TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第27話

 

 リトスフィアの宮殿。その玉座の間。

 床も壁も天井も白い。壁には文様が刻まれ、左右には人の彫像が置かれている。

 玉座は白く威厳のある形をしている。

 

「人間の女が、岩牙獣人(ガルドロア)の侵攻を跳ね返した?」

 

 玉座に座る王ユルゲンは執政が持ってきた話に疑問を抱いた。

 ユルゲンは王冠を被っているロックモルドだ。それ以外は他のロックモルドと変わらない。王冠は石で出来ている。

 玉座の間には三人のロックモルドが居る。王、執政、戦士長の三人だ。

 

「はい。ディ・フランケリヒと名乗る自称オルクスという国の女王が単独で岩牙獣人(ガルドロア)の侵攻を跳ね除けました」

 

 執政がそう話す。

 

「……その者は亜人や異形か?」

 

 亜人種や異形種は力を至上とする主義が強い。

 必然その集落や国のトップとなると相応の戦闘力を有する。

 

「いえ。見た目は人間の女らしいです」

「……見た目がそうなだけで実際は違うのではないか?」

「話ではアンデッドを率いていたとのことですが……あり得るとしたらゾンビなどの外見が人とあまり変わらないアンデッドでしょうか」

「だが仮にアンデッドだとしたら何故我らを襲ってないのかか問題、か」

 

 うぅむ、と執政と王は考える。

 

「王よ。まずはそのディとやらに恩賞を与えた方がいいのではないでしょうか。百を超える岩牙獣人(ガルドロア)を殺しきれる実力者。味方に引き入れた方がいいと思います」

「……そうだな。だが、ディ・フランケリヒが本当に王だった場合、どうなる? 一国の王に戦わせた国家となる」

 

 自称国家が本当の国家だった場合これまでの対応が不味いことになる。

 それに国家元首を玉座に連れて膝をつかせるわけにはいかないだろう。

 

「……ここは一度相手の言う事を信じてみるのはどうでしょうか」

 

 執政はそう発言した。

 

「それしか道はない、か」

 

 ユルゲンもそうすべきだと判断した。

 

「よし。ディ・フランケリヒを客間に呼ぶのだ。私が直々に見定めよう」

 

 

 

 ■

 

 

 ディは宮殿を歩く。

 白い廊下だ。壁には絵画が飾られ壺なども置かれている。

 豪華絢爛とはこのことを差すのだろうとディは思う。

 ロルフは外に置いてきた。王との対談では居ても困るからだ。

 

 ディを案内する兵士に着いて行くことしばし。兵士が止まる。

 

「この中で王がお待ちです」

「そうか」

 

 兵士がノックをすると「中に入れ」と中にいる兵士から返答が来る。

 兵士がドアを開け、ディも中に入る。

 

 中はそこそこの広さを持つ客間だ。変わらず石の机と椅子がある。

 椅子に座るのは国王ユルゲン。椅子の後ろには兵士が二人と執政が立っている。

 

 ディは向かい合うように椅子に座った。

 

「初めまして、私はディ・フランケリヒ。オルクスという国の女王をしている」

「……初めまして。私はユルゲン。このリトスフィアの王だ」

 

 ディとユルゲンはお互いに手を差し出し握手をする。

 

「寡聞にして存ぜぬがどのような国で?」

「主に亜人種がいる国だよ。沼顎獣人(ガルザーク)やオーガにトロール、アルラウネも居る」

「……亜人種の国家、という訳か」

 

 亜人種の国家というのは珍しいがないわけじゃない。

 大陸を統一している帝国があるが帝国の目の届かないところ、山岳地帯などの人が住みにくい場所には亜人種などが集落を作り国家というものを形成していることもある。

 といってもそれらは国家としてみれば貧弱で帝国とぶつかれば木っ端みじんに潰されるので衝突を避け隠密しているが。

 事実リトスフィアも帝国から隠れて存在している国家だ。と言っても山脈の中に国があるなどまず帝国も思ってないから発見されてないだけだが。

 更に言えばリトスフィアは国家を自称しているがその実は人口千二百人程度の都市にすら満たない集落である。

 

「それで、貴国は何用で我が国に?」

「取引をしに来た。我が国の工芸品などを対価に、貴国から建築士などを招きたいと思ってね」

「なるほど、なるほど。交易品はお持ちに?」

「ああ。持っているとも。ただ……既にモルグル商会と話を進めていてね。最初来た時宮殿にはいくなと言われたからね」

「それは申し訳ないでは──」

「ああ、その前に私から提案がある。君たちはあの亜人……岩牙獣人(ガルドロア)の脅威にさらされ続けている。それは違いないかい?」

「ふむ。確かに岩牙獣人(ガルドロア)は我々の脅威として君臨しているが、それが?」

「私がその脅威を完全に取り除こうじゃないか」

「……それは無理だ、岩牙獣人(ガルドロア)を支配しているのはフロストドラゴンの王。抗える存在ではない」

「いいや。私なら勝てる。それに私が勝手に行って……やられたとしても君たちに損失はないだろう?」

「むぅ……」

 

