TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第21話

 

 半日が過ぎた。夕焼けも落ち切って夜の闇が来ている。

 

 不死城の玉座の間の戦いは今、終わりを迎えようとしていた。

 

「何故死なん!」

 

 マチアスはそう叫んだ。

 

「私が不死だからだよ」

 

 変わらずディは微笑んだ。

 

 玉座の前にマチアスは立ち、ディがゆっくりとマチアスに向かって歩き始める。

 ディはマチアスに用事があってまだ破壊していなかった。

 ディの目的はこの不死の森に何故アンデッドが永遠に湧き出るのか調べる事だ。その原因らしきものであるマチアスを破壊すれば目的が達成できない。だから手加減して戦った。

 中にはレベル六十以上の呪文詠唱者(スペル・キャスター)と戦ってみたかったというのもあって手加減したが。

 

 

「くっ……」

 

 マチアスは歯噛みした。

 魔力が尽きている。何の魔法も行使できない。

 半日、時間にして十二時間という超長時間の戦いはマチアスの魔力を枯らした。

 頭を吹き飛ばし心臓を貫いてもディは動き続けた。

 炎系に特化したせいで戦闘に仕える特殊能力(スキル)なども持っていないマチアスはこのままディに斬られるのを待つしかない。

 かに思われた。

 

 ──オォォォオ

 

 

 亡霊の声が聞こえた。ディは眉を潜める。

 

「お、おお! 我が主よ! ついに復活するのですね!」

 

 マチアスはそう叫んだ。

 

 玉座からぬるりと亡霊が湧いて出てきた。

 

「これは……レイスの上位種かな?」

 

 ディに言う事はあっていた。

 出現したのは二メートルほどの上半身だけの骸骨の亡霊だ。

 種族はアストラルロードという亡霊系種族の最上位。名はフェルディナント。レベルは脅威の八十二。

 

 亡霊の王、フェルディナントがディに襲い掛かった。

 ディは紅椿で斬ろうとするも体をすかっと素通りした。

 

「うん?」

 

 フェルディナントの種族特殊能力(スキル)だ。一時的に完全な非実体になる特殊能力(スキル)である。

 自分が干渉できなくなる代わりに何ものにも干渉されなくなる特殊能力(スキル)だ。

 

 そしてフェルディナントがディにとりついた。

 

 

(──これは)

 

 記憶が流れ込んでくる。

 

 それは、亡国の記憶。

 

 栄華を誇った国とそれが滅亡するまでの記憶だ。

 死の恐怖に追われた老化した王と魔術師により死を超克した存在となるための儀式。

 それにより王フェルディナントは亡霊の王と変異した。

 

 アストラルロードの種族特殊能力(スキル)を持ってフェルディナントはディの精神を破壊しにかかった。

 あらゆる耐性、防御を貫通し精神を破壊する力だ。例えアンデッド相手でも通じる。

 

 だが──ディはアンデッドである前に不死である。

 

 不死。死なない事。死ねない事。

 

 ディは肉体的損傷を受けても再生する。不死だから。

 例え頭が吹き飛ぼうが心臓が焼けただれようが──肉片一つ残らず消し飛ばされても魂事破壊されても消滅させられても殺されても蘇る。不死だから。

 故に、精神の破壊という死を与える力に対しディは不死の力が働いた。

 

 ──浸食される。

 

 破壊しに来たフェルディナントを逆に不死の力で浸食し返した。

 

 ディは既に『ディ・フランケリヒ』という不死の存在として確定している。そこから変化することはない。

 

 そうして哀れな亡霊の王は消えてなくなった。

 

 

「…………王、よ」

 

 マチアスがポツリと呟いた。

 

 ディはすたすたと玉座に向かって歩いた。

 そして白い玉座に座り込む。

 

「うん。私が王だよ」

「……あぁ……そんな……」

 

 マチルダは察した。

 マチルダはフェルディナントの力でナイトリッチになったアンデッドだ。故に創造主との間に魔法的な繋がりを持っている。

 その繋がりが主を目の前の女──ディだと主張してくる。

 

 マチアスは玉座の前に行き、そして片膝をついた。

 

「……我が主に、忠誠を」

「受け取ろう」

 

 

 こうしてディは不死城を手に入れた。

 

 

(うーんどうしよ)

 

 ディは悩んでいた。

 アンデッドが湧き出る森という事で気になってきただけだ。

 今フェルディナントを侵食したことでその記憶も閲覧できる。

 不死の森にアンデッドが湧いていたのは単純に不死城其の物が持つ機能だったらしい。

 

 不死城は城型のアンデッドである。能力はレベル三十以下のアンデッドの無制限の創造。

 材料などは要らず無から永続的にアンデッドを創造し続けることが出来る。

 その力を持って城を守るためにアンデッドを無制限に製造、放出し続けていたのだ。

 

(どーしよっかな)

