TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第34話

 

 数日後。食堂にて。

 

「今回の話は依頼ではなく、スカウト、もしくは討伐だ」

 

 ナディネがそう話題を切り出した。

 

「スカウト?」

 

 リオンがそう疑問を問いかける。

 

「ああ。帝都の悪人を次々殺して回っているという殺人鬼ギンを仲間に引き入れるか、殺すのが今回の目標だ」

「銀って……変な名前っすね」

「ギンは名前ではなく暫定でつけられた名だ。銀色の髪をしていることからつけられたらしい……他の特徴は噂話だが幼い少女らしいぞ」

「少女……それが殺人鬼に……」

「これも帝都の闇、だな。今後依頼などで遭遇した場合勧誘か討伐をしてほしい」

「わっかりました!」

 

 リオンはそう元気よく返事をした。

 こうしてエクリプスドーンは帝都に躍り出た。

 

 

 

 ■

 

 

「しっかし、なんもこないっすね」

 

 ギンの話を聞いてから一週間。エクリプスドーンは既に二つほど依頼を消化したがギンと遭遇しなかった。

 今はリオンとニーナで悪徳商人の屋敷に侵入するため近くの家屋の屋根の上に居る。

 

「相手は殺人鬼だ。仲間に入れればいいが……そうでない場合は強敵だ」

「殺人鬼が仲間になりますかね……」

「そこは、まぁわからないな。ただ相手は標的を悪人にのみ絞っているから交渉の余地はあるだろう」

「そうっすかね……」

 

 そうして話しているとぱりん、というガラスが割れる音が響いた。

 

「──突入するぞ」

「わっかりました!」

 

 リオンとニーナは駆け出し、屋敷へ向かって走った。

 

 

 

 屋敷の庭に入り、そこから適当な窓に向かってタックルをかますことで窓をぶち破ってダイナミックエントリーをする。

 

「侵入者だ! 殺せ!」

 

 そこには当然私兵が居て、剣を抜いて構える。

 

 リオンも剣を抜くがそれより早くニーナが刀を抜き私兵の首を跳ね飛ばした。

 

「気配は……こっちだな。ついて来い」

「はいっ!」

 

 剣を抜いたまま二人は屋敷を走る。

 二階に上がりニーナの<気配感知>を元に部屋に侵入する。

<気配感知>は探知系の特殊能力(スキル)だ。生命力や足音や呼吸音などから気配をだいたい感じ取れる特殊能力(スキル)だ。

 

 二階のある部屋の扉を壊しながら入る。

 

「あはっあはは! あっははっはははは!」

 

 部屋にはソファがありソファには男が一人座っていた。

 その男に馬乗りになっているのは一人の少女だった。

 まだ幼い。歳は九歳程度だろう。

 長い銀髪に碧眼の美少女といっていい容姿をしている。身長は百三十センチほど。

 そしてなぜか服を着ていない。全裸であった。

 

 その少女は家庭用の包丁で男をめった刺しにしていた。

 硬い頭以外の胸や腹、腕を差して刺して刺しまくっている。

 

「あら? お客さん?」

 

 少女──仮称ギンはにこりと笑みを浮かべた。

 狂気的な笑みだ。見る者を威圧する顔である。それにリオンはぞっとしニーナは刀を構えた。

 

「じゃあ、死んでね」

 

 どん、とギンは地面を蹴って疾走した。

 とても少女が出していい速度ではない。

 ニーナが刀を構えることでどうにか防ぐ。

 

(この少女、既に特殊能力(スキル)を発動している!)

 

 遅れてニーナも特殊能力(スキル)を発動する。

 特殊能力(スキル)は基本戦闘時のみ使用するのが常識だ。でないと体にかかる負荷が尋常ではないからだ。

 ディのように不死の体を持つものならば常時発動しても問題ないが一般的な戦士などが常時発動でもしようものなら肉体的負荷に耐えられず生命に危機に陥る。

 

 ニーナも特殊能力(スキル)を行使する。<肉体向上>に<肉体超向上>だ。

 ギンが何度も包丁を振るう。<八連撃>の特殊能力(スキル)だ。

 更に攻撃の合間を無くすため連続して発動している。

 ニーナはどうにか<即応反射>の特殊能力(スキル)で防ぐ。

<即応反射>は相手からの攻撃に即座に反射して行動できる特殊能力(スキル)だ。ただしその分体の負荷は高い。

 

「アハハハハハハ!」

 

 ギンは笑いながら攻撃をし続ける。

 

「おりゃああぁぁあ!」

 

 その背後からリオンが斬りかかり、ギンの体を切り裂いた。

 包丁を持っていない左手がぼとりと切り落とされる。

 

「えっやわらか!」

 

 リオンは斬った感触があまりにも柔らかすぎてそう叫んだ。

 まるでバターでも斬ったかのような抵抗の無さであった。

 