 ユルゲンは考える。

 この女の言う事をどこまで信じた物か、と。

 確かに岩牙獣人(ガルドロア)とその支配者であるフロストドラゴンはリトスフィアの脅威だ。故に対処しなければならない。

 百を超える岩牙獣人(ガルドロア)を対処できる戦闘力を持つが流石に竜相手に勝てると思えるほどユルゲンは楽観的ではない。

 だが同時に放置し続けていい問題とも思っていない。いずれは対処しなければならない事だ。

 その対処すべき時が今ではないかとユルゲンは考えた。まだ国家に余裕がある今ではないか、と。

 

「……わかった。貴国に頼もう。そしてそれが成された暁には貴国に対し惜しみない支援を約束しよう」

「ああ。ありがとう……では、すぐに行動に移ろうと思う。ああ、だけど私の配下を街に入れてもいいかな? 彼らは強いから私が居ない間この国を守るぐらいはできるはずだ。私が居なくなった途端滅んでしまいました、は嫌だからね」

「わかった。受け入れよう」

 

 これでよし、とディは立ち上がった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 ディは再び岩牙獣人(ガルドロア)が来たトンネルに来ていた。

 死体は既に無い。埋葬されている。放置すればアンデッドになるため埋葬はすぐに行われる。

 火葬し骨を砕き埋めている。アンデッド化することはまずないだろう。ごくまれにそこまでしてもレイスになる者が居るが。

 

<八咫烏のしるべ>(リードオブ・ヤタガラス)

 

 ディは魔法を唱えた。

 <八咫烏のしるべ>(リードオブ・ヤタガラス)は道案内の魔法だ。

 最短でトラップなどの脅威がない道を案内してくれる。

 

 三本足のカラスが召喚され道案内を開始した。

 

 

 ──二週間不眠不休で進んだ。

 そしてようやくディは目的地にたどり着いた。

 

「ここか」

 

 着いた先は都市だ。

 だが、リトスフィアのような煌びやかさはない。

 石の家々が並び、奥には奇妙な城が見える半球状の空間だ。

 

(……あれは城なのか?)

 

 実に不格好な城だ。取りあえず形だけそれっぽくしましたという感じである。壁の石もでこぼこしている

 

 ディはジャンプして街の中心あたりに降り立つ。

 すると当然周囲に居る岩牙獣人(ガルドロア)たちがいきり立った。

 

「うん──<威圧>」

 

 ディは特殊能力(スキル)を行使した。

<威圧>の特殊能力(スキル)は使用者のレベル半分以下の者の行動をできなくする特殊能力(スキル)だ。

 ただし精神系に分類されるためアンデッドなどには通じないし第三環程度の対精神系魔法で防御される。

 

 だがこの場にレベル五十以上の岩牙獣人(ガルドロア)はおらず全員地に付して行動できなくなった。

 

「君たちに聞きたい。君たちの主であるフロストドラゴンはどこにいる?」

 

 その問いかけに答える者はいなかった。

 はてなんでだろうかとディは思いすぐにそりゃ威圧されてたら答えられないかと威圧を解除した。

 

「ああ、すまない……これで話せるようになっただろう? 君たちの主はどこだ?」

「あ、あの城にいます!」

 

 近くにいた岩牙獣人(ガルドロア)がそう叫び城を指さした。

 当然そこにいるか、とディは軽く返事をしてから城に向かった。

 

 城に入る。

 中は思ったより簡単な作りだ。

 支えるための柱が何本も立っているだけの広間であり、部屋割りもないし通路すらない。

 奥にはフロストドラゴンが四体居る。

 

 

 フロストドラゴンは雪色の鱗を持つ全体的に白いドラゴンだ。

 瞳は青く、細長い蛇に似た体形をしている。背には当然蝙蝠にも似た皮膜のついた竜の翼が生えている。

 三体のドラゴンはそのような標準的な体をしているが最後の一匹は違った。

 体長十メートルという巨体。首が異様に長い姿。

 

 ディはそのフロストドラゴンに近づく。

 その一体は金貨の山の上に寝ていた。

 

「なんだ、お前は」

 

 そのフロストドラゴン──グラシエルナは可憐な女の声を出した。

 

