序盤からずっと利用するような施設経営者だけど強キャラに薄目にこやかで見られながら名前を呼ばれて最後に「ですよね?」で締め括られる存在になりたい   作:ブ雨堰ド

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75.萍水相逢巡り合いて刹那

 くらくらする頭を押さえる。

 果たして今まで、俺は誰だったのか。

 

「なんでなのだわ! 以前あなたがプレイした原始的なゲームより、より複雑でより面白くなったはずなのだわ!!」

「いや……なんていうか、お前は多分悪意というものを操ることにとことん向いてないんだと思うよ。……つか、精神のすり減らされ方がアレの比じゃないんだが。そういう意味じゃ凶悪だよ」

 

 誰でもなかったように思うし、誰でもあったように思う。

 

「プレイヤーは全員の分身となって、それぞれの意思を動かすのだわ? 彼らは各自キャラクターとなって、各自の目的を遂行しようと頑張るのだけど、とんでもない行動をされるとシナリオが崩れてしまうから、ある程度強制させてもらうのだわ」

「それが大分厳しいんだよな。……つか何? 友達いない奴用ってこと?」

「仕方ないのだわ。少し前になにか大きな衝撃が来たかと思ったら、あなたの遺してくれたコンストラクトが全員いなくなってしまったのだわ。だから一人用に調整するしかなかったのだわ」

「……確かにコンストラクトの気配はしないな」

 

 周囲を見渡す。

 どういうことだろう。別に涅月に隕石がぶち当たったとか、涅月が爆発四散した、とかでない限りは消えないコンストラクトにしたはずなんだけど。

 探知は……相変わらずできない。涅月の魔力が強すぎる。

 

「つかなんで俺は涅月にいるんだよ。来るつもりなかったのに」

「そんなこと言われても知らないのだわ?」

 

 一応……まぁ、行ってあげて、って。言われたから。

 俺が必要そうな時代……紫輝歴770年で目覚めてみれば、まさかたっぷり使って一人遊び用マーダーミステリーをさせられるとは。

 ……助けが必要な子ってまさかコイツなのか? そういえば親にはなれない云々は……言っていたような。

 

「相変わらず独りぼっちか?」

「実はそんなこともないのだわ。ひとりだけ、たまに遊びに来る子がいるのだわ」

「じゃあなんで一人遊びしてんだよ」

「来る頻度が低いからなのだけど。……あ、来たみたいなのだわ、丁度良く」

 

 振り返る。

 ……そこにいたのは。

 

「あら……ノクスルーナ。一人じゃないなんて、珍しいじゃない?」

「BB! また会えてうれしいのだわ!」

 

 女性だ。とりあえず顔は知らん。というか誰とも特徴が合致しない。

 俺をして「美しい」と感じる顔立ちだが、出身や人種といったあらゆる特徴が削ぎ落されているように思う。

 

「BB、紹介するのだわ。この子はソルスノメントゥム。今は必ずやり遂げる(コンプリータム)の方でいるみたいだけど、本質的にはソルスノメントゥムなのだわ」

「お前……勝手に。……まぁいいけど」

「長いから、ソルスと、そう呼んでも?」

「ああ、なんでもいいさ。……で、あんたは?」

 

 髪色は……レッドメタリックの銀髪、って感じ。瞳の色はエメラルドグリーン。その浮世離れした風貌から、宇宙人かなにかであるように感じる。

 

「私は、BB。そう呼ばれているわ」

「OK、お互い名乗らないってことで。……それで? こんな魔力の暴風圏にまでわざわざ足を運んでいる理由は?」

「……弔い、かしら」

 

 弔い。……誰のだろう。

 

「ここで……大勢の仲間が、お友達が、死んでいったから。私は……折に触れてはここに来て、弔いの歌を歌うのよ」

「BBのお歌はとってもきれいなのだわ。私はお歌がさっぱりわからないから、聞くだけなのだけど」

「へー。……ここで仲間を失ったっていうのは、どういう意味だ。涅月でどうやって仲間を失うって?」

「私にもよくわからないのだけど、確かに少し前からここにはたくさんの霊魂が増えたのだわ? さっきの幻術に使っていたアバターも、だいたいここに眠っている魂なのだわ」

 

 ……カリアンとかトムさんが、こいつの仲間、って?

 まぁ時代は……合うのか? トムさんは……いやでもハウルの時には死んでたから、合わないだろ。『探偵』は……あいつも二百年前とかの人間だし。

 カリアンも生きてたとして114歳。ナイナイ。可能性があるとしたらニツァ=ハルティヤだけだけど、あれはあれで涅月で死んでいる意味が分からんし。というかそうなんだよ。全員涅月にいる意味が分からん。俺の知らん間に宇宙旅行ができるようになっていたのか?

