TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第24話

 

 ディは一人ナイトメアに乗って不死の森を進む。

 向かう先は西。そこにも支配者が居る。

 ダークエルフの長から聞いた話ではその者は異形種らしい。

 翠蛇妃(すいだきひ)と呼ばれる支配者だ。それを下せば残るは東のみとなる。

 

 進んでいると広場に出た。

 自然にできた広場ではなく木々を切り倒すことで出来た広場だ。

 門があり門の前にはオーガが二体棍棒を持っている。

 ディはナイトメアから降りて送還し、オーガに近づく。

 

「人間! 何の用で来た!」

 

 オーガがこん棒を構えながらそう叫んだ。

 

「私はディ・フランケリヒ。この森を支配するために来た」

 

 その台詞にオーガ二人は笑った。

 

「ぐわっはっはっは! お前のような者が森を支配できるわけがない!」

「そうかな?」

 

 ディは己の影から紅椿を取り出し、構える。

 そして片方の首を切り落とした。

 血がドバっと噴出しディはかぶりたくないので血を操って門に付着させた。

 

「な、なに?!」

 

 片方のオーガが驚愕に叫んだ。

 

「さぁ、ここの主を出しな。出さないと君も殺すよ」

 

 オーガは情けない悲鳴を上げながら門を開けて走っていった。

 ディも門の中に入る。

 

 そこは集落となっている。

 木製の家々が立ち並んでいる。どれも三階建ての家ほど大きい。

 だが住んでいるのは二メートルほどの大きさを持つオーガやトロールばかりだ。

 中にはナーガも居た。

 ナーガとは下半身が蛇で上半身が人間の種族の異形種の事だ。寿命は五百年ほど。

 下半身、鼠径部からしたが蛇となっている。

 

 ディは遠巻きに見られている。

 

(さて、どうするか)

 

 殺しすぎるとのちの支配に問題を起こす。そのため殺すのは最低限にしたい。

 

「お前が北の支配者か」

 

 そう女の声がした。

 

 ひときわ大きい建物からその者は出てきた。

 長身。下半身だけで二メートルはある。

 下半身、というか膝から下は緑色の蛇の体になっている。

 上半身は妖艶な美女の体をしている。緑髪緑目の長髪の女だ。

 腕は脇の下からもう一対生えていて四つ腕となっている。

 胸は大きく垂れ幕で隠しているが股間は隠していない。

 

 右手には三股に別れた槍、トライデントを持っている。

 

「君が翠蛇妃かい?」

「いかにも。私の名はカロリーネ。この西の支配者じゃ」

「そうか。単刀直入に言おう。私の支配下に下れ」

「はっ。力も見せぬ者の支配下に下る訳が無かろう」

「……それじゃあ、試合と行こう。勝った方が全てを得るという事で」

「いいだろう」

 

 二人は集落の中央に移動する。

 

 オーガやトロール、ナーガたちが遠巻きに見守る中試合が始まる。

 

「先手は私がもらうぞ! <魔力光線>(マジック・レイ)!」

 

 カロリーネは魔法を唱えた。

 カロリーネはレベル七十を誇る魔法戦士だ。第五環魔法まで行使できる。

 

 <魔力光線>(マジック・レイ)は魔力によるレーザーを放つ魔法だ。威力は込めた魔力に依存する。

 更に特殊能力(スキル)の<貫通>と同じ効果を持ち使用できる環位分相手を貫通していく。

 

 ディの体を貫通し腹に風穴を開けた。

 

「ふん。無様なものよ」

 

 カロリーネは勝利を確信しにやりと笑みを浮かべた。

 

「うん。強いね──だけどそれだけだ」

 

 ディもまたにやりと笑みを浮かべた。

 腹に空いた傷がふさがっていく。不死の再生能力だ。

 

「なんだと? ……貴様、トロールのハーフか?」

「トロールにハーフは生まれないだろう?」

 

 亜人種のハーフは基本生まれない。よっぽどの無理をすれば生まれるかもしれないが。

 

「……そうだな。行くぞ!」

 

 カロリーネはトライデントを持って突撃した。

 地味に<突撃>の特殊能力(スキル)を使っている。

 

 ディは紅椿でそれを弾く。

 何度もカロリーネは突きを繰り返すも全てディがはじき返す。

 

「くっ」

 

 カロリーネは後ろに移動した。

 

<怪物召喚5th>(サモンモンスター・フィフス)

 

 唱えるのは召喚魔法だ。

 

 呼び出されるのは岩の護精霊(ロックガーディアン)だ。

 レベル三十五の精霊で人型の岩。下半身は一つの大きな岩だ。両腕は丸太ほどに太い。

 防御性能に重きを置いた精霊。物理攻撃力は大したことない。

 どんな攻撃を受けても一度だけ耐えれる能力を持つ。

 

(うん。乗ってあげようか)

 

 ディはあえて岩の護精霊(ロックガーディアン)を瞬殺せず相手の時間稼ぎに乗ることにした。

 岩の護精霊(ロックガーディアン)が極太の腕を持って襲い掛かる。ディはそれを紙一重で避け続ける。

 

<全能力強化>(フルポテンシャル)<闘気>(ブレイブオーラ)<筋力値上昇>(パワーアップ)<俊敏値上昇>(アジリティアップ)──」

 

 カロリーネが幾つか強化魔法を唱える。

 魔法戦士の強いところだ。バフ魔法を唱えることでステータス以上の強さを発揮できる。

 

 ディは相手のバフが終わるまで岩の護精霊(ロックガーディアン)の猛攻を回避し続ける。

 バフが終わったタイミングでディは綺麗に二度岩の護精霊(ロックガーディアン)を斬ることで送還させた。

 光の粒子となって消えていく。召喚されたモンスター特有の現象だ。

 

「行くぞ──」

 

 カロリーネは幾つか特殊能力(スキル)を使う。

<肉体向上><肉体超向上><真・肉体向上><突撃><超突撃>に<疾風>だ。

 

 ディはその突撃を紅椿ではじいた。

 先ほどと変わらないが実は<肉体向上>系の特殊能力(スキル)は全部使っている。

 

「くっ」

 

 カロリーネは苦い顔をしながら<八連撃>を使う。

 ディは<即応反射>で全て正確に弾く。

 そして連撃が終わった後右の上の手を斬り飛ばし、トライデントを落とさせた。

 更に首筋に紅椿を置く。

 

「まだやるかい?」

「……いや。私の負けだ」

 

 カロリーネは素直に負けを認めた。

 

「その傷は治しておこうか。<大回復>(ヒール)

 

 ディは第六環の回復魔法を唱える。

 体力を大幅に回復し欠損や呪いなどの状態異常もほとんど治す魔法だ。

 それにより新しい腕が生え、落ちた腕は消滅した。

 

「……回復魔法も使えるのか」

「まぁ、私のは少しずるをしているけどね」

 

 フェルディナントが憑依しているからこその魔法能力だ。

 

「それじゃあ、これからについて話そうか」

「……わかった。家に来てくれ」

 

 カロリーネはトライデントを拾い<小空間>(ポケットスペース)を唱える。

 この魔法は異空間に物資をしまえる魔法だ。収納量は術者の技量に依存する。

 トライデントが虚空に消えた。

 

 ディはカロリーネに着いて行きこの集落で一番大きい家に入っていった。

 

 中にはテーブルと机がある。キッチンには魔法道具(マジックアイテム)のコンロや冷蔵庫さえあった。

 意外と文明的だなとディは失礼な感想を抱きながら椅子に座る。

 

「それで、今後の支配権だが……」

「ああ。それについては──」

 

 長い、長い話し合いが始まった。

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