序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

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69.山肌の白化粧

 しゃらん、しゃらんという音が出そうな身振り手振りでくるくる回りながら、黒い薔薇を口にくわえた優男が彼女の前に出た。

 紫がかった髪の彼女。そのまま『輝耀(きよう)の姫君』などというあだ名の付けられた彼女の……その手を勝手に取って、優男はさらに手の甲へキスをする。

 

「ハ・ジ・メ・マ・シ・テ! ボクはこの探検隊にてリィ・ダァを務めます、ディミトリ・クラウンと申しま──どぅふっ!?」

 

 芝居がかった様子で自己紹介をする優男、ディミトリの背中にとんでもない威力の蹴りが突き刺さる。

 蹴りを放ったのはフードを被った少女だ。

 

「申し訳ございません、おひめさま。この馬鹿は、わたしが掃き溜めにでもすてておきます。ご迷惑をおかけしました」

「あ、いえ……。王家の秘宝、『ルメンタルプリズンアイ』を見つけてくださる探検者の方々には、感謝しかありませんわ。……どうか、命を大切にして、皆さんで帰ってきてくださいね」

 

 慈悲深いお言葉だった。ガルズ王国が世界に誇る、美貌と思慮深さを併せ持つ『輝耀の姫君』は、これから探検に出る彼らトレジャーハンターたちにエールを送ってくださったのだ。

 フードを被った少女、そして彼女の後ろにいた髪の長い女と恰幅の良い大男もまた深々と頭を下げ……この場はお開きとなった。

 

 

 少し時間を置いて。

 

「ちょっとディミトリ。なんだいあのあっからさまなアピール。王家に取り入るつもりなのかい?」

「とんで・もない! あれはあの方の美しさに目を眩ませての衝動的な行動! ボクに他意はないよ、メリアート」

「ガッハッハッハ! まぁそう怒るなメリアート! ディミトリのおかげで王家のスタンスもある程度見えた。()()()()()()()()()()()()()ってのがな!」

 

 ここは秘宝管理協会。

 このガルズ王国における広大な砂漠から度々出土する秘宝を管理し、それらを探検者から買い取るためにある機構だ。

 基本は探検者……とりわけトレジャーハンターと呼ばれる者達が探し出してくる秘宝を買い取るためにある場所だが、此度はスポンサーにガルズ王国王家がついて、ある遺跡に存在する特定の秘宝を見つけ出してきてほしい、という依頼が入った。

 それが王家の秘宝『ルメンタルプリズンアイ』。紫輝歴800年頃に手掛けられたと言われている魔道具であるが、果たしてこれがどんなものであるのか、というのは誰も分からない。唯一王家が握っていた情報は、「起動するには取っ手を引っ張る必要のある白い箱」というもの。

 

 これが依頼に出されるや否や、とあるパーティが名乗りを上げた。

 それが彼ら、『深淵の瞳』である。

 基本ソロで活動するトレジャーハンターであるが、時折こうして徒党を組むことがある。彼らはそんなトレジャーハンターの内の一つだった。

 自称リーダー、ディミトリ・クラウン。言動とは裏腹になんでも卒なくこなす男で、ヘンにくねくねしたりしなければ、その美貌も相俟って引く手あまただっただろう優男。リーダーであると同時に斥候でもあり、戦闘時にはシーフとして遊撃を務める。

 他称リーダー、チュナイフ・ルミア。常にフードを被っている少女であるが、何かと敵を作りやすいディミトリを叱ったり、蹴飛ばしたり、殴って気絶させて場を穏便に進めたりと、この『深淵の瞳』を支えている。その小さな体躯に見合わぬ怪力の持ち主で、戦闘時にはインファイターとして前線を張る。

 頼れる俯瞰者、メリアート・ノンヴァ。長い茶髪と真っ青な瞳が特徴的な女性で、武器はクロスボウ。その性格からは意外に思うかもしれないが、ディミトリに対してこのメンバーでパーティを立ち上げようと提案したのは彼女なのだとか。

 心優しき盾役、ヒーサーアーサー・トメキリ。オーガ族としての怪力、そして卓越した盾の扱いによってパーティを守る大きな背中の男性。たとえ竜の一撃であろうと防いでみせると豪語している彼であるが、パーティの、特にメリアートには弱いらしく、いつも尻に敷かれている。