 

 謎を解いたのでとっととこの森を出て旅を再開しようかとも思うがなまじフェルディナントの記憶を得てしまったので配下であるマチアスを放置したり破壊していくのは気が引ける。

 

「マチアス、お前はどう思う? 私が城主としてこの城を支配することに」

「なんの異論もありません。貴女こそが我らの主です」

「……そうか。じゃあ、手始めにこの森を支配するか」

「わかりました。主よ」

 

 そのためにまずはやることがある、とディはフェルディナントの力を使う。

 

<上位転移>(スペリア・テレポーテーション)

 

 それは転移魔法。純戦士であるディが行使できないはずの魔法を行使して見せた。

 ディは玉座の間から消え城の門前に来た。

 

 そこには絢爛の死体がある。腐敗はまだしていない。

 

 ディは今、フェルディナントの力──レベル八十二の死霊系呪文詠唱者(スペル・キャスター)の力を行使できる状態になっている。

 魔法行使能力などはフェルディナントのステータスを参照しHPと魔力は合算して処理されている。

 いわばフェルディナントがディに憑依しその力を行使できるようにしているというのが正しいだろう。

 

「<不死者作成>」

 

 ディはフェルディナントを経由して特殊能力(スキル)を使う。

<不死者作成>は使用者のレベルが十以上離れている相手にのみ使える特殊能力(スキル)で対象をアンデッドとして蘇生する。

 絢爛の死体ががくがくと動き出す。

 

「……ん……」

 

 絢爛の生首が喋った。

 体がうごき立ち上がり、首を持った。

 

「どうもー、主様。私を蘇らせてくださりありがとうございます」

 

 絢爛は頭を下げた。手で持っているので奇妙な下げ方だ。

 術者が創造や作成した存在とは魔法的な繋がりを得る。その力で誰が主かわかるのだ。

 

「気にすることはない。その様子だとデュラハンになったようだな」

「ですです。ハーフピクシーからデュラハンにジョブチェンジしました」

「そうか……君の仕事はこれまでと変わらない。変わらずここで門番をしてくれ」

「わかりました、主様」

 

 それじゃあ、とディは転移魔法を唱えた。

 

 

 転移した先は会議室だ。

 簡易的な玉座が一つに長いテーブルが二つ横並びになっている。

 正面を向いたコの字方のテーブルだ。

 壁にはいくつか本棚がある。ディはフェルディナントの記憶を頼りにある地図を取り出した。

 玉座に座り地図を広げ、<念話>(テレパシー)を唱える。

 <念話>(テレパシー)は遠くにいる相手と会話を可能にする魔法だ。届く距離は術者の技量や魔力量に依存する。

 フェルディナントのレベルならばこの大陸ないならば問題なく通る。

 

 この不死の森は山脈の前に広がっている。

 アドレミシア山脈と言い非常に大きな山脈だ。

 アドレミシアには幾つか亜人種などが住まう。

 山脈の外には主にフロストトロールやフロストジャイアントが住まい山脈の中にはロックモルドと岩牙獣人(ガルドロア)とフロストドラゴンがが住まう。

 それら以外の種族も住んでいるが生態系上位はこれらだろう。

 

 その山脈のふもとに不死の森が広がっている。

 

 この不死の森にも亜人や異形種が住まう。

 

 トロールやオーガ、ゴブリンなどの異形種やダークエルフという人間種も住んでいる。

 それ以外にはスプリガンという木が人型になったような者も住んでいるし、アルラウネも住んでいる。

 沼地には沼顎獣人(ガルザーク)というアリゲーターの獣人が住んでいる。

 

 無論森に居る彼らは常にアンデッドとの脅威と戦っているのでそこそこたくましい。ただレベル一から六程度のアンデッドとしか戦ってきてないが。

 

 ディが繋げた相手はマチアスだ。

 

『何か御用でしょうか』

「会議室まで来てくれ」

『かしこまりました』

 

 会議室にマチアスが転移してきた。

 

 この城には一応転移阻害の結界が魔法道具(マジックアイテム)で張られている。

 それにはマチアスとフェルディナントは対象外になっているので気軽に転移が出来る。ただそういった設定が出来る分ないよりはマシ程度の転移阻害に過ぎないが。

 

「何か御用でしょうか」

「この森を征服する。そのための知恵を貸してくれ」

「わかりました。ではまずは沼地を攻略しましょう」

「沼地か……確か沼顎獣人(ガルザーク)が住んでいるんだったな」

「はい。沼王という者が七つの部族を支配しています。そのものに宣戦布告し、攻め落とすとしましょう」

「軍の指揮はどうする?」

「アンドレアに任せましょう。奴ならば攻め落とせるはずです」

「わかった。それで行こうか」

 

 ディがこの森を支配するのは長い人生において帰る場所が欲しくなったから。家なき子は嫌であった。

 

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