幼女サイヤ人レタス   作:阿部まさなり

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第一話 女サイヤ人の下級戦士レタス

 今から少し前、宇宙の星々の地上げビジネスを生業とする宇宙最大規模の軍事組織コルド軍は、首領が代わりフリーザ軍へと名を変えた。コルド大王の息子であるフリーザが軍を引き継いだのである。フリーザは科学技術の開発を進めており、軍の規模は既にコルド軍時代を大きく上回る規模となっていた。しかしフリーザは父親以上に冷酷であり、部下に対しても敵に対しても容赦をしない冷淡な人物だった。

 フリーザ軍と軍事同盟を結んでいた戦闘民族サイヤ人もまた星の地上げを生業とする。こちらは民族単位で行っているがコルド軍時代にコルド大王に攻められ、負けた為に事実上傘下に加わっていた。コルド軍の時からサイヤ人は部下同然、駒のような雑な、プライドの高いサイヤ人にとっては屈辱的な扱いを受けてきた。それはフリーザ軍となってから勢いが増していった。戦闘民族であり、プライドがとても高いサイヤ人達にとってそれはとても屈辱的でありサイヤ人はほとんどがフリーザの事を忌み嫌っていた。そしてそれはフリーザ軍にとっても同じ事。フリーザ達もまた、サイヤ人の事を気に食わないと思っていた。それでもお互い利用し利用されの関係が続いていた。

 惑星ベジータがフリーザによって滅ぼされる、およそ一年と半年前、惑星ベジータの一角から物語は始まる。

 

 

 

 

 惑星ベジータ――サイヤ人の故郷。ベジータ三世の治世。サイヤ人達はフリーザ軍の命令で数多の星へと侵略に出かけている。彼らが星に帰ってくるのは一年後だったり二年後だったり。ただでさえ少数民族のサイヤ人は、その大半が戦闘員なので星に残るサイヤ人は更に少なかった。

 そんな惑星ベジータにある、荒野の崖の上で彼女は仰向けになって空を眺めていた。名前はレタス。数ヶ月前に育児ポッドから出たばかりの幼い女サイヤ人だ。黒髪で髪型は独特な形をしたロングヘアー。年齢は三歳になる頃。戦闘力はとても低く二桁代。階級は当然下級戦士。しかも下級戦士の中でも下の部類に入る。

 サイヤ人は生まれてすぐに育児ポッドに入れられ、三歳頃になるまで育児ポッドの中で育てられる。その間に潜在能力を計測され、低い者は下級戦士に、高い者は中級戦士や上級戦士に選ばれる。下級戦士は飛ばし子になる運命だ。飛ばし子とは幼い頃から惑星侵略に向かわされる事である。

 サイヤ人は戦闘民族なので昔から、子供でも惑星侵略に向かわせられる。それでも飛ばし子に選ばれたサイヤ人は言葉を一通り覚えて、最低限の戦い方を教わったら即飛ばされる。中級戦士以上よりも幼い時期からだ。

 何故戦闘力の低い下級戦士がより小さい内から仕事に行かせられるかというと、それは戦闘力の低い者達の選抜であった。向かわせられる星は比較的力を持たない価値の低い星である事が多い。そこを侵略させて、生き延びて帰ってこれればサイヤ人の社会に迎えられる。しかし戦闘力が低すぎて侵略に失敗したり殺されたサイヤ人はその程度の価値の無いサイヤ人だった――という事になるのである。

 つまり飛ばし子にされたサイヤ人はその先、サイヤ人の社会に加われるか死ぬかのテストをされているようなものなのだ。これでも昔よりはマシになった方である。昔は三歳になるまで育児ポッドで育てる、という手間をせず、生まれてすぐに下級戦士と判定されればその時点で他の星に飛ばされていた。言葉も教わらず、最低限の戦い方すら教わらず、乳児の頃から惑星侵略に向かわされていた。その頃は宇宙船の中で、目的地の星にたどり着く前にストレス等で突然死する個体も少なくなかったという。

 下級戦士の判定を受けたレタスもまた、その飛ばし子として飛ばされる運命にある。今は言葉を一通り覚えて、戦闘の訓練をしている段階だ。近い内に軍から惑星侵略の通知が来るだろう。

