TS不死吸血鬼の異世界旅行記   作:Revak

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第39話

 夜。満月が輝く夜に。

 

 ニーナは墓地に来ていた。

 墓地に来ていた理由としては街にあるうわさにこの共同墓地には領主の館……アイリーンの館に通じる隠し通路があるというものがあったからだ。

 まず嘘だろうがほんとだったら困るので確認に来たのだ。そのための魔法道具(マジックアイテム)も持ってきている。

 虫眼鏡型の魔法道具(マジックアイテム)であり透視能力を持つ。

 

 それを使って墓地を見ていると声がかかった。

 

「まじか。おじさんが見つけちゃうのか」

 

 その声にニーナは虫眼鏡を即座に仕舞い刀を抜いた。

 

 ニーナから二十メートル程離れた位置には男が居た。

 

 黒髪黒目。少し五黄色い肌。身長は百七十五センチと平均程度。

 軽装鎧を纏い服の上にはチェインメイルを着ている。

 腰には銃を差し、グレネードも持っている。

 黒髪康二だ。

 

「帝国四騎士の一人だな」

「あらら、まぁバレちゃうわな」

 

 帝国四騎士ともなれば宣伝のために顔を出すこともある。ニーナが知っていても可笑しくはない。

 

「じゃあ、仕事をしましょうかね」

 

 康二は銃を抜いて放った。

 ニーナは銃弾を見て、刀で斬り飛ばした。

 

「あらら、まぁこれぐらい出来るわな」

 

 この世界の住人はレベルアップによって別生物と呼んでもいいぐらいの変化を果たす。

 レベル一とレベル十ではあらゆる能力が違う。反射神経も動体視力も思考速度もだ。

 だからこそ、銃弾を見てから斬るという芸当が可能になる。レベル三十の肉体は伊達じゃない。

 

 康二が何発も銃を撃つがそのすべてニーナは斬り裂いた。

 

 七発全て打ち切った。

 その隙をついてニーナはダッシュ。康二に接近する。

 

「ほいっと」

 

 康二は虚空からグレネードを取り出した。既にピンが抜かれている。

 筒状のグレネードだ。それをニーナに向かって放り投げた。

 

 ニーナは舌打ちと同時に<回避>系の特殊能力(スキル)を駆使し避ける。爆発が起こった。

 熱が来るがニーナの体を焼くには至らない。

 

 ニーナは体勢を立て直す。

 立て直した瞬間ニーナに向かって康二は二丁拳銃を放つ。今度はリボルバー二丁だ。

 重低音と共に弾丸が幾つも飛んで行く。

 ニーナはそれらをダッシュで回避する。弾丸より速く走るぐらい訳ない。

 

(走って避けるなんてアニメのキャラかよ)

 

 康二は内心そう思うも表情には出さない。

 

 弾丸を放ち切った後、ニーナは止まった。

 

「何故、特殊能力(スキル)を使わない?」

「あん?」

特殊能力(スキル)を使えばもっと威力も上がり、命中もするはずだ……何故使わないんだ?」

 

 その裏に何かあるのではないか、とニーナは疑い問いかけた。

 

 この世界、銃も当然武器としてはあるが、扱いとしては剣以下ともいわれる。

 理由は単純で弾丸を消費するからだ。一日の攻撃回数が決まっている武器は弱い扱いをされて当然である。

 勿論銃弾を使わないタイプ、一日の使用回数制限があるやつや魔力を消費する物などもあるが、なんにしたって回数制限があるうえ、汎用性に欠ける。

 魔力を消費して弾丸を放つぐらいならば呪文詠唱者(スペル・キャスター)になって多数の魔法を駆使した方が圧倒的に手ごわいのだ。

 だが、だからといって銃が弱いのかというとそうでもない。

 ガンナーやハイガンナーなどの銃に関するクラスはあるためそれらに就いて銃を扱えば銃の威力は当然上がるし、<狙撃>などの特殊能力(スキル)を使えば命中率も上がる。

 

「そうだね……じゃあ、本気少し出しちゃおっか」

 

 康二は銃を消した。

 

(ニルスのようなアーティファクトか?)