 

 ──咆哮が響き渡る。

 

「……えー。また竜かよ。そろそろ飽きてんだけど」

「ええ、同感。そろそろ親玉……災厄竜というのが現れて、すべてを終わりにしてほしい。そうでしょう?」

 

 どの時代にもいんじゃんお前ら。お腹空きすぎだろ。

 ……つーか。

 

「竜くん、涅月にまで現れるようになったん?」

「そろそろといえば、そろそろ現実を見るのだわ、ソルスノメントゥム。私もしばらく気付かなかったけれど、多分それらが涅月に現れたのではなく──」

 

 地平線の向こう。

 ──紫色の空を切り裂いて現れるは、灰色の竜。

 

涅月(わたし)が、大地に墜ちたのだと……思うのだわ」

「やっぱり?」

 

 その竜が、この地へと降り立つ……寸前。

 

 

「──【マギスケイオス】が第二位、『全開(オムニス)』! ドリルパイル・バンカーバンカーとは私のことよ! 『全開』とは即ち、"立ち塞がるすべてのものを打ち砕く"ための"当然"を行使する者の諱のこと──あなたの霊質に刻み付けなさい!」

 

 

 爆発が起きたのだと錯覚するほどの──魔力の奔騰があった。

 紫輝の魔力。それが、涅月の魔力のすべてを押しのけて、彼女の銀色の髪を鮮やかなオレンジ色に染めていく。

 先程の咆哮は、俺に向けての警戒だった。だが、今、再び鳴らされたあの竜の喉は──確実に彼女を向いている。

 

「それと、今日からは私だけじゃなく、彼もいるのだから──そろそろ出し惜しみはやめなさい」

 

 気付けば隣にいなかった。気付けば灰色の竜の頭頂に手を当てていた。

 竜が……その眼球を動かすよりも速く。

 

「──『零距離(ゼロレンジ)最大限(マクシマム)』!」

 

 放たれしは、以前俺とナタリーが力を合わせて放ち、その身を崩壊させるに至った一撃。極大の魔力砲。

 灰色の竜は……文字通り容易く消し飛んだ。跡形もなく。きれいさっぱり。言葉を尽くす余韻すらなく。

 

 彼女の髪からオレンジ色が抜けていく。

 けれど、その肉体に……無理が祟った、みたいな箇所は無い。耐えきっている。耐えきれる体構造をしている。

 

 竜を消し飛ばした彼女は、空中を何度か蹴って減速し、華麗な仕草で地面にまで戻ってきた。

 ふむ。

 

 ……これ、俺いる?

 

 

 さて、改めて状況を確認しよう。

 今は紫輝歴770年であり、ここは……どこかわからん。涅月の墜落地点、としておく。

 ちなみに夜になれば普通に涅月は昇る。以前言っていたように、この見えている方の涅月は単なる虚像なので、本体が墜ちたとかそういうことは関係ないらしい。

 

「紫輝歴769年の終わりに、各国の勇士という勇士がガルズ王国近辺に集まって、災厄竜ユランの迎撃作戦に参加したの。魔族から齎された情報で、この竜が本当に存在する、ということもわかっていたから」

「ああ、少しは知っているよ。アルカとかアレクとか、その辺がいたんだろ」

「ええ、そう。……けれど、災厄竜ユランの攻撃により、全滅した。私以外の【マギスケイオス】、『古物商』、精霊、涅月の旅人……全員がね」

「涅月の旅人?」

「ナタリア・アークライトと名乗っていたかしら。おかしな気配を持つお嬢さんよ」

 

 ……アイツ。しかもアークライトて。

 

「どうしてあんたは無事だったんだ?」

「私は、いわゆるところの、紫輝の愛し子だから。大地の魔力による攻撃には滅法強いのよ」

「そんな力関係あったっけ?」

「別に無いのだわ? 涅月も、この星も、紫輝も、お互いの魔力を忌避し合うことはそうだけど、別に優劣は無いのだわ」

「じゃあ訂正するわ。私は私だから滅法強いの」

 

 成程自分でもよくわかっとらん、と。

 ……しかし、そうか。

 死んだか。

 

