エクリプスドーンの食堂で。メンバーは食事をしながらナディネの話を聞いていた。
「レオニアが持ってきた依頼だが二つある。一つはガマエという悪徳商人の暗殺だ。麻薬の密売もしている完全な屑だ。もう一人はニオという警備隊長だ。ニオは警備隊長の地位を使って悪事をなしている。両方とも屑だ」
暗殺の依頼と聞いてリオンは緊張する。
一対一の戦闘で負ける気はリオンにはないが、暗殺というのは向いていない気がするのだ。
「ニーナとレオニアはガマエを。リオンとニルスにはニオをやってもらう。方法は問わん」
「わ、わかった」
初めての仕事だ、とリオンは緊張しながら了承した。
帝都、商店街のはずれにある公園。
そこにリオンとニルスは椅子に座っていた。
「ニオの暗殺だが簡単なやり方がある。まずリオンが適当な人気のないところに誘い出し、私が狙撃する」
「狙撃って……弓使いなんですか?」
「いや、私はガンナーだ」
「ガンナー? なんですかそれ」
「銃を使う者の事だ。銃はこれだな。見たことあるか?」
ニルスは懐からハンドガンを取り出した。
「見たことないです……狙撃ってことは遠距離武器なんですか?」
「ああ。百メートル離れた相手でも正確に打ち抜くことが出来る」
「凄いっすね!」
「ああ。だから人込み以外の場所にニオが居れば狙撃できる」
この世界の銃には大きく分けて三種類ある。
実弾を放つ銃。一日の使用回数が決まっている物。使用者の魔力を消費して魔力の弾丸を放つものの三つだ。
更には実弾に加え使用者が魔力を消費するタイプなどの変則的な物もある。
ニルスが持っているのは使用回数制限が決まっている物であり強力なアーティファクトに分類される。
「……ニルスさん、俺にやらせてくれないっすか?」
リオンはそう口を開いた。
「何故だい?」
「……最初は勢いで入ったけど、やってることの実態を知って、俺はこの国を変えたいと思っています。そのために力を振るいたいと。だから先輩任せじゃなくて俺も協力したいんす!」
その台詞にふふっとニルスは笑みを浮かべた。
「若いな……だが、いいだろう。だけども君がピンチになったら助けに入るぞ」
「ありがとうございます! 先輩!」
それじゃあ、とリオンは目標のニオを探しに行った。
「警備隊長様、ちょっとお話が……」
へへっとへりくだりながら。リオンはニオに話しかけた。
リオンはフードを被り顔がわからないようにしている。
「なんだ? 今日俺は非番なんだが……」
ニオは二メートルほどの巨漢だ。軽装鎧を纏っている。腰には剣を差している。
「お耳に入れたいことが……ついてきてください」
「……ふん」
ニオは不振に思いながらもリオンに着いて行った。
少し歩き、人気のない裏路地に着く。
着いた途端リオンは土下座を見舞いした。この国にも土下座の文化はある。
「隊長様! どうか俺を警備隊に入れてください!」
出来るだけみじめな一般人をリオンは装う。
「駄目だ、正規の手順を踏め」
それに対しニオは警戒を怠らない。
「ですがこの不況では厳しすぎます」
そう言いながらリオンも剣をこっそりと抜き──突撃した。
その突撃はあっさりと防がれた。
「ちっ」
「はっ馬鹿が」
何度かリオンの剣とニオの剣が衝突する。
技術の練度は同程度。拮抗する。
リオンが蹴りを放ち、ニオの体が揺れた。
その隙を逃さずリオンは胸を横一文字に切り裂いた。
「やった……」
どさり、とニオが倒れる。
先輩の手を借りずに済んだ……そう思いリオンは去っていこうとする。
だがその前にニオが立ち上がり襲い掛かった。
強襲。しかしとっさに防御が間に合いリオンは吹っ飛ばされるだけで済んだ。
「俺はこの街の支配者だ……! 俺が裁かれることなんて有り得ねぇんだよ……!」
「しぶといな……! 大人しく閻魔の裁きを受け入れな!」
再びリオンとニオの剣が衝突し合う。
死にかけだというのにニオの剣術の勢いとキレは増していった。
(死にかけの人間の力か、これは?!)
まずい、と思い一旦距離を取ろうとリオンは後ろにジャンプするもそれを呼んでいたニオが前進し距離を詰める。
剣が触れない距離なのでニオは左手の拳でリオンの腹をぶん殴った。
ごろごろとリオンが転がった。
「はっ、雑魚が。大人しく俺に処刑されろ。俺はこれまでもこれからも、強者として弱者を蹂躙する!」
ニオはそう不敵な笑みを浮かべた。
「蹂躙される弱者として、お前の喉元食いちぎってやる!」
リオンはそう吠えた。
その隙で充分だった。リオンは今度はニオの喉を切り裂き、殺した。
「俺の、勝ちだ……!」
そうしてリオンは倒れた。
■
「ここは……」
リオンは目を覚ました。
目に映るのは知っている天井。エクリプスドーンの隠れ家のリオンに与えられた自室の天井だ。
「起きたか。まったく、無茶をする」
ベッドの横の椅子に座っていたのはニルスだ。
「先輩! 俺、ちゃんとやりましたよ!」
「合格、は与えられないな。勝てたとは言え自分も倒れてはしょうがないだろう。ていうか今更だが先輩ってなんだ」
「いや、同じ組織で仕事教えてくれるなら先輩ってのがただしいかなって……」
「……まぁいいが。怪我はもうないな、それじゃあ、ボスに報告に行くぞ」
「──はいっ!」
リオンはそれはそれは元気な返事をした。