TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第四章 革命編
第28話


 

 五百年の時が過ぎた。

 その間、様々なことがあったが、大した問題は起きなかった。

 せいぜい統治に飽きたディが時折国外に旅に出て変な伝説を作ってきた程度の事だ。

 数百年の時を生きたことでディはすっかり女の精神に染まった。

 

 

 

 

 

 不死城の門前に二人の女が居た。

 

 片方は長身の女だ。身長百七十センチほどだろう。銀髪に黒い目をしている。

 軍服を着た女でありどこか王子様系女子を彷彿とさせる。

 短髪であり左目に眼帯をしていて左腕は義手であった。

 

 もう片方は黒髪赤目の女だ。なぜかセーラー服を着ている。

 腰には刀を差している。どこかおどろおどろしい刀だ。

 

「……ここが」

「ああ。気を抜くなよ、ニーナ」

 

 銀髪の女、ナディネは慎重な顔で呟いた。

 

 

 今、この大陸は大きな戦争が起こっている。

 事の発端は千年続いた大帝国の腐敗だ。

 上層部が腐り切り、酒池肉林の宴を開いている。

 女と見れば即レイプし男は気軽に拷問にかけて殺す、麻薬は貴族のたしなみレベルだ。

 その腐った国を変えようと動く革命軍と長年の帝国への恨みを晴らさんと動く西のアルマテーナが帝国と戦争状態になっている。

 既に帝国からは西と南が支配地から無くなっているがエルフたちは帝国の恨みを忘れていない。

 

 ナディネはそんな革命軍の幹部の一人であり、この戦争を早急に終わらせるために人材発掘に来ていた。

 その相手こそがディ・フランケリヒ。数多の伝説を作った生きた伝説を味方に引き入れれば勝率は上がるだろう。

 逆に帝国側に取り込まれれば革命軍が一夜で滅びかねない為早急に来る必要があった。

 事実ディの伝説の中には一夜で大都市を滅ぼしたというのもある。敵対すれば命はない。

 

「すまない、少しいいだろうか」

 

 ナディネは目をつぶっている門番に話しかけた。

 

「んあ……誰です貴女たち」

 

 門番……絢爛は目を開けた。

 緑色のチャイナドレスを着用している。髪色は赤で瞳は青。

 腰まで届く長髪をしている。容姿は優れていると言っていいだろう。

 首にはチョーカーがついている。このチョーカーは魔法道具(マジックアイテム)だ。離れた首と頭を繋げるアイテムである。

 左耳に水晶のピアスを付けている。これも魔法道具(マジックアイテム)であり<念話>(テレパシー)の魔法が使えるアイテムだ。

 

 絢爛の種族はデュラハン。頭と首が離れたゾンビの上位アンデッドだ。

 戦闘力も相応に上がっており、この二人組程度なら簡単に蹴散らせる。

 

「私たちは革命軍の者だ。事前にアポはとっている」

「革命軍……あぁ。ダークエルフがなんか言ってましたねぇ」

 

 ディの領地に居るダークエルフは時折外に出る。

 それは多種族と性行為しに行ったりだとか、単に里の中だけじゃつまらないからだとかだ。

 そのダークエルフたちが外に行き適当にディについて詳しく話したりするのを革命軍の手の者が見つけ、そこからディまで話が行ったのだ。

 それで二人はアンデッド蔓延る不死の森を問題なく通ってこの不死城前に来れていた。

 

「しばしお待ちを」

 

 絢爛は<念話>(テレパシー)を使用する。

 繋げる相手はマチアスだ。

 

「マチアスさーん。革命軍? の人が来ましたが通していいですか?」

 

 すぐに返事が来る。

 

『もう来たのか。人数は?』

「二人ですが……」

『ふむ……まぁ、いいだろう。通してやれ』

「わかりましたー……通っていいですよー」

 

 絢爛がそういうと門が自動的に開いて行く。

 

「ありがとう」

 

 ナディネはそう礼を言い、門を潜って中に入った。

 中はホールになっていて螺旋状の階段がある。

 

 そこに黒い渦が出現する。靄が集まって三メートルほどの渦となっている。

 渦から出てきたのはマチアスだ。

 肉も皮もない骨だけの姿。

 紅い豪華なローブを纏っている。炎を象ったローブだ。

 

「ようこそ、我が主ディ様の城へ。主に会いに来たのだな?」

「そ、そうだ」

 

 ナディネは出てきたのがザ・アンデッドで少し威圧されるが負けじと返した。

 アンデッドの巣窟とは噂話で聞いていたが実物を見ると怖い物がある。

 

