TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第18話

 

 ディは首都から見て東に進んでいった。向かう先はマチルダ、獣人が住まう土地だ。

 徒歩で行くので普通に行けば二年ほどかかるだろう。それだけの距離がある。といってもディにとっては三十分も本気で飛べば着く程度の場所に過ぎないが。

 だが空を飛んで行くのはなしにしている。旅の道中も楽しみたいのだ。

 

 平原を歩く。道に沿って歩いて行く。

 

(……暇だ)

 

 一人旅だと話す相手が居ないので暇になる。だからと言って空を飛んで行くのは早すぎる。

 

 だが、空は広く、緑は豊かだ。日本では見られない──もしかしたら北海道だと見れるかもしれないが──光景を見ていると心が洗われる気がする。

 

 そうしてディは首都から近い街、ガディックに辿り着いた。

 

 ガディックは首都と同じようの城壁に囲まれた都市だ。

 人口はこの数十年で増えて五万ほど。

 

 城門で軽く話をして中に入る。

 

 こういった新しい街に来たときは年甲斐もなくワクワクする。

 今のディの実年齢は九十七といったところだろう。まだギリギリ有り得る年齢でもある。

 

 街はどこか剣呑な──というか危ない雰囲気に包まれていた。

 はて、何かあるのだろうかとディはそこらの衛兵に話しかけた。

 

「そこの君、何か雰囲気が怪しいけど何かあるのかい?」

「あ、あんた知らないのか? この街にモンスターの群れがやってきてるんだ!」

「……モンスターの群れだって?」

 

 モンスターは蒸れることがある。

 オーガがゴブリンを支配下に置くのは珍しい話じゃないし、ドラゴンだって多数のモンスターを支配することがある。悪魔もそうだ。

 

「なんのモンスターだい?」

「それが、ゴブリンらしい。数は二万」

「……二万か」

 

 そりゃ大変だ、とディは思った。

 ディにとってみればたかが二万程度どうとでもなるが、この世界の住人にとってはそうではない。

 今の大陸最強は四十レベルだし、三十レベルもあれば英雄級とされる。

 そのため一般的な街における最強は二十レベル程度だ。そのレベルで二万の兵士を殺し尽くすことは不可能に近い。

 数とは力なのだ。ディのように力の結晶じみた存在ならどうとでもなるが。

 

「じゃあ、私がどうにかしてこようか」

「え? あ、あんたが?」

 

 衛兵は信じられない者を見る目で見た。

 探知阻害の指輪のおかげでディの力は隠されている。旗から見ればただの女にしか見えないだろう。

 

「ゴブリンはどこから?」

「南の方だが……本当に行くつもりか?」

「ああ、行ってくる」

「……ゴブリンに食われなきゃいいが」

 

 じゃあ、とディは南門の方へ歩いて行った。

 

 

 南門は硬く閉ざされていて開けて通ることは出来なかった。

 仕方がないのでディは跳躍して城壁を超えた。

 

 すたっと着地するとそこは冒険者や衛兵たちが戦の準備をしていた。

 塹壕を掘り木のバリケードを設置している。

 

 余談だがこの世界の冒険者に組合やギルドは今のところはない。傭兵のようなものに過ぎない。

 

 ディは準備している者たちを無視して通ろうとするが声をかけられた。

 

「おい嬢ちゃん。ここに何用だ? 呪文詠唱者(スペル・キャスター)か?」

「いや、私は魔法を使えないよ。だけどすごく強いから戦闘に来た」

「……あんたが? そうは見えないがな」

 

 ディはエロく華奢な体をしている。筋力などあるようには見えない。

 そのために外見だけなら弱く見えても仕方がないだろう。

 

「大丈夫。私は強いから」

 

 そう言ってディは先へと進む。

 

 準備している者たちを超え、最前線に立った。

 

 紅椿を抜いてたらりと構えること三十分。モンスターの影が見えてきた。

 

 ゴブリン。人の子供程度の背丈に緑色の肌に尖った耳を持つモンスター。寿命は八十年ほど。

 戦闘能力は基本一般人程度だが変異種はその限りではない。

 雑食性で肉食より。女を性的に襲うことはない。食事的に襲うことは多々ある。

 