「離れろ!」

 

 ニーナがそう叫ぶことでリオンは後ろにジャンプし距離をとる。ニーナもだ。

 

「いたい、痛いなぁ……わたしじゃなかったら死んじゃうよ?」

 

 ギンはそう笑みを見せる。

 ぐじゅぐじゅと斬られた部位から肉が盛り上がり、再生していった。

 

「アーティファクト……いや、固有(ユニーク)特殊能力(スキル)か?!」

 

 固有(ユニーク)特殊能力(スキル)

 職業の取得やレベルアップ、他者からの指導で覚えられる特殊能力(スキル)とは違い一個人限定の特殊能力(スキル)の事。

 個々人で持っている内容が違う。

 例えば筋力を五十パーセント強化する固有(ユニーク)特殊能力(スキル)や第三環魔法を日常的に行使できる固有(ユニーク)特殊能力(スキル)など多岐に渡る。

 ギンもまたそういった固有(ユニーク)特殊能力(スキル)の保有者だ。

 特殊能力(スキル)名は<超速再生>。頭がはじけ飛ぼうが心臓を貫かれようが細胞が一片でも残っている場合そこから再生し続けられる不死の力。

 最もディの不死には程遠い。肉体に依存しているので魂に干渉する特殊能力(スキル)や魔法を食らえば死ぬし、即死魔法でも死ぬ。更に老化を防げるわけじゃないので老衰でも死ぬし病気でも死ぬ。

 ただそれでも物理的攻撃手段しか持たない二人には手に余る相手だ。

 

「ま、待ってください! 俺たちあなたと戦いに来たわけじゃないんです!」

 

 リオンが懸命にそう叫んだ。

 

「ん-? じゃあ私を捕らえに来たってわけだ」

「そうじゃなくて、えっと、勧誘です!」

「勧誘? 宗教の?」

「そうではない。エクリプスドーンへの勧誘だ」

 

 リオンでは手に余ると判断しニーナが話しかけた。

 

「ああ、例の賞金首の……いいよ、じゃあ私を倒せたら仲間になってあげる!」

 

 ギンはそういうとニーナに向かって襲い掛かった。

 

 ニーナはギンの猛攻をどうにか凌ぐ。

 硬い金属音が鳴り響く。

 数十合の県の打ち合いののち、無理が来たのはギンの包丁だ。

 特殊能力(スキル)の<魔化>で一時的に魔法武器と同じ強化を施していたとしても所詮はただの包丁だ。

 アーティファクトとまともに打ち合えば刃こぼれし──折れるのも道理だ。

 

 ぱきん、と包丁が折れた。

 その隙をついてニーナは右腕を斬り飛ばそうとする。治るならば切ってもいいだろの精神だ。

 それを見越したギンは右腕を突き刺すように動かす。

 村雨がギンの腕に食い込んでいった。

 

(しまった!)

 

 これでは刀が抜けなくなった、とニーナが舌打ちをした。

 そこに更に追撃をしようとギンが左手で殴ろうとする。

 それをさせぬとばかりにリオンが剣でギンの左腕を斬り飛ばした。

 

「オオオオオ!」

 

 リオンは雄たけびと共にギンの首を斬り飛ばした。

 

「あら、負けちゃった」

 

 

 以外にもあっさりと勝てたが、これはギンの戦闘経験の浅さとクラス構成にある。

 ギンはこれまで同格との戦いなどしたことなく、言ってしまえば戦闘経験というものがなかった。

 更に就職しているクラスはバーサーカーなどの減ったHP、体力に応じて攻撃力が増すなどの固有(ユニーク)特殊能力(スキル)を前提とした攻撃を受ける前提の物だ。

 また装備品の差もある。ギンは全裸なので何の魔法道具(マジックアイテム)もつけてないがニーナはレベルにあった魔法道具(マジックアイテム)で武装している。同レベルでもステータス差がこれで生まれていた。といってもわずかな差だが。

 

 どたどたと足音が響いてくる。私兵、警備兵の足音だ。

 

「逃げるぞ! その頭を抱えて走れ!」

 

 リオンはギンの頭を抱えたままニーナの後に続く。

 ニーナは二階の窓ガラスをぶち破って逃走する。リオンもそれに続いて窓を超えた。

 

 地面に転がりながら着地し、どうにか立ち上がって走っていく。

 

「おにーさん。私を投げて。自力で走るから」

「わかった!」

 

 頭だけとはいえ少女を抱えて走るのは無理がある。

 リオンは素直に頭を放り投げるとギンは体全体を即座に再生。すたっと地面に着地するとニーナの後を続いて走る。

 

 三人、ニーナとギンはリオンを置いて行かないよう手加減して走っていき、どうにか逃走に成功するのだった。

 

 

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