 

「ボクはどんな星に飛ばされるんだろうなぁ。楽しみだなぁ」

 

 レタスは他の星に飛ばされる事を楽しみにしていた。サイヤ人として初めての仕事であった。当然不安もあるし親から離れるのが嫌な年頃であるが、それよりも戦う事が楽しいと思うのは戦闘民族の性であろう。

 レタスは戦闘服を着ていた。サイヤ人にとって軍から支給されたり親から買ってもらう戦闘服が普段着であり、唯一の衣装だ。それは子供の頃から老人まで変わらない(もっとも老人と呼ばれるまで生き延びるサイヤ人はとても珍しい。何故ならサイヤ人は一生の内、若い期間が異常に長いからである)。

 レタスの戦闘服は黒と青を基調とした、当時としては新型の戦闘服。しかし肩当てはあるが腰当ては無いシンプルな少し安いタイプ。戦闘服の下は何も着ておらず、下は黒いパンツを着用。当時としては流行りのタイプである。母親が買ってくれたレタスのお気に入りの戦闘服だ。

 

「よお、ここにいたのかレタスちゃん。元気そうでよかった」

 

 とやってきたのはホウレンというサイヤ人の男児。レタスと同じくらいの年頃で、レタスと同じく下級戦士の判定を受けた。当然彼も飛ばされる事が決まっている。たまたま自宅が隣同士だった事もあってよく遊ぶ間柄であった。ちなみに、サイヤ人にとっての遊びとは戦闘である。

 

「近いうちに別の星に飛ばされるんだ。故郷の空を眺めたいと思ってね」

「変な事を言う奴だな。空なんてどこの星で眺めても一緒だろ?」

「ホウレンは見たことあるの? 他の星の空」

「いや、見たことないけど」

「じゃあなんで同じなんて言えるのさ。惑星ベジータの空は赤いけど他の星じゃ青い空とか緑の空とかあるみたいだよ。お母さんが言ってたもん」

「そういやお前の母ちゃんは戦闘員だったな。俺の母ちゃんは非戦闘員だから他の星に行ってたのは子供の頃で忘れちまったらしい。俺は下級戦士の家系だからな。ハハハ」

 

 ホウレンはそう言って笑いながらレタスの横に座ると同じように仰向けに寝た。そしてレタスのように空を眺めた。

 

「なぁ? 空なんて眺めてる暇があるなら俺と遊ばないか? つまんないだろ、空なんか眺めたって」

「……そう? 遊んじゃう? やっちゃうか!?」

 

 レタスは興奮して急に上機嫌になった。二人は立ち上がるとお互い向き合って構えた。

 二人の遊び(戦闘)は今までホウレンの全勝である。レタスは一度も勝ったことが無い。だからレタスは今度こそ勝ってやろうと意気がっていた。

 

「ホウレン! 今日こそボクが勝つからね! 吠え面かかせてやるから覚悟しろよ!?」

「残念だがお前の戦闘力じゃ無理だ。俺の方が戦闘力が高いからな」

「大して差は無いじゃないか! やりようによっては十分勝てる差だってお母さんが言ってたもん!」

「ふーん。じゃあ勝ってみせろよ。お前が勝ったら俺の尻尾を気が済むまで握っていいからな? そのかわり、お前が負けたらお前の尻尾を日が暮れるまで握りしめる!」

「良いよそれで。お前が力が抜けて立ち上がれなくなる姿を見るのが楽しみだよ。それじゃあ行くよ!」

 

 レタスは突進し、ホウレンに殴りかかった。右拳がホウレンに迫る。ホウレンはそれを片手で受け止めた。そしてそのまま拳を握りしめるとそれを引っ張ってレタスの体を思いきり振り回した。まるでそれはヘリコプターの回る羽根だ。凄まじい速さでレタスの体をぶん回し、風圧で地面の草が揺れる。そしてそのまま地面に向けて叩きつけた。地面に穴があいて、レタスは地下深くまで沈んでしまう。

 更にホウレンはその穴に向かって気功波を放った。気功波は石の破片に呑まれたレタスの体を覆う。気の光が地上からも見える程眩く煌めいた。と同時にドーンという鋭い音がなって地面が崩れてしまった。ホウレンはニヤリと笑いながらその崩れた地面を見下ろした。