「私はディ・フランケリヒ。君を支配する者だよ」

「我を支配するだと? 面白いことを言うな……だが、外の岩牙獣人(ガルドロア)共はどうした? 戦わずここに来た臆病者か?」

「少しお話したら簡単に通してくれたよ」

「ほぉ。面白いな」

 

 くつくつとグラシエルナは笑った。

 

「我を笑わせた褒美だ。死ね」

 

 グラシエルナは口を開いた。

 放たれるのは竜種の通常攻撃手段にして切り札。ドラゴンブレスだ。

 

 冷気の息がディに命中する。

 ディはそれを防ぐでも回避するでもなくただ受けた。

 

 城の床に霜が出来て凍っていく。

 ディの体が霜焼けし凍っていく。壊死はしない。

 ブレスが終わった後は体の至る所が凍ったディだ。

 

「うん。流石はドラゴンだ」

 

 ディはバキバキと体を動かし凍った体を溶かすようにした。

 

「我がブレスで死なないとは……事前に魔法で耐性でも得ていたか? まぁいい。ブレスが通じぬのなら……」

 

 グラシエルナは金貨の山から下りて歩いてくる。

 

「死ね」

 

 グラシエルナは右腕を振り上げ落とした。

 ディはそれに対し右手から血の刃を生成。カウンターで相手の右腕を斬り飛ばした。

 

「なんだとぉ?!」

 

 それに驚愕の声を上げ、退屈そうに見ていた三匹のフロストドラゴンも驚愕に目を見開いた。

 

 切断面から血がドバドバと流れ出る。

 

「お、己!」

 

 グラシエルナは今度はしっぽで攻撃をした。

 薙ぎ払いが飛んでくるが今度もディは尻尾を斬ることで防いだ。

 

「ぬぅぅぅう!」

 

 ならばとグラシエルナは全体重をかけたのしかかりを見舞いする。

 ディは血の刃を消しグラシエルナに抱き着いた。

 そしてその肌に牙を立てた。

 

 眷属創造の力をディは行使する。

 竜の血は人の血よりは少し美味しくなかった。

 

 血を吸った後ディは後ろに跳躍することで避ける。

 

 ビタンビタンとグラシエルナが撃ちあがった魚のように跳ね回る。

 そして──巨大化していく。一回り以上体が大きくなっていく。

 青い瞳は赤い瞳に変わる。全体的に体に筋肉がつく。

 更に切り落とした腕と尻尾が生えてくる。ブクブクと肉が増殖し再生した。

 体が肥大化し倍の体躯となった。

 

 五分ほどのたうちまわったのち、グラシエルナは姿勢を正しディの前に頭を下げた。

 

「我が主よ。どうか我に命令を」

「うん。私の支配下にはいってるね」

 

 よしよし、とディは喜んだ。

 今回この竜を眷属創造の力で眷属にしたのには実験的要素が強い。

 人間以外の相手を眷属に出来るのか、という問いと敵対者を眷属にしても支配下に置けるのかという疑問だ。

 答えは両方とも可能というものだった。

 更にグラシエルナは強くなっている。種族レベル三十が加算された。

 合計レベル七十五レベル。単独で国を滅ぼしてもお釣りがくるレベルの怪物となった。

 

「それじゃあ、岩牙獣人(ガルドロア)たちを私の支配下に置こうか。ついてきて」

「わかりました」

 

 ディの言葉に従いグラシエルナが立ち上がる。

 

「ま、待ってくれ」

 

 そういうのは広間にいた三匹の竜だ。

 

「あなた、様は……私たちをどうするつもりですか?」

「ああ、君たちか……逆らうなら殺して、そうでないなら私の支配下にはいってもらうよ」

「服従を。どうか私たちに寛大な処置を」

「お、同じく」

「殺さないでください!」

 

 三匹の竜は頭を下げた。

 

「うん。君たちを受け入れよう……それじゃあ、今度こそここを出るから待っててね」

 

 そう言い残しディはグラシエルナを連れて外に出た。

 

 外には岩牙獣人(ガルドロア)たちが居た。

 

 ディが目線をグラシエルナに向けるとグラシエルナは首を上げた。

 

「聞け! 岩牙獣人(ガルドロア)たちよ! 今日より我らの支配者となるディ・フランケリヒ様だ! この御方に忠誠を誓うのだ!」

 

 その台詞に岩牙獣人(ガルドロア)たちは困惑する。

 見た感じ強そうに見えない女が今日から支配者だと言われて混乱しない訳がない。

 だが自らの圧倒的強者として君臨していた支配者がこうべを垂れる相手。恐る恐る岩牙獣人(ガルドロア)たちは頭を下げた。

 

「うん。君たちには今後我が国で暮らしてもらおうか。それじゃあ──」

 

 こうしてディはフロストドラゴンと岩牙獣人(ガルドロア)を支配下に置いたのだった。

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