 

 以上が『深淵の瞳』のメンバーだ。

 王家の依頼を進んで請け負った者達。当初は「罠」だとか「危険因子を見つけるため」だとか言われていたこの依頼であるが、此度こうして王家の姫君が表に顔を出したことから、依頼の重要度はかなり高まったと言えるだろう。

 

「ディミトリ。今回のヤマ、もし舐めてかかっているのなら、早めに諦めた方が良い」

「おや、怖気づいたのかいルミア。大丈夫、任せ給え。このボク、紫天のディミトリ様にかかれば王家の秘宝の一つや二つや三つ四つ!! あっという間に手に入れられるサ!」

「一昨日は紫粉のディミトリじゃなかったかい?」

「ああ、酒場のカイーサに蛾の鱗粉って呼ばれて変えたんだとよ」

「……忠告はしたから。……明日、早いんでしょ。わたし、もう寝るから。おやすみ、メリアート、トメキリ」

 

 言うだけ言って宿泊部屋に帰っていってしまうルミア。

 そんな彼女にディミトリは肩を竦め──「改めて!」と大声を出す。

 

「明日は早いから、どれほどやりたくたってボクらの見送りはできないだろう! だから今日! ボクらの出発を祝い、宴を開こう!! なぁに安心したまえ、今日はボクの奢りというやつだ! ボクらの門出をどうしても祝いたい者は、ぜひ参加していってくれよ!!」

 

 一瞬にして喧騒に包まれる秘宝管理協会……というか併設されている酒場。

 

「ちょっと、そんな金あるのかいあんた」

「なぁに秘宝を見つければお釣りが出るくらいさ!」

「……ダメだこりゃ」

 

 卵が孵る前にひよこの数を数えるな──。

 まさにこの男のためにある言葉であった。

 

 

 翌日。

 皆が寝静まった頃、彼らはその遺跡に向けて出発した。

 

「ふぁぁ……。にしても、なんでこの時間帯なんだい。もう少し遅くたって王家は何も言わないだろうに」

「尾行者や監視者をわかりやすくするためサ。王家が出向いたことで、依頼の重要度は高まっている。となると、秘宝を横取りしようとする輩は絶対に現れる。トレジャーハンター、だからね。そういうのはボクらにつかず離れずついてくるものだけど、喧騒があるとその判別がし難い」

「……いつもそういうところだけ見せていればいいのに」

「何より皆が起きている時間に出立すると、ボクを心配したレ・ディたちが集まって人垣を作って、進むに進め無くなってしまうから・ンネ・ンネ……ンネ……!」

 

 ディミトリ・クラウン。

 彼は腐ってもリーダーなのだと。

 

 そうしてずんずか進んだ一行は、特になんの障害も無くそこ……ソノヴァキア遺跡に辿り着く。

 三百年が経った今でさえ、紫輝歴770年の災厄の爪痕を色濃く残すそこは、言葉にするのならば「砂に埋もれた宮殿」である。

 城か、屋敷か。とかく豪勢だったのだろうそれは、しかし、流砂に飲まれ、傾き、その半分以上を地中に隠していた。

 

 彼らが目指すは入口……ではなく、恐らく使用人の勝手口だったのだろう小さな扉。

 最近出土したその扉を開けば、未だ砂に埋もれていない、まっすぐな廊下が急な傾斜で待ち構えている。

 

「俺が先に行こう。棘山が待ち構えているやもしれないからな」

「頼むよヒーサーアーサー。けれど、危なかったらちゃんと言うんだよ。ボクが助けてあげるカ・ラ・ネ!」

「わかっている──行くぞ!」

 

 侵入する。

 ソノヴァキア遺跡──災厄前の古代ガルズ王国の首都だったと思われる場所。その施設の中へ。

 

 

 しばらくして。

 流砂が両脇を滝のように流れていくそこを、四人は歩いていた。

 人物の絵が天井と床にずらりと並べられている、奇妙な廊下だ。

 

