TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第38話

 

 東の荒野にて。

 そこには魔装グランドゴールを纏ったリオンが居た。

 対峙するは多数の蜥蜴に酷似したモンスター、イィカジだ。

 

 蜥蜴というよりは恐竜に近い姿をしている。

 二足歩行の蜥蜴であり手は退化しているのか短い。

 肉食であり群れを形成するモンスターだ。ちなみに肉は硬くて不味いので食えたものじゃない。

 

 リオンとレオニア、それに対するはイィカジ三十体。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

 リオンが雄たけびと共にイィカジに突撃した。

 それによりイィカジは両断される。

 イィカジたちはそれに恐れることなく突撃を繰り出す。

 負けじとリオンも漆黒のパルチザンを持って両断、刺突を繰り返す。

 

 一ヵ月が経った。その間、リオンは目まぐるしい成長を遂げた。

 そのレベルは驚異の二十九。他の仲間たちにも劣らぬ高レベルに成長を遂げたのだ。

 これは魔装との相性がいいのもあるが、本人の才能が凄かった。

 

 この世界、レベルを上げる方法は二つある。

 一つはその職業にあった行動をすること。

 戦士ならば剣を使って戦ったり、呪文詠唱者(スペル・キャスター)なら魔法を唱えまくることが該当する。

 これらの行動で経験値が入りレベルがある。

 勿論意図しない行動、例えば奴隷として使われた場合も奴隷としてのレベルが上がってしまうという欠点がある。

 

 もうひとつはモンスターを倒す事だ。

 それによりモンスターからエネルギーを吸収し急成長を遂げる。

 これには個々人によって差が出る。

 ゴブリン一匹で一レベル上がる者が居れば五匹倒してようやく上がる者も居る。

 

 リオンは前者であった。たった一体のモンスターでレベルが上がりまくる強者の才能を持つ者。

 

(こりゃ強すぎるな……もしかしなくとも、大将軍クラスの力を……)

 

 リオンの無双劇を隣で見ながらレオニアはそう冷や汗を流した。

 革命軍側に今のところ大将軍クラスの戦力はディしかいない。そのディだって所属しているのではなく同盟者、協力者に過ぎない。

 もしもリオンがこのまま成長し続け大将軍クラスの力を得たならば──そう夢想すると武者震いが止まらなかった。

 

 レオニアが三体倒している間にリオンは群れのリーダーを倒し群れを全滅させていた。

 

「よし、こんなもんか」

 

 リオンは魔装グランドゴールを解除する。

 少し逞しく、凛々しい顔つきになったリオンが出てきた。

 

「おーい!」

 

 少し遠くからニーナが走ってきた。

 

「そろそろ昼食の時間だ。拠点に戻ろう!」

「ああ! わかった!」

 

 リオンとレオニアはニーナについて行き、拠点に戻った。

 

 

 リオン達が拠点にしているのはちょっとした館だ。

 ディが持つ可搬の館という魔法道具(マジックアイテム)であり持ち運びできる貴族クラスの家である。

 魔法道具(マジックアイテム)により冷暖房完備、水道付きトイレも水洗という非常に素晴らしい家だ。

 

 リオン達は家に入り手を洗って食堂に入る。

 

 食堂のテーブルには既に料理が置かれている。ここいらのモンスターの肉を焼いたステーキと野菜、パンだ。

 料理はディがある魔法道具(マジックアイテム)を装備して作っている。魔法道具(マジックアイテム)の力で六十レベル相応の料理人の能力を得て作っているので料理は美味いしバフがつく。

 

「全員そろったな」

 

 ナディネが口を開いた。

 

「食べながらでいいから聞いてくれ。これから私たちは更に東に向かう。向かう先はロンゴロンゴだ」

「ロンゴロンゴ……確か東の貿易都市だっけ」

 

 レオニアが記憶を掘り返しながらつぶやいた。

 

「ああ。そこで私たちはある女を暗殺する。殺すのはロンゴロンゴの都市長、アイリーン・ウィットン・スミスだ」

「……なんでそいつを殺すんだ?」

 

 リオンが慎重な顔で問いかけた。

 

「アイリーンは東のマチルダの中でも強固に帝都への進軍を拒否している人間でな……そいつを殺せばマチルダ側の半数以上が帝都への軍事介入をよしとする。つまり帝都を落とすにあたって必要な殺しだ」

「……そうか」

 

 この業界だ。後ろ暗いことも相応にしなければならないとわかっているのでリオンはそこで口にするのを辞めた。

 

「そして問題が一つある。暫くの間、ディが居なくなる」

 

 その台詞にざわっとした。

 現状このエクリプスドーンの最大戦力がディだ。それが居なくなるとなれば相応の問題が出る。

 

「といってもひと月程度だが……理由としては北との連携の為だ。そこにディが居ないと話にならなくてな……すまないが暫くの間ディは北に向かってもらう」

「わかった」

「だが、ディが居ないからと仕事をしない訳にはいかない。明日の朝にはロンゴロンゴに向かうぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 ■

 

 翌朝。ディの転移魔法でエクリプスドーン一行はロンゴロンゴに来ていた。

 エクリプスドーン一行は顔を隠し、裏門からロンゴロンゴに入った。

 