「確か、エス……なんだっけ。"ヴァーン"でマイズライトな魔王も紫輝の愛し子だったように思うが、ここまで同時代に複数現れるものなんだな」

「あの魔王様はなんだかんだ言って二百五十年くらい前の生まれだったはずだから、同時代というほど同時代でもないのよ」

「うーん。私が『涅月の血属(ノクスルーナ・ブラッド)』を作る工程と紫輝が愛し子を設ける工程は多分違うと思うのだわ。だから参考になることは言えなそう、なのだわ」

「そうか。良かったよ、そこで何か言い出していたら俺はこの時代から去っていた」

「え。私何か失礼なこと言ったのだわ?」

 

 いんや、単に俺のネタバレ嫌い。

 

「それで、一度は出てきたユランが、いなくなった、って理解で良いのか」

「恐らくは。どこか遠くの国で文明のリセットを行っている、という可能性もあるけれど、少なくともあの日の後から今日に至るまで、私はユランを見ていない」

 

 涅月の魔力でコンストラクトを編む。

 鳥型を多めにして、それを放つ。

 

「大地の魔力を検知したら、俺に伝わるだけじゃなく、甲高い声で鳴くように設定してある。竜の探知機だな」

「素晴らしい式神操作ね。流石は『四毒(フォア・ラベンダ)』の師だわ」

「……誰? 俺が式神操作教えたのって……まさか津吊のこと言ってる?」

「え? ウォーラー・イン・フロッグスよ。【マギスケイオス】の第八位。あなたに沢山のことを教わったって聞いたけど」

「いや知らん誰それ怖」

 

 え、勝手に俺の弟子とか吹聴してる奴がいるってこと?

 ヤメテー。つーか俺にブランドとかねーだろ別に。何の得があんねん。

 

「そう……。まぁ、名乗らじの怪も色々種類があるみたいだし、別の事象をそれだと勘違いするってケースもあるのかもね」

「その迷い家だの名乗らじの怪だの、ハニー老とナタリーが広めてんだろうけど、やめてくんないかな。俺なんかやべー妖怪みたいじゃん。そんなんじゃないってのに」

 

 これだから精霊は。これだから魔族は。

 長命種はマジでロクなことせんな本当に。

 

「あなたというよりは、あなたを取り巻く環境が、なのだけれど」

「ああそうなん? ……まぁ、いいけどさ。あんたに言って噂が消えるって話でも無いだろうし」

「自分から名乗らじの怪(アウィス)を名乗っておいて酷い話なのだわ?」

「……いや名乗ったけど、あれはアレクに対してだけだから」

 

 つーかアウィオウアウィスはそこまで特別な意味じゃねーから。

 

 ……と。

 なーにを三人でほっつき歩いていたかといえば、なところに到着した。

 

「おー、本当だ。家だな」

「ええ、無事だったのはここだけ。他は全てユランに壊されてしまっているわ」

 

 本来は二階建てだったのだろう、既に意味を為していない階段が部屋の隣についている、二階の砕かれた家。

 BBはここを拠点にしているらしい。

 

 その他の家、道路、施設なんかは全て破壊されている。涅月に侵食されている部分も勿論あるけど、その前に破壊されていた、って感じだ。

 

「お茶と、食事を用意してくるわ」

「俺のは要らんよ。無くても活動できる」

「いいから。『最小限』と『財宝』、『到達』、『四毒』が言っていたのよ。迷い家で食べた食事はこの世のどんなものよりもおいしかった、って。──見てなさい。私は料理にだって全開なんだから」

 

 成程おかしな敵対意識を持たれている、と。

 相変わらず妄想癖の激しい『四毒』くんもだが、しれっと『財宝』とかいうのまで混じっている。こわすぎるッピよ。

 

 キッチンの方へ消えていく彼女を見送って。

 

「……それで? あのシナリオに見せた理由ってあるのか?」

「無いのだわ?」

「はぁ、だろうと思ったよ。……ちなみに『天の至泉』っていう温泉はマジであんの?」

「さぁ? なのだわ? でもある程度史実を元にした話なのだわ。温泉旅館というのは知らないから、クィローたちに聞いた概念を流用しているだけだけれど」

 

 ふーん。

 ……ロイド・ルカス。ディルが調べ上げた温泉か。確かにヴェルナーとの話の中で、冒険家エリオンベルグ……あいつの祖先がそこに行った、みたいなのは聞いた気がすんだよな。

 考えることもなくなったら……「──ですよね?」を狙わない旅行ついでに行ってみるのもアリかなぁ。

 

 一応……考えておくか? なんであのキャスト陣になったのか、についてを。

 この世界における「無意識にそうした」には、割とちゃんと意味がある、っていうのを……俺は体感しまくっているわけだし。

 

