TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第14話

 

 ディは自主的に月華の翼を抜けた。

 居続けても双方にとって害にしかならないと思い抜けたのだ。パフォーマンス的に惜しまれはしたが特に問題なくディは抜けれた。

 

 今日はモンスターパレードの日だ。

 朝から街は騒がしい。街中の至る所に出店が出ている。

 

 ディは出店によってオークの焼き串を注文し一つ頬張った。

 

 さて、どうしようかとディは街を見て回る。

 祭りの注目は闘技場でのモンスターと冒険者の戦いだ。

 ディにとっては雑魚同士の戦いに過ぎないので興味をあまり持たないが見てみるかと行ってみることにした。

 

「でか」

 

 着いた先は広大な闘技場だ。

 収容人数八万人を誇る巨大な闘技場である。石造りの闘技場だ。

 

 中に入って受付に進む。

 

「観戦がしたいのですが」

「今ですと立ち見になりますがよろしいですか? 入場料二千セラです」

「これを」

 

 ディは影から財布を出し千セラ紙幣を二枚出して支払った。

 

「ありがとうございます。ごゆっくり観戦をどうぞ」

 

 ディは軽く頭を下げ闘技場の奥へと進む。

 通路を出た先は観戦席だ。椅子は全て埋まっている。

 

 適当に階段を上り上の方で観戦を始める。

 

 見れば冒険者とトロールが戦っているところだった。

 

 冒険者はチームで戦っている、仲間の呪文詠唱者(スペル・キャスター)が武器に炎効果を付与する魔法を使って前衛の戦士の剣に炎効果を付与している。

 トロールは再生能力を持つが炎と酸に対しては再生能力が働かない。そのための手段だ。

 再生持ちは幾つか種類がある。HPごと再生するタイプと外見だけ治るタイプなどだ。トロールは前者、HPも回復するタイプだ。

 頭部の破損で絶命しない限りは基本は再生する。

 

 トロールが持つこん棒を持って冒険者チームに襲い掛かる。だが冒険者チームはきちんと攻撃を避けていっている。

 

 攻撃し、切り付け、相手の反撃は反らすか避ける。

 

 呪文詠唱者(スペル・キャスター)が魔法を唱え火球がトロールに命中し燃え上がる。

 

(……強いな)

 

 ディはその戦いを感心しながら見る。

 

 自分にはない強みだ。眷属を召喚することで数の利は得られるが連携した戦いは出来ない。

 更に剣士の武器の振るい方も見事だ。確かな剣術に支えられている。

 

(自分も剣術とか覚えるかな……そのためにはまず剣を買わないといかんけどなぁ)

 

 ディは基本武器を使わない。武器を装備してもしなくても攻撃力が大して変わらないからだ。素の攻撃力千もあるのにプラス一とか二程度誤差の範囲になる。

 そのためディは基本血の刃で戦う。リーチはあった方がいいと思っている。

 

(うーん。気が向いたらどっかの道場にでも行くかな)

 

 ディはそう考え、闘技場で戦いが終わるまで見ていた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 モンスターパレードは特に問題なく終わった。モンスターが出てくるトラブルなんてことも起こらなかった。

 

 翌日になってディはダンジョンに潜り始めた。そして道中の敵は描写する価値もなくバッタバッタとなぎ倒した。

 

 そして第十九階層。ボスモンスター部屋に来ていた。

 

 そこは白い結晶が生えた空間だ。壁や天井に生えている。床は反対に黒い石で出来ている。

 

「ここか」

 

 そして空から巨人が降ってきた。

 

 全長五メートル。黒い肌を持つ人型のモンスター。

 黒髪に黒目、牙を持っている。

 裸ではあるが生殖器がある場所には何もない。

 名をゴリアテ。レベル二十五のモンスターだ。

 

 ドスンと着地し、咆哮を上げた。

 

「オォォォォオオオ!」

 

 ハウリングという特殊能力(スキル)だ。

 相手に恐怖を与えると同時にダメージを与える特殊能力(スキル)だ。

 だがディは精神に作用する干渉を無効化出来る。恐怖は効かない。ダメージは多少入ったがすぐに再生された。

 

<血液武術・血の閃>(ブラッドアーツ・ライン)

 

 血の閃によってゴリアテが縦に両断され、ドロップアイテムとなって消えた。

 ドロップしたのは金インゴットだ。純金である。

 

 ディはそれを拾ってアイテムにすると影に収納した。

 