 ロンゴロンゴは貿易都市。人と物が大量に流れる都市だ。

 表通りは非常に人が多く露店や屋台も多い。

 

「凄い街だな」

 

 その通りをリオンとニルスは歩いていた。

 

「ああ。マチルダの中でも有数の都市だからな……気をつけろよ。敵の目はどこにあってもおかしくない」

「ああ、わかってる。先輩」

 

 二人は街の地理を把握するためにも街を歩く。

 今こうしてる間にも仲間たち……ブラドとレオニアが拠点からアイリーンの屋敷へ通じる地下道を掘っている。

 現状の計画としては地下道と空、二つの場所から強襲をかける。

 地下道を通ったメンバーが囮となり暴れ、その間に空から残ったメンバーがアイリーンを殺しに行くというものだ。

 

 それだけ準備が必要という事であり、相手は強大だ。

 

 アイリーンの私兵に三従士という者たちが居る。

 三人の従士、一代限りの貴族位を持つ者たちであり全員レベルは三十をこえている。

 彼ら彼女たちが常にアイリーンを守っている上多数の警備兵もいる。その中には二十レベルに達した者さえいるのだ。

 正攻法で攻め落とすのは非常に厳しいと言わざるおえない。

 

 何があっても俺はやり遂げるだけだ、とリオンは気合を入れた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 アイリーンの館は広大だ。

 このロンゴロンゴで一番大きい。

 宮殿にすら匹敵するのではないかと思えるほどに大きく庭も広い。

 

 その庭に複数の男女が集まっていた。

 

 椅子に座って優雅に紅茶を飲むのはこの都市の都市長アイリーン・ウィットン・スミス。

 赤い髪に赤い目の女でたれ目である。

 

 そばに控えるのは二人の男と一人の女。

 

 ガタイが良く、丸太のように太い手足を持つ男。上半身は裸だ。

 筋肉が凄くパンプアップしている。

 名をゴルド・イブラ。モンク系統のクラスについている男だ。

 

 もう一人は片目を金髪で隠した長身の男だ。

 金髪碧眼の優れた容姿をしているのだろうが顔の左半分を髪で隠している。

 背中には細身に相応しくない大剣を背負っている。

 エディ・ロブスト。ヘビィウォーリァー系統のクラスに着いた重戦士だ。

 

 最後の一人はローブを深くかぶった金髪碧眼の女だ。

 どこか暗い雰囲気を醸し出しており、この場に相応しくないオーラを出している。

 その手にはねじ曲がった長い木の杖を持っている。

 猫背であり杖で体を支えている。

 範囲攻撃系魔法に特化した魔力系呪文詠唱者(スペル・キャスター)。名はデボラ。平民の出身だ。

 

 それに対峙するように立つのは二人の騎士だ。

 

 金髪碧眼の整った容姿をし、細身の男。歳は二十代ほど。

 銀色の全身鎧に身を包んでいるが顔は晒している。

 背中には長剣を二つ背負っている。

 帝国四騎士の一人、ガイラだ。

 

 もう一人も男。黒髪黒目の男だ。歳は四十代程でおっさんだ。

 軽装鎧を纏った男であり腰には銃を差している。

 M1911だけでなくM4に加えグレネードなども所持している。

 黒髪康二。日本人だ。

 

「それで、君たちを受け入れろと?」

 

 アイリーンが二人の騎士を睨んだ。

 

「そうだ。現状革命軍が次に狙うのはこの都市長である貴女の可能性が高い。警護を厚くする必要があるだろう」

「必要ないわ。私にはこの子たちが居るもの」

 

 アイリーンはそう三従士を見た。

 

「……兵力は多ければ多いほど良い。警備費をケチったから死んだ、というのは嫌だろう?」

「そうはならないわ。それに……いえ。そうね、私を守りたいというのは結構。けどこれ以上この屋敷には来ないでね。汚れちゃうから」

 

 さぁ帰った帰ったとアイリーンは手を振った。

 三従士も一歩前に出て威圧をしてきた。

 

「……そうか。今は引こう。また来る」

「じゃあねー」

 

 そうして二人の四騎士は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

「あのお嬢ちゃん、危機感足りてないんじゃない?」

 

 屋敷から帝国軍の駐在所に帰る途中。康二はガイラに話しかけた。

 

「足りてはいるだろうが……単純に帝国に借りを作りたくないと思っているのだろう。今マチルダは反帝国派と帝国派で別れているからな」

 

 といってもギリギリ帝国派が勝っている状況であり誰か一人でも意見を変える、または亡くなるなどをすれば途端反帝国派になるだろう。

 マチルダは面白い政治機構をしており元老院の意見を聞き、過半数の意見によって行動を変える。

 そのためたった一人でも欠けられては反帝国派として革命軍に協力してくるので帝国もそうならないよう最も殺しやすい女に護衛を持ってきたのだ。帝国四騎士というガードを。

 

「ま、おじさんとしては平和に生きたんだけどねぇ……」

 

 康二はそう煙草に火をつけて加えた。

 

「ふん……どうなることやら」

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