 探偵役は、まぁハマり役というか、アイツ以外いないからいいとして……。カリアンは……まぁあいつは被害者が似合うからいいとして。

 涅月、ニツァ、ジュノさんがそれぞれ別の目的を持った犯人だった、というのは……ちょっとなんか意味するところがありそうなんだよな。トムさんが怪盗なのはいいよもうわかったよ。

 涅月は勿論涅月の、ニツァは紫輝の、ジュノさんは大地の魔力に由来した魔力を使うから……ううん。

 

「さっきのゲーム。犯人役、もう一人の犯人役、窃盗犯役になった場合の、それぞれの背景や目的(ハンドアウト)を教えてくれ」

「興味があるのだわ? じゃあもう一回やるのだわ?」

「やんない。教えてくれたらまた友達作ってやるよ」

「わーい! なのだわ。……えーと、じゃあ、そうね。まずは直接の犯人役から。この役は、まず、宿泊客の誰にも犯人であることを知られてはいけないのだわ。そして、速やかに対象を殺さないといけないし、周囲の人間に多額の借金があることがバレてもいけないのだわ」

「……なるほど」

「次に、薬を使う犯人役。この役は、同じく犯人であるとバレてはいけないのだわ。ただし、薬を盛ることは、普通に殺すことより簡単だから、被害者にも自身が犯人であるとバレてはいけないのだわ。これは被害者が生きていようが死んでいようが、露見した時点で減点なのだわ。あとは、さっきの犯人役に罪を擦り付けようとしたことが露見するのもダメなのだわ」

 

 涅月は正体の露見がダメ。内情を知られてもダメ。

 紫輝は犯罪行為自体の露見がダメ。行動は常にステルスでなければならない。

 

「最後に、遺言書を盗む盗人役。この役は、遺言書を盗んだことがバレてはいけないのだけど、殺人事件を起こそうとした犯人を見つけるとボーナスポイントがあるのだわ。プレイングによっては遺言書そのものが出てこないことだってあるから、ちょっと易しめなのだわ」

 

 大地は窃盗行為の露見がダメ。ただしやりようによっては探偵足り得る、か。

 

 それぞれ整理すると……。

 涅月はその正体を知られてはいけないし、裏側を見られるわけにはいかない。

 紫輝は不正行為が露見してはいけない。常に意識されないところにいなければならない。

 大地は何かを盗んでいて、それの露見がいけない。それ以外の部分では気にする必要が無い?

 

「お話し中失礼だけれど、──ほら、出来たわ」

 

 そう言って。

 彼女がドンと、出したるは。

 油滴る巨大な肉塊。

 

 成程これは『全開』だ。──まさかあの料理できそうな言い回しで漢料理とは。

 

「ちなみに聞くんだが、これは何の肉だ?」

「竜よ。魔物は巣穴に縮こまっていて狩るの面倒臭いし」

 

 竜か。

 なんだかんだいって、初めて食べるような。

 えーじゃあ、いただきます。

 

 

 手に作り上げたるは魔鉱石の槍。涅月の結晶体から拝借した魔力を使って生成したそれを、黄色い竜の翼に投擲し、突き刺す。

 

「良い腕ね、ソルス! それじゃあ──『零距、」

「馬鹿消し飛ばすな! 食うんだから!」

「……あなたがいると竜がたくさん出てきてくれて面白いのだけど、あなたちょっと小うるさいわ」

 

 可食部ほとんど消し飛ばすパワー馬鹿の話なんか聞いてない。

 そのまま魔鉱石の槍を竜の身体に突き刺し、可食部でない部分を魔鉱石爆発(シュライン)で消し飛ばして落とす。

 よーし。

 

「ほんと、私や『到達』の魔法とは正反対。最高峰に器用な魔力操作よね」

「常にアルカに及ぶか、と言われたらわからんがな」

「『最小限(シンプレクス)』とはまた毛色が違うのよね。なんていうか、あなたのは……精密? 『最小限』のは最高効率って感じがするけれど」

 

 無駄を省いた、という意味でアイツに勝てる魔法使いは早々おらんさ。

 今の俺も、モーガンな俺が見たら無駄が多いって怒りそうな魔力の使い方してるし。だって削減しなくても涅月から直で汲み出せるんだもーん。

 

「いやーしかし、この世界で俺が初めて心底美味いと思った肉が、竜になるとは。うわー、今までの竜消し飛ばしてきたの勿体ね~。それぞれどんな味がしたんだろうなぁ」

「あれを気に入ってくれたのは嬉しいけれど、そんなにだった? 人によっては合う合わないあるのに」

「一応俺が思う美味いものを作ってきたつもりだけど、なんつーんだろうな。ご当地料理として美味い、っつーか」

 