「すっげぇなぁ。ここまで建物の形が残ってんのなんて、世界中を見渡してもガルズ王国くらいだろう?」

「ま、他国は災厄で全滅したってとこも珍しかないけど、ガルズ王国はなんとか王家を逃がして生き延びたって話だからね。これくらい残ってたって不思議じゃないさ」

「……それより、ディミトリ。そろそろ話して」

「うん?」

 

 周囲に一切興味が無いとばかりに少女が言う。ディミトリに問いがあった。

 

「ここではわたしたち以外誰も聞いていない。……どうしてこの依頼をうけたの。それも、あんなむりやり、割って入るようにして」

「ああ、そいや、ね。珍しいじゃないさ、あんたにしちゃ」

「ふむ。そうだな、理由か」

 

 しゃらんしゃらんとキラキラ(幻覚)を出しながら、くねくねしながらディミトリは答える。

 

「──アレはボクが作った魔道具だかラ……カ・ナ!!」

「まじめに答えて」

「ガッハッハッハ! お前に魔道具を作れる腕があるのなら、トレジャーハンターなんて割に合わない仕事をやめて、そっちで食っていった方が良いぞ!」

「諦めなよルミア。ディミトリが真面目に答えた試しなんか無いだろ」

 

 大きなため息を吐くルミア。メリアートの言う通りだった。

 けれど、どれほど突飛な行動であってもディミトリなりの筋の通った行動であることが多い。それを他者に知らせようとしないだけで。

 ルミアもメリアートもヒーサーアーサーも知っている。この男は他者が言うほど軽くはないし、自分で言うほど何も考えていないわけではないと。

 

「……それよりルミア、お客さんみたいだよ」

「──魔物! 遺跡の中に入り込んでいるなんて……!」

「遺跡の中はひんやりしているし、水の流れているところもある。魔物にとっちゃクソ暑い砂漠にいるより過ごしやすいんだろうさ」

 

 這い出てきたのは三十匹以上の蜘蛛の魔物。複眼はヒトの瞳がせめぎ合っているような形をしていて、生理的嫌悪感を掻き立てる。

 

「……鏖殺する」

「ガァーッハッハッハ! トレジャーハントに危険はつきもの! 魔物だってつきものさな!!」

「後方警戒と援護は任せな!」

「やれやれ、美しくない魔物たちだ。──掃除をしてあげなければ、ネ」

 

 探検者パーティ『深淵の瞳』。

 その最たる特記事項は──リーダーディミトリを中心としたチームワークにおいて、最強の二文字をほしいままにしているところ、だろう。

 

***

 

 というわけで、今回はおちゃらけナルシ優男で「──ですよね?」を狙う。

 こんにちは、ディミトリ・クラウンだよ。

 此度も予め偉業は打ち立てておいた。そしてこういうキャラクターだから、本気を出していなくとも「本当はそうだったのか……!」の際に「どうして今まで本気を出さなかったんだ?」になり難い。

 その上で今探しているのは王家の秘宝……というか説明聞く限り『博士』の時に作った『付与式結界道(バウンダリー・ロード)』、『博士の博士』の時に作った『展開式結界隧道(バウンダリートンネル・スフィア)』のどっちかっぽいよなーっていう。

 エリスフィア帝国で作ったものがなんでガルズ王国にあるのか、なんで秘宝なんぞになっているのか、ってのは知らないけど、古代魔族語で「非常用・設置式牢(ルメンタルプリズンアイ)」って名前だったし多分そうかなーって。

 

 別に悪用されるような構造じゃないんだけどさ、一応魔鉱石を使用した魔道具だから、なんかあると怖いよね、ってことでほとんど割り込みに近い形で他の探検者から依頼を奪って請け負った。紫輝歴800年に手掛けたってのは何の話カネ。

 これも自分の不始末ってヤツだネ。

 

 今は涅月歴70年。災厄から三百年を経て、人類が復興し始めた頃合い。

 災厄の爪痕というのは俺の想像以上に酷いもので、マージでここで歴史……っていうか文明がリセットされている。一時的にポストアポカリプスってるのだ、全世界。

 ガルズ王国は被害の少ない方だったようで、それでもほぼ潰走に近い形で全軍+王家が逃げ延びて、なんとか、って感じだったらしい。

 探検者というのはこういった事情のガルズ王国、及び各国で生まれた者達であり、基本はトレジャーハンターだけど、魔物退治を担ったりもする。……そう、つまり、恐らくこれが冒険者の源流だ。案外歴史は浅いってわけだな。