 

「どうしたレタスちゃん? これで終わりなんて言わせるなよ?」

 

 それからしばらくして、突然地面がボコッと盛り上がった。そしてそれはどんどんホウレンに向かって盛り上がっていく。警戒するホウレン。そしてホウレンの足下の地面が盛り上がったかと思うと地面に突然穴が空いて中からレタスの両の手が伸びた。そしてホウレンの両足をつかんだ。するとレタスが穴の中から顔を出した。そのままホウレンの足を掴んで振り下ろす。崖が崩れてホウレンは空にふきとばされた。

 更にレタスは宙に浮くとホウレンの腹に向かって飛び蹴り。そのまま地面に落ちるまで蹴り続けて地面に追突。ホウレンは口から唾を吐いて腹を押さえた。レタスは更に追撃する。ホウレンの首を掴んで持ち上げるとその顔を殴り飛ばした。ホウレンは勢いでふきとばされるが、勢いを利用して体勢を整えて、地に足を付けた。

 お互い睨み合っていた。双方、顔には笑みが浮かんでいた。二人共戦闘を楽しんでいた。

 

「行くよホウレン!」

「レタスちゃん来い!」

 

 二人は同時に突進し激突。拳で殴り合った。凄まじい殴り合いで全身が傷付き、出血していた。ダメージを受けるのは痛いはずなのに、二人にとってはその痛みすら快楽に感じていた。そして二人は長い間殴り合った。結局、勝敗はいつも通りホウレンの勝ちでレタスの負け。レタスが途中で動けなくなって降参して終結した。

 

「ダメ~、力が抜ける〜……。もう、勘弁してーー……」

 

 レタスはホウレンに尻尾を握られて全身の力が抜けて動けなくなっていた。サイヤ人には弱点がある。それは尻尾を握られる事だ。サイヤ人の誰もが尻尾を強く握られると全身が立っていられなくなるほど脱力し、動けなくなってしまう。サイヤ人の特性だ。鍛えればこの弱点の克服は出来るのだが一部のサイヤ人はその鍛錬に耐えられずに大人になっても克服出来ない者もいる。ましてや子供のサイヤ人なら尚更である。

 

「はっはっは! 惨めだなレタスちゃん! やっぱり俺には勝てなかったね。どうだ参ったか!? 日が暮れるまでこのままだぜー!?」

「ほ、ほんと止めて……前、ホウレンが強く握りすぎてボクが漏らした時、お母さんにすごく怒られて……」

 

 レタスとホウレンはよく戦闘の遊びをするのだがその度にレタスが負けて罰ゲームで弱点の尻尾を強く握られる事になる。子供――特に幼いサイヤ人や女性のサイヤ人が尻尾を強く握られ脱力するとたまに小便などを漏らしてしまう者もいる。幼い女児――ましてや育児ポッドから出たばかりの者なら尚更である。それで、レタスは以前小便を漏らした事があった。その時は母親に酷く怒られたのであった。

 しかしホウレンは容赦はしなかった。

 

「戦いに負けたお前が悪いんだろ? お前がお前の母ちゃんに怒られようが俺の知った事じゃねぇな!」

 

 そう言ってレタスの尻尾を握り続けるホウレン。レタスはもう喋るのも辛いくらい脱力しきってしまっているが、それでも必死に声を絞り出した。

 

「……もしお父さんにバレたら、ボクは本当に殺される!」

 

 その言葉を聞いてホウレンは咄嗟に尻尾を離した。レタスはぐったりしたまま肩で息をしていた。

 

「た、助かった……」

「……仕方ねぇな。今回はこれで許してやるよ」

 

 それからレタスが元通りになるまで数分かかった。力が元に戻ったレタスはホウレンと二人でまた仰向けになって空を眺めていた。戦闘中は痛みを忘れていた体の傷が今更痛みを感じ始めて二人は苦い顔をしていた。しかしその痛みが二人にとっては心地良かった。

 

「レタスちゃん」

「なに?」

「お前の父ちゃんってさ、相変わらず、なのか?」

「……うん」

 