 そして奥へと進みラヴィラへと足を踏み入れた。

 

「おぉ……」

 

 思わず感嘆の声が漏れた。

 

 見上げればそこに輝くのは白い結晶たち。びっしりと集まり太陽のような輝きを放っている。

 見下げればそこは平原。奥には家屋が見える。

 

 歩いて進む。この階層に敵性モンスターは湧いてこないため警戒する必要はない。

 

 十分も歩けばラヴィラの街に入った。

 

 入ると当然注目を受けるがディはここまでくるとあまり気にせず街を歩く。

 

 適当な肉屋によって焼き串を買って食べる。値段は千セラと高かった。祭りの値段よりも高い。

 この街は外のガーナスバルクとの交易やダンジョンのモンスターのドロップアイテムで街を成り立たせている。そのためにどうしても割高になる。

 

 ディは街を見て回るが特に面白い物はなかった。

 

 仕方がないか、とディはダンジョンの奥へと向かった。

 

 

 

 

 五年が経った。

 

 その間ディはたった一人黙々とダンジョンを潜っていった。

 食事不要、睡眠不要、疲労無効となれば常に最高のパフォーマンスを発揮することが出来る。

 その力を持って既に第百二層までディは進んでいた。

 

 道中モンスターには何百回も遭遇したがディにとっては全て雑魚だった。警戒に値する必要のない雑魚ばかりだ。

 しょうがないので拳で戦ったり剣術を意識して戦うなどをしたが一発当てれば死ぬ程度のモンスターしかいなかった。

 

 ディは出現したゴリアテの上位種をまたも<血液武術・血の閃>(ブラッドアーツ・ライン)で真っ二つに切り裂いて殺した。

 

 道中ディはまだ一年ぐらいしか経ってないしまだ先に行けるやろと思って更に奥へ奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 十五年が経った。

 そしてようやくディは最終層の千層に来ていた。

 道中様々な階層があった。平原だったり砂漠だったりピラミッドだったり雪原だったり迷宮だったり水の中だったり、空島だったり。

 だがアンデッドであるディにはあまり問題なかった。水中でも呼吸が要らないディは問題なく進むことが出来るし、地形が悪かろうと空を飛んで進むことが出来る。

 

 千層に入ったディは真っ白な空間を前に唖然としていた。

 

「何もない」

 

 ディは真っ白な、床も空も真っ白な空間を前に呆然としていた。

 壁は見当たらない。どこまでも白い空間が続くだけだ。

 

「……どこに続きがあるのかな」

 

 ディ視点ではもはや自分が第何層を進んでいるのかわからないし、ここが最終かどうかもわからない。

 

 さてどうしようかなんて悩み始めると声が響いた。

 

『よくぞダンジョンの最終層まで来たな冒険者よ。褒美に死をくれてやろう』

「……死だって? 笑わせる。与えれる物なら与えてみな」

 

 そうディは挑発的に返す。

 虚空から男が出現した。

 真っ白な体。三メートルほどの巨体。

 顔はのっぺらぼうで目もなければ口も鼻もない。

 生殖器らしき物もない。

 

『死ね』

 

 瞬間即死の風が吹いた。黒い風だ。

 ディに風が当たるも意味はない。ディは既に死んでいるアンデッドだ。即死は無効化される。

 

「お返しだ」

 

 ディはわからないが攻撃を受けたという事を認識し<血液武術・血の閃>(ブラッドアーツ・ライン)を使用。

 横に斬ろうとするも少し斬っただけで終わった。

 

「へぇ」

 

 これまで出てきた敵で最高レベルはディは知らないが八十レベルが最高だ。

 そのレベルとなるとさすがにディの攻撃を耐えることが出来る。

 だがディは感触を感じこれまで以上の防御力を感じ取った。

 

 このモンスター、名を神人という。ハーフゴットという人と神の間の存在の種族だ。

 レベルは脅威の九十九。これまでにない強敵だ。

 

『眷属招来』

「ならこちらも──眷属招来」

 

 お互いに眷属を呼び出す。

 

 神人はレベル五十から六十代の十メートルほどの翼と輪がある天使を召喚する。天使は全て剣や槍、盾や弓と矢を装備している。

 どれも骸骨の顔に人の体をしている。

 

