が全て憎悪色に染められていて、その矛先が「精霊の純種を守りましょう!」とかずっと言ってるお婆さんに向いていることがわかる。

 そこから土地に根付いた記録と過去を洗ってみれば、出るわ出るわの強引な契約。先住民だった精霊……特に、体内に涅月や大地の魔力を有するが故に、精霊の集う場所にいくと迷惑をかけてしまうと思って、自主的に身を引き、そういう精霊同士で集まっていた小さな村を……無理矢理退かして作られたのが、この新ファウンタウン、と。

 抗議の言葉はすべてその婆さんで止まっているし、婆さんからは「混じり物」だとか「穢れている」だとか「混種は純種にすべてを明け渡して当たり前です」とか……そりゃあ恨むわ、のオンパレード。

 

「折角拾った命を無駄にすることもないでしょう。連絡手段を持たないのであれば、僕が呼んできてあげてもいいですよ、あのお爺さんを」

「あの……お爺さん、って。さっきから言っているのは……まさか、精霊王ハニー=ロウのこと……じゃ、ありません、よね」

「いえ、その精霊のことですね。──悩む暇を与えるつもりはありません。()()()()()()()、あとはご自身で解決なさってください」

 

 ()()()()()していた爺さんを加速意識空間に引き摺り込む。

 のわーっ、とかヘンな声を出しているけれど、何かあったらすぐに駆け付けるつもりだっただろうアンタ。いつもはどこにでもいる爺さんの感じはしているが、とんでもない高位精霊──あの『庭師』というのが足元にも及ばないそれである、というのは知ってんだよ。

 

「……本当に精霊王を……干渉構築環境下に……!」

「いやホントじゃよ!? ペイトラン殿!? 儂、これでもすっごい精霊なんじゃけど!? 今どうやって儂の意識を剥がしてこんなところに引き摺り込んだんじゃ!?」

「いやだから、あとは当人同士で、って言ったでしょ。言ってないか。まぁいいや、今言いました。どうせお爺さんは彼女の立場もやろうとしていたこともわかっていたでしょうし、僕が止めずともご自身だけで対処できたのやもしれませんが──こういうのは早期解決が基本です。遅れたら遅れるほど話がこんがらがるので」

 

 無理矢理感情の線を繋げる、みたいなことはせんよ。あれは家族限定だから。

 あんたらは他人同士で、ちゃんと話し合って解決しな。

 

 

 ややあって。

 

「……わかった。それを……飲みます。……騒ぎを起こして、申し訳ありませんでした」

「いや、これは……儂の管理不足が招いたことじゃ。あ奴の処置も必ずするし、お主ら先住精霊の聖地は必ず正しい形で戻す。それまで……もう少しだけ、待ってはくれぬかの」

「はい。……それまでは、彼女らと……半分の者の立場で、世界を旅したいと思います」

 

 解決した。筆舌に尽くしがたい交渉があった。ここでは余白が足りないレベルの、涙なしには語れない話し合いがあったのだ。

 だから二人は納得している。そういうこと。

 

「ペイトランさん、……その、命ばかりか……未来まで救ってもらって、本当に、なんて言ったらいいか」

「ふふ、これに懲りたら、そう易々と霊質を見せないようにすることですね。僕のような者が他にもいたら、一瞬にして腹に抱えている全てが露見してしまいます。特に次、復讐でこの街を消し去ってやろうとする時には用心してください」

「……はい。そうですね」

「はい、そうですね!? な、何を言っておるんじゃ! あれで納得してくれたんじゃなかったのかの!? というかなんちゅーアドバイスをしとるんじゃペイトラン殿も! いやぶっちゃけ霊質を見た程度でそこまでの予知ができるのは儂かペイトラン殿クラスの精霊だけじゃから問題な……ある!? 見抜けなかったら困るの!?」

「魔法を解きますよ。意識とコアの同調の際に大きめの衝撃が来ますから、備えるように」

「無視と! 無視とまでするか! 精霊議会議員よりも話を聞かぬなこやつら!」

 

 なんだかカリアンを感じるんだよなこの爺さん。この世界全力ツッコミ系が少ないんだよな。何かやっても「すごい……!」の方にシフトしちゃうから、正しく実力を測れて、正しく常識との乖離を知っているやつが少ないっていうかさ。

 正直面白い。キャッキャ。

 ……真面目な話をすると、カリアンの姓は勿論父親ジョージ・ヴィスマルクから来ているもので……でも母方の姓を聞いた覚えがあんだよな。それがなんか、ちゃんと古代魔族語で意味のある単語になっていて、感心した覚えがあるから……ワンチャン精霊の血が入っている可能性はある。カリアンに。……にしちゃあ魔法苦手だったがアイツ。

 

 さて、魔法を解く。

 瞬間、バチッと……何かに弾かれたように仰け反るザイラちゃん。その背を支えるのはイリアちゃんだ。

 遠くの建物上で「ぬぐぉっ」っていう短い悲鳴が上がった気がするけど気のせいだと思う。

 

「だ……大丈夫? ザイラ」

「……ええ。大丈夫です。……あら?」

()()()で、体内魔力の区別をつけやすくなるような調整をしておきました。時間と共に混ざっていってしまいますが、反復練習の仕方はイリアさんから教えてもらってください」

 

 イリアちゃんが「おまけ、っていうかそれが本命だったんだけど……う、上手く伝えられていなかったのね。反省しないと……」という小さな小さな呟きにグッドラックをしておく。b。

 ま、余計な血が流れなくて良かったよ。つーかイリアちゃんたちが「テロリストを街中に手引きした者」にならんくてよかった。精霊は血を流さないだろ、というツッコミは受け付けない。

 

「それとこれ。紫輝と涅月以外の魔力や、瘴気などを体内に入れてしまった際などに舐めると、多少和らぎます。気休め程度ですが。冒険をするなら持っていっても良いと思いますよ」

「……ありがとうございます。何から何まで」

「へー。飴ってやつか。人族がたまに舐めてるのみたことあるけど、あんましうまそーじゃなかったんだよな」

「これは魔力結晶みたいね。なら、おいしいのかも?」

 

 何も知らんなら何も知らないままでいいさ。打ち明けるもなにも好きにしたらいい。

 ──俺は「──ですよね?」を食べて満足したんでな!