 二人は空に視線を向けたまま会話していた。互いを見ようとはしていなかった。ホウレンはレタスの家の事情を知っている。あまり話題にはしたくなかったが、それでも聞きたいという好奇心が勝ってしまった。

 

「レタスちゃんがこんな村から離れた所で空を見てたのって、別に故郷の空を見ていたかったからじゃないだろ? 家に帰って、父ちゃんと一緒にいるのが怖いんだ」

「は?? 別にお父さんの事なんか怖くもなんともないから!!」

 

 ホウレンを睨みつけてそう叫ぶレタス。しかしそれがただの虚勢である事をホウレンは知っていた。

 

「俺と違ってお前の親は上級戦士なんだろ。父ちゃんも母ちゃんも。それなのにそんな二人から生まれた子供は下級戦士だった。しかも下級戦士の中でも更に下の方。いわば最下級戦士って言えるくらい下の方だ。それがお前だ」

「……そうだね」

「お前の父ちゃん、それが相当ショックだったんだろ? 上級戦士同士から生まれた子供が下級戦士の判定を受けた事が。それでお前の事を憎んでるって、もうみんな知ってるぜ?」

「ふん。あのクソ親父。好き放題言いやがってムカつくんだよ。それにしてももうみんなに知られてるんだね。小さな村だから家庭の事もすぐバレちゃうよ」

 

 レタスはホウレンから顔を背けた。ホウレンは言葉を続けた。

 

「まだ子供のお前を本気で殴ってくるとか。大人でしかも上級戦士の父親が。それが嫌でこんな所でじっとしてたんだろ?」

「……別にお父さんがボクを嫌おうがボクが殴られようがそれは構わないんだ。ボクが弱いのがいけないんだ。ただお父さんが怒ってるとお母さんがとても嫌そうな顔をするんだ。それがなんか申し訳なくて、ね」

「サイヤ人の大人って、特に男は自分の子供の事なんかあまり興味を示さないけど、憎んで殴ってくるなんて最低だよな。子供なんだから逆らったって勝ち目無いしさ。まだ興味示さないで顔も合わせてくれない方がマシだぜ」

「……お父さんがボクを殴る時のあの顔、本気でボクを憎んでる目なんだ。あの顔、毎日見てると頭の中にこびり付いて離れなくなる。すごくこわ……腹立つね」

「いっそのこと、宇宙船盗んでさっさと星を出てった方が良いんじゃないか? 俺も一緒に行くぜ? このままここにいたら下手したら本当にあの父親に殺されるかも……」

 

 するとレタスは急に起き上がってホウレンを睨みつけた。

 

「宇宙船を盗んだりしたらただの盗人じゃないか! この星を出るなら仕事として出ていきたいの。そのうち飛ばされるからそれまでの辛抱だよ」

「二人で同じ星に飛ばされたら良いのにな。友達なんてお前くらいだからさ」

「ボクも同感だ」

 

 辺りは日が暮れ始めた。夕日が差し込み、空には満月が見えつつあった。

 

「そろそろ日が暮れるから帰ろう。今夜は満月だ。うっかり長く月を見てると大猿になっちまう。家にこもってるんだぞ」

「わかってるよ。……ああそうそう、ボクはお父さんの事怖いなんて全く思ってないからね! 本当だからね!? 変な事言い触らさないでよ!? わかった!?」

「はいはい、そういう事にしておきますよ」

 

 レタスの言葉は全て強がりであり虚勢だ。本当は父親に会うのが怖くてたまらない。その証拠にその口元は震えていた。しかしレタスの口元が恐怖で震えていることを追及するのは野暮だと思って、ホウレンは何も言わなかった。

 その後二人は村まで揃って帰り、それぞれの自宅へと帰っていった。




 第一話でいきなりで恐縮なのですが、読者様の意見を聞きたいです。
 本作のストーリー展開について、原作のストーリー、歴史は変えない方向で行くか、変えてしまっても良いか、どちらが好みですか? また出して欲しいキャラクターや変身形態などはありますか?(GTの超サイヤ人4やZのブロリーなど)。また、ゼノバースやヒーローズなどに登場するタイムパトロール要素を入れた方が良いですか?
 感想欄で意見してくれるとありがたいです。よろしくお願いします。
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