ワールドトリガーRTA 近界侵略√   作:wgjpt

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第一次大規模侵攻〜近界密航
サブミッション:01


『ミッション:餅は餅屋に』

 

ボーダーが発足して以来、私は特級戦功を含み何故か──ボーダーの最高司令官補佐になった。いきなり組織運営の補佐をする、ということで頭がパンクしそうになったがあくまで私の本分は学生。ボーダーにとってもそこはわかっているようで、私に任された業務は城戸さんの秘書(アルバイトとしての範囲内)であった。

 

しかし舐めてもらっては困る。ボーダーは今回の第一次大規模侵攻を通して、様々なメディアや人々に注目され、今や一躍時の組織。日々煩雑な業務に追われている。

その中でも私の頭も悩ませているのは、とある問題。

 

「ねぇ、君は本当にメディアに出る気はないのぉ?」

 

そうメディア対策室長、根付さんによる広報人材の確保、勧誘である。

 

「いやメディアって。私みたいな根暗。すぐネットで晒されて叩かれますよ。」

「君、地味に自分のイメージにコンプレックスあったんだ。いやけどさぁ、」

 

根付さんが顎に手を当てる。

 

「今は本当に困ってるんだよねぇ。ボーダーにいくら入隊志願者が多く来たとしても、具体的にここはどういうことをやっている、とか説明しないと世間はボーダーのことをただの怪しい組織として見ちゃうでしょ?」

「それはわかりますけど、怪しい組織なのは本当だからいいんじゃないですか?」

「随分と言うようになったねぇ。」

 

昔は亡霊みたく迅の影に隠れてたのにさ、と根付さんが余計な一言を追加する。

 

「それはだっていきなり根付さんが、私の顔を見て『これでヨシ!』だなんて言うからじゃないですか!!」

「丁度いいところにいる君も悪いでしょ!!ほら、大人しく広報になりなさい!!」

 

根付さんが私の手を引っ張って、メディア対策室に無理矢理入れようとしてくる。しかし私はギリギリのところで扉の淵を掴んだ。

そのまま淵に爪を立てて、中に入らないように踏ん張る。廊下では通り過ぎた人達から「風呂に入れられそうな猫?」と失礼な声が上がっていたが、それすらも気にしている余裕はない。

 

「根付さん!!いい加減にしてください!!!」

 

私の声で一瞬、根付さんの力が緩む。そこで私が踏ん張る力を緩めようとしたら、再び根付さんはその瞬間を狙って私を引っ張ってきた。流石、狡賢い大人である。フェイントをかけてきやがった。

 

「あのねぇ!!こっちだって限界があるんだよ!!今、どれだけボーダーに対するメディアの批判があるか!!子供を働かせるな、だとか安全面はどうなっているの、だとか!!まぁ真っ当なご意見ですねぇ!!」

「だからって、その働いている子供代表に私を選抜しないでください!!」

「君、顔だけはいいんだから大人しく手伝いなさいよ!!」

「絶対、い、や、だ、!!!!!!」

 

ふぬぬぬぬぬぬとそれでも力を込めているとヤケになった根付さんが叫ぶ。

 

「だったら変わりの人物、連れてきなさい!!」

 

次の瞬間、私の頭の中には景色が広がった。とあるお家。そこにいる黒髪の爽やかな人。どことなく迅を彷彿とさせる少年──

 

「わかりました!!!わかりましたから!!!変わりの人物、連れてきます!!!」

 

そう言ってようやく根付さんは私の手を引っ張るのをやめた。

 

だから私は探す。私よりもメディアに出るにふさわしい、きっと引っ張りだこになるような、さっきSEで見たような、人間を───

 

「ねぇ、迅に親戚っていたっけ?」

 

場面は変わって玉狛のリビング。そう尋ねると、迅は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてこちらを見た。

 

 

『ミッション:餅は餅でも食えない餅は』

 

貴方は廊下を歩いていると、廊下の床に黄色い粉が落ちているところを発見した。

すぐさま貴方はその粉に危険性がないか確認しようとした。廊下にしゃがみ込んで、観察してみる、うん、特に異常はない。いやなんだこれ?

そうして眺めているとSEで、背後から忍田本部長がものすごい勢いで走ってくるのが見えた。

 

「あぁ、君か!!すまない!!今は急いでいるんだ!!」

 

暴風のように通り過ぎようとする忍田本部長。しかしその数メートル先には黄色い粉があって、それを踏めば確実に靴が汚れる。

 

「私は大丈夫ですけれども、本部長、足元汚れますよ。」

「…足元?」

 

そうしてあれほどの勢いで走っていたにも関わらず忍田本部長はピタリ、と止まる。そしてその黄色い粉を見つめると、何かに気付いたのか烈火の如く怒り出した。

 

「これは、まさか…!!!!!」

「まさか?」

 

その言葉の続きが気になって目線を上に上げるが、当の本人は粉がばら撒かれているところをひょいとかわして、再び走り去ってしまった。

しょうがないから貴方はSEを使って忍田本部長を追跡しようと試みる。だって、うん。危険なものだったら困るからね。別に興味が出てるわけじゃないからね。

 

すると忍田が去っていった方向とは真逆の方向から、とある人物が飛び出してきた。

 

「もう行ったか?」

 

その人物はまるで餌を取られまいと警戒する野生動物のように、忍田の行方に神経を尖らせている。

 

「行きましたけど。」

「そうか、それじゃあ。俺がいたこと、忍田さんには絶対に言うなよ。」

 

そう言ってその謎の人物は去っていった。その手にはべったりと黄色い粉をつけて。

 

貴方は少し考える。

 

あ、もしかしてあの人、例のきな粉餅の人?