 

 銃が虚空に消えたことからニーナはそう推察するが間違いだ。

 

 黒髪康二がこの世界に来た時に得た異能、固有(ユニーク)特殊能力(スキル)<重火器召喚>だ。

 千九百九十年から二千三十年までのあらゆる火器を召喚できるというチート能力だ。

 だがそれ一本でやっていけるかというとそうでもない。強者は当たり前のように見てから回避するし、トロールに至っては喰らっても再生するので意味がない。

 四騎士にまで上り詰めたのはこのチートだけでなく康二本人の努力あっての物だ。

 

 康二はガトリングガンを召喚し放った。

 先ほどまでの手加減した一撃ではない。クラスによる常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)を使った攻撃だ。

 今更だが常時発動型(パッシブ)特殊能力(スキル)特殊能力(スキル)の使用可能数を圧迫しない。

 

 重低音が鳴り響く。召喚の力で玉切れがない弾幕が展開される。

 

 ニーナは<肉体向上>系の特殊能力(スキル)や<疾風>を駆使し回避、どうしても避けれないのは村雨で斬る。

 だが──どうしても数発はかする。皮膚から血が出た。

 しかしそのかいあって康二に近づけた。

 

 康二はガトリングガンを盾のように構えるがニーナは村雨でガトリングガンを両断。

 そのまま首を斬ろうとするも康二も<回避>の特殊技術(スキル)で回避。

 ガトリングガンを消し今度はリボルバーを出す。

 不安定な体勢のまま銃を放つ。

 だがニーナはそれを体を少し動かすことで回避した。

 

 ニーナの村雨が康二の首を襲う──その前に

 

「タンマタンマ! おじさん降参します! だから許して!」

 

 その叫びにニーナは首筋に村雨を置くだけにし動きを止めた。

 横たわる康二を上からニーナが襲う形になった。

 

「どういう意味だ?」

「そのままの意味でぇす! おじさんもう帝国軍で働くの嫌なの! だからここで一抜けしまぁす! だからちょっとどいて!」

「信用できないな」

「なら真実の契約書使うから! それならいいでしょ?!」

 

 真実の契約書とはダンジョン深層で幾つか出てきたアーティファクト級の魔法道具(マジックアイテム)の事だ。

 真実の契約書で契約を結んだ場合それに反することが出来なくなるという能力がある。

 対象を害さない契約を結んだ場合直接的は当然、間接的にも出来なくなるという強力な呪いにも似た力だ。

 一つ一千万セラする。

 

「現物は?」

「ここにあります!」

 

 康二はポケットから真っ白な紙……A4のコピー用紙のような紙を取り出した。

 

「……」

 

 取りあえずニーナは引いた。

 刀をしまうことはしない。警戒をしたまま康二を見る。

 

 康二は馬乗り状態から解除され「ふぅ」とため息とともに立ち上がり姿勢を治した。

 

「そ、それで、だ。おじさんはもう帝国軍嫌なのよ。無実の人を処刑したり拷問したりヤクブツパーリナイとか、だからおじさん抜けたいわけ。だけどこれでも四騎士までなっちゃったから退職なんてできないし言いだしたらこっちが処刑されるわだから、おじさん革命軍に身を寄せたいのよ。君なら出来るでしょ?」

「……私では判断できない内容だ。明日、この時間にまたここに来い。それで判断してやる」

「それだけでもありがたい……じゃあまた明日! 約束守ってね!」

 

 そういうと康二は走って去っていった。

 

「……なんだあいつ」

 

 訳の分からないやつだった、とニーナは頭をひねるのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 翌日。夜。ロンゴロンゴ墓地にて。

 

「おー、来てくれたのね!」

 

 そこにはラフな格好をした康二が居た。

 それに対するはドラゴニアを纏ったブラドとナディネ、ニーナにロルフだ。

 

「……まさか本当に帝国四騎士の一人が革命軍側に入りたいと?」

 

 ナディネは信じられんとつぶやきながら問いかけた。

 

「そのとおーり! ほらこれ真実の契約書!」

 

 康二は紙を取り出した。

 ロルフが受け取り、鑑定魔法を使う。

 

「確かにこれは真実の契約書だ」

「そうか……帝国を裏切ることになるが、いいのか?」

「いいよ、もう愛想尽きたしね。ほら、契約してよ」

「……待て。今作る……」

 

 ナディネは真実の契約書に魔力を込める。

 そうすることでナディネが思う契約内容が浮かび上がる。

 

「これでどうだ。受け入れない場合この場でたたっきる」

「はいよちょいと拝見しますよっと……」

 

 契約内容は革命軍に有利な物だ。

 だからと言って人権を無くすような内容ではない。充分受け入れられる内容だ。

 

「これで問題ない」

 

 康二は指の腹を斬り血判を押した。

 

「これで契約はなったな……今後は革命軍の為に動いてもらう。まずは、アイリーンの暗殺についてだ」

「それならこっちであらゆる情報横流しするから、頑張ってちょうだいね」

「言われずとも、だ」

 

 こうして帝国の戦力の一つは手にしたエクリプスドーンは更なる活躍をする。

 

 

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