 

 というわけで、満足した俺さんがやることと言えば~?

 

 

 深夜。涅月は今日も黒々しく輝いて、夜闇をさらに黒く染め上げている。

 絶好の失踪日和、というヤツだ。

 

「──最後に聞かせてくれんかの、ペイトラン殿」

 

 ……何の痕跡も残さずに、違和感さえ覚えないように世界に溶け切って出てきたんだがな。

 流石、と。そう言っておこうか、精霊王?

 

「はい、いいですよ」

「アダン・ゼンノーティ。クィロー・ゼンノーティ。この両名の名に聞き覚えは?」

「ゼンノーティ、というファミリーネームかどうかは知りませんが、探検家アダンでしたら、魔族史に残る伝説の探検家ですね。クィローというのは、申し訳ありません。存じ上げませんが」

「そうかの。では、別の質問じゃ」

「はい」

 

 ……なんでアダンがゼンノーティになってんだ? クィローとなんかで関連付けられた? いやいや、五百年前の人族がなんでゼンノーティ姓なんだよ、ってツッコミは入らなかったのかよ。ゼンノーティ一家から始まったゼンノーティだろ?

 それとも……円環が故、か? ナタリーについての……。……いやそうか、俺が彼らを生かしたから……本来知らないはずの……。

 

「ペイトラン=アスクリプス。お主……なんじゃ? 何者、という表現すら生ぬるく感じるわい。なんじゃ、お主。ヒト……人族のことではなく、知的生命体を指す呼称としての、人間。お主はその枠に括られるための要件は全て満たしておる。じゃが、そうではない部分も多かろ?」

「かも、しれませんね」

「なんのためにファウンタウンに居った。なんのために精霊に紛れて居った。お主は何を目的にここで……精霊たちの体内循環を調整していた」

 

 なんのためって、

 そりゃ。

 

「大望のため、ですよ。ああけれど、その次の目的は、合流地点に導くため、かな。流されることしかできない漂流物を、少しだけ外側に押してあげる。それが僕の目的です」

 

 さ、話し過ぎだ。

 さよなら三角またきて四角とさせていただこう。

 

「三秒数えましょう。ハイ、3、2──1!」

 

 ゼロ。どろん。

 強い風が吹いて──次の瞬間、俺の姿はどこにもありませんでしたよ、つってな。

 じゃーなーファウンタウン! 色々あるだろうけど、のんびりやれよー!

 

***

 

「──そうして過去を、未来へ追いつかせるため、かの? まー円環の決定を無理に変えようとすれば、待ち受けるのはまた『災晶』じゃしの。それは……最も利口な手段かもしれぬ」

 

 残された老人が一人呟く。

 彼の名はハニー=ロウ。あるいは、またの名を。

 

「未来を過去に追いつかせないための、未必の皺寄せ。……ほっほっほ。人族の儂が『不死』を手に入れたように、儂も、永き時を正常に渡るための術に……時の魔法に手を掛けてみようかのぅ?」

 

 フラニー・ハニー・オーケストラ。

 自らを『肉体の己』と『精霊の己』へ分けることに成功した、現時点においてはただ一人の魔導士。

 

「……しっかし、無理して迷い家に巻き込まれた甲斐はあったのぅ。そして、迷い家であっても、災厄を乗り越えるための知恵は授けられなんだ、と。……それがわかったのは大きい。……が。これあとでトラッドの阿呆に"ほらね、私が言った通り"とか言われるヤツ……いや、儂まだこの時点じゃあやつと知り合いじゃないんじゃし、いっそのこと知り合わないのは手なんじゃないかの……?」

 

 何やら蛇足気味にぶつぶつ呟いて、キメ顔を台無しにしたハニー老。

 彼の頭に、一冊の本が突き刺さる。

 

「あ痛ァ!? せ、精霊の儂の頭に刺さる本とは!? ……というか文明リセット直後の今、ちゃんとした紙すらまだまだな時代に本とかオーパーツなものを送るでない阿呆ッタレめ! これは燃やしておくからの!! 折角気を付けている整合がめちゃくちゃになるじゃろうが!!」

 

 業火に包まれて炭となり、風に巻かれて飛んでいくソレを見送って。

 

 もう一度……大きなため息を吐いて。

 

「あと十年、か。……儂が出会うのは、『騒然』か、はたまた別の者か」

 

 あと十年で、あの組織を発足する。

 元来であれば最初のメンバーと奇跡的な出会いをし。

 元来であれば最初のメンバーと運命的に意気投合し。

 そうして作り上げるあの組織であるが……此度のメンバーは、果たして誰になるのか。

 

 世界の始点を無理矢理迷い家へ突っ込ませたことで引き起こされる歴史改変は──如何ほどになるのか。

 

「楽しみじゃのぅ……」

 

 満面の笑みで、老人はそう締め括った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。