 

「ディミトリ、ごめん、一匹逃した!」

「問題ないサ──蜃速」

 

 ゆらりゆらゆら、複数の残影を作り出しながら、いつの間にか魔物のそばを通り過ぎているし、いつの間にか叩き切っている。

 マニーズアイスパイダー。そう呼ばれる魔物だ。

 

 今回はナルシ男なのでキメポーズも忘れない。自然界には存在しない黒薔薇を口に挟んでいるところもポイントだ! ちなみに毒があるので口が少しピリピリするし、そうでなくとも棘があるので唇がすぐに切れるぞ!

 

「ヒュウ、相変わらず空恐ろしいほど綺麗な切り口だね」

「ああ、申し訳ないメリアート! 美しすぎて惚れてしまうだなんて、ボクはなんて罪なオトコなんだ……」

「言ってないね」

「あんたみたいに綺麗になれたらね、か。……フ、安心するといい。ボクほどじゃないにしても、君だって綺麗だゼ☆」

「言ってないしイラっと来たからその顔面と股間のxxxxを矢で射てやろうか」

 

 かなりオーバーにナルシ君をしているけれど、それが不評であること以外は概ね好評だ。

 ま、メリアートとヒーサーアーサーは互いが互いに「イイ感じ」なので必要以上の惚れた腫れたの話はしないんだけどね。

 

「二人とも、じゃれつくのはそのくらいにして。……何かいる」

「みたいだなぁ。さがれ、俺の盾の後ろに」

 

 ルミアの言葉にそちらを剥けば、……確かに何かいるな。

 この感覚は、魔族か?

 

"夜に騒ぐ虫""肌を刺す寒気""山肌の白化粧""大通りの朝日"

「──刻印魔法!? クソ、──守銭奴(シールド)!!」

 

 ヒーサーアーサーの魔法により、盾に追加のマジックアーマーがついた──その直後、六文字-四単語の略式刻印魔法が俺達に襲い掛かる。 

 意味は貫通。その四乗。

 

「ルミア、前に出るよ。合わせておくれ」

「わかった」

「メリアート!」

「わかってるから指示はいらないよ! 行きな!」

 

 ヒーサーアーサーの左右から俺とルミアが転がり出て、貫通の意味を持つ魔力の槍を放った下手人に肉薄する。

 手に持つナイフがとらえたのは軽く硬質な感覚。防御された。

 

「──()ッ!」

 

 短い呼気と共に吐き出されるは、ルミアの掌底。

 俺のナイフを腕で防いだその下手人は、しかし見た目の何百倍もの怪力を発した彼女の掌底によってぶっ飛ばされる。

 直後、火のついた矢が天井付近にある燭台を掠める。メリアートは本当に広くが見えているな。

 

 火の灯りが暗がりを照らせば……そこにいたのは、顔が半分樹木になっているモノ。

 

「なんだいありゃ……化け物!?」

「ヒトガタの、樹木の魔物……? んなもん聞いたことねえぞ」

「……ッ」

 

 ルミアが……親の仇でも目にしたかのように、強い憎悪をそれに向けた。

 ……伐開の魔族だな。知らんやつだが。

 

「く……とんだ邪魔が入ったな……。しかも……娘、その力、貴様、我らの同胞だろう。なぜ人族につく」

「わたしがおまえたちの仲間であったことなんか、一時たりともない! ──息の根を止めてやる!」

 

 彼女はインファイターだけど、だとしても、ってレベルで周りが見えなくなっているな。

 ……三角飛びの要領で縦になっている天井と床を飛んで、元の視点での天井付近にまで駆けあがる。そして火のついた燭台に、腰の布袋から取り出した幾つかの種を近づけた。

 それに火が移ったことを確認。これはオリーブっぽい植物の種なんだけど、燃料に良さそうな油が採れんのよ。今回はそれを贅沢に松明代わりに使用。

 