そう、ボーダーにはここ最近おかしなルールが作られた。それは本部内できな粉餅を食べることを禁ずる、というものだ。貴方は最初、遂に根付さんがボーダーのパブリックイメージを危ぶみ出して出されたものだと思っていたが、それは違った。何やら忍田さんが出したものらしく、弟子があまりにもきな粉餅を食べた手で周囲を汚すからだと言っていた。

 

あの謎の人物は、もしかして…

 

貴方は少し迷ってから忍田さんに連絡を入れた。そうして謎の人物は捕まり、ボーダー内は黄色い粉まみれになることは防がれたのであった。

 

 

だからだろうか。

ふいに貴方は思考の海に沈んでいた記憶を拾い上げた。目の前にはあの時見た人物が、師ととてもよく似ているロングコートを羽織って、A級一位を名乗っている。

 

だからだろうか。

私が"この目的"を達成するために、A級一位に取引を持ちかけたところ、断られかけてるのは。

 

しかし今はそんな些細なことで未来を奪われてはたまったものじゃなかった。だから貴方はこう言った。

 

「太刀川さん。貴方は近界に興味がある。そして私は貴方を近界へ行かせられる権限がある。」

 

それはハッタリでもあった。最高司令官補佐という名の、何でもない役職の人間が言う、ただのハッタリ。しかしその人物は、目の色を変えた。

 

「近界遠征ってさぁ、何すんの?そこには俺よりも強い奴っている?」

「もちろん。」

 

貴方の目にはかつて見た、近界の戦争の様子が映る。トリガーを使った人間が一方的に幼い子供を虐殺している様子を。

 

「だから、協力していただけませんか?貴方はこれから──師である忍田本部長の派閥ではなく、城戸最高司令官の派閥に入ることを。」

 

その言葉に彼は、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「太刀川、了解。」

 

 

『ミッション:銃型トリガーの開発』

(副題:走れ雷蔵)

 

貴方は近頃、ボーダーの人間がシューターになったにも関わらず多くが他のポジションに転向していく、という現場を多々目撃していた。シューターはミドルレンジからアウトレンジまでできる素晴らしいポジションなのに、勿体無い。だから誰でももっとアステロイドやバイパーなどの弾が扱いやすくなるようなトリガーはないかと。そう思い貴方はエンジニアの長である、鬼怒田さんに直接話すことにした。

 

鬼怒田さんはとても優しいおじさんで、貴方はいつも城戸さんの仏頂面を眺めながら仕事するよりは、鬼怒田さんのぽんぽこお腹を見ながら仕事をしたいものだと思っている。だがしかし、配属されたのは城戸さんのところである。何故だろうか。天の巡り合わせは、理不尽だ。

 

鬼怒田さんは貴方がエンジニア室に入り、要件を言うと嬉々として頷いてくれた。そうして数日後、貴方が仮想空間で訓練をしていると、鬼怒田さんがやってきた。

 

「新しいトリガーを試作してみたわい。」

「わぁ!!ありがとうございます!!鬼怒田さん!!」

 

貴方が喜んで飛び上がると、鬼怒田さんは嬉しそうにした。

できたトリガーは拳銃型の新しいもの。流石鬼怒田さん製。予め設定しておけば、攻撃威力は通常のシューター用トリガーよりも高くリアルタイムで弾道計算しなくていい、瞬発力に優れた素晴らしいトリガーだった。

 

貴方は興奮でトリオン兵を多数撃ち殺した後、これを是非ランク戦に導入しないかと鬼怒田さんに持ちかけた。そうしてランク戦は新たな環境となり、このトリガーは見事使用率トップ圏にランクインしたのである。

 

だがしかし、このトリガーには欠点もあった。それは通常のシューターの方が射程が長いことである。次第に拳銃型トリガーの使用率は落ち着きを取り戻し、環境はまた元に戻るかと思われた。

が、しかし。貴方は言った。

 

「鬼怒田さん、拳銃型のトリガーが作れるってことは突撃銃(アサルトライフル)型のトリガーも作れるってこと?」

 

鬼怒田は満面の笑みで答えた。

 

そうして出来たのがランク戦における突撃銃型トリガー環境である。一部の人間はナーフを求めてエンジニア室に行ったが、新しく強い武器ができるのは良いことである、という鬼怒田の主張に負け、すごすごと帰りざるをえなかった。

 

が、しかし。そこで終わるのであればボーダーではない。

寺島雷蔵──とあるアタッカーは激怒した。必ずかの邪智暴虐なトリガーを、除かなければならぬと決意した。雷蔵は弧月使いである。アタッカーよりも射程が長いトリガーには人一倍に敏感であった。

 

そうして雷蔵はエンジニアに転向した。その自らの愛する武器を捨て、愛する武器を守るために努力しようとしたのである。これは、アタッカー達の中には涙したものもいたほどのことだった。

 

そうして数多くの批判、犠牲、またはアタッカー人口の減少によりシールドの強化が入り、減っていったアタッカーの人口も元に戻った。もちろん、銃型トリガーはまだまだランク戦を席巻してたが、アタッカーが再び地位を上げていくのにもさほど時間がかからなかった。

 

寺嶋は思う。

エンジニア室の白い壁に囲まれながら、嗚呼、あの日々は無駄ではなかったのだと──

そこにふと、室長への来客が来た。

 

「ねぇ、鬼怒田さん。散弾銃型トリガーって作れない?」

 

寺島は、激怒した。

 

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