「わかった。これを通れ。玉座の間に通じている」

「わかった」

 

 そうして二人は転移魔法の渦を通って玉座の間に入った。

 

 玉座の間は黒い。だが玉座そのものは真っ白だった。

 

 玉座に座るのは赤いドレスを纏った絶世の美女だ。

 身長百九十八センチと女性としては非常に高身長。

 顔はダウナー系というのだろうか。少しだるそうな感じをしているが美人そのものだ。つり目である。

 傾国の美女とはこの人物を表すのだろうと思えるほどに美人である。

 胸はでかい。一メートルを超える爆乳に片足突っ込んでいるサイズだ。

 半面腰は細いが、尻も百センチ超えというデカ尻。安産型である。

 細い手足は箸すら持てなさそう。

 黒い腰まで届く艶めいた髪だが内側は赤い。右目は赤く血のようで左目は闇のように真っ暗である。

 

 その女──ディは今、不死城の玉座の間で客人を相手にしていた。

 

「君たちか。わざわざ私に会いに来た人間は」

 

 ディはふうんと客人の女二人を見る。

 

 二人はディを前に悠然と立っている。

 

「初めまして、始まりの吸血鬼、ディ・フランケリヒ殿。この度は私たちを受け入れてくれて感謝します」

 

 五百年の間適当にディはぶらついたりしそこらの人間を始祖の吸血鬼に変えたり、始祖の吸血鬼が真祖の吸血鬼を作るなどした結果ある程度吸血鬼の人口は増えた。

 と言ってもぎり三桁に届かない程度だが、それでも知ってるやつは知ってる程度にはなった。

 

「ああ、世辞やおべっかは不要だ。本題を聞かせてくれ」

 

 ごくり、とナディネは唾をのんだ。

 ここからが重要だ。一言間違えれば最悪革命軍どころか帝国が完全に滅ぶこととなる。

 

「かつてこの大陸を支配していた大帝国は今や見る影もないほどに腐敗した。その腐敗を取り除き、新しい国にするための貴女の力をお借りしたい」

「ふぅん」

 

 さてどうしよう、とディは考える。

 内心では協力してみたいと思っている。理由は単純でその方が面白そうだからだ。

 数百年の国の統治は安定した成果を見せているが災害に見舞われることも特になく問題が起こっていない。

 というか既に統治機構の半分は作り出したデミリッチやマチアスに移っているのでディが直接何かしなくとも国が回っている。

 

「うん。協力してもいいけど──対価は?」

 

 それは聞かねばならない事だ。

 仮にも一国の女王を動かすならば相応の対価が必要になってくる。

 

「貴君の国、オルクスを正式な国家として認め、知性あるアンデッドの人権を認めたく思います」

「……大胆なことを言うね」

 

 思った通りのことを言われディはクスリとほほ笑んだ。

 実際差し出せるものはそれぐらいしかないだろう。

 仮にも一国の女王相手に金銭の類は対価としては不足するし、かといって貴重な魔法道具(マジックアイテム)は意味はない。

 現状世に出回っている殆どの強力な魔法道具(マジックアイテム)は元をたどればディがダンジョンから持ってきた物だ。ディはまだまだ強力な魔法道具(マジックアイテム)を持っている。

 

 となれば国を正式に認めるぐらいしかないのだ。

 

 アンデッドが人権を得たことはこの大陸では一度もない。

 一応極まれに知性あるアンデッドが人間と取引することはあるが、それでも後で討伐隊が組まれたりする。

 

「それは実際に可能なのかい?」

 

 ディはそう尋ねる。出来もしないことを言う輩はいつの時代も居るものだ。

 こっそりとディは無詠唱化した<嘘看破>(センスライ)を発動する。

 <嘘看破>(センスライ)は嘘を看破する魔法だ。といっても相手が嘘を真実と思い込んでいる場合は意味をなさないが。

 

「既に革命軍上層部全員が認めています。革命がなった暁には正式に国家として国交を結びたく思っています」

「……へぇ」

 

 面白いことを言う、とディは思った。

 認めるだけ認めて放置するだろうと思っていたらまさかの国交を得たいとのこと。面白い。

 

「貿易の内容は?」

「素直に金銭によってアンデッドの労働力を得たいと思っている。戦争で亡くなったマンパワーを補うために」

「なるほど、道理だ……いいよ。うん。私が協力してあげようじゃないか」

 

 ディはそういうと玉座から降りてナディネの元に歩く。

 

「よろしく頼むよ、人間」

「……よ、よろしく頼む」

 

 

 ディとナディネは握手をした。

 これにて契約はなった。

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