 ディが召喚した眷属は前と変わらない。

 体長二十メートルの巨大な狼。真っ黒い影のようにも見えるがひとみは赤い。

 影の狼(シャドウウルフ)。レベルは七十。

 巨大な蝙蝠。三十メートルはある。こちらも影のように暗い。

 超音波による範囲攻撃の特殊能力(スキル)を持つ。吸血蝙蝠(ヴァンパイア・バット)レベルは六十五。

 

 五十メートルという圧倒的巨体。ゴリラに翼を生やし爪を付けた外見をしている。こちらも黒い。

 グレーター・ガーゴイル。レベルは七十。

 吸血蜘蛛(ヴァンパイア・スパイダー)。影の用に暗い体を持つ二十メートルほどの蜘蛛。前足は刃のように鋭い。レベル七十。

 古代吸血馬(エルダーヴァンパイアホース)。影のように暗い体と瞳を持つ。レベル五十。移動速度が速く森渡の能力を持つ。

 

 眷属同士ぶつかって衝突し合う。

 

 ディは空を飛び<血液武術・血の刃>(ブラッドアーツ・ブレイド)で刃を形成。神人に斬りかかる。

 地上では眷属同士が血で血を洗う戦争真っ最中だがお互い気にしない。

 神人は右手で刃を弾いた。

 

「へぇ」

 

 思ったよりやるな、と思いながら何度も斬りかかる。

 弾かれるも少しづつ斬撃によるダメージが入っていく。

 

『<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上><神・肉体超向上>』

 

<神・肉体超向上>はステータスをレベル四分増やす特殊能力(スキル)だ。

 これにより実質神人は百九レベルになる。

 

 神人は<神の剣>という特殊能力(スキル)を使う。白い剣が神人の手に現れる。

 白い剣と赤い血の刃が衝突し合う。

 

 お互い剣術なんてものはない。高ステータスによるごり押し戦法だ。

 

 ディは左手から血の弾丸を射出する。

 綺麗に命中し神人のHPを減らす。

 

<神の息>(ゴッドブレス)

 

 神人から白い霧が発生する。ディの体を包み込んだ。

 これによりディは浄化されかける。対アンデッド用の特殊能力(スキル)だ。

 

 だがディは不死だ。浄化されることは決してない。死ぬ、消滅することなんてのはありえないのだ。

 

 ダメージを受けて痛みを感じつつもディは刃を振るう。

 だがほとんどが剣で防がれる。

 

「ちっ」

 

 それにイラつきを感じたディは手数を増やすかと考える。

 左手の小指をちぎって飛ばし、そこから体を再生する。

 分身にして本体を作る特殊能力(スキル)<血液武術・分身>(ブラッドアーツ・クローン)だ。ただしこちらは服を着ていないので全裸である。

 分身も<血液斬術・血刃>(ブラッドソード・スラッシュ)と血の翼で飛行しながら戦う。

 純粋な二対一を強制することで少しづつ神人にダメージが入っていく。

 

『煩わしい!』

 

 神人はそう叫ぶと己を中心に神の気で爆発を起こす。

 それにより分身と本体両方吹き飛ばされる。

 

 地上に落とされたディは神人を見上げる。

 そこには剣先を向ける神人が居た。

 

『<審判の光>』

 

 神人は特殊能力(スキル)を行使する。

 光の柱にも見えるレーザーが剣先から放たれた。

 

<血液武術・血の道>(ブラッドアーツ・ロード)

 

 抵抗してディも左手から血を大量に放出。血の極太レーザーを放った。

 

 空中で二つのレーザーがぶつかり合う。拮抗する。

 互いに出力は同程度。人を消し飛ばす威力を持つレーザー同士だが同意力の為拮抗する。

 

「くっ……」

 

 ディは己が十年かけて鍛えた血のレーザーが相手を殺せてないことに歯噛みする。

 

 瞬時に血の放出を辞め<血液武術・血の加速>(ブラッドアーツ・ブースト)<血液武術・血の飛翔>(ブラッドアーツ・フライ)で超加速。初速から最高速度のマッハ七で神人に接近する。

 それを持って血の刃で右腕を斬り飛ばして向こう側に着いた。

 

 振り返る。そこには新しく腕を生やしている神人の姿があった。

 

「再生か」

 

 再生には種類がある。HP事再生するトロールやディタイプと外見だけ治るタイプなどだ。

 神人のは後者でHPまでは再生、回復しない。

 

 再度空中で神人とディが衝突し合う。

 

 ──戦いは長引きそうであった。

 

 

 

 

 

 

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