 ホブゴブリ。ゴブリンの変異種。二メートルほどの大きさを持つ。

 戦闘能力は高くレベルにして十四ほど。たまにゴブリンの群れのリーダーをしていることがある。

 

 オーガ。茶色い肌に牙を持つ二メートルほどの大きさの人型のモンスター。寿命は人とあまり変わらない。

 肉食よりの雑食。男も女も食う。

 

 ゴブリンチャンピオン。

 ゴブリンの変異種。二メートルほどの大きさを持つ。

 戦闘能力は非常に高くレベル二十ほど。

 

 ゴブリンシャーマン。ゴブリンの変異種。第二環魔法までを使う。

 

 ゴブリンライダー。狼に乗ったゴブリン。それだけ。

 

 そしてそれらを統括するモンスター。ゴブリンロード。

 戦闘力はホブゴブリン程度だが知能が高く、指揮能力にたける。

 

 それらモンスターが地響きを鳴らしながら歩いてくる。

 

 

「<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上><神・肉体超向上><血・肉体向上>──」

 

<血・肉体向上>はディオリジナルの特殊能力(スキル)だ。ステータスをレベルをプラス五分上昇させる特殊能力(スキル)である。

 これでディは実質百十五レベルのステータスを得たことになる。

 

「<斬撃><超斬撃><飛刃断><拡散剣><致命の斬撃>」

 

<飛刃団>は飛ぶ斬撃だ。射程と威力は使用者の能力値に依存する。

 ディのレベルなら二十キロ離れた相手にも届くしその距離でも城壁を破壊できるだろう。

 そこに更にダメージを増加する特殊能力(スキル)である<斬撃>に<超斬撃>を含めた。

 特殊能力(スキル)は自身のレベル割る五分発動できるためまだ余裕がある。

 

 巨大な──二百メートルを超える飛ぶ斬撃がゴブリン軍を襲った。

 

 横凪に振るわれた為範囲は非常に広い。ゴブリンたちがばったばったと両断されていく。

 

「どんどん行こう──<乱撃>」

 

<乱撃>はスタミナを多く消費する特殊能力(スキル)だが攻撃を多数放つ特殊能力(スキル)だ。

 だがディは疲労無効の為乱発出来る。

 

 何十という飛ぶ斬撃が放たれる。二百メートルを超える斬撃が。

 

「ひ、ひでぇ……」

「レベル差の暴力だな、これ……」

 

 それを見ていた冒険者や衛兵の開いた口がふさがらなかった。

 二万のゴブリン軍となれば決死の覚悟で挑まねばならない脅威だ。その脅威がバターのように斬られていく様は見てて複雑な気分になる。

 

 そうして五分ほど斬撃を乱射する。ゴブリン軍は最初の一撃で逃げ出していたがその七割が殺された。

 

「よし、行くよ」

 

 ディは左手の指を切り落とし飛ばした。

 

 分身にして本体を増やす特殊能力(スキル)<血液武術・分身>(ブラッドアーツ・クローン)だ。

 合計十一のディが飛び回り逃げたゴブリン軍を追いかけまわし殺していく。

 

 そうして十分も経てば殲滅が終わった。

 

 レベル二十程度のモンスターしかいないのであれば敵にすらなりえない。ディはレベル百の超越者なのだから。

 

 

 

 

 ■

 

「あの~」

 

 ディが分身を消し紅椿を影に納めると声をかける者が居た。

 

「何か?」

 

 ディはそう微笑みで返した。男、衛兵ヒューズはたじろいだ。

 

「え、えっと、その。貴女は一体……?」

「私はディ・フランケリヒ。旅人だよ」

 

 今この時代においてディの名はあまり知られてない。

 そのためヒューズがディの名を聞いても聞いたことがなかった。

 

「それじゃ、私は街に戻るね」

「は、はい……ありがとうございました……?」

 

 ヒューズはどうしていいかわからずそのまま素通りさせてしまった。

 

 ディはこれでいいだろと跳躍し街の中に戻るのだった。

 

 

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