 怒りと憎悪で猛ラッシュしているルミアだけど、そのせいで単調になってしまっている。

 一方伐開の魔族の方はしっかりルミアの攻撃を弾いていて、そしてパターンも読み切っているようだった。

 

「──ここ!」

「だと思ったからボクが出るのさ。代わりなよルミア」

 

 目潰しだ。ルミアの眼球を狙った攻撃を上から踏み潰し、肘でルミアを後方に押し飛ばす。ヒーサーアーサーかメリアートが支えてくれるだろう。

 

 俺と伐開の魔族の前に投げるは燃えた種。それに刃先を突き刺して、伐開の魔族に刺突を放つ。

 しかし、そこはさすが伐開の魔族。身体に薄くコーティングした結界で火も刃も防いでみせた。

 

「浅慮! 安直! やはり人族は愚か愚か愚か愚かァ!」

「何のことを言っているのかさっぱりだね。もしかしてルミアとボクがキミを殺そうとしていることを言っているのかい? 先住民からは話を聞いた方が良い、みたいな」

「なんだ、わかっているではないか。そうだ、私ならばここの構造を──」

 

 発火する。伐開の魔族のいたるところが。

 

「なにっ!? どういうことだ!?」

「自分で見つけてこそ探検。自分で探してこそトレジャーハンター。キミの甘言に乗る探検者は誰一人としていない、ということサ」

「そんなことは聞いていない!! どうしてオレの身体に火がついた!? 結界は完璧だったはずだ!!」

 

 認めよう。名も知らぬ伐開の魔族。お前達らしく、完璧な結界術だった。

 

「燃えていた方に気を取られ過ぎたね。ボクは燃えていない種もばら撒いていたんだよ。正確には、中で火が燻っていて、火が付き切っていない……こうも暗いと見えないほどに地味な色で、小さな種を」

「ッ、貴様──」

「恨むんなら君の樹木の身体を恨むといい。完全に異物だろう種が樹皮の間に挟まっても違和感を覚えられない身体を。──爆渇花(バックドラフト)

 

 結界の内側で起きる自らの火を消さんと結界を解いたが最後──。

 華麗なバク宙を挟んだバックステップで避ければ、回転する視界に爆裂の花が一輪咲いたのだった。

 

 

 一息。

 

「……ふぅ。……しっかし、なんだいこの化け物は。……言葉を操っていたけど……まさかヒトなのかい?」

「魔族ってやつだろう。俺も見たことは無かったが……」

「魔族って……そんなものがなんでガルズ王国の遺跡内にいるんだい。というか、魔族って魔物と人族を合わせたみたいな見た目なんだろう? 今のはどう見たって樹木の化け物じゃないさ」

 

 マー初見の伐開の魔族は怖いわな。

 他の特殊個体魔族は割と普通の姿をしていることが多いから、余計に異質だよなー伐開の魔族。

 

「……少し不味いかもしれないね」

「なにがだ、ディミトリ」

「さっきの爆発で遺跡内の空気が薄くなったかもしれない。急がないと、ボクらはこの遺跡の中で、魔物やトラップに負けたんじゃなく、窒息で死んだ憐れなる遭難者になってしまうよ」

「それじゃああたしは先に戻って遺跡の入り口を確保しておこうか?」

「そうしてくれると助かるよ、メリアート。ただ、横取りが同じ入り口から入ってこようとしている可能性もあるから、充分気を付けテ・ネ」

「わかってるよ!」

 

 しっかしこの伐開の魔族はなんでいきなり攻撃してきたんだ? この辺なんかあるってわけでもなさそうなのに。

 それか……まさか隠し扉でもある、とか?

 

「……ディミトリ。さっきは……ごめん。熱くなって、周りが見えてないかった」

「問題ないよ、ルミア。けれどね、いつも言っている通り、キミに怒り顔は似合わない。ボクのように常に笑顔でいるといい」

「無理……常にアホ面でいるには才能がいる……」

 

 元気そうで良かった。

 ……んじゃ、改めて……出発進行といこうじゃねえの。

 ソノヴァキア遺跡における、王家の秘宝を探す旅ってやつに向けて。

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