ディは道場前に立っていた。
(何故に和風建築?)
ディは建物を見上げる。そこにあったのは和風の建物だ。
木を基本に使った建物であり、時代劇に出てくるような道場だった。
門を潜って中に入る。そこには掃き掃除をしている男が居た。
「おや、何用ですかな?」
「この道場に入りに来た」
「……貴女のようなか弱い女性が? ここは戦闘訓練所。貴女は来る場所を間違えています」
「私は強いよ」
ディは右手から血の刃を生成し男の首元に添えた。刹那の動きであった。
「……な、なるほど。お強いようですね……」
男は若干引いた。いきなり剣を抜いてくる女など物騒にも程がある。
ディは血の刃を消す。
「こちらへどうぞ。師範代が居ます」
「ああ」
道場の中に入る。
靴を脱ぐタイプらしいので靴を消す。ディの靴、ヒールは自身の血で作っているのだ。
素足で上がると木剣を振るっている男が居た。
「師範代、入門希望者が来ましたー」
「……その女か?」
男は鍛え上げられている男だった。
上半身は裸。筋肉ががっしりとついている。手足は丸太のように太い
金髪碧眼のよくいる容姿。顔つきは優れてるとも悪いともいえない微妙な顔立ち。
男──ラマカスは口を開いた。
「……あんたほどの強者がうちに来る理由はなんだ?」
「へぇ。私の強さわかるんだ」
今のディは両手の指全てに指輪を付けている。
その一つに探知阻害がある。これはあらゆる探知魔法や
「動きからわかる。相当な数モンスターを殺しているだろう?」
「……まぁ、千や万じゃ聞かない数殺してるね」
実際に殺した数は不明だ。何せ二十五年もダンジョンに潜りっぱなしで毎日モンスターを殺していたのだ。数えられる訳がない。
「あんたほどなら剣術も身についてるだろう?」
「いいや? まったくついてない。肉体能力任せの戦術しか取れないんだよ、私は」
「……まさか
「スキル? ……使ったことないね」
「……どうやらド素人を指導することになりそうだ。月謝は払えるか?」
「何十万でも払えるよ」
「なら月二万セラ払ってもらおうか。一応正当な価格だぞ」
「わかった。今払えばいい?」
「いや、月末に払ってくれ。それじゃあ、カイ、更衣室に案内してやれ。着替えたら鍛錬だ」
「わかった」
さて、自分はこれ以上強くなれるのだろうか。ディはそう思いながらカイに着いて行った。
■
二十年が経った。
その間ディは剣術を学びつくした。
四十代だったラマカスは六十になり道場を閉鎖、必然的にディは道場を辞めた。
だが問題はない。ディの神祖の体は才能がある方なので剣術は完全にマスターし、
ディは家の庭で優雅に紅茶を飲む。
紅茶を入れたのは六番だ。ディは六番に名前を与えたりはしてない。
(流石に老いたなぁ)
二十年も経てば人間には老いが来る。
友人となったカズトは老人になったし、六番も中年になった。自分一人だけ変わらない。
変わらずあり続ける自分に少し思うところがあるが、精神安定の力であまり表には出ない。
(さて、そろそろ旅に出ようかね)
これまではふんわりとした目的があって行動してきたがこれからの行動に意味も目的もない。
単にこの世界、大陸を見て回りたいというだけの理由で世界を見て回ろうと思っている。
(それをするには……)
ちら、と六番を見た。
問題はこの奴隷、六番だ。
置いて行く訳にはいかないがかといって死ぬまで旅に着いて行かせる訳にはいかない。人間は老化し劣化するのだ。何十年も旅が出来る種族ではないのだ。
置いて行くとしたら所有権の放棄となり、再び販売に出されるだろうがこの歳の奴隷がどう扱われるかなど想像に難くない。
(……せめてこいつが寿命で死ぬまでは旅に出るの遅らせるか)
まぁ長い人生だしいいだろ、とディは紅茶を飲みほした。
二十五年が経った。
「では、これでこの家は販売に出されます」
不動産でディはかつての自宅を販売に出していた。
戻ってくるのは下手したら数百年後になるので売るしかないと思いディは売りにだした。買った時より安く売られたが問題はない。
ディは今は何百億セラという大金を持つ金持ちになっている。
これもそれもディが六百層などでドロップした装備品を売ったりしたからだ。下手したら一つ一億セラで売却できたことがある。
それを約百個売った上指輪を売った時の金もある。大金持ちだった。
流石に厳禁として持ち歩くには多すぎるのでその大半を金塊や宝石に換金して影の中に収納している。
「ありがとうございました」
ディはそう礼を言ってから不動産を出た。
「…………みんな死んじゃったなぁ」
ディはそうぽつりとつぶやいた。
親交のある者たち、カズトもラマカスも亡くなった。寿命による老衰だ。
それ以外にも道場の仲間なども亡くなった。六番だって死んだ。
はぁ、とため息を吐きながらディは旅に出た。