 俺が今まで料理でやってたのは、あくまで地球の料理の持ち込みだ。

 材料は勿論こっちのなんだけど、こっちの素材をどうあっちに近付けるか、みたいな理論で作っていた部分が大きい。

 けど、竜の肉は……なんというか、地球にある語彙では表現しきれない味だったのだ。これを既存の料理に当てはめるのは不可能。だから丸焼きは正解なんだけど、いーや、肉は丸焼き以外にも美味しい調理法あるね! って俺の料理人の勘が叫んでいる。

 惜しむらくは、竜というのが常日頃から狩れる存在ではない、という部分か。……いや、それこそ『天の至泉』には本当に竜の現出点があったり……?

 

 遠くでコンストラクトが鳴く。

 

「もう!? 頻度が高すぎる……」

「けど、ってことはユランが近いってことなんじゃね。知らんけど。……ユランは食えんのか?」

「さぁ、どうでしょうね。食べるとか食べないとか、そういう域を超える……想像を絶した大きさよ、とだけは言っておくわ」

「言うて……涅月歴770年に出てきた方は、全長62.9athlだったらしいじゃん。そこまでデカいか?」

 

 メートル換算すれば、だいたい110m。

 110mの飛行生物。……デカいか。でも一番デカい旅客機が確か73mとかだったはずだから、それよりちょっとデカいくらいじゃん。想像を絶するまで行かなくね?

 

「呆れた。竜を相手にしすぎて感覚がおかしくなっているわね」

「ああ、それはあるかもしらん。仙実国(シァンシーグァオ)には巨竜がたくさん出ていたし、モゴイ丘陵に出た竜もかなりデカかったからなぁ」

「……まさか、あそこの『大崩落(ラノエ・バウン)』も迷い家が原因なの?」

「だからそれやめてってば。なんでもかんでも俺のせいにしないで。その後一定期間モゴイ丘陵で異常な魔力嵐が発生していたのは俺とナタリーのせいだけど」

「ナタリー、って?」

「ナタリアって名乗ってたヤツ。俺の妹を名乗る、俺より先に生まれていたはずのヤツ」

「妹になりたがるお姉さんってこと? おかしな血縁ね」

「まず血縁ではないんだよね」

 

 さて、次なる竜が出てくる。

 今度は魔竜だ。緑色の煙を口の付近に溜めているから、毒持ちだね。

 

「毒でも食べるのかしら」

「当然だろ。『全開』を使うのは構わないけど、翼を消し飛ばすとかにしろよ。それか首だけとか」

「そんな細かな調整できないわ。──『零距離(ゼロレンジ)最大限(マクシマム)』!!」

 

 日常会話のトーンから繰り出される極太のビーム。

 魔竜の半身が消し飛んだ。あー!

 

「つーかあんた、もしかしてそれより火力低い魔法持ってないなさては」

「そんなことはないわ。肉をあぶる程度の火加減もできるもの」

「……だから、ピンキリなんだろ? そーいえばなんかアルカが言ってた気がするよあんたは不器用だって。人付き合いの話かと思ってたけど、魔力操作そのものが不器用なんだろさては」

「そ……そんなわけないでしょう! 私は栄誉ある、世界でたった十二人にしか名乗りを許されない魔導士! 【マギスケイオス】の一員よ! それが、魔力操作が苦手だなんて……」

「……重村鎖袋も言っていたぞ。『全開』は俺より魔力の扱いが未熟だと。嘘だけど」

「それは誇張よ!! ぜったい、さすがに、『到達』よりは上手よ!! ……あ」

「ちなみにあいつは勿論そんなこと言ってなかったし、自分以外の【マギスケイオス】を心底尊敬していると言っていたから……まぁ、なんだ」

 

 ──遠くでコンストラクトが鳴く。

 

「次、来たわ! あんまり余計な事言うと問答無用で竜なんか消し飛ばすから!」

「これいつまで続けるんだ。これでユランは出るのか本当に」

「やらないとどっちみち世界に腹ペコ竜が解き放たれるでしょ。ユランから逃げ延びても晩餐会は避けられなかった、なんて悲しい話、聞きたくないもの。──先に行くから」

 

 うーん。

 魔法大好きクラブさん……色々出会ってきたけど、やっぱりイロモノ集団って評価に落ち着くかなぁ。

 一周回って一番魔法使いっぽかったのはアルカだけなような……。

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